勇者は世界を平和にする!

幸崎 亮

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さあ平和の時間だ! はじめよう!

エリア5/ 聖地ラ・ミエール

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 俺は魔王の情報を求め、聖地ラ・ミエールに来た。
 ここには何でも占ってくれるが住んでいるらしい。
 勇者は怪しいオカルトにも好意的なのだ!

「ファファファ。よう来たの。何を知りたいのかえ?」

 祭祀場さいしじょうへ立ち入った俺を、さっそくババアが出迎えた。
 文句なしの不合格ッ!
 だが俺は勇者。平和のためなら、誰にだってフレンドリーだ!

「自分は勇者です。ところで巫女はあなただけですか? その、もっと若い……」

「ヒェッヒェッ! 言うと思うておったわ!――のう、娘や? この助平すけべぇの相手をしてやり」

 流石はベテランの巫女だ。俺の心を見抜いてやがる!
 そしてババアが退場すると同時に、若い巫女が出てきたぞ。


「ようこそ、聖地ラ・ミエールへ。何をご所望されますか?」

「やあ、素敵なお嬢さん。俺は勇者だ! 世界を平和にする旅を続けている」

 巫女服、パッツン黒髪ロング! そして目は青色だ!
 大逆転で合格とする!

 まずは巫女ちゃんに歳をたずねてみた。
 俺と同じ、永遠の十七歳だそうだ!

 ついでに魔王の居場所もいてみたぞ!


「魔王ですか。ついに時が訪れたのですね。お覚悟はよろしいですか?」

「もちろんだ! 俺はそのために来た!」

 彼女は静かにうなずくと、周囲の者たちに目配せをする。
 すると他の巫女さん連中が、俺たちの周りを取り囲んだ!

 嫌な予感がするぞ! 何が始まるというのだ!


「魔王の居場所……。それは、です!」

 そう言って巫女ちゃんは「ビシッ!」と俺を指さした!
 本当に効果音が聞こえたくらいだ!

 しかし――直後、俺の身体から、闇色の何かが這い出してきた!

「まさか魔王!? 俺の中に居たというのか!」

「フッハッハッハ。その通りだ! これまでの『お楽しみ』も、しかと見ていたぞ!」

 なんということだ! 俺は魔王と旅をしていたのか!
 思えば転生した時に見た〝神っぽい奴〟は、なんとなく魔王っぽかった気もする!

 この勇者を騙すとは! おのれ魔王め、許せん!


「我々が魔王の力を抑えます! 勇者どの、今のうちに!」

「かたじけない! ゆくぞ、魔王ッ!」

「フッハッハッハ! 全員まとめて腹をき、モツ鍋にブチ込んでくれるわ!」

 俺は聖剣バルドリオンを抜き放ち、一気に魔王へ斬りかかる!
 だが、魔王の生み出した闇の刃で、あっさりと受け止められてしまった!

 それどころか、俺が攻撃を繰り出す度に魔王は少しずつ実体化し、周りの巫女さんたちが次々と倒れてゆく!

 クッ、長期戦は不利だ! もはや出し惜しみはできない!

 一気に決めて、ここで悪夢を終わらせる!
 さあ平和の時間だ! はじめよう!


平和的核熱攻撃魔法ピースフルニュークリアブラスト――ッ!」

 俺はバルドリオンをかかげ、勇者の最終魔法を解き放つ!

 魔王の身体が凄まじい爆発を起こし、熱風と衝撃波が吹き荒れる!
 これが封印していた禁忌きんきの魔法・平和的核熱攻撃魔法ピースフルニュークリアブラストだ!

 俺は巫女ちゃんを抱き、勇者の力で必死にかばう!

 もはや聖地は消し飛ぶだろうが、この子だけでも守ってみせる!
 やがて爆風は収まり。何も無い大地に、俺と巫女ちゃんだけが遺された。


「すまない……! 俺さえ来なければ!」

「よいのです。こうなる事は運命さだめ。すでに我ら巫女は、覚悟を決めておりました」

 俺をこの世界へ送り込んだのは、他ならぬ魔王だった!
 つまり、俺が居る限り、世界に平和は訪れない!

 今度は俺が覚悟を決める番だ!
 この誇り高き巫女ちゃんのように!

「死したはずの運命さだめを変えて頂き、感謝しております。お礼に、すべての元凶の場所を、あなたに示しましょう……」

 そう言うと彼女は、静かに祈りを捧げ始めた。

 さっきの魔王は、おそらく分身アバターだろう!
 元凶を完全に消滅させてこそ、真の平和は訪れるのだ!

「原初の地ダム・ア・ブイ……。そこへ行けば……」

 原初の地! 懐かしさを感じるぞ!
 そこで何が待ち構えようと、勇者ならば行くしかない!

 祈りを終えた彼女は力尽き、ガックリとひざをつく。
 俺は彼女を抱き留め、ぎゅっと優しく寄り添った!


「うぅっ……。やはり力を使いすぎてしまいました……」

「ありがとう。いま俺の力を君に注ぐよ」

 俺は感謝を込めて礼を言い、特別な魔法の準備に取り掛かる。

「はぁっ!? なっ! やめ……。まだ早っ……」

愛と平和の運命ラブアンドピースエンゲージ――!」


 ◇ ◇ ◇


 翌日――。カラスの鳴き声で目覚めた俺は、ゆっくりと大地に起き上がる。
 今回は特に消耗が激しすぎた! もう次の日の夕方だ!

「やはり行くのですね……。貴方を失ってしまうと、わたくしは……」

「すまない。俺は勇者として、最後の決着をつけねばならない」

 新妻のようにささやく彼女を、俺は優しく抱きしめる。

 ついに魔王を倒したことで、あとはすべての元凶を断つのみだ!
 俺は彼女に後ろ髪を引かれながらも、スッキリとした気分で聖地をった!

 ついに旅の終わりが見えた! さあ、平和な世界はすぐそこだ!



 エリア5:聖地ラ・ミエール 【平和完了!】
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