74 / 77
異世界ブルーインパルス~異世界で稲作はじめました?
第七話
しおりを挟む
「今日はこいつらの磨き作業をやってみようと思ってるんですよ」
神森の言葉にドラゴンを見る。今は行儀よく横一列に並んでいるが、気が合わない者同士が並んでいる場所もあるようで、ガウガウと言い合いをしているドラゴンもいる。鼻からは火がチロチロと出ているし、いつまで大人しくしていてくれるのか不安な状態だ。
「できるんか? おとなしゅう磨かれてくれそうにないけど」
「まあブルーの機体と違って生き物ですからねえ」
「キーパーというより動物園の飼育係やな」
「言われてみればそうですね。飼育係なんて小学校のメダカのお世話係以来です。こっちに来る前に、動画サイトで動物園の日常業務を見ておくべきだったかも」
「それ、あまり参考にならへんような」
あえて参考にするとすれば、象とかシャチの飼育係ぐらいか?
「機付長、持ってきましたよ~~」
坂崎が四駆の後ろにリヤカーをつけて引っ張ってきた。そこにはブラシやバケツなどが山積みになっている。
「夢や思うて好き放題やな」
「さすがに魔法で転送とかできないみたいなんで、ここは地道にリヤカーに乗せて引っ張ってきました」
ニコニコしている坂崎の言い分にあきれてしまった。
「一体どのへんが地道やねん。四駆でリヤカー引っ張るて、おうちゃくしまくりやん。それで? ホースはあるみたいやけど、かんじんの蛇口はどこにあるん?」
「隊長の夢だから、そのへんにあるだろうって班長が言ってました」
ドラゴンたちが並んでいる場所から少し離れた位置を指でさす。
「ほんまかいな~~」
いくら隊長でも無理なのでは?と思いつつ、坂崎の指が向いたあたりの地面を探す。すると雑草の間に金属性のフタがあるのを発見。フタを開けてみるとちゃんとした水道付きの蛇口がある。
「おお、あるやん。これ、さすが隊長なんか班長なんか、どっちやろな」
「なんとなく班長な気がしますけどね」
「せやんなあ」
ベースは隊長の夢だが、そこに青井の夢が干渉しているといった感じか。まだ二回目だというのに、なかなか複雑な夢構造になってきた。
「そのうち隊長の夢が乗っ取られたりしてな」
「あー、それ否定できないっすね。田んぼづくりでも班長、あれこれ必要なのに道具が足りないって大騒ぎなので」
「やっぱり隊長、そのうち熱だしそうやわ」
そんなことを呟きながらリヤカーに積まれている道具類をのぞき込む。
「お、亀の子たわしもあるやん」
俺がそれを手に取ると、五番機君がガウガウ言いながら近寄ってきた。本人は軽くジャンプしているつもりなんだろうが、その巨体のせいか着地するたびに地響きがはんぱない。五番機君がジャンプするたびに、リヤカーの中身も一緒に飛び跳ねた。
「あかんあかん、リヤカーの中身が飛び散るやん!」
俺が注意してもどこ吹く風な様子のまま、こっちに顔を突き出してくる。
「なんやねん。これはたわしや、食べるもんちゃうで?」
「それ多分、たわしでこすってほしいんだと思いますよ」
「ほんまかいな。やったとたんに怒って火を噴いたらどないすんねん」
「ほら、水族館の動画でもあるじゃないですか、カメさんの甲羅をたわしでゴシゴシするやつ。それと同じですよ」
言われてみればそんな動画を見た記憶がある。だが目の前にいるのは亀ではなくドラゴンだ。亀なら手足をばたつかせてもそれほどダメージをくらわないだろうが、目の前にいるヤツがばたついたらシャレにならない。
「夢でもダメージくらったら死にそうやん?」
「大丈夫ですよ。そのまま何もしないでいるほうが、腹を立てて火を噴きそうじゃないっすか」
「なにかあったら責任とってくれるんやろな、坂崎君や」
そう言いながら、おっかなびっくりたわしを五番機君の鼻先にもっていく。たわしを見た五番機君は、顔を横に振ると首をこっちに見せた。
「そこをこすってほしいみたいです」
「あー、なるほど。ここは足も手も届かへん場所やもんな。りょーかいや」
たわしで首をこすってやると気持ち良さそうに目を細める。鱗があるのできれいにするにはそれなりにコツが要りそうだが、痒い場所を掻くだけなら問題なさそうだ。それを見ていた他のドラゴン達が騒がしくなった。どうやら自分もやってほしいらしく、騒ぎながら全頭がこっちに近づいてくる。
「おいおい、それはあかんと思うわ。そっちはそっちでやってもらわんと」
「ですよね。それぞれの担当キーパーはここの道具をさっさと持って行くように! 早くしないとうちの五番機組が圧し潰されて大変なことになる!」
神森が指示を出した。それぞれのキーパー達が道具を持って、こっちに来ていたドラゴンを元の場所につれていく。どのドラゴンもキーパー達にゴシゴシしてもらって気持ち良さそうだ。すぐ隣の六番機君は爪を切ってもらっているようで、器用に片足で立っている。
「お化けみたいなニッパーがあるのは爪を切るためなんか」
「葛城さん、こっちに残っていたらドラゴンの爪を切れたのにって、めちゃくちゃ残念がりそうですよ」
「たしかに」
葛城が田んぼ作業から戻ってきたら、さっそく話して聞かせてやらな。
神森の言葉にドラゴンを見る。今は行儀よく横一列に並んでいるが、気が合わない者同士が並んでいる場所もあるようで、ガウガウと言い合いをしているドラゴンもいる。鼻からは火がチロチロと出ているし、いつまで大人しくしていてくれるのか不安な状態だ。
「できるんか? おとなしゅう磨かれてくれそうにないけど」
「まあブルーの機体と違って生き物ですからねえ」
「キーパーというより動物園の飼育係やな」
「言われてみればそうですね。飼育係なんて小学校のメダカのお世話係以来です。こっちに来る前に、動画サイトで動物園の日常業務を見ておくべきだったかも」
「それ、あまり参考にならへんような」
あえて参考にするとすれば、象とかシャチの飼育係ぐらいか?
