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第八話 井戸の神様 4
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その日から何日かごとに、井戸の神様がいるお宅の前を通ってみた。家の周囲が柵ができ、工務店の工事日程が書かれたホワイトボードが何枚か柵にぶら下げられる。そして解体工事が始まった。
―― わー、本当に木造家屋って感じ ――
むき出しになった梁や柱を見あげながら、さすが古いお宅、立派な木を使ってるなと感心する。それが完全な新築になるんだなと思いながら、日々をすごしていたある日、開庁直前の時間に、あの井戸の神様がやってきた。
「あ、おはようございます!」
「おはようございます。少し早い時間ですが、よろしいですか?」
「どうぞどうぞ!」
家も完全に解体されたし、神様がここにやってきたということは、きっと井戸も埋められてしまったんだろうな、と残念な気持ちになる。だけど神様は、最初にここに来た時と同じで、穏やかな表情をしていた。……というか、なんだか晴れ晴れとしている。
―― もう、吹っ切れたのかな、井戸のこと ――
「そろそろお試しで、どこか行かれる気になれましたか?」
「いえ、そのことなんですけどね」
神様は窓口のイスに座ると、ニコニコしながら私を見た。
「どうやら、その必要はなくなりそうです」
「え?! もしかして、神様をやめてしまわれるんですか?!」
いろいろなモノを守っている神様。その中には役目を終えた後、次の場所に行くことなく、自分達の住む世界へ戻っていく神様達もいる。その世界がどういうものか、私にはわからないけれど、とにかく神様達にも帰る場所があるのだ。
「いえいえ、そういうことではなく。井戸を残すことになったそうなのですよ」
「そうなんですか?! それか良かったです!!」
まさかの事態に驚いた。もしかして、お子さん達の意見が通ったのだろうか?
「そのへんの事情を、お聞きしても?」
気になったので質問をする。
「高齢のご夫婦を心配して、娘さん夫婦が同居することになりましてね。それで家を建て替えることになったのですよ。そこで井戸は埋めるという話になったのですが、井戸水を気に入っているお孫さんと、井戸を残したいお婆さんの意見が通ったようです」
「そうなんですか。前にお嬢さんを見かけました。神様の居場所がなくなってしまうって、とても心配してましたよ」
「あの子達は小さいころから、お婆さんと一緒に拝みに来てくれていましてね」
神様が懐かしそうに笑った。
「ま、正直なところ、建て替えの予算が思っている以上にかかるみたいで。娘さん夫婦は、井戸を埋める費用を、別の場所に回したかっただけのようですけどね」
神様が、いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「あ、そういう事情も」
現実的な問題もあったのかと、思わず笑ってしまった。
「それにこの地域は冬は底冷えがひどくて、水道管が凍結することもあるでしょう? 井戸水はそういうことが少ないのでね。そういう点も考えられたそうです」
「そうだったんですか。でも良かったです。井戸が残って」
神様の希望と、お子さんとお婆ちゃんの希望がかなって本当に良かった。こういうことがもっとあれば良いのにと、思わずにはいられない。まあ現実的には難しいことだろうけど。
「まったくです。ここで行き先を考えてもらっておいて申し訳ないのですが、今しばらくは、井戸の神としてあの家にいられそうです」
「こちらのことはお気になさらず。とにかく、おめでとうございます。良かったです。これからも、おいしい井戸水で、あのお宅の皆さんの喉を潤してください」
「スイカを冷やすこともね。では失礼します。本当にありがとう」
神様はエントリーカードを私の前に置くと、深々と頭をさげ、半透明になって消えていった。
「榊さん、一宮さん、今の話、聞きました?!」
神様が消えたところで、後ろの榊さんと、隣の一宮さんに声をかける。
「聞いてたわよ。本当に良かったわね、神様」
「聞きました聞きました! 井戸の神様継続で良かったです!」
「あ、ちょっと報告に行ってくる!」
「「どこへ?!」」
私が向かったのは、休憩室の給水器だった。
「神様ー!! 報告ですー!!」
私の声に、給水器の神様がヒョッコリと顔を出す。
「そんな慌ててどうしたんじゃ、天変地異でも起きたかの? まずは水でも飲んで、落ち着くんじゃ」
差し出されたコップを受け取ると、一気に水を飲みほした。
「どうも! そうじゃなくて、前に井戸の神様の話をしたじゃないですか。覚えてます?」
「もちろんじゃ。あの井戸の神、いよいよ転職活動かの?」
