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第三部 夏の小話
第四十五話 餌づけかお供え物か
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「……」
―― 眠れない…… ――
時刻は深夜2時。草木も眠る丑三つ刻だ。普段の俺なら、とっくに寝ている時間帯。
―― 熱帯夜じゃないから、普通に安眠できると思ってたんだけどな…… ――
俺が安眠できない理由。それは、さっきから部屋をウロチョロしている連中のせいだ。
『波多野さん! ここが光ってます! これはなんですか?!』
「……ネットのモデム」
『モデムさんは寝ないんですか?! 電気は消さないと!!』
「……それは常時接続なんだよ」
モデムの前に座り、首をかしげている猫神候補生を見て溜め息をつく。そして寝返りをうって、バスタオルにもぐり込んだ。そろそろ寝ないと、本当にヤバいんだけどな。
『波多野さん、この丸いのはなんですか?!』
すると今度は、部屋の反対側から声がした。なにを見つけたのはすぐにわかった。コンセントで充電中の掃除機だ。ため息をつきながら、タオルケットを抱えこむ。
「……掃除機」
『なんで平べったくって丸いんですか?! 僕の知ってる掃除機じゃないです!!』
「そういうタイプなんだよ」
神様候補生とはいえ子猫だ。ここに来てから、見回りと称して部屋のあっちこっちをうろついて、ずっとこんな調子で大騒ぎをしている。
―― 比良のやつ、ちゃんと安眠できてるかな…… ――
あちらは一匹、こちらは二匹。それに姿もまだ見えていないようだし、グッスリかもしれない。
―― 護衛についてくれるのはありがたいけど、これは想定外だ…… ――
猫大佐に護衛役を任された猫神候補生達は、下艦した俺達の護衛を立派にはたしていた。クラゲ幽霊もどきが近寄ってこようものなら、すかさず飛びかかり、猫パンチ猫キックで蹴散らしていったのだ。そして今は部屋を見回り中だ。これなら万が一、クラゲ幽霊もどきがついてきても安心だなと思っていたんだが、どうやら俺は、子猫達の好奇心を甘く見ていたらしい。
『目が赤く光ってます! これは悪いヤツでは?!』
「それは充電中のランプだよ。時間になったら床掃除をするんだ」
『もしかして掃除機の神様!!』
「ちがーう。てか、お前達、ちょっとは静かにして寝ろよ」
そろそろ本気でヤバいと思い、二匹に声をかける。
『僕達、寝なくても平気です!!』
『猫大佐から護衛を任されています!!』
「いや、そっちは平気でも俺が平気じゃないから」
小さな足音がして、二匹が近寄ってきたのがわかった。そしてタオルケットの中に顔を突っ込み、俺の顔が見えるところまでもぐり込んでくる。
「……だから、なんで来るんだよ」
『僕達、波多野さんの護衛ですから!!』
『護衛は近くにいないと!!』
そう言いながら、俺の顔の横にちんまりとおさまる。
「……いや、だからさ、もうちょっとこう、なんていうか、神様らしくならないのか?」
『僕達、まだ候補生ですから!』
『まだ訓練中です!』
「どういう理屈だよ、それ……」
―― 実体を感じることができるのも善し悪しだな…… ――
大佐といい子猫候補生達といい、俺の迷惑のことなんて、まったく考えていないんだから困ったもんだ。
「ところでさ、候補生から猫神になれないことなんてあるのか?」
どうせ寝られないならと、前から疑問に思っていたことを質問してみた。
『大きなお船はダメって言われて、小さなお船になることはあります!』
『僕達は猫大佐と同じ、護衛艦の猫神になりたいです!』
「神様にも適性があるのか……」
俺が思っているより、猫神になるのは大変そうだ。
