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小話
朝のちょっとした一コマ
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朝から雲一つない青空が広がる中、航空観閲式の会場である百里基地の空気は朝からぴんと張り詰めている。
初めて顔を合わせた別々の基地の整備員同士が言い合いをしたり、空自のAWACSと海自のP-3Cのどちらを先に飛ばすのかで今更もめたりとちょっとした小競り合いはあったものの、前日に行われた予行はおおむねそれぞれが満足できる状態で終わった。
もちろん私達の六機のイルカ達も無事に予行を終えて準備万端だ。あとは日頃の訓練の成果を見せるだけ。
「よーし、今日も快晴イルカ日和!! 雨男の隊長に自衛隊内の晴れ男と晴れ女が勝ちました!! バンザイ!!」
大きく深呼吸して気合を入れるとブルーの機体が駐機される場所へと向かった。
会場では既に展示する機体を観閲台の前に移動させている隊員達がいる。まだ太陽が顔を出すか出さないかなは時間なのに既に基地内は観閲式の準備が始まっていた。
私が向かった観閲式で展示飛行や訓練展示で飛行する機体が駐機している場所にはまだ誰もいない。どの整備班も昨日は遅くまで点検をしていたから当然といえば当然かな。
「三番機ちゃん、おはよう。今日も頑張ってかっこよく飛んで偉い人達を感心させてちょうだいね」
三番機の前に立つと機体に声をかける。もちろん相手は機械なんだから返事があるわけでも私の声掛けでエンジンの調子がよくなるわけじゃない。だけど今日はなんとなく声を掛けたい気分だった。だって三年に一度の航空観閲式の日なんだから。
「さて、じゃあ先ずは朝一の磨き作業から始めようか?」
飛行前の点検は坂東三佐達が来てからだ。その前に私がするのは三番機を綺麗にすること。
だいたい磨き作業は一人でできるような作業量ではないし今朝もやれと言われているわけではなかった。だけどやっぱり綺麗にして飛ばしたいというのが親心というかキーパー心というか。とにかく私としては少しでも綺麗な状態で三番機には空にあがってほしいのだ。
「おはよう。相変わらず早いな」
しばらく無心で三番機を磨いていたら白勢さんの声がした。顔をあげるとこっちに歩いてくるところだった。
「おはようございます。そういうタックさんだって早いじゃないですか」
「それはそっちも同じだろ?」
「私は普段とたいして変わらないですよ」
もともと整備員の朝は早い。何故ならパイロットが機体のところにやってくるまでに一通りの点検を終えておかなくてはならないし、当然のことながらその前に整備班全体でのブリーフィングもあるからだ。
だけど白勢さんが顔を出す時間にはどう考えても早すぎる。もしかして緊張して眠れなかったとか?
「食堂であんた達松島組は整備員だけじゃなくパイロットまでいつもこんなに朝が早いのかって呆れられたよ」
「私も言われちゃいました。まだご飯炊けてないのになんで顔をだすんだって。でもそのお蔭でタイミング良く炊き立てのご飯が食べられましたけどね」
「ああ、あれはなかなか美味かった」
つまり私達二人とも普段よりかなり早く活動を開始したということだ。
「でも本当にこんなところで油売ってて良いんですか? 今日は朝一で全体のブリーフィングがあるんじゃ?」
「ブリーフィングまでにはまだ時間がある。その前にるいが何をしているのか気になってのぞきにきたんだ」
「だからるいって呼ぶのは~~」
「はいはい、以後は気をつける」
私の抗議に気のない返事をしながら、白勢さんはT-4の鼻先からのびているピトー菅が歪んでないか確かめている。
「それで? ドルフィンキーパーの浜路三曹は何をしていたのかな?」
「私のしてることなんて決まってるじゃないですか。いつもより五割増しの丁寧さで三番機を磨いてるんですよ」
「あまりの丁寧さにそのうち三番機の塗装がはがれるんじゃないかって、坂東三佐が心配しているのは知ってるかい?」
機体の足元を覗き込みながら私に声をかけてきた。
「またまた嘘ばっかり。三佐は私以上に丁寧に拭きまくってますよ。だから塗装をはがすとしたらそれは私じゃなくて坂東三佐です」
「ってことは二人が異動するまでに三番機の塗装はボロボロになるってわけか」
