43 / 44
【米海軍】boy meets girl 2 - 粉モン彼氏 -
いやいや、先ずは定番の京都やで?
しおりを挟む
小説家になろうで開催されたトムトムさん主催【バカンスに行くザンス企画】の参加作品です。
++++++++++
「なあキャル、実はさ転属の打診が来てるんだ、俺」
久し振りに一緒のベッドで朝を迎えた恋人を抱き締めながら呟くように言った。
「転属? もしかして第七艦隊から異動になるの?」
「ふふーん……」
「何よ、その変な笑いは」
『実はなあ、お月さんに行けるかもしれへんねん』
「なによ、いきなり日本語で呟かないでよ。一瞬何言ってるか分かんなかったじゃない。月ですって?」
『そうやで~、お月さんや。しかも! 日本企業が納入してくれてる宇宙食に何と! お好み焼きを追加すべく開発を始めてん。俺が行く頃にはお好み焼き、宇宙に持って行けんねんで? ええやろー、いてっ』
キャルに蹴られた。
「そんなの邪道よ! お好み焼きは鉄板で焼いてこそのお好み焼きでしょ? そんなレンジでチンするみたいなのはお好み焼きじゃないわ!」
「だが日本の冷凍食品にだって既に存在する商品だ、いてっ、何度も蹴るなっ」
『ジャドーDETH!」
「なにも日本語で言うことないだろ、しかも最後なんかおかしかったぞ」
いくら軍属で鍛えていても痛いものは痛いねんでキャルッ!!
「お好み焼きなら何でもいいの? 違うでしょ?」
「そりゃ鉄板で焼いたのが食べたいに決まってる」
「だっら次の長期休暇の行き先は決まってるわよね?」
「「大阪、日本!!」」
もっとロマンチックな場所でもええねんで?と言ってもキャルは大阪で良いらしい。ま、美味しいお好み焼きを食って海遊館いってデートするか。日本のホテルはサービスもええし?
「マリンにも声かけるのか?」
「それはちょっと考えものね。日本が狭いとは言え小さい子を連れての長距離移動はあまりお勧めできないし、東京に足を延ばせたら良いけど、無理なら今回は電話だけってことで良いんじゃないかしら?」
「ふむ……。だったら大阪でお好み焼きを食って、京都の神社仏閣巡りでもするか」
「賛成! 最近は変り種の八橋が出てるらしいからそれもチェックしたいな。確か八橋作りを体験できるところもあるんですって、あ、そろそろ桜のシーズンだし、そっちも!」
「それも調べておくか」
こういう時、二人してネイティブな日本語が話せて良かったと思う。
+++++
そしてやってきたで、日本! キャルは以前に利用していたので手慣れた様子でHARUKAの乗り場に俺を引っ張っていく。普段は基地から基地への移動だからこういう電車の移動もなかなか新鮮でええやん?
