貴方と二人で臨む海

鏡野ゆう

文字の大きさ
上 下
44 / 45
東京・江田島編 GW

第十二話 江田島最終日の夜、または明け方?

しおりを挟む
「なにやってるんだ?」

 お風呂から出てきた篠塚さんがタオルで頭を拭きながら私の手元を覗き込んできた。

「今日、江田島クラブで食べたカレーのね、レシピに迫っている人はいないかなってスマホで検索してたの」

 篠塚さんの質問にそう答えると、検索で見つけて読んでいたカレーの感想を書いている人のブログの画面を見せる。

「それで?」
「味の感想を書いている人は何人もいるんだけどレシピまで探求している人まだいないみたい」

 護衛艦やそれぞれの地方隊のカレーに関しては海上自衛隊の公式サイトで公開されているものもあるけど全てじゃない。海自最高機密である海自カレーの全レシピ制覇への道のりはなかなか険しそうだ。やっぱり偉くなって聞き出すのが一番手堅いかもしれない。

「やれやれ。最後の夜だっていうのに俺のカノジョはカレーのレシピに御執心ときたもんだ」
「だって気になるんだもん」

 呉で食べたカレーもこっちで食べたカレーもとっても美味しかった。だから是非とも家でも作って楽しみたいって思ったんだけどな。

「そんなに気になるなら毎週末通ってみるか? 通っているうちに作っている人間と馴染みになって中身が何なのか教えてもらえる日が来るかもしれないぞ?」

 篠塚さんの言葉に一瞬だけその気になった。だけどそれも新幹線の料金を思い出すまで。週一に往復なんてしていたら大変なことになっちゃうよ、せめて二ヶ月に一度とか月単位にしなきゃ。

「偉くなる前に破産しちゃうかも」

 しかもその原因が海自カレーのレシピ探索だなんてちょっと笑えない。

「そんなことないだろ、霞が関の官僚様はそれなりの給料をもらってるんだろ?」
「お忘れかもしれませんが私はまだ入省二年目の下っ端なんだからね?」

 でも……もうちょっと頑張って節約すれば月一ぐらいだったら可能かな?と家計簿を頭の中に思い描いた。ああダメダメ!! ちゃんと将来のために貯金もしなきゃいけないしカレーだけのためにそんなに散在するのは間違ってる。やっぱりそれより先に頑張って偉くなろう。そして職権を使ってレシピゲット! 時間はかかるだろうけどそれが一番確実っぽい。

「とにかくカレーの話はこれでおしまい。またしばらく会えないんだ、ずっとこのままカレーの話を続けるつもりか?」

 そう言いながら篠塚さんは持っていたスマホを取り上げてテーブルの上に置くと、私のことをひょいっと抱き上げてベッドへと向かった。そして私をベッドに横たえるとそのまま直ぐに覆いかぶさってくる。その目つきが何だか肉食獣の目みたいでちょっと怖いよ?

「あの篠塚さん?」
「なんだ?」
「二日間出掛けっぱなしだったでしょ? 私的には最後の夜ぐらいゆっくりお話をしたらどうかなって思うんだけど。もちろんカレー以外の話題で」
「却下。夏季休暇まではまた会えなくなるんだ。汐莉の体に俺のことをしっかり刻みつけておかないと」

 もう今の言葉からして物騒で嫌な予感しかしない。

 明日の新幹線の時間、何時だったかな? あの新幹線に乗るにはここを何時に出発したら良いの? 船の時間もあるよね、呉行きだっけか? あれ? 帰りは呉じゃなくて広島駅に近いところまで直接船で行くんだったっけ?

「心配するな。広島駅に行くルートも時間もチェック済み。汐莉が動けないと騒ぐようならちゃんとおぶってでも連れていってやるから」

 なんだか恐ろしいこと言ってると思うのは気のせい?