困ったことだねと白勢さんが笑う。
「そんなことになんてなりませんてば。大事な大事な三番機ちゃんですからね。塗装がはがれるような手荒な真似はしませんから安心してください」
最後に残っていたキャノピー部分を綺麗に拭く。一番最後に拭いたのはコックピットのフロント部分。白勢さんが飛んでいる時の視界にあたる場所だ。ここは念入りに綺麗にしておかなくちゃ。飛ぶ時の視界はクリアでなくちゃね。
作業が終わると脚立から降りて隣に立っていた白勢さんを見上げる。
「今日も三番機はピッカピカですよ。きっと六機のうちのどれよりも綺麗に磨けていると思いますから!」
「それはありがたい。じゃあお礼の飴玉を渡しておこうか」
そう言って白勢さんが差し出してきたのは水色のイルカの形をしたキャンディー。初めて私がウォークダウンデビューした時にくれたあの飴で、今でも白勢さんが事あるごとに私にくれるものだ。
「わざわざ持ってきてたんですか? ありがとうございます!」
「そりゃあ御褒美の飴玉が無いと言って俺のドルフィンキーパーが拗ねてしまったら一大事だから」
初めてこの飴を渡された時は問答無用で抱きしめられてキスをされた。だけど今はそんなことはない。
油断していると「るい」って呼ばれて慌てることもあるけど、実際に白勢さんが私を困らす為にするのはそれと耳元でいきなり囁くことぐらい。だからそういう意味では私達は揃ってちゃんと隊長のいいつけを守って清く正しく任務に励んでいる。
今はこんな風に軽口を叩きあってるしプライベートな時間では付き合っていても、仕事の時間になったら自分の職務に一切の妥協はしない。たまに機体のことや飛行のことで意見が衝突して口論になることもあるのだから、そういう点では私も白勢さんも根っからの自衛官なんだなって思う。
「今日はウォークダウンがないから気楽だろ?」
「確かにお客さんの前に出る緊張感はないですけどね。だけど大勢の官僚や海外の来賓の前で飛ばすわけですからそれなりに気は遣いますよ。白勢さんは? いつもより緊張するとかそういうのはないんですか?」
白勢さんは私の質問に少しだけ首を傾げて考え込んだ。
「飛んでいる時は見ている人のことなんて頭に無いからなあ」
「あー……まあ確かにそうかもしれないですよね」
一区分すべての演技が終わるまでは全員がそのことだけに集中している。たとえ地上で世界中の王様が団体で見ていたとしても、白勢さん達の頭の中からそんな事実は消えてしまっているかもしれない。そう考えてみたら凄い集中力だと思う。
「それに俺は観閲式が終わった後のことの方が楽しみだし今はそっちの方が気になっているかな」
「終わった後? 何かありましたっけ?」
ここで観閲式の打ち上げでもするのかな?
「松島に帰投する時、後ろにるいのことを乗せても良いって隊長の許可がおりた」
「本当ですか?!」
「ああ。どうする? 乗っていく?」
「もちろんですよ!!」
いつかまた白勢さんの後ろに乗って飛びたいなと思っていたけどこんなに早く実現するなんて。
「もちろん呑気に後ろで居眠りするなんてことは許されないぞ? キーパーとして飛行中の三番機の状態をきちんとチェックしてもらわなくちゃ困る」
「もちろんそれは分かってます。好調な時のエンジンの音はしっかり頭に入ってますから異変があったら絶対に気がつきますよ!」
「頼りにしてるからな」
「任せてください!!」
普通の男女だったら朝の会話はピロ―トークとか朝チュンとかそんな感じなんだろうけど、私と白勢さんの朝の時間はだいたいこんな感じで始まる。そしてデートの話の代わりに松島への帰投で三番機に乗って飛ぶ話。
友達に話したらきっと「信じられない! 色気もなにもあったもんじゃない!」って呆れられるかもしれないかな。でも私はこんな時間がたまらなく好きだ。もちろん白勢さんの後ろに乗せてもらって飛ぶことも。
「じゃあそのお楽しみのためには先ず目先の観閲式を片付けないとな」
「そうですね。今日は一日よい飛行日和みたいですし、皆張り切ってますよ」
気がつけばあちらこちらの機体で整備員達が作業を始めていた。一番機でも青井さん達が点検作業の準備をしている。
「そろそろ全体ミーティングの時間だな。じゃあここは任せる」
「はい。いってらっしゃい!」
白勢さんはニッコリと微笑んでその場を離れた。
さあ、今日は三年に一度の航空観閲式!!