さすがに大阪で粉モン三昧だけでは寂しいので先ずは定番の京都で桜三昧と洒落込むことにした。キャルは桜餅がどうのこうのとはしゃいでいるので下手すりしゃ和菓子屋巡りになりそうやけどな。
「宿泊は京都って、このシーズンによくとれたな」
「知り合いがホテル勤務なのよ。連絡したらとってくれるっていうからお言葉に甘えちゃった。しかもお知り合い価格でちょっと割引!」
「キャル、なんだか思考が日本のオバチャン化してないか……」
「いいのよ、オバチャンでも。せっかくの好意なんだから」
電車に乗って一時間ちょいでKYOTOに到着。意外と俺等みたいな海外組の姿が多い。ホテルに荷物を置いてさっそくガイド片手のキャルに引っ張られて桜の名所へと出掛けることになった。ほんまに元気やな~。俺はこのまま昼寝でもええんやけどなあ……。
「馬鹿なこと言ってないで、ほら行くのよ。せっかく本場の桜を見に来たのにMOTTAINAIでしょ?」
「キャルぅぅ、そのMOTTAINAIの使い方、なんか間違ってるぞ?」
「細かいこときにしないの!」
女っつーのはまったく……。
連れてこられたのは岡崎の平安神宮。ここは古い歴史の京都では珍しく新しい神社というか神宮や。とは言っても軽く百年の歴史はあるんやけどな、地元の人間からすると“まだまだ新しい建物”っちゅうことや。京都で“歴史ある”と言えば五百年前なんて当たり前らしい。だから和菓子屋やKIMONO屋も百年程度ではペーペーの新参者、五十年なんて『お話になりまへんなあ』ってことなんやと。つまりは京都の人間からすれば俺達の国もペーペーの新参者ってことらしい。
「なあキャル、こっちの桜餅にまかれている葉っぱってこれと同じなのか?」
桜の木をさして尋ねる。
「そうよ。もちろん道端の桜の木の葉を使うわけじゃないらしいんだけどね。それを塩漬けにして使うんですって。花が散って葉が出てくると桜餅の匂いがするのよ?」
「へえ……で、ここからサクランボウが実るわけじゃないのか」
「それはサクラ違い」
「なるほど……」
とにかく桜のシーズンに来て驚いたんは、とにかく京都の市内にはやたらと桜の木が多いってこと。神社仏閣だけではなく普通に庭に桜の木が植えてあるなんてのも珍しくない。ちょっと観光地から外れた住宅地にも大きな枝垂桜があって驚いた。
「ガイドブックには載ってないけど、ここ、大きなKIMONO屋さんの別荘だって友達から聞いたことあるの。中には入れないけど外からでも綺麗な桜が見れるから行ってみたらって友達に教えてもらってたんだ」
友達からもらっていたらしい手書きの地図を見せてくれた。それでこんな外れた場所なのに迷わずに来れたんか。俺達が知らんだけで地元の人しか知らん桜の名所ってのもぎょうさんあるんやろうなあ。それにこの桜は他の桜と違ってたれさがっとるし。紅枝垂れっちゅう桜の種類らしい。
「そう言えばね、前に聞いたことあるんだけど、どうして京都ではこんなに桜の名所がたくさんある知ってる?」
「いや。どうして?」
「京都っていうのは貴族がたくさん住んでいる町で、その貴族ってのが季節季節の花を楽しむ習慣があったから桜のシーズンには桜が少しでも綺麗に見えるようにってきちんと計画して植えたんですって。だから今でもその名残で桜スポットがたくさん残っているらしいわ」
「へえ……ってことは町全体が日本庭園みたいなものか」
「そんなところね」
「しかしこれだけ綺麗だと、花の下で騒ぎたくなる気持ちも分かるよな」
桜シーズンの花見。比較的お行儀のよい日本人が唯一羽目を外す時じゃないやろうかと俺は思ってんねんけどな。とにかくこっちの基地にいる時に上野に行った時も凄かった。普段はスーツ着て真面目に仕事しているであろうオッチャン達がやんややんやの大騒ぎ。もしかして日本人て年に一度のこの日の為に働いているやないかって思うぐらいの羽目の外しようようやった。
アメリカで催される桜フェスティバルとはちょっと違う日本の桜シーズンの風物詩。なかなか愉快な宴会風景や。
そのあと、キャルに連れて行かれたんはそこからKYOTO駅を挟んで、さっきとは反対側にある八つ橋の店だった。街中に同じメーカの商品があんのに何でこんな離れた場所にわざわざ?って聞いたら、ここで八つ橋を作る体験が出来るからってことらしい。さすがパティシエ、どうしても来たかったんやな、これ。
しかしなあキャル、いくら好きな形の作ってもかまへんって言われたからって、抹茶味で餃子はないやろ餃子は。いや、努力は認めるけどな。
++++++++++
「なあキャル、実はさ転属の打診が来てるんだ、俺」
久し振りに一緒のベッドで朝を迎えた恋人を抱き締めながら呟くように言った。
「転属? もしかして第七艦隊から異動になるの?」
「ふふーん……」
「何よ、その変な笑いは」
『実はなあ、お月さんに行けるかもしれへんねん』
「なによ、いきなり日本語で呟かないでよ。一瞬何言ってるか分かんなかったじゃない。月ですって?」
『そうやで~、お月さんや。しかも! 日本企業が納入してくれてる宇宙食に何と! お好み焼きを追加すべく開発を始めてん。俺が行く頃にはお好み焼き、宇宙に持って行けんねんで? ええやろー、いてっ』
キャルに蹴られた。
「そんなの邪道よ! お好み焼きは鉄板で焼いてこそのお好み焼きでしょ? そんなレンジでチンするみたいなのはお好み焼きじゃないわ!」
「だが日本の冷凍食品にだって既に存在する商品だ、いてっ、何度も蹴るなっ」
『ジャドーDETH!」
「なにも日本語で言うことないだろ、しかも最後なんかおかしかったぞ」
いくら軍属で鍛えていても痛いものは痛いねんでキャルッ!!
「お好み焼きなら何でもいいの? 違うでしょ?」
「そりゃ鉄板で焼いたのが食べたいに決まってる」
「だっら次の長期休暇の行き先は決まってるわよね?」
「「大阪、日本!!」」
もっとロマンチックな場所でもええねんで?と言ってもキャルは大阪で良いらしい。ま、美味しいお好み焼きを食って海遊館いってデートするか。日本のホテルはサービスもええし?
「マリンにも声かけるのか?」
「それはちょっと考えものね。日本が狭いとは言え小さい子を連れての長距離移動はあまりお勧めできないし、東京に足を延ばせたら良いけど、無理なら今回は電話だけってことで良いんじゃないかしら?」
「ふむ……。だったら大阪でお好み焼きを食って、京都の神社仏閣巡りでもするか」
「賛成! 最近は変り種の八橋が出てるらしいからそれもチェックしたいな。確か八橋作りを体験できるところもあるんですって、あ、そろそろ桜のシーズンだし、そっちも!」
「それも調べておくか」
こういう時、二人してネイティブな日本語が話せて良かったと思う。
+++++
そしてやってきたで、日本! キャルは以前に利用していたので手慣れた様子でHARUKAの乗り場に俺を引っ張っていく。普段は基地から基地への移動だからこういう電車の移動もなかなか新鮮でええやん?
さすがに大阪で粉モン三昧だけでは寂しいので先ずは定番の京都で桜三昧と洒落込むことにした。キャルは桜餅がどうのこうのとはしゃいでいるので下手すりしゃ和菓子屋巡りになりそうやけどな。
「宿泊は京都って、このシーズンによくとれたな」
「知り合いがホテル勤務なのよ。連絡したらとってくれるっていうからお言葉に甘えちゃった。しかもお知り合い価格でちょっと割引!」
「キャル、なんだか思考が日本のオバチャン化してないか……」
「いいのよ、オバチャンでも。せっかくの好意なんだから」
電車に乗って一時間ちょいでKYOTOに到着。意外と俺等みたいな海外組の姿が多い。ホテルに荷物を置いてさっそくガイド片手のキャルに引っ張られて桜の名所へと出掛けることになった。ほんまに元気やな~。俺はこのまま昼寝でもええんやけどなあ……。
「馬鹿なこと言ってないで、ほら行くのよ。せっかく本場の桜を見に来たのにMOTTAINAIでしょ?」
「キャルぅぅ、そのMOTTAINAIの使い方、なんか間違ってるぞ?」
「細かいこときにしないの!」
女っつーのはまったく……。
連れてこられたのは岡崎の平安神宮。ここは古い歴史の京都では珍しく新しい神社というか神宮や。とは言っても軽く百年の歴史はあるんやけどな、地元の人間からすると“まだまだ新しい建物”っちゅうことや。京都で“歴史ある”と言えば五百年前なんて当たり前らしい。だから和菓子屋やKIMONO屋も百年程度ではペーペーの新参者、五十年なんて『お話になりまへんなあ』ってことなんやと。つまりは京都の人間からすれば俺達の国もペーペーの新参者ってことらしい。
「なあキャル、こっちの桜餅にまかれている葉っぱってこれと同じなのか?」
桜の木をさして尋ねる。
「そうよ。もちろん道端の桜の木の葉を使うわけじゃないらしいんだけどね。それを塩漬けにして使うんですって。花が散って葉が出てくると桜餅の匂いがするのよ?」
「へえ……で、ここからサクランボウが実るわけじゃないのか」
「それはサクラ違い」
「なるほど……」