「それを決めるのは大佐なのか?」
『そうです!』
『そうです!』
俺に対する態度はアレだが、大佐は候補生達には教官らしい態度で接している。こうやって三匹同時に候補生の教育を任されるのだ、きっと教官としては優秀なんだろう。
「大佐がどう言ってるか知らないけど、お前達、もうちょっと見える乗員に対しては礼儀正しく接しろよ?」
『神社の神様達には、礼儀正しくしろと言われてます!』
『人間のことは、なにも言われてないです!』
「ええええ……」
そこが肝心じゃないのかよと、密かにツッコミを入れた。
『波多野さん、はやく寝ないと明日、寝坊しちゃいますよ!』
『寝坊したら艦長さんに叱られます!』
「明日は当直だから、朝寝坊しても問題ないんだよ」
―― 誰のせいで寝られなかったと思ってるんだよ…… ――
お前が言うな的なツッコミをしながら、大きな猫大佐とは違う子猫のモフモフを感じながら、目を閉じた。
+++
そして案の定、寝不足で目がチカチカした状態で朝をむかえた。今日は当直なので出かけるのは夕方だ。もう少し寝ていられるんだが、習慣というのは恐ろしい。
「ま……停泊中なだけマシだよな」
眠くなったら、あとで二度寝でもするかと考えながら体を起こした。横では子猫達が丸くなって寝ている。
「黙っていれば可愛いんだけどなあ……」
しかしこれが他の人間には見えないとは。本当に世の中、不思議なこともあるものだ。そんなことを考えながら、ベッドからおりて朝飯の準備を始める。パンをトースターにほうり込み、冷蔵庫から牛乳を出していると、子猫達が走ってきた。
『あ、ミルクだ!』
『ミルク!』
「飲むか? ってかお前達、飲めないっけ?」
昨晩の夕飯にも反応しなかったし、猫大佐がなにか食べているのを見たのは、魚の幽霊が艦内に飛び込んできた時だけだ。てっきり普通の食い物には興味がないと思っていたから、子猫達の反応が意外だった。
『飲めます!』
『ミルク、ほしいです!』
「え、そうなのか?」
驚きながら、皿を出してそこに牛乳を入れ、テーブルに置く。子猫達は嬉しそうに騒ぎながら、テーブルに飛び乗った。そして皿に顔を突っ込むようにして、牛乳をなめ始める。
「……意外な発見だな」
ということは、猫大佐も実は普通に食べられるのか?と疑問に感じた。これは是非とも、大佐か相波大尉に質問してみよう。
「しかし俺が、猫のいる生活なんてなあ……」
しみじみとつぶやくと、その言葉に子猫達が反応した。
『僕達、猫じゃないです!』
『猫神です! まだ候補生だけど』
「そりゃ失礼」
似たようなものじゃないか、と心の中で反論する。一人前の猫神になったら少しは変わるかもしれないが、今のところ、こいつらの行動はどこから見ても普通の猫だ。
―― いや、猫神歴が長そうな大佐だって、普通の猫っぽいよな…… ――
猫好きの幹部なんて、毎日がパラダイスだろうなと思いつつ、朝飯を食べることに集中した。
+++++
夕方。
「今は白いクラゲ幽霊もどきはいるのか?」
出かける準備を終え、部屋から出たところで、俺の肩と頭の上に乗っている二匹に声をかけた。
『いませーん! 異常なーし!』
『異常なーし! 出港準備よーし!』
こういうところは船の神様っぽいなと愉快に思いつつ、部屋のカギをしめ、基地に向かう。その途中で比良と顔を合わせた。心なしか、顔がだらしなくにやけている。
「おはよう、比良」
「おはようございます、波多野さん」
「昨日はあれからどうだった?」
そのにやけ具合から、なにか嬉しいことでもあったんだろうと質問してみた。
「聞いてください。候補生さん、触れたんですよ! 夢なのかもしれないけど」
『夢じゃないです! ボク、比良さんになでなでしてもらいました!』
