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第一話 新人はつらいよ、どこまでも
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そのお宅の前に立つと深呼吸をする。
「あーあーあー、本日は晴天なりー」
咳ばらいをして、インターホンのボタンを押す。ピーンポーンと間延びした音。そして静寂。返事がない。どうやら留守のようだ。
「では日をあらためて……んなわけないじゃん!」
自分にツッコミをいれてから、もう一度ボタンを押す。再びピーンポーンと間延びした音がした。……まだ返事がない。
『はーい。どちらさまー?』
もう一度ボタンを……と指をのばしたところで、のんびりした女性の声が返ってきた。
「光栄出版の羽織屋です。加茂先生はご在宅でしょうか」
『ああ、羽織屋さん。ちょっとお待ちになってくださいねー』
インターホンの向こう側で「奥様ー、光栄出版の羽織屋さんですー」と呼ぶ声がする。そしてそれと同時に、「やーかましい!」という怒鳴り声も聞こえてきた。
「うっわー……やっぱり超絶ご機嫌ななめ……」
少しだけ憂鬱な気分になっていると、玄関の引き戸があき、エプロンをした年配の女性が出てきた。
「おはようございます! 本日が最終締切日なんですが、担当の河野が所用でうかがえなくなりましたので、私、羽織屋が代理で、原稿を受け取りにまいりました!」
「いつもいつも、ご苦労様ですー」
この女性は、ここのお宅で家政婦をしている吉田さん。気難しい主人がいるこのお宅で、もう二十年も家政婦を続けている。しかも料理がとても上手。そのおかげかこの一年で、担当の河野さんも担当代理の私も、体重が五キロ増えた。吉田さんいわく、河野さんはそろそろボーダーラインだが、私はもう少しお肉がついても問題ないそうだ。
「あの、先生の怒鳴り声がしたんですが」
「ここしばらく、ずっとあんな調子なんですよ。最後の締めが決まらないらしくてね」
「え、今日が最終の締切日なんですが……」
「最後の締め以外は、もう書き終えていらっしゃるのよ。ただ締めが決まらないだけらしいですよ。今、奥様が先生のお尻を叩きまくってるから、きっと大丈夫。河野さんがいらしたら待ってもらっていてと、奥様がおっしゃってましたよ。さ、どうぞ」
「おじゃまします」
吉田さんと一緒に家に入った。
「羽織屋さん、おこしでーす!」
「客間で待っててもらってー」
一階の奥から、女性の声が返ってくる。このお宅の奥様だ。
「やかまし――い!!」
そして再び怒鳴り声が聞こえた。今の声がこのお宅の主、小説家、加茂市郎先生の声だ。この業界ではかなり有名な先生で、どの作品もとても素晴らしく、私も先生の作品はすべて読んでいる。ただ、業界での知名度は、作品内容よりも、先生の気難しさのせいもあった。
「羽織屋さん、ごめんなさいね。あと一時間ぐらいは大丈夫かしら?」
お茶をいただきながら客間で待っていると、奥様が顔を出された。
「あ、はい。大丈夫だと思います。河野が戻るのが五時ごろになるので、それまでに戻れば良いとのことでしたので!」
「そう、良かったわ。もちろん、そんなことはあの人には言わないから安心して。吉田さん、羽織屋さんに冷蔵庫で冷やしているケーキを出してさしあげて」
「はい、奥様」
「待つのも仕事ですので、お気遣いなく」
「いいのよ。私達がおもてなしをしたいんだから。さて、じゃあもう少し頑張って、主人のお尻を叩いてくるわね」
奥様はにっこりとほほ笑むと、客間から出ていった。そして私はケーキをごちそうになりつつ、吉田さんが夕飯の準備をするのを見学させてもらうことにする。
「あの調子ですと、一時間もかかりませんね」
さといもの皮をむきながら、吉田さんが言った。
「そうなんですか?」
「奥様のことですから、ムチをいれて四十分てとこですよ」
「加茂先生、競馬の馬じゃないんですから……」
気難しい先生をうまくコントロールする奥様の存在も、この業界では有名だった。奥様がいなかったら、先生の作品の半分以上は、世に出なかったかもしれない。
そして奥様が客間を出てから三十分後、分厚い原稿袋を手に先生が顔を出した。
「……なんだ、河野君じゃないのか」
先生は私の顔を見たとたん、不機嫌そうな顔をする。
「申し訳ありません。河野は急に所用ができまして」
「ま、原稿を持って帰るだけなんだ。お前さんでもかまわんが」
先生はそう言うと、原稿用紙が入った袋を私に押しつけた。最近では、パソコンで原稿をやり取りする作家さんが多い。だけど加茂先生は、手書きにこだわっていた。手書きのほうが、気持ちをこめやすいんだそうだ。
「校正返しはいつ頃になる?」
「明後日にはお持ちできると思います」
「それは河野君が?」
「はい」
「わかった」
「では私はこれで」
失礼しますと立ち上がろうとすると、先生が私の前に座った。
「読まんのか」
そう言いながら、アゴで封筒をさす。
「え?」
「河野君から聞いている。お前さんは、わしが書いた本を全部読んでいると」
「え、あ、はい! ですがこれは、まだ出版前の原稿ですから……」
「そうか」
もちろん、誰よりも先に読みたい気持ちはある。だがこの原稿は完成品ではなく、手直しをする作業が待っている未完成品だ。
「読みたい気持ちはやまやまなんですが、一ファンとして、本屋さんに並ぶまでがまんします」
「そうか。最後の締めの部分だけでも、感想を聞きたかったんだがな」
「締めだけ読むなんてとんでもない! 先生が苦労して締められた部分は、最初から読んで楽しみたいです! ネタバレ厳禁です!!」
思わず力説すると、先生が大きな声で笑った。
「お前さんのような読者ばかりだと良いんだがな」
「先生のファンは、私以上にコアな人が多いと思います!」
先生は再び大きな声で笑った。
+++++
「ただいま戻りました!」
受け取った封筒をかかえ、編集部に戻った。
「おかえり、羽織屋ちゃん。加茂先生、元気だった?」
部屋のあちらこちらから、そんな質問がとんでくる。
「ものっすごいご機嫌ななめでした! でも、原稿はちゃんといたただきましたよ!」
「そりゃ、大ファンの羽織屋ちゃんを前に、先生だっていつまでも不機嫌な顔してられないもんな。お疲れさん。河野さんも、さっき戻ったところだ」
「じゃあ、原稿を渡してきます!!」
加茂先生の担当をしている河野さんは、編集長のデスクの前にいた。
「河野さん、加茂先生から原稿をあずかってきました!」
私が声をかけると、河野さんと編集長がこっちを見る。
「おう、ご苦労さん。途中で中身、読んでないだろうな?」
河野さんがニヤリと笑った。
「読みませんよ! ネタバレ厳禁です!! 河野さんも絶対に、ネタバレ発言しないでくださいね!」
「わかったわかった。とりあえずご苦労さん。助かったよ」
河野さんは笑いながら、私から原稿袋を受け取る。
「それで話は戻るが、そっちのほう、誰か任せられる人間はいないかねえ」
編集長がため息まじりの声をあげた。
「さーて。うちも人員削減をしたばかりですからねえ。急に言われても、人は回せませんよ」
「そこをなんとか。あっちはうちの取引銀行だし、ここで貸しをつくっておきたいんだよ。なんとかならんかね、河野ちゃん」
「その人員削減だって、あっちの命令じゃないですか。うちに人がいないのはあっちのせいで、いわば自業自得ってやつでしょ」
河野さんの言葉に、編集長は困ったねえと腕くみをする。そして何故か私の顔を見た。
「……なんですか?」
「河野ちゃん、羽織屋君はどうだろう?」
「あの?」
「こいつは入社一年目のペーペーです。人様の作品を推敲できる力量は、まだありませんよ」
「だが相手も素人で、作りたいのは回顧録だ。そこまで編集力が必要かね?」
なにやら、私に対しても執筆者に対しても、失礼なことを言っている。
「編集長、出すからには仕事はちゃんとしないと」
「大事なのは発行部数ではなく、回顧録ができあがることだから!」
「しかしねえ……」
「あのー……?」
河野さんがうなり、私の顔を見た。
「……ま、俺が片手間にサポートすればいいか」
「そうそう! 河野ちゃんが片手間でも手伝ってくれれば、問題ないでしょ!」
片手間って?
「そういうわけで、頼むわ、羽織屋君!」
「……あの、話がまったく見えません!」
「うちのメインの取引銀行の頭取さんがね、回顧録を作りたいんだってさ。で、その担当を、羽織屋君にやってもらうことにした!」
「えええ?!」
「これ、編集長命令だから!!」
「えええええ?!」
「ま、そういうわけだ。がんばれ、羽織屋」
「えええええええええ?!」
一人前の編集者にすらなれていないのに、なぜか編集長命令で、取引銀行頭取さんの回顧録担当を任されてしまいました!
「あーあーあー、本日は晴天なりー」
咳ばらいをして、インターホンのボタンを押す。ピーンポーンと間延びした音。そして静寂。返事がない。どうやら留守のようだ。
「では日をあらためて……んなわけないじゃん!」
自分にツッコミをいれてから、もう一度ボタンを押す。再びピーンポーンと間延びした音がした。……まだ返事がない。
『はーい。どちらさまー?』
もう一度ボタンを……と指をのばしたところで、のんびりした女性の声が返ってきた。
「光栄出版の羽織屋です。加茂先生はご在宅でしょうか」
『ああ、羽織屋さん。ちょっとお待ちになってくださいねー』
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「うっわー……やっぱり超絶ご機嫌ななめ……」
少しだけ憂鬱な気分になっていると、玄関の引き戸があき、エプロンをした年配の女性が出てきた。
「おはようございます! 本日が最終締切日なんですが、担当の河野が所用でうかがえなくなりましたので、私、羽織屋が代理で、原稿を受け取りにまいりました!」
「いつもいつも、ご苦労様ですー」
この女性は、ここのお宅で家政婦をしている吉田さん。気難しい主人がいるこのお宅で、もう二十年も家政婦を続けている。しかも料理がとても上手。そのおかげかこの一年で、担当の河野さんも担当代理の私も、体重が五キロ増えた。吉田さんいわく、河野さんはそろそろボーダーラインだが、私はもう少しお肉がついても問題ないそうだ。
「あの、先生の怒鳴り声がしたんですが」
「ここしばらく、ずっとあんな調子なんですよ。最後の締めが決まらないらしくてね」
「え、今日が最終の締切日なんですが……」
「最後の締め以外は、もう書き終えていらっしゃるのよ。ただ締めが決まらないだけらしいですよ。今、奥様が先生のお尻を叩きまくってるから、きっと大丈夫。河野さんがいらしたら待ってもらっていてと、奥様がおっしゃってましたよ。さ、どうぞ」
「おじゃまします」
吉田さんと一緒に家に入った。
「羽織屋さん、おこしでーす!」
「客間で待っててもらってー」
一階の奥から、女性の声が返ってくる。このお宅の奥様だ。
「やかまし――い!!」
そして再び怒鳴り声が聞こえた。今の声がこのお宅の主、小説家、加茂市郎先生の声だ。この業界ではかなり有名な先生で、どの作品もとても素晴らしく、私も先生の作品はすべて読んでいる。ただ、業界での知名度は、作品内容よりも、先生の気難しさのせいもあった。
「羽織屋さん、ごめんなさいね。あと一時間ぐらいは大丈夫かしら?」
お茶をいただきながら客間で待っていると、奥様が顔を出された。
「あ、はい。大丈夫だと思います。河野が戻るのが五時ごろになるので、それまでに戻れば良いとのことでしたので!」
「そう、良かったわ。もちろん、そんなことはあの人には言わないから安心して。吉田さん、羽織屋さんに冷蔵庫で冷やしているケーキを出してさしあげて」
「はい、奥様」
「待つのも仕事ですので、お気遣いなく」
「いいのよ。私達がおもてなしをしたいんだから。さて、じゃあもう少し頑張って、主人のお尻を叩いてくるわね」
奥様はにっこりとほほ笑むと、客間から出ていった。そして私はケーキをごちそうになりつつ、吉田さんが夕飯の準備をするのを見学させてもらうことにする。
「あの調子ですと、一時間もかかりませんね」
さといもの皮をむきながら、吉田さんが言った。
「そうなんですか?」
「奥様のことですから、ムチをいれて四十分てとこですよ」
「加茂先生、競馬の馬じゃないんですから……」
気難しい先生をうまくコントロールする奥様の存在も、この業界では有名だった。奥様がいなかったら、先生の作品の半分以上は、世に出なかったかもしれない。
そして奥様が客間を出てから三十分後、分厚い原稿袋を手に先生が顔を出した。
「……なんだ、河野君じゃないのか」
先生は私の顔を見たとたん、不機嫌そうな顔をする。
「申し訳ありません。河野は急に所用ができまして」
「ま、原稿を持って帰るだけなんだ。お前さんでもかまわんが」
先生はそう言うと、原稿用紙が入った袋を私に押しつけた。最近では、パソコンで原稿をやり取りする作家さんが多い。だけど加茂先生は、手書きにこだわっていた。手書きのほうが、気持ちをこめやすいんだそうだ。
「校正返しはいつ頃になる?」
「明後日にはお持ちできると思います」
「それは河野君が?」
「はい」
「わかった」
「では私はこれで」
失礼しますと立ち上がろうとすると、先生が私の前に座った。
「読まんのか」
そう言いながら、アゴで封筒をさす。
「え?」
「河野君から聞いている。お前さんは、わしが書いた本を全部読んでいると」
「え、あ、はい! ですがこれは、まだ出版前の原稿ですから……」
「そうか」
もちろん、誰よりも先に読みたい気持ちはある。だがこの原稿は完成品ではなく、手直しをする作業が待っている未完成品だ。
「読みたい気持ちはやまやまなんですが、一ファンとして、本屋さんに並ぶまでがまんします」
「そうか。最後の締めの部分だけでも、感想を聞きたかったんだがな」
「締めだけ読むなんてとんでもない! 先生が苦労して締められた部分は、最初から読んで楽しみたいです! ネタバレ厳禁です!!」
思わず力説すると、先生が大きな声で笑った。
「お前さんのような読者ばかりだと良いんだがな」
「先生のファンは、私以上にコアな人が多いと思います!」
先生は再び大きな声で笑った。
+++++
「ただいま戻りました!」
受け取った封筒をかかえ、編集部に戻った。
「おかえり、羽織屋ちゃん。加茂先生、元気だった?」
部屋のあちらこちらから、そんな質問がとんでくる。
「ものっすごいご機嫌ななめでした! でも、原稿はちゃんといたただきましたよ!」
「そりゃ、大ファンの羽織屋ちゃんを前に、先生だっていつまでも不機嫌な顔してられないもんな。お疲れさん。河野さんも、さっき戻ったところだ」
「じゃあ、原稿を渡してきます!!」
加茂先生の担当をしている河野さんは、編集長のデスクの前にいた。
「河野さん、加茂先生から原稿をあずかってきました!」
私が声をかけると、河野さんと編集長がこっちを見る。
「おう、ご苦労さん。途中で中身、読んでないだろうな?」
河野さんがニヤリと笑った。
「読みませんよ! ネタバレ厳禁です!! 河野さんも絶対に、ネタバレ発言しないでくださいね!」
「わかったわかった。とりあえずご苦労さん。助かったよ」
河野さんは笑いながら、私から原稿袋を受け取る。
「それで話は戻るが、そっちのほう、誰か任せられる人間はいないかねえ」
編集長がため息まじりの声をあげた。
「さーて。うちも人員削減をしたばかりですからねえ。急に言われても、人は回せませんよ」
「そこをなんとか。あっちはうちの取引銀行だし、ここで貸しをつくっておきたいんだよ。なんとかならんかね、河野ちゃん」
「その人員削減だって、あっちの命令じゃないですか。うちに人がいないのはあっちのせいで、いわば自業自得ってやつでしょ」
河野さんの言葉に、編集長は困ったねえと腕くみをする。そして何故か私の顔を見た。
「……なんですか?」
「河野ちゃん、羽織屋君はどうだろう?」
「あの?」
「こいつは入社一年目のペーペーです。人様の作品を推敲できる力量は、まだありませんよ」
「だが相手も素人で、作りたいのは回顧録だ。そこまで編集力が必要かね?」
なにやら、私に対しても執筆者に対しても、失礼なことを言っている。
「編集長、出すからには仕事はちゃんとしないと」
「大事なのは発行部数ではなく、回顧録ができあがることだから!」
「しかしねえ……」
「あのー……?」
河野さんがうなり、私の顔を見た。
「……ま、俺が片手間にサポートすればいいか」
「そうそう! 河野ちゃんが片手間でも手伝ってくれれば、問題ないでしょ!」
片手間って?
「そういうわけで、頼むわ、羽織屋君!」
「……あの、話がまったく見えません!」
「うちのメインの取引銀行の頭取さんがね、回顧録を作りたいんだってさ。で、その担当を、羽織屋君にやってもらうことにした!」
「えええ?!」
「これ、編集長命令だから!!」
「えええええ?!」
「ま、そういうわけだ。がんばれ、羽織屋」
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