「それが! 井戸を埋めないことになったみたいで! そのまま井戸の神様継続です!」
その報告に、神様がニコニコ顔になる。
「おお、それは良きかな良きかな。そういうこともあるんじゃな。まったくもって、良きかな良きかな」
「本当に。で、さっき神様がお礼に来られたんです。お礼を言われるようなこと、なにもしてないんですけどね」
あまりに丁寧に頭をさげられたので、こちらが逆に恐縮してしまった。本当に日本の神様は、礼儀正しい神様が多い。
「そこはじゃ。お前さんの心意気に対しての礼じゃろう。親身になっているお前さんの心意気が、井戸の神に伝わっておったのじゃ」
「そういうもんなんですかねー」
「そういうもんなんじゃ」
それほど意識して神様に接しているわけではなかったが、今までの自分のやり方が間違っていなかったのだと、少しだけ自信を持つことができた。
「以上、報告でした」
「わざわざの報告、ご苦労さんじゃった。今日も一日、仕事にはげむように」
「はい。では!」
グラスを洗って水切りに入れると、事務所に戻った。
「こういうことがもっと、たくさんあると良いんですけどねー」
「古い井戸のこと?」
「それだけじゃないですけど。八百万ハロワの職員みたいに、皆が神様の姿をみることができたら、古いモノを簡単に手放すことも、なくなるんじゃないかなって思いますよ」
もちろん今の生活様式に合わないから、しかたなくという面もある。それでも、それぞれのモノに宿っている神様達が見えたら、もう少し感謝をするとか考えるとか、そういうことをする人が増えるのではないかと思う。
「神様って、人の気持ちがエネルギー源だって、言われてるじゃないですか。ここにきて感じるようになったんですけど、人間はもうちょっと、神様に感謝する気持ちがあっても良いと思うんですよ」
「そうかもしれないわね。でも、見えたら見えたで大変そうよ? ここに来る神様だって、善良な神様ばかりではないし」
「まあ、そうなんですけどねー……」
私達が相談に乗る神様のほとんどは、特に人に害をもたらさない神様達だ。だが中には、とてつもなく困った存在に変容してしまう神様もいる。そういう神様達の応対は、特殊技能持ちの職員が担当することになっていて、自分達のような一般職の人間が対応することはない。
「人も神様も、それぞれ色々あるからね」
「ですねー……」
開庁を知らせるチャイムが鳴った。次の神様がやってくる前にと、井戸の神様が返してくれたエントリーカードを手元に引き寄せる。そしてパソコンへ情報を入力した。
『井戸の神として継続』
お試し枠にあった募集枠の案件を削除する。データを更新すると、活動中断・一時保留と書かれた引き出しにエントリーカードを入れた。エントリーカードは処分されることなく、次にあの神様がやってくるまで保管されることになっている。
―― 次にあの神様がここにやってくるのは、一体いつになるのかな。私が定年退職した後ぐらいになるかな ――
あのお子さんの話しぶりからして、井戸が埋められるのは当分先になるような気がする。
―― ずっと残っていけば良いんだけどな ――
最近は井戸水を使っているお宅も少なくなったし、貴重な飲料可能な井戸なのだ。これからも末永く、使われていきますようにと、願わずにはいられなかった。
―― わー、本当に木造家屋って感じ ――
むき出しになった梁や柱を見あげながら、さすが古いお宅、立派な木を使ってるなと感心する。それが完全な新築になるんだなと思いながら、日々をすごしていたある日、開庁直前の時間に、あの井戸の神様がやってきた。
「あ、おはようございます!」
「おはようございます。少し早い時間ですが、よろしいですか?」
「どうぞどうぞ!」
家も完全に解体されたし、神様がここにやってきたということは、きっと井戸も埋められてしまったんだろうな、と残念な気持ちになる。だけど神様は、最初にここに来た時と同じで、穏やかな表情をしていた。……というか、なんだか晴れ晴れとしている。
―― もう、吹っ切れたのかな、井戸のこと ――
「そろそろお試しで、どこか行かれる気になれましたか?」
「いえ、そのことなんですけどね」
神様は窓口のイスに座ると、ニコニコしながら私を見た。
「どうやら、その必要はなくなりそうです」
「え?! もしかして、神様をやめてしまわれるんですか?!」
いろいろなモノを守っている神様。その中には役目を終えた後、次の場所に行くことなく、自分達の住む世界へ戻っていく神様達もいる。その世界がどういうものか、私にはわからないけれど、とにかく神様達にも帰る場所があるのだ。
「いえいえ、そういうことではなく。井戸を残すことになったそうなのですよ」
「そうなんですか?! それか良かったです!!」
まさかの事態に驚いた。もしかして、お子さん達の意見が通ったのだろうか?
