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7話

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ここは?

辺りを見渡せば、見覚えのある広い草原が広がっていた。

そうか・・・さっき魔法で見せた丘に来たんだった。

静まり返っている草原に1人佇んでいると、ついさっきの出来事が夢のように思えた。

夢だったらいいのにな・・・

思い出したくないのに、ハリーの腕にぴったり寄り添う女の人が目に浮かぶと同時に、胸が苦しくなる。

ハリー、笑顔だったな・・・・・・


それ以上何も考えられず、少しチクッとする草原に寝そべって目を閉じた。




しばらくして、エルドウッド伯爵邸に帰った。 

「やぁ、ルル!待っていたよ」

出迎えてくれたのはエルドウッド伯爵様だった。
伯爵様独特の雰囲気が、落ち込んでいる今の私には有り難く感じた。

「ステファン様久しぶりです」
 
「ああ、ちゃんと名前で呼んでくれるんだね、嬉しいよ。ルルはいつも、「伯爵様」なんて他人行儀だったかったからね」

いや、今もかなり無理して呼んでます。とは言えない。本当に、色々な意味でミステリアスを通り越している。

私がにっこりすると、

「ルル、話があるんだ。応接室に来てくれるかい?」

と言われ、ステファン様の後をついて行った。

応接室へ着いて勧められたソファに座ると、ステファン様は優雅に魔法で紅茶をいれてくれた。

「相変わらず沢山の砂糖を入れるんだね」

私が砂糖を3つ入れているのを見て笑っている。

「最近どんどん大人になっていくルルに嬉しさと寂しさを感じていたから、今も変わらず甘い紅茶を好むルルを嬉しく思うよ」

「う~ん、あまり誇らしいことじゃないですけどね」

「そんな事ないよ」と言い、ステファン様はまだ熱いはずの紅茶を一気に飲んで、わたしの方を見た。

「ルル。デルの森での活躍聞いたよ。2ヶ月間も大変だったと思う。頑張ったね」

「ありがとうございます」

「怪我なく帰ってくれてほっとしているよ。まぁ、ルルの強化魔法と回復魔法があれは向かう所敵なしか」

「買いかぶりすぎですよ。
私はただのヘルプ要員ですから。
日頃からデルの森の警護に当たっている騎士様のお陰です。
あと、私の後輩のウィルも驚く程優秀で随分と助けられました」

「ああ、あの方は特別だからね。
まぁそれは良いとして、そんな謙虚なルルに辺境からスカウトが来ていてね」

そう言うと、ステファン様はまた優雅に魔法で紅茶をいれ、熱々を飲み干した。



辺境。
ステファン様の話では、辺境はデルの森の様な魔獣の出現する森と、隣国との小競り合いが未だに続き、苦労が絶えないらしい。

自分の魔法が少なからず力になる事を実感した今回だけど、正直まだ自信はあまり無い。
それに、人を相手に攻撃魔法を放てるかと言われても多分無理だろう。
こんな私が行った所で士気を下げるだけ。
もっと魔法や人体についても勉強して、実際に実践して、自信が持てたら行けるかもしれない。


自分の今の気持ちとやるべき事、それには時間が必要なことを伝えると、ステファン様は、

「その通りだね」

と、強く頷いてくれた。




夜は寝付けないことはなく、朝もスッキリと目覚めることができた。 
ハリーの事も、少し冷静になって考えられそうな気がする。

辺境の話を聞いて、やるべきことが明確になったせいかもしれない。
もっと魔法を上達させたい。
そう思うとじっとなんかしていられなくなった。
休みを2週間ももらったから、魔法省へ行ろうかな。なんて考えていた時、

「ルルさん、お客様ですよ」

風魔法でボブ
さんの声がした。

誰だろう?メアリーさん?
階段を降りて行くと、
そこには、ハリーがいた。  










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