比良の肩に乗っている子猫が言った。
「夢じゃないってさ」
「そうなんだ。早く見えるようにならないかなあ。出かける時も、部屋に置き去りにしてないか心配で心配で」
『ボク、ちゃんとしてるから心配なしです!』
「ちゃんとやってるから心配するなってさ」
俺の通訳に、比良は安心したようだ。歩いている途中、子猫達は目にしたものに対して、あれはなんだこれはなんだと騒いでいたが、幽霊っぽいモノに関しては一切、口にしなかった。やはり日中は出ないんだろうか。それとも大量発生しているのが、うちの基地の桟橋だけということなんだろうか。
「しかしあの白いの、いつまであの辺でウロウロするんだろうな」
「どうなんでしょう……」
他の先輩達に聞いても、こんなことは初めてらしい。
「やっぱりアレですかね。副長が戻ってこないと消えないとか」
「それって一体、どんな御守体質……」
見たがっている副長には申し訳ないが、それが事実だと良いんだが。
みむろに到着すると、猫大佐が桟橋のこちら側に出てきて、俺達を待っていた。
「意外だな、こっちに出てくるなんて」
『舷門当番は吾輩の姿が見えないからな。あそこで話をしたら、お前の頭がおかしいと思われるだろうが』
「それはそれは、お気づかい感謝」
比良に伝えると、確かにそうですねと笑う。その横で大佐は鼻にシワをよせた。そしてフンフンと匂いをかぐしぐさをする。そして子猫達に目を向けた。
『お前達、牛乳を飲んだな?』
「ダメだったのか?」
『ダメとは言わんが、お前、候補生を餌づけするな』
「護衛してくれてるんだから、それなりの報酬は必要だろ。気持ちだよ気持ち」
大佐に言われたことを比良に伝える。
「あ、僕も朝、牛乳をテーブルにお供えしました」
「ほらな? 神様なんだから、お供え物は必要じゃないか。それって普通だろ?」
『まったく。困ったものだ。さあ、行くぞ』
大佐は、腹立たし気に尻尾を振りながら桟橋の階段を上がり、そのままみむろへと向かった。
―― 眠れない…… ――
時刻は深夜2時。草木も眠る丑三つ刻だ。普段の俺なら、とっくに寝ている時間帯。
―― 熱帯夜じゃないから、普通に安眠できると思ってたんだけどな…… ――
俺が安眠できない理由。それは、さっきから部屋をウロチョロしている連中のせいだ。
『波多野さん! ここが光ってます! これはなんですか?!』
「……ネットのモデム」
『モデムさんは寝ないんですか?! 電気は消さないと!!』
「……それは常時接続なんだよ」
モデムの前に座り、首をかしげている猫神候補生を見て溜め息をつく。そして寝返りをうって、バスタオルにもぐり込んだ。そろそろ寝ないと、本当にヤバいんだけどな。
『波多野さん、この丸いのはなんですか?!』
すると今度は、部屋の反対側から声がした。なにを見つけたのはすぐにわかった。コンセントで充電中の掃除機だ。ため息をつきながら、タオルケットを抱えこむ。
「……掃除機」
『なんで平べったくって丸いんですか?! 僕の知ってる掃除機じゃないです!!』
「そういうタイプなんだよ」
神様候補生とはいえ子猫だ。ここに来てから、見回りと称して部屋のあっちこっちをうろついて、ずっとこんな調子で大騒ぎをしている。
―― 比良のやつ、ちゃんと安眠できてるかな…… ――
あちらは一匹、こちらは二匹。それに姿もまだ見えていないようだし、グッスリかもしれない。
―― 護衛についてくれるのはありがたいけど、これは想定外だ…… ――
猫大佐に護衛役を任された猫神候補生達は、下艦した俺達の護衛を立派にはたしていた。クラゲ幽霊もどきが近寄ってこようものなら、すかさず飛びかかり、猫パンチ猫キックで蹴散らしていったのだ。そして今は部屋を見回り中だ。これなら万が一、クラゲ幽霊もどきがついてきても安心だなと思っていたんだが、どうやら俺は、子猫達の好奇心を甘く見ていたらしい。
