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第十三話 いきなりキュウリ男きた
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「じゃあ、行ってくるわー」
「加茂先生によろしくでーす」
「おう」
部屋から出ていく河野さんを見送っていると、デスクの電話が鳴った。表示は内線で一階の受付だった。
「はい、羽織屋です」
「ああ、よかった、いてくれて!」
この声は間違いなく受付のお姉さん。いつもは落ち着いた口調なのに、今日はなぜか若干あわてた様子だ。
「河野さんなら、いま部屋を出たところなので、2分ぐらいで受付の前を通りますよ?」
「用があるのは河野さんじゃなくて、羽織屋さんのほうよ」
「私ですか?」
珍しいこともあるものだと首をかしげる。私が関わっている仕事で、受付にやってくるような人がいただろうか? 頭の中で色々な人の顔を思い浮かべてみたが、それに該当するような人物は思い当たらない。ここの仕事関係で知っている人達は、ほとんどが携帯かメールで連絡をしてくる人達だ。
「羽織屋さんに、渡すものがあるとおっしゃっている、お客さんがみえてるの」
「ちなみにどちら様でしょう?」
「東都銀行さんの関係みたいなんだけど……」
そこで受付のお姉さんが口ごもった。
「東都銀行さんですか」
小此木さん関係なら安達さんが窓口だ。受付のお姉さんの口ぶりからして、相手は安達さんではない様子。もしかして連絡してきたのを取り損ねていた? バッグの中からスマホを引っ張り出したが、着信履歴はない。
―― まさかの営業? 銀行の外回りの人がわざわざ名指しで訪問するほど、預金残高はないはずだけど…… ――
「とにかく変な人なのよ……キュウリをいっぱい持ってるの」
「キュウリ?」
ひそひそと囁くような声で言われ、ますます困惑した。
「あの、野菜直売の訪問なら、断っていただいても良いんですが」
「だから野菜の直売ではなくて、東都銀行さん関係だって相手が言ってるの。キュウリをたくさん持ってるけど!」
お姉さんは半分パニック状態になっている。とにかく行ってみるしかなさそうだ。
「わかりました。すぐに行きます」
「お願いします!」
ガシャンと乱暴に内線が切れる。部屋を出てエレベーターに乗ったところで、手に持っていたスマホがメールを受信した。送り主は安達さんだった。
「あ、やっぱり安達さんの代理の人なのかな」
『申し訳ありません。こちらの手違いで連絡が遅くなりました。頭取のご子息が、そちらに原稿をお持ちすることになったようです。お名前は小此木彰さんといいます。念のために写真を送っておきます』
メールには画像が添付されていた。画像を開くと、頭取さんの息子さんというには少しばかりお若いのでは?と思われる男性の顔があらわれた。
「もしかして、若い頃の写真だったり?」
安達さんがすぐ送ることができる写真が、これしかなかったのかもしれない。まあ多少の年齢が加算されても分るだろうと、呑気にかまえながらエレベーターをおりて受付に向かった。
「お待たせしました。羽織屋は私ですがー」
受付の前に背の高い男性が立っている。安達さんから送られてきた写真より、少しだけ年を重ねた感じだ。そして内線で伝えられた通り、キュウリがいっぱいつまったビニール袋を持っていた。
―― 本当にキュウリをたくさん持ってる…… ――
「わざわざ下りてきていただいてすみません。母から連絡先は聞いていたのですが、うっかり電話番号を失念してしまって」
「あー、そうなんですか……母?」
いろいろと確認しなくてはならないことがあるのに、キュウリのせいで相手が話していることが、まったく頭に入ってこない。
―― どうしてこの人、こんなにたくさんキュウリを持っているんだろう。やっぱり野菜の行商? ――
もしかしてこの近くで、新進気鋭の企業農家でもあらわれたのだろうか? 相手も私の視線に気がついたようで、自分が持っているキュウリを見ながら笑った。
「すみません。コンビニで眠気覚ましにコーヒーを買おうとしたら、いきなり目に入ってしまって。そしたらどうしても食べたくなっちゃったんですよ、キュウリ。最近のコンビニは良いですね。野菜まで売ってるんだから」
「ああ、コンビニで。なるほどー……」
なるほどとうなづいたが、なにがなるほどなのか、自分でもさっぱり理解できない。