初めて顔を合わせた別々の基地の整備員同士が言い合いをしたり、空自のAWACSと海自のP-3Cのどちらを先に飛ばすのかで今更もめたりとちょっとした小競り合いはあったものの、前日に行われた予行はおおむねそれぞれが満足できる状態で終わった。
もちろん私達の六機のイルカ達も無事に予行を終えて準備万端だ。あとは日頃の訓練の成果を見せるだけ。
「よーし、今日も快晴イルカ日和!! 雨男の隊長に自衛隊内の晴れ男と晴れ女が勝ちました!! バンザイ!!」
大きく深呼吸して気合を入れるとブルーの機体が駐機される場所へと向かった。
会場では既に展示する機体を観閲台の前に移動させている隊員達がいる。まだ太陽が顔を出すか出さないかなは時間なのに既に基地内は観閲式の準備が始まっていた。
私が向かった観閲式で展示飛行や訓練展示で飛行する機体が駐機している場所にはまだ誰もいない。どの整備班も昨日は遅くまで点検をしていたから当然といえば当然かな。
「三番機ちゃん、おはよう。今日も頑張ってかっこよく飛んで偉い人達を感心させてちょうだいね」
三番機の前に立つと機体に声をかける。もちろん相手は機械なんだから返事があるわけでも私の声掛けでエンジンの調子がよくなるわけじゃない。だけど今日はなんとなく声を掛けたい気分だった。だって三年に一度の航空観閲式の日なんだから。
「さて、じゃあ先ずは朝一の磨き作業から始めようか?」
飛行前の点検は坂東三佐達が来てからだ。その前に私がするのは三番機を綺麗にすること。
だいたい磨き作業は一人でできるような作業量ではないし今朝もやれと言われているわけではなかった。だけどやっぱり綺麗にして飛ばしたいというのが親心というかキーパー心というか。とにかく私としては少しでも綺麗な状態で三番機には空にあがってほしいのだ。
「おはよう。相変わらず早いな」
しばらく無心で三番機を磨いていたら白勢さんの声がした。顔をあげるとこっちに歩いてくるところだった。
「おはようございます。そういうタックさんだって早いじゃないですか」
「それはそっちも同じだろ?」
「私は普段とたいして変わらないですよ」
もともと整備員の朝は早い。何故ならパイロットが機体のところにやってくるまでに一通りの点検を終えておかなくてはならないし、当然のことながらその前に整備班全体でのブリーフィングもあるからだ。
だけど白勢さんが顔を出す時間にはどう考えても早すぎる。もしかして緊張して眠れなかったとか?
「食堂であんた達松島組は整備員だけじゃなくパイロットまでいつもこんなに朝が早いのかって呆れられたよ」
「私も言われちゃいました。まだご飯炊けてないのになんで顔をだすんだって。でもそのお蔭でタイミング良く炊き立てのご飯が食べられましたけどね」
「ああ、あれはなかなか美味かった」
つまり私達二人とも普段よりかなり早く活動を開始したということだ。
「でも本当にこんなところで油売ってて良いんですか? 今日は朝一で全体のブリーフィングがあるんじゃ?」
「ブリーフィングまでにはまだ時間がある。その前にるいが何をしているのか気になってのぞきにきたんだ」
「だからるいって呼ぶのは~~」
「はいはい、以後は気をつける」
私の抗議に気のない返事をしながら、白勢さんはT-4の鼻先からのびているピトー菅が歪んでないか確かめている。
「それで? ドルフィンキーパーの浜路三曹は何をしていたのかな?」
「私のしてることなんて決まってるじゃないですか。いつもより五割増しの丁寧さで三番機を磨いてるんですよ」
「あまりの丁寧さにそのうち三番機の塗装がはがれるんじゃないかって、坂東三佐が心配しているのは知ってるかい?」
機体の足元を覗き込みながら私に声をかけてきた。
「またまた嘘ばっかり。三佐は私以上に丁寧に拭きまくってますよ。だから塗装をはがすとしたらそれは私じゃなくて坂東三佐です」
「ってことは二人が異動するまでに三番機の塗装はボロボロになるってわけか」
困ったことだねと白勢さんが笑う。
「そんなことになんてなりませんてば。大事な大事な三番機ちゃんですからね。塗装がはがれるような手荒な真似はしませんから安心してください」
最後に残っていたキャノピー部分を綺麗に拭く。一番最後に拭いたのはコックピットのフロント部分。白勢さんが飛んでいる時の視界にあたる場所だ。ここは念入りに綺麗にしておかなくちゃ。飛ぶ時の視界はクリアでなくちゃね。
作業が終わると脚立から降りて隣に立っていた白勢さんを見上げる。
「今日も三番機はピッカピカですよ。きっと六機のうちのどれよりも綺麗に磨けていると思いますから!」
「それはありがたい。じゃあお礼の飴玉を渡しておこうか」
そう言って白勢さんが差し出してきたのは水色のイルカの形をしたキャンディー。初めて私がウォークダウンデビューした時にくれたあの飴で、今でも白勢さんが事あるごとに私にくれるものだ。
「わざわざ持ってきてたんですか? ありがとうございます!」
「そりゃあ御褒美の飴玉が無いと言って俺のドルフィンキーパーが拗ねてしまったら一大事だから」
初めてこの飴を渡された時は問答無用で抱きしめられてキスをされた。だけど今はそんなことはない。
油断していると「るい」って呼ばれて慌てることもあるけど、実際に白勢さんが私を困らす為にするのはそれと耳元でいきなり囁くことぐらい。だからそういう意味では私達は揃ってちゃんと隊長のいいつけを守って清く正しく任務に励んでいる。
今はこんな風に軽口を叩きあってるしプライベートな時間では付き合っていても、仕事の時間になったら自分の職務に一切の妥協はしない。たまに機体のことや飛行のことで意見が衝突して口論になることもあるのだから、そういう点では私も白勢さんも根っからの自衛官なんだなって思う。
「今日はウォークダウンがないから気楽だろ?」
「確かにお客さんの前に出る緊張感はないですけどね。だけど大勢の官僚や海外の来賓の前で飛ばすわけですからそれなりに気は遣いますよ。白勢さんは? いつもより緊張するとかそういうのはないんですか?」
白勢さんは私の質問に少しだけ首を傾げて考え込んだ。
「飛んでいる時は見ている人のことなんて頭に無いからなあ」
「あー……まあ確かにそうかもしれないですよね」
一区分すべての演技が終わるまでは全員がそのことだけに集中している。たとえ地上で世界中の王様が団体で見ていたとしても、白勢さん達の頭の中からそんな事実は消えてしまっているかもしれない。そう考えてみたら凄い集中力だと思う。
「それに俺は観閲式が終わった後のことの方が楽しみだし今はそっちの方が気になっているかな」
「終わった後? 何かありましたっけ?」
ここで観閲式の打ち上げでもするのかな?
「松島に帰投する時、後ろにるいのことを乗せても良いって隊長の許可がおりた」
「本当ですか?!」
「ああ。どうする? 乗っていく?」
「もちろんですよ!!」
いつかまた白勢さんの後ろに乗って飛びたいなと思っていたけどこんなに早く実現するなんて。
「もちろん呑気に後ろで居眠りするなんてことは許されないぞ? キーパーとして飛行中の三番機の状態をきちんとチェックしてもらわなくちゃ困る」
「もちろんそれは分かってます。好調な時のエンジンの音はしっかり頭に入ってますから異変があったら絶対に気がつきますよ!」
「頼りにしてるからな」
「任せてください!!」
普通の男女だったら朝の会話はピロ―トークとか朝チュンとかそんな感じなんだろうけど、私と白勢さんの朝の時間はだいたいこんな感じで始まる。そしてデートの話の代わりに松島への帰投で三番機に乗って飛ぶ話。
友達に話したらきっと「信じられない! 色気もなにもあったもんじゃない!」って呆れられるかもしれないかな。でも私はこんな時間がたまらなく好きだ。もちろん白勢さんの後ろに乗せてもらって飛ぶことも。
「じゃあそのお楽しみのためには先ず目先の観閲式を片付けないとな」
「そうですね。今日は一日よい飛行日和みたいですし、皆張り切ってますよ」
気がつけばあちらこちらの機体で整備員達が作業を始めていた。一番機でも青井さん達が点検作業の準備をしている。
「そろそろ全体ミーティングの時間だな。じゃあここは任せる」
「はい。いってらっしゃい!」
白勢さんはニッコリと微笑んでその場を離れた。
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