『目が赤く光ってます! これは悪いヤツでは?!』
「それは充電中のランプだよ。時間になったら床掃除をするんだ」
『もしかして掃除機の神様!!』
「ちがーう。てか、お前達、ちょっとは静かにして寝ろよ」
そろそろ本気でヤバいと思い、二匹に声をかける。
『僕達、寝なくても平気です!!』
『猫大佐から護衛を任されています!!』
「いや、そっちは平気でも俺が平気じゃないから」
小さな足音がして、二匹が近寄ってきたのがわかった。そしてタオルケットの中に顔を突っ込み、俺の顔が見えるところまでもぐり込んでくる。
「……だから、なんで来るんだよ」
『僕達、波多野さんの護衛ですから!!』
『護衛は近くにいないと!!』
そう言いながら、俺の顔の横にちんまりとおさまる。
「……いや、だからさ、もうちょっとこう、なんていうか、神様らしくならないのか?」
『僕達、まだ候補生ですから!』
『まだ訓練中です!』
「どういう理屈だよ、それ……」
―― 実体を感じることができるのも善し悪しだな…… ――
大佐といい子猫候補生達といい、俺の迷惑のことなんて、まったく考えていないんだから困ったもんだ。
「ところでさ、候補生から猫神になれないことなんてあるのか?」
どうせ寝られないならと、前から疑問に思っていたことを質問してみた。
『大きなお船はダメって言われて、小さなお船になることはあります!』
『僕達は猫大佐と同じ、護衛艦の猫神になりたいです!』
「神様にも適性があるのか……」
俺が思っているより、猫神になるのは大変そうだ。
「それを決めるのは大佐なのか?」
『そうです!』
『そうです!』
俺に対する態度はアレだが、大佐は候補生達には教官らしい態度で接している。こうやって三匹同時に候補生の教育を任されるのだ、きっと教官としては優秀なんだろう。
「大佐がどう言ってるか知らないけど、お前達、もうちょっと見える乗員に対しては礼儀正しく接しろよ?」
『神社の神様達には、礼儀正しくしろと言われてます!』
『人間のことは、なにも言われてないです!』
「ええええ……」
そこが肝心じゃないのかよと、密かにツッコミを入れた。
『波多野さん、はやく寝ないと明日、寝坊しちゃいますよ!』
『寝坊したら艦長さんに叱られます!』
「明日は当直だから、朝寝坊しても問題ないんだよ」
―― 誰のせいで寝られなかったと思ってるんだよ…… ――
お前が言うな的なツッコミをしながら、大きな猫大佐とは違う子猫のモフモフを感じながら、目を閉じた。
+++
そして案の定、寝不足で目がチカチカした状態で朝をむかえた。今日は当直なので出かけるのは夕方だ。もう少し寝ていられるんだが、習慣というのは恐ろしい。
「ま……停泊中なだけマシだよな」
眠くなったら、あとで二度寝でもするかと考えながら体を起こした。横では子猫達が丸くなって寝ている。
「黙っていれば可愛いんだけどなあ……」
しかしこれが他の人間には見えないとは。本当に世の中、不思議なこともあるものだ。そんなことを考えながら、ベッドからおりて朝飯の準備を始める。パンをトースターにほうり込み、冷蔵庫から牛乳を出していると、子猫達が走ってきた。
『あ、ミルクだ!』
『ミルク!』
「飲むか? ってかお前達、飲めないっけ?」
昨晩の夕飯にも反応しなかったし、猫大佐がなにか食べているのを見たのは、魚の幽霊が艦内に飛び込んできた時だけだ。てっきり普通の食い物には興味がないと思っていたから、子猫達の反応が意外だった。
『飲めます!』
『ミルク、ほしいです!』
「え、そうなのか?」
