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第四話 鎌倉さん
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「あ、そうだ、神様。先週末のお寿司屋さんの件、なにか聞いてます?」
開庁前の空き時間を利用して、週末の報告書の準備をする。そして文章を入力しながら、ディスプレイの上でのんびりとお茶を飲んでいる神様に、質問をした。
「寿司屋の件とは?」
「課長と鎌倉さんが出向いた、あの超高級な、お寿司屋さんのことですよ」
「ああ、あの寿司屋か。高級なだけあって、ネタはなかなか良いものを使っているらしいの。そこの寿司を食べられるとは、うらやましい限りじゃ。折詰のおみやがほしいのう」
「すみませんねえ、私はその手の技能資格を持っていないもので」
課長と鎌倉さんが出向いたお寿司屋さん。地元でも、かなりお高いことで有名なお店だった。
「一見さんはお断りらしいですけど、よく来店できましたよね」
「そこは店の神様責任者が、手配したんじゃろうな」
「ああ、なるほど」
イタリア料理のお店で、ビア樽の神様が私達の前に出てきたように、お寿司屋さんの神様責任者が、課長達を招待してくれたらしい。
「……じゃなくて。どんな問題が起きたんですかねって話です」
「なんじゃ、お前さんも気になっておるのか」
「そりゃまあ、八百万ハロワの職員として少しは? 技能持ちじゃない私にとって、一生、縁のないお仕事ですけど、話ぐらいは聞いておきたいかなって」
ずっと無縁でいたいけれど、話を聞く程度には気になる案件だ。
「それならわしではなく、課長さんか鎌倉ちゃんに聞けば良いではないか」
「面と向かって聞けないから、こうやって神様に質問してるんじゃないですか」
「わしはそんなに、おしゃべりではないぞ?」
神様も、自分が知っているすべてのことを、話してくれるわけではない。それなりに話せないこともあるらしい。いわば神様の『守秘義務』というやつだ。
「えー? もしかしてこの事案、一般職は閲覧禁止に指定されちゃったんですか?」
パソコンで募集中のデータベースを呼び出す。
「いや、そんなことはないはずじゃ。前と同じ、一般の募集枠に戻ったはずじゃからの」
「そうなんですか?」
募集項目はその案件ごとに『一般』『特殊』『要注意』『一般職紹介禁止』などのタグ付けがされていて、もっとも厄介な案件が『一般職閲覧厳禁』というタグだ。これに関しては文字通り、私達のパソコンでは詳細データは見ることができず、鎌倉さんや特殊技能を持った職員が担当している、別枠窓口のパソコンでしか見ることができない。
「あ、ほんとだ」
「じゃろ?」
先週まで消えていたお寿司屋さんの募集要項が戻っている。タグは以前と同じ『一般』だ。
「ってことは、紹介した神様は定着できず、離れてしまったというわけですか」
「らしいのう。残念なことじゃ。がんばっておったんじゃがのう」
神様はディスプレイから降りて、キーボードの近くへとやってきた。そしてマウスを動かし始める。
「ああ、ちょっと、神様! これからレポートの入力なんですよ」
「そっちは消さんから安心しておれ。わしはパソコンの神様じゃぞ? それにじゃ。知りたいと言ったのは、おぬしじゃろ?」
「まあ、そうですけど」
まあ、作成中のデータが消えてしまっても、神様ならなんとかしてくれるだろう。
「これじゃな。さすがは課長、もうデータ更新しておるわい。仕事が早いの。最近は皮下脂肪が増えて、足は遅くなったが」
「それ、仕事には関係ないことじゃ……」
そこには『寿司屋における神様の定着失敗について』というタイトルで、課長がアップデートした文章が載っていた。
「あ、やっぱり電気の神様との相性が悪かったみたいですね」
読んでいくと、新しく紹介したガスレンジの神様と、電気の神様との相性が悪かったせいで起きた問題のようだった。そしてその相性の悪さが、他の神様達にも影響して大変だったらしい。
「今の生活では、電気は欠かせんじゃろ? そのせいで、電気の神の立場が強くなりすぎているのじゃ。ほれ」
