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プロローグ

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前兆は、色々とあった。
ありすぎたくらいに。
現に、『また女性と距離が近すぎることがあれば後は無いから!』と、釘もさしていた。

信じたかったけれど、いつかこんな日が来るんじゃないかと予感はあった。


私の前方で、恋人であるハリーが他の女性の肩を抱きキスしている。
しかも、濃厚なヤツを。
女性はハリーの胸元に手をおいて、ノリノリ間を隠しきれていず、いや、むしろ女性の方が推し気味に見えなくもないけど、そんなこと今はどうでもいい。

驚くべきは、ここが騎士団の飲み会の場ということ。
まぁ、周りにわんさかと人が居る。
飲んで酔ったノリなのか、ゲームなのか、それとも本気のヤツなのか。

周りも酔っぱらいが多く、キスしている2人を囃し立てているように見える。
だけど今はそんなことはどうでもいい。
どうでもいいのだ。

私は、今キッパリ、サッパリ、スッキリとハリーとお別れしなくてはいけない。


一歩一歩進みながら、自分の体に、特に右腕中心に強化魔法をかけてていく。
酔っていたと思われる騎士達が、ヤベェと言わんばかりの表情で道を開け、ハリーと女に向かって口々に何か言っている。
今頃何か言うなら、もっと早くに言ってやって欲しかった。
もう遅いけど。

ハリーは、やっと私に気づいたようで、慌てて隣にいる女を引き離し、私に何か言っている。

目の前で足を止めた私に、ハリーは青ざめた表情でこちらを見る。

「ルル・・・・・・」

久しぶりに見たハリー。これが最後かと思うと、今までの出来事が頭の中を駆け巡る。
鼻がツンとして、目に涙が浮ぶ。

泣かない 泣かない

私は深呼吸し、右手に握りしめてハリーの左頬へと強力パンチをお見舞いする。

物凄いぶっ飛んだ音がする。

私は振り返らず歩き出す。
歩きながら転移魔法をを発動させる。
キラキラと光が溢れて視界が霞む。

「さようなら。ハリー」

そっと呟いた。
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