驚きながら、皿を出してそこに牛乳を入れ、テーブルに置く。子猫達は嬉しそうに騒ぎながら、テーブルに飛び乗った。そして皿に顔を突っ込むようにして、牛乳をなめ始める。
「……意外な発見だな」
ということは、猫大佐も実は普通に食べられるのか?と疑問に感じた。これは是非とも、大佐か相波大尉に質問してみよう。
「しかし俺が、猫のいる生活なんてなあ……」
しみじみとつぶやくと、その言葉に子猫達が反応した。
『僕達、猫じゃないです!』
『猫神です! まだ候補生だけど』
「そりゃ失礼」
似たようなものじゃないか、と心の中で反論する。一人前の猫神になったら少しは変わるかもしれないが、今のところ、こいつらの行動はどこから見ても普通の猫だ。
―― いや、猫神歴が長そうな大佐だって、普通の猫っぽいよな…… ――
猫好きの幹部なんて、毎日がパラダイスだろうなと思いつつ、朝飯を食べることに集中した。
+++++
夕方。
「今は白いクラゲ幽霊もどきはいるのか?」
出かける準備を終え、部屋から出たところで、俺の肩と頭の上に乗っている二匹に声をかけた。
『いませーん! 異常なーし!』
『異常なーし! 出港準備よーし!』
こういうところは船の神様っぽいなと愉快に思いつつ、部屋のカギをしめ、基地に向かう。その途中で比良と顔を合わせた。心なしか、顔がだらしなくにやけている。
「おはよう、比良」
「おはようございます、波多野さん」
「昨日はあれからどうだった?」
そのにやけ具合から、なにか嬉しいことでもあったんだろうと質問してみた。
「聞いてください。候補生さん、触れたんですよ! 夢なのかもしれないけど」
『夢じゃないです! ボク、比良さんになでなでしてもらいました!』
比良の肩に乗っている子猫が言った。
「夢じゃないってさ」
「そうなんだ。早く見えるようにならないかなあ。出かける時も、部屋に置き去りにしてないか心配で心配で」
『ボク、ちゃんとしてるから心配なしです!』
「ちゃんとやってるから心配するなってさ」
俺の通訳に、比良は安心したようだ。歩いている途中、子猫達は目にしたものに対して、あれはなんだこれはなんだと騒いでいたが、幽霊っぽいモノに関しては一切、口にしなかった。やはり日中は出ないんだろうか。それとも大量発生しているのが、うちの基地の桟橋だけということなんだろうか。
「しかしあの白いの、いつまであの辺でウロウロするんだろうな」
「どうなんでしょう……」
他の先輩達に聞いても、こんなことは初めてらしい。
「やっぱりアレですかね。副長が戻ってこないと消えないとか」
「それって一体、どんな御守体質……」
見たがっている副長には申し訳ないが、それが事実だと良いんだが。
みむろに到着すると、猫大佐が桟橋のこちら側に出てきて、俺達を待っていた。
「意外だな、こっちに出てくるなんて」
『舷門当番は吾輩の姿が見えないからな。あそこで話をしたら、お前の頭がおかしいと思われるだろうが』
「それはそれは、お気づかい感謝」
比良に伝えると、確かにそうですねと笑う。その横で大佐は鼻にシワをよせた。そしてフンフンと匂いをかぐしぐさをする。そして子猫達に目を向けた。
『お前達、牛乳を飲んだな?』
「ダメだったのか?」
『ダメとは言わんが、お前、候補生を餌づけするな』
「護衛してくれてるんだから、それなりの報酬は必要だろ。気持ちだよ気持ち」
大佐に言われたことを比良に伝える。
「あ、僕も朝、牛乳をテーブルにお供えしました」
「ほらな? 神様なんだから、お供え物は必要じゃないか。それって普通だろ?」
『まったく。困ったものだ。さあ、行くぞ』
大佐は、腹立たし気に尻尾を振りながら桟橋の階段を上がり、そのままみむろへと向かった。
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