「それに俺だってちゃんと汐莉のことを抱いて会えない間の充電をしておきたい」
「あのさ、気になってたんだけど会わない日が続くとやっぱりムラムラしてくるものなの?」

 途端に篠塚さんが目を真ん丸にしてこっちをジッと見詰めてきた。

「よりによってなんてことを言い出すんだ」
「だってさ、これだけ性欲過多な篠塚さんだもん、何ヶ月も何もしなかったらとんでもないことになっちゃうんじゃないかなってちょっと気になった」
「まさか俺がこっちで女を見つけて浮気をするんじゃないかとか風俗に通うんじゃないかとか考えているんじゃないだろうな? って言うか俺はいたって標準的で過多じゃない」

 そうかなあ……。私は篠塚さんとしか付き合ったことがないから比較するデータがないけれど、一般的な人より絶対にエッチの回数が多いような気がするんだけどな。

「標準だとしても。男の人って長い間エッチしないとムラムラするもんだって何かの本に書いてあったんだけど」
「一体どんな本を読んだんだよ、まったく。とにかく少なくとも今のところそんなことはない。課程のことで頭がいっぱいで性欲になんて考えが及ばないから」
「それって皆そうなの?」
「さあ、休みのたびに街に繰り出している連中もいるからそうじゃない人間もいるとは思う。高月もその一人なんだけどな」
「ふーむ」
「信じてないのか?」

 ムッとした顔になる。

「そんなことないって言ってるじゃない」
「とにかく、この話を受けたからには課程を優秀な成績で修了して特警に行きたいだろ? だから少なくとも俺はそっちのことで頭がいっぱいだ。他の連中にしたって応用課程にうつれば更に厳しい訓練が待っていいるんだ、それこそ他のことにエネルギーを使っている余裕なんてなくなると思う。……まったく、なんでこんな話になったんだ」

 私が更に質問をしようとしたところで篠塚さんは片手で口を塞いで軽く睨んできた。

「充電が先。質問は後」

 着ていたTシャツが脱がされると剥き出しになった肌の上を篠塚さんの唇が這う。時々その場にとどまっては軽く吸ったり噛んだりしながら下へと移動していっておへそのあたりでその動きが一度止まった。

「なあ汐莉」
「なあに?」
「ここにも今みたいにしていいか?」

 指が触れたのは篠塚さんの愛撫で少しずつ熱を帯びてきている場所。今まで何度も触れられててはいたけれどそういうことは一度もされたことがなかった。そりゃ漫画や小説ではそんな描写があるのを読んだことはあったけど、口をつけられるのはちょっと抵抗を感じちゃう場所かも。でも……。

「篠塚さんはしたいの?」
「ああ」

 そう言われてしばらく考え込む。

 その間も篠塚さんの指は下着の上からゆっくりとそこを撫でていた。ちょっと力をこめてたらその太い指はそのまま難なく体の中へと滑り込んでいくだろうってぐらい既にそこは熱くなっている。そんな場所を口で……?

「は、恥ずかしいかも……でも……篠塚さんがしたいっていうならしても、いいよ……?」
「イヤじゃないんだな?」
「イヤっていうか恥ずかしいだけで、イヤかどうかは一度試してみないと分からないかも」
「なるほど。じゃあイヤなら言ってくれ」

 篠塚さんはそう言って下着を取り去ると私の太腿を掴んで左右に開かれた。そしてそこへ顔を近づけていく。見ているのが恥ずかしくて目を閉じていると篠塚さんの息が触れるのを感じた。しばらくして指で押し開かれた場所に温かいものが押しあてられる。

「……っ!!」

 体が震えて思わず腰が引けた。だけど篠塚さんはしっかりと腰を両手で掴んでいて逃げようとした私を引き戻す。そして更に深くその場所に口づけをする。温かいと感じたものは篠塚さんの舌でそれが少しだけ体の中へと入り込んできた。

「し、篠塚さんっ、それ、やあっ」

 浅い場所を指でも篠塚さん自身でもないもので刺激される初めての感触に体が震える。

「ねえ、篠塚さんて、ばっ、ああ……っ」

 イヤなら言ってくれって言ったのに全然やめてくれる気配がない。それどころか舌だけではなく指を胎内へ潜り込ませると深い場所への愛撫も始めた。

「あぁっ、んっ、あ……っ、ひあっ?!」

 いきなり肌を吸った時と同じようにそこを吸われて腰が跳ね上がる。思わず篠塚さんの頭を掴んで押しのけようとしたけど次々と押し寄せる快感に自分でもどうしようもなくて、短く刈り込まれた髪の毛を掴んだまま頭を激しく振り続けるしかなかった。