「てっきりキュウリの行商人かと思いました。衝動買いをしてしまうほど、体がキュウリを欲していたんですねー」
どうして欲しているのかはさっぱり謎だが。
「かもしれませんね。ああ、おくればせながら。小此木の息子の小此木彰です」
そう言ってその人は敬礼をした。どうして敬礼?と、改めてその人をじっくりと観察する。すっかりキュウリに気をとられていたせいか、今の今まで、その人が制服を着ていることにまったく気づかなかった。
「あの、えー、警察のかた、ですか?」
「あー……この色になってから、間違われることが多くなったんですよ。残念ながら警察官ではなく自衛官です」
「自衛官さん」
「はい」
言われてみれば警察官の制服とは少し違う。拳銃もなければ手錠も持っているようには見えないし、よく見かける交番のお巡りさんという感じでもない。
「頭取さんの息子さんが自衛官さんとは」
「手堅い仕事をしている家族の中で、僕だけが異端児なんです」
そう言いながらニッコリとほほ笑んだ。その顔は奥様にそっくりだった。
「自衛官さんだって公務員ですし、じゅうぶんに手堅いと思いますが?」
「そう言ってもらえるとありがたいです。ああ、僕のことはどうでも良いんです。大事なのはこっちでした」
そう言いながら、大きな封筒を差し出す。
「父が直前まで書いていましてね。それなりの量になったので、先に渡しておいた方が良いだろうと母が」
「奥様がですか」
「電話をしてから行けと言われたんですが、その電話番号をド忘れしてしまって。なので直接うかがいました」
「あー、なるほど。ありがとうございます」
封筒の中身を確認する。間違いなく小此木さんの筆跡だ。
「会うのはかなり先になるだろうから、今のうちに書いておこうと、父はかなり張り切ったみたいです。兄が自分達のことも書かれていのか気にしていましたが、一度も見せてもらえなかったらしくて」
「そういうことは本が出版されるまで、編集者と執筆者しか知らない状態なんですよ」
「いわゆるネタバレ厳禁というやつですね?」
キュウリの人、ではなく、小此木さんの息子さんがニヤリと笑う。
「そういうことです」
「了解しました。では兄にもそのように伝えておきます」
「まさかお兄さんも、自衛官さんなんですか?」
「まさか。たしかに霞が関の住人ですが、自衛隊とはまったく関係ないところです」
「ほー……官僚さんでいらっしゃると」
小此木さんの息子さんは、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「ああ、うっかり喋ってしまった。兄にしかられるかな」
「大丈夫ですよ。私は誰にも話しませんから」
誰かに話したくても、情報過多すぎて正確に伝えられる自信がない。
「あ、ちなみに。そちらは来られる途中で、中味を読んだりはしていませんよね?」
「ご心配なく。それを渡された時、自衛隊の名誉にかけてのぞき見しないことを、両親に誓わされましたから」
真面目な顔でうなづく。
「それなら結構です。わざわざのお届け、ありがとうございます」
「いえいえ。父のワガママに付き合っていただいているんです。このぐらいはしませんと。ああ、お礼がわりと言ってはなんですが、これ。おすそ分けです」
キュウリがつまった袋を一つ渡された。
「?」
「勢いで買ってしまいましたが、さすがに食べきれないので。ここに来るまでにこっそり二本食べましたが、残りは手つかずなので安心してください。23区内にある農家さんらしいですよ。売り場に生産者の写真がありました」
「へえ……珍しいですね、こんな街中で野菜作りなんて」
「まったくです。では失礼します。またお会いした時にでも、キュウリの感想を聞かせてください」
そう言って、小此木さんの息子さんは敬礼をしてから一礼をすると、ビルから出ていった。
「キュウリ、いただいてしまった」
曲がってはいるけれど、色も鮮やかだしおいしそうだ。引き返そうとしたところで、受付に座っているお姉さんと目があった。
「あの、キュウリ、いります?」
「いりません!」
受け取りを拒否されたので、ありがたく自分だけでいただくとする。
「こっそり食べたって言ってたけど、あの制服じゃ目立ったんじゃないかな」
最近はSNSが発達して、誰でも手軽に写真を流せる時代だ。街中で自衛官がキュウリをかじりながら歩いていたら、それはそれは目立つのではなかろうか。
「下手に騒ぎになってしかられなきゃ良いけど」