とにかく桜のシーズンに来て驚いたんは、とにかく京都の市内にはやたらと桜の木が多いってこと。神社仏閣だけではなく普通に庭に桜の木が植えてあるなんてのも珍しくない。ちょっと観光地から外れた住宅地にも大きな枝垂桜があって驚いた。
「ガイドブックには載ってないけど、ここ、大きなKIMONO屋さんの別荘だって友達から聞いたことあるの。中には入れないけど外からでも綺麗な桜が見れるから行ってみたらって友達に教えてもらってたんだ」
友達からもらっていたらしい手書きの地図を見せてくれた。それでこんな外れた場所なのに迷わずに来れたんか。俺達が知らんだけで地元の人しか知らん桜の名所ってのもぎょうさんあるんやろうなあ。それにこの桜は他の桜と違ってたれさがっとるし。紅枝垂れっちゅう桜の種類らしい。
「そう言えばね、前に聞いたことあるんだけど、どうして京都ではこんなに桜の名所がたくさんある知ってる?」
「いや。どうして?」
「京都っていうのは貴族がたくさん住んでいる町で、その貴族ってのが季節季節の花を楽しむ習慣があったから桜のシーズンには桜が少しでも綺麗に見えるようにってきちんと計画して植えたんですって。だから今でもその名残で桜スポットがたくさん残っているらしいわ」
「へえ……ってことは町全体が日本庭園みたいなものか」
「そんなところね」
「しかしこれだけ綺麗だと、花の下で騒ぎたくなる気持ちも分かるよな」
桜シーズンの花見。比較的お行儀のよい日本人が唯一羽目を外す時じゃないやろうかと俺は思ってんねんけどな。とにかくこっちの基地にいる時に上野に行った時も凄かった。普段はスーツ着て真面目に仕事しているであろうオッチャン達がやんややんやの大騒ぎ。もしかして日本人て年に一度のこの日の為に働いているやないかって思うぐらいの羽目の外しようようやった。
アメリカで催される桜フェスティバルとはちょっと違う日本の桜シーズンの風物詩。なかなか愉快な宴会風景や。
そのあと、キャルに連れて行かれたんはそこからKYOTO駅を挟んで、さっきとは反対側にある八つ橋の店だった。街中に同じメーカの商品があんのに何でこんな離れた場所にわざわざ?って聞いたら、ここで八つ橋を作る体験が出来るからってことらしい。さすがパティシエ、どうしても来たかったんやな、これ。
しかしなあキャル、いくら好きな形の作ってもかまへんって言われたからって、抹茶味で餃子はないやろ餃子は。いや、努力は認めるけどな。
2
お気に入りに追加
473
あなたにおすすめの小説
僕の主治医さん
鏡野ゆう
ライト文芸
研修医の北川雛子先生が担当することになったのは、救急車で運び込まれた南山裕章さんという若き外務官僚さんでした。研修医さんと救急車で運ばれてきた患者さんとの恋の小話とちょっと不思議なあひるちゃんのお話。
【本編】+【アヒル事件簿】【事件です!】
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
私の主治医さん - 二人と一匹物語 -
鏡野ゆう
ライト文芸
とある病院の救命救急で働いている東出先生の元に運び込まれた急患は何故か川で溺れていた一人と一匹でした。救命救急で働くお医者さんと患者さん、そして小さな子猫の二人と一匹の恋の小話。
【本編完結】【小話】
※小説家になろうでも公開中※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる