27 / 67
6月 self portrait
第27話、時を超えた偶然
しおりを挟む
もし、僕が、今の記憶を持ったまま、また同じ時間に入ることができたら、どんなに良かったかな。
オートクチュールであつらえたかのように、そこにあることがあまりに自然な計算されたシルエットを持つ磨かれた靴。
暗闇に沈むフロアにある光り輝く水槽には、悠々と泳ぐ魚がいて、そしてアクリル板を挟んで僕が向かい合っている。
「はーい!では、撮りまーす!」
サンシャイン60の水族館で僕は、背中に炎と龍をモチーフにしたシャツとオーガンジーのシアージャケットを纏いポーズを決めている。
月明かりを浴びた野薔薇を感じさせる香水を身に纏う僕は、初対面の時に彼が言ったように女みたいなのかもしれない。
僕の仕事はプログラマーだけど、こんなことをしているのには訳がある。僕が仲間と作ったアプリが大成功を納めたからなんだ。
不思議だよね?仲間達3人で僕の部屋で集まって構想を練っていたんだけれど、荷物や僕が部屋を開け閉めする関係で、いつまでも僕の部屋に集まる訳にもいかなかった。
とりあえず、ひと月で借りたワーキングスペースの中は、アプリの形が見えてきた頃には、こたつがない3人の秘密基地に変貌していた。
「こんな感じかな?」
「この部分、邪魔」
「そうかな?」
「あ、それ、繋ぎ合わせよう」
「は?これを?何に?」
「ほら、それ、滑らかにして」
「え?僕が?」
「うん、できない?」
「・・・これは?」
「あ、うん。いいね」
「でっしょー」
「じゃあ、よろしく」
「え?ちょっと、ここで寝ないで!?」
僕が考えたアプリはシンプルなコンセプト。人の生活そのものを切り出して、目的にまつわるトラブルを解決する。
人の生活をシンプルにすると「心臓を動かすこと」と「心を動かすこと」の2つだと、僕は思っている。
だから、システムを「体」と「心」の2つに分けた。次に「機能」を空間に依存する事象と時間に依存することに分けた。
「体×空間」だと「体の治療@病院」とか「ご飯@台所」とか生きるために必要な「機能」を示す。
「心×時間」だと「非日常体験@映画鑑賞」や「趣味@釣り」とかかな。場所に依存するものもあるし、漁師さんとかだと違う結果ではあるけど、その対象者にとっての「機能」で分ける。
僕の考えたアプリは、これを24時間ベースの物理的な時間と場所という現実世界と、1人ひとりに合わせた「機能」に対する演算結果をシームレスに繋いでいく。
この1人ひとりに合わせた最小限の電気的なインターフェースで、「対象者」に合わせた「場所」と「時間」を「横」に繋げていく。
分散型システムと一緒で、全部を計算する頭はいなくて、小さな一つ一つがその「空間」にある「ステーション」につながることで必要な「追加機能」を受け取ったり、時間になれば「ダウンロード」をする。
アプリの特徴は現実世界である「場所」「24時間」との組み合わせを「体」「心」並びに「空間」「時間」として携帯電話で動かすこと。
あくまで主体はアプリ。拡張現実の世界を現実と重ね合わせる小さなシステムにした。人でも工場管理でも使えるシンプルなコンセプトにミニマルなシステムコード。
似たようなコンセプトやサービスはいっぱいある。でも今のアプリは「広告」や「思想」が多すぎて、これだと「誘導」になってしまう。
僕は思いやりをもって巡礼者を迎え、旅にまつわるトラブルを解決し、次の目的を探す手伝いをしていた頃のコンシェルジュをシステム化したかった。
オートクチュールであつらえたかのように、そこにあることがあまりに自然な計算されたシルエットを持つ磨かれた靴。
暗闇に沈むフロアにある光り輝く水槽には、悠々と泳ぐ魚がいて、そしてアクリル板を挟んで僕が向かい合っている。
「はーい!では、撮りまーす!」