「機付長、持ってきましたよ~~」
坂崎が四駆の後ろにリヤカーをつけて引っ張ってきた。そこにはブラシやバケツなどが山積みになっている。
「夢や思うて好き放題やな」
「さすがに魔法で転送とかできないみたいなんで、ここは地道にリヤカーに乗せて引っ張ってきました」
ニコニコしている坂崎の言い分にあきれてしまった。
「一体どのへんが地道やねん。四駆でリヤカー引っ張るて、おうちゃくしまくりやん。それで? ホースはあるみたいやけど、かんじんの蛇口はどこにあるん?」
「隊長の夢だから、そのへんにあるだろうって班長が言ってました」
ドラゴンたちが並んでいる場所から少し離れた位置を指でさす。
「ほんまかいな~~」
いくら隊長でも無理なのでは?と思いつつ、坂崎の指が向いたあたりの地面を探す。すると雑草の間に金属性のフタがあるのを発見。フタを開けてみるとちゃんとした水道付きの蛇口がある。
「おお、あるやん。これ、さすが隊長なんか班長なんか、どっちやろな」
「なんとなく班長な気がしますけどね」
「せやんなあ」
ベースは隊長の夢だが、そこに青井の夢が干渉しているといった感じか。まだ二回目だというのに、なかなか複雑な夢構造になってきた。
「そのうち隊長の夢が乗っ取られたりしてな」
「あー、それ否定できないっすね。田んぼづくりでも班長、あれこれ必要なのに道具が足りないって大騒ぎなので」
「やっぱり隊長、そのうち熱だしそうやわ」
そんなことを呟きながらリヤカーに積まれている道具類をのぞき込む。
「お、亀の子たわしもあるやん」
俺がそれを手に取ると、五番機君がガウガウ言いながら近寄ってきた。本人は軽くジャンプしているつもりなんだろうが、その巨体のせいか着地するたびに地響きがはんぱない。五番機君がジャンプするたびに、リヤカーの中身も一緒に飛び跳ねた。
「あかんあかん、リヤカーの中身が飛び散るやん!」
俺が注意してもどこ吹く風な様子のまま、こっちに顔を突き出してくる。
「なんやねん。これはたわしや、食べるもんちゃうで?」
「それ多分、たわしでこすってほしいんだと思いますよ」
「ほんまかいな。やったとたんに怒って火を噴いたらどないすんねん」
「ほら、水族館の動画でもあるじゃないですか、カメさんの甲羅をたわしでゴシゴシするやつ。それと同じですよ」
言われてみればそんな動画を見た記憶がある。だが目の前にいるのは亀ではなくドラゴンだ。亀なら手足をばたつかせてもそれほどダメージをくらわないだろうが、目の前にいるヤツがばたついたらシャレにならない。
「夢でもダメージくらったら死にそうやん?」
「大丈夫ですよ。そのまま何もしないでいるほうが、腹を立てて火を噴きそうじゃないっすか」
「なにかあったら責任とってくれるんやろな、坂崎君や」
そう言いながら、おっかなびっくりたわしを五番機君の鼻先にもっていく。たわしを見た五番機君は、顔を横に振ると首をこっちに見せた。
「そこをこすってほしいみたいです」
「あー、なるほど。ここは足も手も届かへん場所やもんな。りょーかいや」
たわしで首をこすってやると気持ち良さそうに目を細める。鱗があるのできれいにするにはそれなりにコツが要りそうだが、痒い場所を掻くだけなら問題なさそうだ。それを見ていた他のドラゴン達が騒がしくなった。どうやら自分もやってほしいらしく、騒ぎながら全頭がこっちに近づいてくる。
「おいおい、それはあかんと思うわ。そっちはそっちでやってもらわんと」
「ですよね。それぞれの担当キーパーはここの道具をさっさと持って行くように! 早くしないとうちの五番機組が圧し潰されて大変なことになる!」
神森が指示を出した。それぞれのキーパー達が道具を持って、こっちに来ていたドラゴンを元の場所につれていく。どのドラゴンもキーパー達にゴシゴシしてもらって気持ち良さそうだ。すぐ隣の六番機君は爪を切ってもらっているようで、器用に片足で立っている。
「お化けみたいなニッパーがあるのは爪を切るためなんか」
「葛城さん、こっちに残っていたらドラゴンの爪を切れたのにって、めちゃくちゃ残念がりそうですよ」
「たしかに」
葛城が田んぼ作業から戻ってきたら、さっそく話して聞かせてやらな。
36
お気に入りに追加
426
あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。


【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる