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第2章、学園と修さんと私
第31話:そうた君の街案内
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朝、目覚めると顔にふわふわなお尻がくっついていた。「あの、修さん、ちょっと近くない?」『くぁぁ』「もう、まだ寝てていい時間なのに」『パタパタ』「・・・こうしてやる!」『にゃ!?』
今日は7月最初の休日。入学してから1カ月というもの、授業や課題に部活にと、慌しかったから、今日は予定も入れずにゆっくり過ごしたかった。
-そうそう、それであの『本』に出会ったんだよね。修さん、まだ待っててくれてるかな?-
朝食を軽く済ませた後、玄関の扉を開けたら斜向かいのしば犬さんが大騒ぎしていた。どうやらご主人さんが倒れているらしい。
「すいません、二日酔いでして」
「いや、びっくりしました。」「この子の散歩の時間なのに、、うっ!」「あ、私、散歩するんでついでに行きますよ」
『ワン!ワン!』
普段は急いで通り過ぎるだけの街並みが、こうしてのんびり歩いてみるとまるで違う風景に見える。川沿いの藤の花は散り始めており、その淡い紫色が水に静かに沈んでいく。
「季節が移ろい、もう夏ですね」『ワン!』
静かに咲いているその花を眺めながら、私の心は少しずつ和んでいく。そうた君に連れられて歩いていると、確か友人たちがおすすめだと話をしていた喫茶店の前にたどり着いた。
「休憩しましょうか?」
『ワン!』
窓越しに見える店内は、温かな雰囲気に包まれている。
扉を開けると、店内にはカフェオレの甘い香りが漂っていた。
「あのー」「あら、そうた君、どしたのー」「あー、そうた君の飼い主さんが二日酔いでして」「あらあら、大変でしたね」「あ、僕は怪しいものでは」「わかりますよ。そうたが吠えてないし、ねー」『ワン!』
私たちはテラス席に座り、私はハーブティーを、そうた君には水を頼む。
爽やかなミントとジャスミンの湯気がゆっくりと立ち上るのを眺めながら、一口飲んでみる。空を見上げれば青色が深くなっていた。
口に広がる爽やかさと、足元でゴロンとしたそうたさん。少し、大きく力が抜けたのがわかった。
テラスには書棚がある。この店は「街角図書館」の登録店らしく、市民から寄贈された本が書棚に並んでいた。
「クロックタウンの歴史と学校」という一冊をめくると、そこにはこの街の歴史やいろいろな学校がどのように関わっているかなどが書かれていた。
『ワン!』
この街とエーテル技術が人々の暮らしにどれほど影響を与えたのかという記述が印象的だった。何より、作者がエヴァンス先生だった。
「ご馳走様です」
私はその本を借りた。
青空がさらに高く感じられた。
そうた君に言われるままに、商店街を抜けていく。彼方此方でそうた君は大人気であり、彼のおかげで街の知らない一面や、新しい人に出会えた。
「なんか、皆さんにご紹介してくれてます?」
『ワン!』「ありがとうございます」
そうた君の友達だという小さな子どもに飴をもらった。ふとした懐かしさに心が捉われる。
「あたちもともだちだから」
「ありがとう」
頂いた手の中の飴玉を見ながら、何気なく過ごしていた日々を思い出す。
もう、あの人たちには出会えない。
でも、またあの熱の中に飛び込める時間を取り戻した。
そよ風が頬を撫でた。
「お昼になるから、戻りましょ?」
夏近くの中天の太陽が、やけに眩しく感じられた。
今日は7月最初の休日。入学してから1カ月というもの、授業や課題に部活にと、慌しかったから、今日は予定も入れずにゆっくり過ごしたかった。
-そうそう、それであの『本』に出会ったんだよね。修さん、まだ待っててくれてるかな?-
朝食を軽く済ませた後、玄関の扉を開けたら斜向かいのしば犬さんが大騒ぎしていた。どうやらご主人さんが倒れているらしい。
「すいません、二日酔いでして」
「いや、びっくりしました。」「この子の散歩の時間なのに、、うっ!」「あ、私、散歩するんでついでに行きますよ」
『ワン!ワン!』
普段は急いで通り過ぎるだけの街並みが、こうしてのんびり歩いてみるとまるで違う風景に見える。川沿いの藤の花は散り始めており、その淡い紫色が水に静かに沈んでいく。
「季節が移ろい、もう夏ですね」『ワン!』
静かに咲いているその花を眺めながら、私の心は少しずつ和んでいく。そうた君に連れられて歩いていると、確か友人たちがおすすめだと話をしていた喫茶店の前にたどり着いた。
「休憩しましょうか?」
『ワン!』
窓越しに見える店内は、温かな雰囲気に包まれている。
扉を開けると、店内にはカフェオレの甘い香りが漂っていた。
「あのー」「あら、そうた君、どしたのー」「あー、そうた君の飼い主さんが二日酔いでして」「あらあら、大変でしたね」「あ、僕は怪しいものでは」「わかりますよ。そうたが吠えてないし、ねー」『ワン!』
私たちはテラス席に座り、私はハーブティーを、そうた君には水を頼む。
爽やかなミントとジャスミンの湯気がゆっくりと立ち上るのを眺めながら、一口飲んでみる。空を見上げれば青色が深くなっていた。
口に広がる爽やかさと、足元でゴロンとしたそうたさん。少し、大きく力が抜けたのがわかった。
テラスには書棚がある。この店は「街角図書館」の登録店らしく、市民から寄贈された本が書棚に並んでいた。
「クロックタウンの歴史と学校」という一冊をめくると、そこにはこの街の歴史やいろいろな学校がどのように関わっているかなどが書かれていた。
『ワン!』
この街とエーテル技術が人々の暮らしにどれほど影響を与えたのかという記述が印象的だった。何より、作者がエヴァンス先生だった。
「ご馳走様です」
私はその本を借りた。
青空がさらに高く感じられた。
そうた君に言われるままに、商店街を抜けていく。彼方此方でそうた君は大人気であり、彼のおかげで街の知らない一面や、新しい人に出会えた。
「なんか、皆さんにご紹介してくれてます?」
『ワン!』「ありがとうございます」
そうた君の友達だという小さな子どもに飴をもらった。ふとした懐かしさに心が捉われる。
「あたちもともだちだから」
「ありがとう」
頂いた手の中の飴玉を見ながら、何気なく過ごしていた日々を思い出す。
もう、あの人たちには出会えない。
でも、またあの熱の中に飛び込める時間を取り戻した。
そよ風が頬を撫でた。
「お昼になるから、戻りましょ?」
夏近くの中天の太陽が、やけに眩しく感じられた。
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