「そのへんの事情を、お聞きしても?」
気になったので質問をする。
「高齢のご夫婦を心配して、娘さん夫婦が同居することになりましてね。それで家を建て替えることになったのですよ。そこで井戸は埋めるという話になったのですが、井戸水を気に入っているお孫さんと、井戸を残したいお婆さんの意見が通ったようです」
「そうなんですか。前にお嬢さんを見かけました。神様の居場所がなくなってしまうって、とても心配してましたよ」
「あの子達は小さいころから、お婆さんと一緒に拝みに来てくれていましてね」
神様が懐かしそうに笑った。
「ま、正直なところ、建て替えの予算が思っている以上にかかるみたいで。娘さん夫婦は、井戸を埋める費用を、別の場所に回したかっただけのようですけどね」
神様が、いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「あ、そういう事情も」
現実的な問題もあったのかと、思わず笑ってしまった。
「それにこの地域は冬は底冷えがひどくて、水道管が凍結することもあるでしょう? 井戸水はそういうことが少ないのでね。そういう点も考えられたそうです」
「そうだったんですか。でも良かったです。井戸が残って」
神様の希望と、お子さんとお婆ちゃんの希望がかなって本当に良かった。こういうことがもっとあれば良いのにと、思わずにはいられない。まあ現実的には難しいことだろうけど。
「まったくです。ここで行き先を考えてもらっておいて申し訳ないのですが、今しばらくは、井戸の神としてあの家にいられそうです」
「こちらのことはお気になさらず。とにかく、おめでとうございます。良かったです。これからも、おいしい井戸水で、あのお宅の皆さんの喉を潤してください」
「スイカを冷やすこともね。では失礼します。本当にありがとう」
神様はエントリーカードを私の前に置くと、深々と頭をさげ、半透明になって消えていった。
「榊さん、一宮さん、今の話、聞きました?!」
神様が消えたところで、後ろの榊さんと、隣の一宮さんに声をかける。
「聞いてたわよ。本当に良かったわね、神様」
「聞きました聞きました! 井戸の神様継続で良かったです!」
「あ、ちょっと報告に行ってくる!」
「「どこへ?!」」
私が向かったのは、休憩室の給水器だった。
「神様ー!! 報告ですー!!」
私の声に、給水器の神様がヒョッコリと顔を出す。
「そんな慌ててどうしたんじゃ、天変地異でも起きたかの? まずは水でも飲んで、落ち着くんじゃ」
差し出されたコップを受け取ると、一気に水を飲みほした。
「どうも! そうじゃなくて、前に井戸の神様の話をしたじゃないですか。覚えてます?」
「もちろんじゃ。あの井戸の神、いよいよ転職活動かの?」
「それが! 井戸を埋めないことになったみたいで! そのまま井戸の神様継続です!」
その報告に、神様がニコニコ顔になる。
「おお、それは良きかな良きかな。そういうこともあるんじゃな。まったくもって、良きかな良きかな」
「本当に。で、さっき神様がお礼に来られたんです。お礼を言われるようなこと、なにもしてないんですけどね」
あまりに丁寧に頭をさげられたので、こちらが逆に恐縮してしまった。本当に日本の神様は、礼儀正しい神様が多い。
「そこはじゃ。お前さんの心意気に対しての礼じゃろう。親身になっているお前さんの心意気が、井戸の神に伝わっておったのじゃ」
「そういうもんなんですかねー」
「そういうもんなんじゃ」
それほど意識して神様に接しているわけではなかったが、今までの自分のやり方が間違っていなかったのだと、少しだけ自信を持つことができた。
「以上、報告でした」
「わざわざの報告、ご苦労さんじゃった。今日も一日、仕事にはげむように」
「はい。では!」
グラスを洗って水切りに入れると、事務所に戻った。
「こういうことがもっと、たくさんあると良いんですけどねー」
「古い井戸のこと?」
「それだけじゃないですけど。八百万ハロワの職員みたいに、皆が神様の姿をみることができたら、古いモノを簡単に手放すことも、なくなるんじゃないかなって思いますよ」
もちろん今の生活様式に合わないから、しかたなくという面もある。それでも、それぞれのモノに宿っている神様達が見えたら、もう少し感謝をするとか考えるとか、そういうことをする人が増えるのではないかと思う。
「神様って、人の気持ちがエネルギー源だって、言われてるじゃないですか。ここにきて感じるようになったんですけど、人間はもうちょっと、神様に感謝する気持ちがあっても良いと思うんですよ」
「そうかもしれないわね。でも、見えたら見えたで大変そうよ? ここに来る神様だって、善良な神様ばかりではないし」
「まあ、そうなんですけどねー……」
私達が相談に乗る神様のほとんどは、特に人に害をもたらさない神様達だ。だが中には、とてつもなく困った存在に変容してしまう神様もいる。そういう神様達の応対は、特殊技能持ちの職員が担当することになっていて、自分達のような一般職の人間が対応することはない。
「人も神様も、それぞれ色々あるからね」
「ですねー……」
開庁を知らせるチャイムが鳴った。次の神様がやってくる前にと、井戸の神様が返してくれたエントリーカードを手元に引き寄せる。そしてパソコンへ情報を入力した。
『井戸の神として継続』
お試し枠にあった募集枠の案件を削除する。データを更新すると、活動中断・一時保留と書かれた引き出しにエントリーカードを入れた。エントリーカードは処分されることなく、次にあの神様がやってくるまで保管されることになっている。
―― 次にあの神様がここにやってくるのは、一体いつになるのかな。私が定年退職した後ぐらいになるかな ――
あのお子さんの話しぶりからして、井戸が埋められるのは当分先になるような気がする。
―― ずっと残っていけば良いんだけどな ――
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