神様がマウスで矢印を動かす。矢印がさしたのは備考欄。そこには、店内の神様責任者の意向で電気の神解任と書かれていた。
「あ、ガスレンジの神様だけじゃなく、電気の神様も解任されちゃったんですね」
「毎日のようにおきる停電に断線、漏電のよる出火。寿司屋の存亡の危機じゃな」
電気の神様以外の神様達が、店内でストライキを起こしたようなありさまだ。いや、実際にストライキを起こしていたのかもしれない。
「なんだか、人間の会社と変わりませんね、神様の世界も」
「昔から、神同士のケンカは大なり小なりあったしの」
「で、なんで課長と鎌倉さん?」
「電気の神が、解任されることに対して抵抗したんじゃ。それで、課長と鎌倉ちゃんの出番となったわけじゃ」
「あー、課長、口だけはうまいですからね」
今回の視察での鎌倉さんの同行は、万が一のことが起きた場合の保険で、本当に課長の補佐だったわけだ。
「羽倉さん。そんなに課長と私の視察に興味があるなら、今度、一緒に行ってみる?」
「ひっ……!」
いきなり声をかけられてイスからとびあがった。あわてて振り返ると、分厚い資料をかかえた鎌倉さんが立っている。
「か、鎌倉さん! 驚かさないでください!」
「何度か声をかけたんだけど」
「え、そうなんですか? すみません、気づかなくて。なにかありましたか?」
なにか仕事のことで連絡事項があったのかと、頭をさげた。
「ううん。仕事のことじゃなくて。行ってみる?って話」
「どこへですか?」
「もちろん、ハッピーじゃない視察。興味ありそうだから」
いきなりの申し出に、あわてて両手を突き出してふる。
「いえいえいえ! そういうことじゃなくて! 同じ職場の人間として、知っておきたいと思っただけですよ。そもそも技能持ちじゃない私が行っても、まったく役に立ちませんから!」
「そうなの? でも課長だって技能持ちじゃないわよ?」
「課長は、驚異的に口がうまいじゃないですか。もうあれは、言いくるめの神ですから!」
私の言葉に鎌倉さんがほほ笑んだ。
「たしかに課長の口のうまさは神様級ね」
「でしょ? あ、それと。一宮さんには今のお誘いの話、しないでくださいね? そんなことを言ったら、一緒に行くってはりきっちゃいますから」
幸いなことに、一宮さんは離席していた。パソコンの神様がこっちを見ていたので、指を口にあてて『一宮さんには秘密ですからね』と言い渡す。その点は神様も分かっているようで『もちろんじゃ』と返事をした。
「だったら気が向いたら私に声かけて。いつでも歓迎するから」
「え、あ、はい」
そんな機会は絶対にないと思う。
「ああ、それと。先週の視察の報告書、今日中にお願いしますって課長が」
「了解しました!」
「じゃあ、今日も一日、がんばりましょう」
「はい!」
鎌倉さんは私の返事にうなづくと、自分が担当している窓口へと向かった。
「せっかく誘ってくれたのじゃ、行ってみたらよいではないか」
ディスプレイ上の、いつもの場所に戻った神様が言った。
「イヤですよ。経験がある課長ならともかく、私なんかが一緒にいっても、まったく役に立たないですよ。それどころか、きっと鎌倉さんの足を引っ張りまくりです」
「じゃが良い経験になると思うのじゃがの」
「そういう問題じゃないと思いますけど」
それに、鎌倉さんが本気で誘ってくれたとは思えない。きっと、この手のことには安易に首をつっこむなと、遠回しに警告してくれたのだ。あそこで私が「はい、是非ご一緒させてください!」と返事をしたら、きっとやんわりと叱られたに違いない。
「一般職は一般職らしく、窓口業務とほぼハッピーな視察でがんばりますよ」
「向上心は大事じゃぞ?」
「向上心があっても、特殊技能を使えるようにはならないでしょ? そこいらの国家資格じゃないんですから」
それこそ、一宮さんが言っていたように、どこか山奥のお寺で修行でもしないことには無理そうだ。いや、どれだけ修行しても絶対に無理そう。
「そうかのう」
「人間は神様みたいに、オールマイティにはできてないんですよ。本当にすごいですよ、石灯籠からパソコンの神様になるなんて。私にはとてもマネできそうにないです」