その日の夜、大手のSNSで『自衛官 キュウリ』で検索してみたが、さいわいなことに、小此木さんの息子さんの写真は見つけられなかった。
「加茂先生によろしくでーす」
「おう」
部屋から出ていく河野さんを見送っていると、デスクの電話が鳴った。表示は内線で一階の受付だった。
「はい、羽織屋です」
「ああ、よかった、いてくれて!」
この声は間違いなく受付のお姉さん。いつもは落ち着いた口調なのに、今日はなぜか若干あわてた様子だ。
「河野さんなら、いま部屋を出たところなので、2分ぐらいで受付の前を通りますよ?」
「用があるのは河野さんじゃなくて、羽織屋さんのほうよ」
「私ですか?」
珍しいこともあるものだと首をかしげる。私が関わっている仕事で、受付にやってくるような人がいただろうか? 頭の中で色々な人の顔を思い浮かべてみたが、それに該当するような人物は思い当たらない。ここの仕事関係で知っている人達は、ほとんどが携帯かメールで連絡をしてくる人達だ。
「羽織屋さんに、渡すものがあるとおっしゃっている、お客さんがみえてるの」
「ちなみにどちら様でしょう?」
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そこで受付のお姉さんが口ごもった。
「東都銀行さんですか」
小此木さん関係なら安達さんが窓口だ。受付のお姉さんの口ぶりからして、相手は安達さんではない様子。もしかして連絡してきたのを取り損ねていた? バッグの中からスマホを引っ張り出したが、着信履歴はない。
―― まさかの営業? 銀行の外回りの人がわざわざ名指しで訪問するほど、預金残高はないはずだけど…… ――
「とにかく変な人なのよ……キュウリをいっぱい持ってるの」
「キュウリ?」
ひそひそと囁くような声で言われ、ますます困惑した。
「あの、野菜直売の訪問なら、断っていただいても良いんですが」
「だから野菜の直売ではなくて、東都銀行さん関係だって相手が言ってるの。キュウリをたくさん持ってるけど!」
お姉さんは半分パニック状態になっている。とにかく行ってみるしかなさそうだ。
「わかりました。すぐに行きます」
「お願いします!」
ガシャンと乱暴に内線が切れる。部屋を出てエレベーターに乗ったところで、手に持っていたスマホがメールを受信した。送り主は安達さんだった。
「あ、やっぱり安達さんの代理の人なのかな」
『申し訳ありません。こちらの手違いで連絡が遅くなりました。頭取のご子息が、そちらに原稿をお持ちすることになったようです。お名前は小此木彰さんといいます。念のために写真を送っておきます』
メールには画像が添付されていた。画像を開くと、頭取さんの息子さんというには少しばかりお若いのでは?と思われる男性の顔があらわれた。
「もしかして、若い頃の写真だったり?」
安達さんがすぐ送ることができる写真が、これしかなかったのかもしれない。まあ多少の年齢が加算されても分るだろうと、呑気にかまえながらエレベーターをおりて受付に向かった。
「お待たせしました。羽織屋は私ですがー」
受付の前に背の高い男性が立っている。安達さんから送られてきた写真より、少しだけ年を重ねた感じだ。そして内線で伝えられた通り、キュウリがいっぱいつまったビニール袋を持っていた。
―― 本当にキュウリをたくさん持ってる…… ――
「わざわざ下りてきていただいてすみません。母から連絡先は聞いていたのですが、うっかり電話番号を失念してしまって」
「あー、そうなんですか……母?」
いろいろと確認しなくてはならないことがあるのに、キュウリのせいで相手が話していることが、まったく頭に入ってこない。
―― どうしてこの人、こんなにたくさんキュウリを持っているんだろう。やっぱり野菜の行商? ――
もしかしてこの近くで、新進気鋭の企業農家でもあらわれたのだろうか? 相手も私の視線に気がついたようで、自分が持っているキュウリを見ながら笑った。
「すみません。コンビニで眠気覚ましにコーヒーを買おうとしたら、いきなり目に入ってしまって。そしたらどうしても食べたくなっちゃったんですよ、キュウリ。最近のコンビニは良いですね。野菜まで売ってるんだから」
「ああ、コンビニで。なるほどー……」
なるほどとうなづいたが、なにがなるほどなのか、自分でもさっぱり理解できない。
「てっきりキュウリの行商人かと思いました。衝動買いをしてしまうほど、体がキュウリを欲していたんですねー」
どうして欲しているのかはさっぱり謎だが。
「かもしれませんね。ああ、おくればせながら。小此木の息子の小此木彰です」
そう言ってその人は敬礼をした。どうして敬礼?と、改めてその人をじっくりと観察する。すっかりキュウリに気をとられていたせいか、今の今まで、その人が制服を着ていることにまったく気づかなかった。
「あの、えー、警察のかた、ですか?」
「あー……この色になってから、間違われることが多くなったんですよ。残念ながら警察官ではなく自衛官です」
「自衛官さん」
「はい」
言われてみれば警察官の制服とは少し違う。拳銃もなければ手錠も持っているようには見えないし、よく見かける交番のお巡りさんという感じでもない。
「頭取さんの息子さんが自衛官さんとは」
「手堅い仕事をしている家族の中で、僕だけが異端児なんです」
そう言いながらニッコリとほほ笑んだ。その顔は奥様にそっくりだった。
「自衛官さんだって公務員ですし、じゅうぶんに手堅いと思いますが?」
「そう言ってもらえるとありがたいです。ああ、僕のことはどうでも良いんです。大事なのはこっちでした」
そう言いながら、大きな封筒を差し出す。
「父が直前まで書いていましてね。それなりの量になったので、先に渡しておいた方が良いだろうと母が」
「奥様がですか」
「電話をしてから行けと言われたんですが、その電話番号をド忘れしてしまって。なので直接うかがいました」
「あー、なるほど。ありがとうございます」
封筒の中身を確認する。間違いなく小此木さんの筆跡だ。
「会うのはかなり先になるだろうから、今のうちに書いておこうと、父はかなり張り切ったみたいです。兄が自分達のことも書かれていのか気にしていましたが、一度も見せてもらえなかったらしくて」
「そういうことは本が出版されるまで、編集者と執筆者しか知らない状態なんですよ」
「いわゆるネタバレ厳禁というやつですね?」
キュウリの人、ではなく、小此木さんの息子さんがニヤリと笑う。
「そういうことです」
「了解しました。では兄にもそのように伝えておきます」
「まさかお兄さんも、自衛官さんなんですか?」
「まさか。たしかに霞が関の住人ですが、自衛隊とはまったく関係ないところです」
「ほー……官僚さんでいらっしゃると」
小此木さんの息子さんは、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「ああ、うっかり喋ってしまった。兄にしかられるかな」
「大丈夫ですよ。私は誰にも話しませんから」
誰かに話したくても、情報過多すぎて正確に伝えられる自信がない。
「あ、ちなみに。そちらは来られる途中で、中味を読んだりはしていませんよね?」
「ご心配なく。それを渡された時、自衛隊の名誉にかけてのぞき見しないことを、両親に誓わされましたから」
真面目な顔でうなづく。
「それなら結構です。わざわざのお届け、ありがとうございます」
「いえいえ。父のワガママに付き合っていただいているんです。このぐらいはしませんと。ああ、お礼がわりと言ってはなんですが、これ。おすそ分けです」
キュウリがつまった袋を一つ渡された。
「?」
「勢いで買ってしまいましたが、さすがに食べきれないので。ここに来るまでにこっそり二本食べましたが、残りは手つかずなので安心してください。23区内にある農家さんらしいですよ。売り場に生産者の写真がありました」
「へえ……珍しいですね、こんな街中で野菜作りなんて」
「まったくです。では失礼します。またお会いした時にでも、キュウリの感想を聞かせてください」
そう言って、小此木さんの息子さんは敬礼をしてから一礼をすると、ビルから出ていった。
「キュウリ、いただいてしまった」
曲がってはいるけれど、色も鮮やかだしおいしそうだ。引き返そうとしたところで、受付に座っているお姉さんと目があった。
「あの、キュウリ、いります?」
「いりません!」
受け取りを拒否されたので、ありがたく自分だけでいただくとする。
「こっそり食べたって言ってたけど、あの制服じゃ目立ったんじゃないかな」
最近はSNSが発達して、誰でも手軽に写真を流せる時代だ。街中で自衛官がキュウリをかじりながら歩いていたら、それはそれは目立つのではなかろうか。
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