「汐莉?」

 しばらくしていつの間にか服を脱ぎ捨てた篠塚さんが私のことを見下ろしていた。篠塚さんの指と口で散々いたぶられて自分でもそこがいつも以上に濡れていてそれがシーツを濡らしているのが分かる。そして今の愛撫だけでは満足できなくて体の最奥に篠塚さんのものが欲しくて脈打っていることも。

「……イヤなら言えって言ったのに……!!」
「やめるとは言ってないだろ?」
「ひどーい!」
「どうとでも」

 篠塚さんはニタニタしながら避妊具をつけると私の足の間に体を落ち着けるとゆっくりと挿ってきた。やっと体の一番奥に篠塚さんの熱と鼓動を感じることができてハァッと息を吐きながらその逞しい身体を両手で抱きしめた。

「こっちの方がいいってことなんだな?」

 そんな私の顔を見下ろしていた篠塚さんがニッと笑った。

「私はやっぱり普通のエッチが一番合ってるみたい」
「良くなかったってことか」
「ううん、そんなことはないけどこっちの方が落ち着く。だって篠塚さんの顔がちゃんと見えるもん。さっきのは頭のてっぺんだけしか見えないし」

 やっぱりこうやってお互いの顔を見ながらの方が私は落ち着くかなって言ったらなるほどと頷いた。つまりは今回のあれはこれっきりにしてくれるってことらしい。でも篠塚さんはそれで良いのかな?とちょっと気になったので聞いてみた。

「篠塚さんはさっきみたいなの、またしたい?」
「汐莉が乗り気でないなら別にしたいとは思わない……している最中に汐莉の体がどんなに感じてたとしても」

 さっきのことを思い出しただけで体がムズムズして篠塚さんを受け入れている場所がヒクついたのが分かった。それが篠塚さんにも伝わったみたいで口元に変な笑みを浮かべる。

「体は正直だよな?」
「ううっ、だから気持ち良くなかったわけじゃないんだけど……」
「分かってる。気持ち良くても汐莉は今のこの体勢の方が落ち着くんだよな?」
「うん、そうなの……」

 分かったと篠塚さんが頷く。

「了解した。じゃあ以後はこちらで」
「なんでいきなり自衛官みたいな口調になるの?」

 急に事務的な口調になったので首を傾げた。

「それは俺が自衛官だから」
「そうなの?」
「そうなんだ。じゃあ汐莉のお望みどおりにこっちの体勢で再開だな」

 そして私の海自上自衛官さんはゆっくりと私のことを愛してくれた。かなりゆっくり。それもビックリするほどの超スローペースで。

 ……お蔭で篠塚さんが満足げな溜め息と共に果てた時には夜明け近くなったんだけど、それってどういうことなの?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

ハメられ婚〜最低な元彼とでき婚しますか?〜

鳴宮鶉子
恋愛
久しぶりに会った元彼のアイツと一夜の過ちで赤ちゃんができてしまった。どうしよう……。

イケメンエリート軍団の籠の中

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり 女子社員募集要項がネットを賑わした 1名の採用に300人以上が殺到する 松村舞衣(24歳) 友達につき合って応募しただけなのに 何故かその超難関を突破する 凪さん、映司さん、謙人さん、 トオルさん、ジャスティン イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々 でも、なんか、なんだか、息苦しい~~ イケメンエリート軍団の鳥かごの中に 私、飼われてしまったみたい… 「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる 他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

隠れ御曹司の愛に絡めとられて

海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた―― 彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。 古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。 仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!? チャラい男はお断り! けれども彼の作る料理はどれも絶品で…… 超大手商社 秘書課勤務 野村 亜矢(のむら あや) 29歳 特技:迷子   × 飲食店勤務(ホスト?) 名も知らぬ男 24歳 特技:家事? 「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて もう逃げられない――

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

処理中です...