「まあ、わしは神様じゃからな」
神様はニコニコと笑いながら、お茶を飲んだ。
開庁前の空き時間を利用して、週末の報告書の準備をする。そして文章を入力しながら、ディスプレイの上でのんびりとお茶を飲んでいる神様に、質問をした。
「寿司屋の件とは?」
「課長と鎌倉さんが出向いた、あの超高級な、お寿司屋さんのことですよ」
「ああ、あの寿司屋か。高級なだけあって、ネタはなかなか良いものを使っているらしいの。そこの寿司を食べられるとは、うらやましい限りじゃ。折詰のおみやがほしいのう」
「すみませんねえ、私はその手の技能資格を持っていないもので」
課長と鎌倉さんが出向いたお寿司屋さん。地元でも、かなりお高いことで有名なお店だった。
「一見さんはお断りらしいですけど、よく来店できましたよね」
「そこは店の神様責任者が、手配したんじゃろうな」
「ああ、なるほど」
イタリア料理のお店で、ビア樽の神様が私達の前に出てきたように、お寿司屋さんの神様責任者が、課長達を招待してくれたらしい。
「……じゃなくて。どんな問題が起きたんですかねって話です」
「なんじゃ、お前さんも気になっておるのか」
「そりゃまあ、八百万ハロワの職員として少しは? 技能持ちじゃない私にとって、一生、縁のないお仕事ですけど、話ぐらいは聞いておきたいかなって」
ずっと無縁でいたいけれど、話を聞く程度には気になる案件だ。
「それならわしではなく、課長さんか鎌倉ちゃんに聞けば良いではないか」
「面と向かって聞けないから、こうやって神様に質問してるんじゃないですか」
「わしはそんなに、おしゃべりではないぞ?」
神様も、自分が知っているすべてのことを、話してくれるわけではない。それなりに話せないこともあるらしい。いわば神様の『守秘義務』というやつだ。
「えー? もしかしてこの事案、一般職は閲覧禁止に指定されちゃったんですか?」
パソコンで募集中のデータベースを呼び出す。
「いや、そんなことはないはずじゃ。前と同じ、一般の募集枠に戻ったはずじゃからの」
「そうなんですか?」
募集項目はその案件ごとに『一般』『特殊』『要注意』『一般職紹介禁止』などのタグ付けがされていて、もっとも厄介な案件が『一般職閲覧厳禁』というタグだ。これに関しては文字通り、私達のパソコンでは詳細データは見ることができず、鎌倉さんや特殊技能を持った職員が担当している、別枠窓口のパソコンでしか見ることができない。
「あ、ほんとだ」
「じゃろ?」
先週まで消えていたお寿司屋さんの募集要項が戻っている。タグは以前と同じ『一般』だ。
「ってことは、紹介した神様は定着できず、離れてしまったというわけですか」
「らしいのう。残念なことじゃ。がんばっておったんじゃがのう」
神様はディスプレイから降りて、キーボードの近くへとやってきた。そしてマウスを動かし始める。
「ああ、ちょっと、神様! これからレポートの入力なんですよ」
「そっちは消さんから安心しておれ。わしはパソコンの神様じゃぞ? それにじゃ。知りたいと言ったのは、おぬしじゃろ?」
「まあ、そうですけど」
まあ、作成中のデータが消えてしまっても、神様ならなんとかしてくれるだろう。
「これじゃな。さすがは課長、もうデータ更新しておるわい。仕事が早いの。最近は皮下脂肪が増えて、足は遅くなったが」
「それ、仕事には関係ないことじゃ……」
そこには『寿司屋における神様の定着失敗について』というタイトルで、課長がアップデートした文章が載っていた。
「あ、やっぱり電気の神様との相性が悪かったみたいですね」
読んでいくと、新しく紹介したガスレンジの神様と、電気の神様との相性が悪かったせいで起きた問題のようだった。そしてその相性の悪さが、他の神様達にも影響して大変だったらしい。
「今の生活では、電気は欠かせんじゃろ? そのせいで、電気の神の立場が強くなりすぎているのじゃ。ほれ」
神様がマウスで矢印を動かす。矢印がさしたのは備考欄。そこには、店内の神様責任者の意向で電気の神解任と書かれていた。
「あ、ガスレンジの神様だけじゃなく、電気の神様も解任されちゃったんですね」
「毎日のようにおきる停電に断線、漏電のよる出火。寿司屋の存亡の危機じゃな」
電気の神様以外の神様達が、店内でストライキを起こしたようなありさまだ。いや、実際にストライキを起こしていたのかもしれない。
「なんだか、人間の会社と変わりませんね、神様の世界も」
「昔から、神同士のケンカは大なり小なりあったしの」
「で、なんで課長と鎌倉さん?」
「電気の神が、解任されることに対して抵抗したんじゃ。それで、課長と鎌倉ちゃんの出番となったわけじゃ」
「あー、課長、口だけはうまいですからね」
今回の視察での鎌倉さんの同行は、万が一のことが起きた場合の保険で、本当に課長の補佐だったわけだ。
「羽倉さん。そんなに課長と私の視察に興味があるなら、今度、一緒に行ってみる?」
「ひっ……!」
いきなり声をかけられてイスからとびあがった。あわてて振り返ると、分厚い資料をかかえた鎌倉さんが立っている。
「か、鎌倉さん! 驚かさないでください!」
「何度か声をかけたんだけど」
「え、そうなんですか? すみません、気づかなくて。なにかありましたか?」
なにか仕事のことで連絡事項があったのかと、頭をさげた。
「ううん。仕事のことじゃなくて。行ってみる?って話」
「どこへですか?」
「もちろん、ハッピーじゃない視察。興味ありそうだから」
いきなりの申し出に、あわてて両手を突き出してふる。
「いえいえいえ! そういうことじゃなくて! 同じ職場の人間として、知っておきたいと思っただけですよ。そもそも技能持ちじゃない私が行っても、まったく役に立ちませんから!」
「そうなの? でも課長だって技能持ちじゃないわよ?」
「課長は、驚異的に口がうまいじゃないですか。もうあれは、言いくるめの神ですから!」
私の言葉に鎌倉さんがほほ笑んだ。
「たしかに課長の口のうまさは神様級ね」
「でしょ? あ、それと。一宮さんには今のお誘いの話、しないでくださいね? そんなことを言ったら、一緒に行くってはりきっちゃいますから」
幸いなことに、一宮さんは離席していた。パソコンの神様がこっちを見ていたので、指を口にあてて『一宮さんには秘密ですからね』と言い渡す。その点は神様も分かっているようで『もちろんじゃ』と返事をした。
「だったら気が向いたら私に声かけて。いつでも歓迎するから」
「え、あ、はい」
そんな機会は絶対にないと思う。
「ああ、それと。先週の視察の報告書、今日中にお願いしますって課長が」
「了解しました!」
「じゃあ、今日も一日、がんばりましょう」
「はい!」
鎌倉さんは私の返事にうなづくと、自分が担当している窓口へと向かった。
「せっかく誘ってくれたのじゃ、行ってみたらよいではないか」
ディスプレイ上の、いつもの場所に戻った神様が言った。
「イヤですよ。経験がある課長ならともかく、私なんかが一緒にいっても、まったく役に立たないですよ。それどころか、きっと鎌倉さんの足を引っ張りまくりです」
「じゃが良い経験になると思うのじゃがの」
「そういう問題じゃないと思いますけど」
それに、鎌倉さんが本気で誘ってくれたとは思えない。きっと、この手のことには安易に首をつっこむなと、遠回しに警告してくれたのだ。あそこで私が「はい、是非ご一緒させてください!」と返事をしたら、きっとやんわりと叱られたに違いない。
「一般職は一般職らしく、窓口業務とほぼハッピーな視察でがんばりますよ」
「向上心は大事じゃぞ?」
「向上心があっても、特殊技能を使えるようにはならないでしょ? そこいらの国家資格じゃないんですから」
それこそ、一宮さんが言っていたように、どこか山奥のお寺で修行でもしないことには無理そうだ。いや、どれだけ修行しても絶対に無理そう。
「そうかのう」
「人間は神様みたいに、オールマイティにはできてないんですよ。本当にすごいですよ、石灯籠からパソコンの神様になるなんて。私にはとてもマネできそうにないです」
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