サンシャイン60の水族館で僕は、背中に炎と龍をモチーフにしたシャツとオーガンジーのシアージャケットを纏いポーズを決めている。
月明かりを浴びた野薔薇を感じさせる香水を身に纏う僕は、初対面の時に彼が言ったように女みたいなのかもしれない。
僕の仕事はプログラマーだけど、こんなことをしているのには訳がある。僕が仲間と作ったアプリが大成功を納めたからなんだ。
不思議だよね?仲間達3人で僕の部屋で集まって構想を練っていたんだけれど、荷物や僕が部屋を開け閉めする関係で、いつまでも僕の部屋に集まる訳にもいかなかった。
とりあえず、ひと月で借りたワーキングスペースの中は、アプリの形が見えてきた頃には、こたつがない3人の秘密基地に変貌していた。
「こんな感じかな?」
「この部分、邪魔」
「そうかな?」
「あ、それ、繋ぎ合わせよう」
「は?これを?何に?」
「ほら、それ、滑らかにして」
「え?僕が?」
「うん、できない?」
「・・・これは?」
「あ、うん。いいね」
「でっしょー」
「じゃあ、よろしく」
「え?ちょっと、ここで寝ないで!?」
僕が考えたアプリはシンプルなコンセプト。人の生活そのものを切り出して、目的にまつわるトラブルを解決する。
人の生活をシンプルにすると「心臓を動かすこと」と「心を動かすこと」の2つだと、僕は思っている。
だから、システムを「体」と「心」の2つに分けた。次に「機能」を空間に依存する事象と時間に依存することに分けた。
「体×空間」だと「体の治療@病院」とか「ご飯@台所」とか生きるために必要な「機能」を示す。
「心×時間」だと「非日常体験@映画鑑賞」や「趣味@釣り」とかかな。場所に依存するものもあるし、漁師さんとかだと違う結果ではあるけど、その対象者にとっての「機能」で分ける。
僕の考えたアプリは、これを24時間ベースの物理的な時間と場所という現実世界と、1人ひとりに合わせた「機能」に対する演算結果をシームレスに繋いでいく。
この1人ひとりに合わせた最小限の電気的なインターフェースで、「対象者」に合わせた「場所」と「時間」を「横」に繋げていく。
分散型システムと一緒で、全部を計算する頭はいなくて、小さな一つ一つがその「空間」にある「ステーション」につながることで必要な「追加機能」を受け取ったり、時間になれば「ダウンロード」をする。
アプリの特徴は現実世界である「場所」「24時間」との組み合わせを「体」「心」並びに「空間」「時間」として携帯電話で動かすこと。
あくまで主体はアプリ。拡張現実の世界を現実と重ね合わせる小さなシステムにした。人でも工場管理でも使えるシンプルなコンセプトにミニマルなシステムコード。
似たようなコンセプトやサービスはいっぱいある。でも今のアプリは「広告」や「思想」が多すぎて、これだと「誘導」になってしまう。
僕は思いやりをもって巡礼者を迎え、旅にまつわるトラブルを解決し、次の目的を探す手伝いをしていた頃のコンシェルジュをシステム化したかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
地獄三番街
arche
ライト文芸
羽ノ浦市で暮らす中学生・遥人は家族や友人に囲まれ、平凡ながらも穏やかな毎日を過ごしていた。しかし自宅に突如届いた“鈴のついた荷物”をきっかけに、日常はじわじわと崩れていく。そしてある日曜日の夕暮れ、想像を絶する出来事が遥人を襲う。
父が最後に遺した言葉「三番街に向かえ」。理由も分からぬまま逃げ出した遥人が辿り着いたのは“地獄の釜”と呼ばれる歓楽街・千暮新市街だった。そしてそこで出会ったのは、“地獄の番人”を名乗る怪しい男。
突如として裏社会へと足を踏み入れた遥人を待ち受けるものとは──。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる