27 / 77
本編 2
第二十五話 那覇 お土産騒動
しおりを挟む
「ほんま、沖縄ってあったかくてええわー……」
支援機のハークが到着するのを、滑走路わきで待ちながら空を見上げた。那覇基地は、一年のほとんどを夏の制服ですごせる場所だ。到着してキャノピーを開けた時から、松島とはまったく違う体感温度だった。風が強くなり、気温がどんどん下がってきている松島基地とは大違いだな。
「この時期でも、普段は晴れていたら汗ばむぐらいですけどね。今日は雲が多いせいで、ちょうどいい気温ですよ」
ブルーに来るまでこの基地の飛行隊にいた葛城が、空を見上げながら言った。
「明日と明後日の天候はどうなんや?」
「それを俺に聞くんですか? この基地にも影坊主が送り込まれているんですよ? 晴れに決まってるじゃないですか」
「……班長ときたらまったく、用意周到なこっちゃ」
「班長が送る前に、こっちから要請があったようですよ。天気か怪しいから、影坊主を送ってくれって」
「さよかー……なんとまあ、やな」
影坊主は快晴祈願アイテムとして、すっかり定着してしまったようだ。そうこうしているうちに、キーパー達や機材を載せたハークが見えてきた。滑走路に着陸すると、ゆっくりとタキシングをしながらこっちへと向かってくる。
「そう言えば今回、班長は支援機に乗ってるんですよね。いつもなら班長は俺達と一緒なのに、珍しいこともあるものだと思ってるんですが」
「ん? ああ、今回はおにぎりが大量やろ? いつもの場所にしまわれへんから、途中で俺が食べる分以外は、班長が持って支援機に乗るってことになったんや」
俺の返事に、葛城は微妙な顔をする。
「保冷用のボックスもありますよね? おにぎりだけハークに乗せるという選択肢は……」
「ないねん」
「ないんですか」
葛城が俺の答えに笑った。
「あんな、わろてるけど大事なおにぎりやで。他人任せになんてできへんやろ?」
「まあ、三佐的にはそうなんでしょうけどね」
「隊長かておにぎり持参組はひとまとめって言うてるやん? 俺は五番機を飛ばしてこなあかんから、おにぎりを班長に任せたっちゅうわけや」
「なるほど」
なるほどと言いながら、葛城は理解できないという顔をしている。
「それと、今回は三佐の奥さんのおにぎりじゃなくて、班長の奥さんのおにぎりなんですよね。そこは大丈夫なんですか?」
「大丈夫やで。ちゃんと話し合って決めたことやからな」
「なんとも複雑なおにぎり観なんですね、三佐のおにぎり観は」
そうだろうか。自分で言うのもなんだが、俺のおにぎり観は実にシンプルだと思うんだがな。
「そうか?」
「ええ、かなり複雑だと思います。まあ……それだけ、三佐と班長の絆が強いってことなんでしょうけど」
「絆て……なんやムズムズするで」
「じゃあ、おにぎり仲間の団結心ってやつで」
「そっちのほうがええわ」
ハークが指定された場所で停止すると、待機していた隊員達が向かい、積み込まれた荷物を運び出す作業にとりかかった。キーパー達が降りてくる中に青井の姿もある。那覇基地の隊員になにか指示を出してから、俺達のほうへと足早に歩いてきた。
「影山、これ。お前の分のおにぎり」
差し出されたのは、いつもの保冷用のランチボックスだ。
「おおきに、班長。奥さんにもお礼を言わなな」
「影山の奥さんから何度もお礼を言われてるから、気にするなよ。うちちの嫁も楽しんで作ったみたいだし」
青井の嫁さんは、うちの嫁ちゃんと連絡を取り合いおにぎりの具を決めたらしい。「なんでもええで」とは言っておいたんだが、できるだけ気持ち良く飛んでほしいからと、青井の嫁さんが気を遣ってくれたんだとか。ほんま、ありがたいことやで。さすが総括班長の嫁さんや。
「でも形は保証しないぞ。今回はいつも以上に張り切って、試行錯誤していたのは知ってるけど」
そう言って青井が笑う。
「見てへんのかいな」
「いつも食べるまでは秘密なんだ。だから今回のおにぎりも、例外じゃないんだよ」
「ほー……それは楽しみや」
ランチボックスにおさまっているということは、前に見たピトー管型おにぎりはないということだ。あの愉快なおにぎりを知っているこっちとしては、ちょっと残念な気持ちがしないでもない。
「なんや今日の訓練が楽しみになってきたわ」
「ああ、それで思い出した。今日の訓練前のおにぎりはこれ。さっさと食べて予行開始だぞ」
そう言って渡されたのは、アルミホイルで包まれたおにぎりだ。受け取ってから〝ん?〟となる。
「なあ、これもしかして嫁ちゃんのおにぎりか?」
「よくわかったな、中身が見えてないのに。出発前に届けてくれたんだよ、そのおにぎり」
「嫁ちゃん、無茶しよってから……」
基地に来る途中で、こけでもしたらどないするんや……。
「ああ、基地にそれを届けてくれたのはお義母さんだったから、その点は心配しなくても大丈夫」
俺のぼやきに気がついたのか、青井がそう付け加えた。
「そっか。それならええんやけどな。それでもお義母さん、朝もはよから……ほんまにおおきにやで、嫁ちゃんとお義母さん。ほんま、わいは果報もんや」
松島基地の方向を向くと、両手を合わせてから頭を下げる。ほんま、ありがたいことやで。
「それと葛城。管制隊のほうから、追加のおみやげリストをあずかったんだけど」
「ありがとうございます、班長。リスト化が遅れているので、支援機に乗せるって聞いていたんです」
葛城が青井からリストを受け取る。
「なあ、これ、かなりの量だけどこれで全部なのか?」
青井が不安げに言った。
「いえ。他の部署の分は前日に受け取ったので、先にファクスで送っておきました」
「……ちょっと多すぎる気がするんだけどな。かなりの重量にもなりそうだし」
リストをのぞくと、有名なお菓子の他にタンカンやドラゴンフルーツ、さらには泡盛のシークワーサージュースと、管制隊だけでもかなりの重量になりそうだ。
「少なくともこの三倍はありますね、全体のおみやげリストの総数は」
「それと、わいらが家族向けに買うおみやげもあるしな」
それを聞いた青井が目をむく。
「そんなに?! いくらハークでもそこまで積めないだろ!」
「でももう基地の知り合いに頼んじゃいましたよ。明後日の昼すぎには、基地に届いてハークに搬入予定です」
「こんなに乗せたら、人が乗る余裕がなくなるじゃないか!」
「問題なく乗るゆーてたで」
俺が口をはさむと青井がにらんできた。
「誰が!」
「ハークのロードマスターが。なあ?」
「はい。泡盛のこともあるので、先持って言っておいたんです。そうしたら問題ないと言われました」
青井はイヤイヤと首を横にふる。
「それは、このリスト分がまだ含まれてないからだろ? しかもお前達は、まだおみやげは買ってないんだよな? ってことはまだ増えるってことじゃないか。しかも少なくともライダー全員分が!」
「せやな」
「まあそうですね」
俺と葛城の返事に、青井は頭をかかえこんだ。そしてなにやら難しい顔をして考え始める。
「……決めた。いいか、お前達ライダーのおみやげは一万円以内だから。それと荷物はT-4の荷物入れに乗る範囲で」
「は?! なんでやねん、タンカンたくさん買うて帰るって、約束したんやで」
あそこに入る量なんてたかが知れている。とんでもないぞと抗議するが、青井は首を縦にふろうとはしなかった。
「誰がなんと言おうとそれ以上はダメだ。人が乗れなくなる。別便で帰るとなったら、また俺の仕事が増えるだろ、沖田も司令に報告しなくちゃいけなくなるし。だから一万円以内、あのスペースに入るだけ、これが絶対条件だから」
「そんなんせっしょうや……小学生の遠足やないんやで」
「そんなこと言うなら、遠足並みの300円以内にするぞ」
「嫁ちゃんがタンカン食べるの楽しみにしてるのに」
青井は一瞬折れかけたが、なんとかもちこたえよった。チッ、情にうったえてみたがあかんかったか。
「だったら自腹で送れ。とにかく支援機とブルーに乗せるんだったら、それ以内で用意するように。これは班長命令だから」
「えー……」
「そんなんあかんわー、めっちゃがっかりやん、うわー、ショックやわー、もうショックすぎて飛びたないわー……」
「飛びたくないのはいつものことだろ!」
こういうことになると青井は容赦ない。
「いいか、一万円以内だから! それ以上のものは、ここに持ち込んでも積まずに置いていくからな。ああ、沖田にも言っておかないとな。あいつ、意外とお前達には甘いから……」
ブツブツとつぶやきながら、青井は隊長がいるであろう建物のほうへと立ち去った。
「なんや今日の班長、えらい強権発動してへんかったか?」
「いやまあ……たしかに、ちょっと多すぎかなとは思ってましたし……」
「せやなあ、今回のリストは液体モンが多かったからなあ……」
遠ざかっていく青井の背中を見送りながら、二人で話し合う。
「せやけど、せっしょうやで。俺らのおみやげが一番少のうなるんちゃう? 完全なとばっちりやんか」
「自腹で送るしかないですね」
「後ろに目一杯、タンカンを乗せて帰ろう思ってたのになあ……」
その点だけが無念だ。
「はー、無念やで、無念すぎて、ほんま、飛びたないわー」
「奥さんのおにぎりが届けられたんですから、それを食べて機嫌をなおしてくださいよ」
「そのセリフ、班長に言ったほうがええんちゃう? そしたらタンカン、たくさん積んでもええようになるかも」
「さあ、どうでしょうね、その点では班長はきっちりしてますから」
そしてその日の夕方、ライダーのおみやげは、総括班長のいう条件で用意しろとのお達しが隊長から伝えられた。
ほんま、せっしょうやで……。
支援機のハークが到着するのを、滑走路わきで待ちながら空を見上げた。那覇基地は、一年のほとんどを夏の制服ですごせる場所だ。到着してキャノピーを開けた時から、松島とはまったく違う体感温度だった。風が強くなり、気温がどんどん下がってきている松島基地とは大違いだな。
「この時期でも、普段は晴れていたら汗ばむぐらいですけどね。今日は雲が多いせいで、ちょうどいい気温ですよ」
ブルーに来るまでこの基地の飛行隊にいた葛城が、空を見上げながら言った。
「明日と明後日の天候はどうなんや?」
「それを俺に聞くんですか? この基地にも影坊主が送り込まれているんですよ? 晴れに決まってるじゃないですか」
「……班長ときたらまったく、用意周到なこっちゃ」
「班長が送る前に、こっちから要請があったようですよ。天気か怪しいから、影坊主を送ってくれって」
「さよかー……なんとまあ、やな」
影坊主は快晴祈願アイテムとして、すっかり定着してしまったようだ。そうこうしているうちに、キーパー達や機材を載せたハークが見えてきた。滑走路に着陸すると、ゆっくりとタキシングをしながらこっちへと向かってくる。
「そう言えば今回、班長は支援機に乗ってるんですよね。いつもなら班長は俺達と一緒なのに、珍しいこともあるものだと思ってるんですが」
「ん? ああ、今回はおにぎりが大量やろ? いつもの場所にしまわれへんから、途中で俺が食べる分以外は、班長が持って支援機に乗るってことになったんや」
俺の返事に、葛城は微妙な顔をする。
「保冷用のボックスもありますよね? おにぎりだけハークに乗せるという選択肢は……」
「ないねん」
「ないんですか」
葛城が俺の答えに笑った。
「あんな、わろてるけど大事なおにぎりやで。他人任せになんてできへんやろ?」
「まあ、三佐的にはそうなんでしょうけどね」
「隊長かておにぎり持参組はひとまとめって言うてるやん? 俺は五番機を飛ばしてこなあかんから、おにぎりを班長に任せたっちゅうわけや」
「なるほど」
なるほどと言いながら、葛城は理解できないという顔をしている。
「それと、今回は三佐の奥さんのおにぎりじゃなくて、班長の奥さんのおにぎりなんですよね。そこは大丈夫なんですか?」
「大丈夫やで。ちゃんと話し合って決めたことやからな」
「なんとも複雑なおにぎり観なんですね、三佐のおにぎり観は」
そうだろうか。自分で言うのもなんだが、俺のおにぎり観は実にシンプルだと思うんだがな。
「そうか?」
「ええ、かなり複雑だと思います。まあ……それだけ、三佐と班長の絆が強いってことなんでしょうけど」
「絆て……なんやムズムズするで」
「じゃあ、おにぎり仲間の団結心ってやつで」
「そっちのほうがええわ」
ハークが指定された場所で停止すると、待機していた隊員達が向かい、積み込まれた荷物を運び出す作業にとりかかった。キーパー達が降りてくる中に青井の姿もある。那覇基地の隊員になにか指示を出してから、俺達のほうへと足早に歩いてきた。
「影山、これ。お前の分のおにぎり」
差し出されたのは、いつもの保冷用のランチボックスだ。
「おおきに、班長。奥さんにもお礼を言わなな」
「影山の奥さんから何度もお礼を言われてるから、気にするなよ。うちちの嫁も楽しんで作ったみたいだし」
青井の嫁さんは、うちの嫁ちゃんと連絡を取り合いおにぎりの具を決めたらしい。「なんでもええで」とは言っておいたんだが、できるだけ気持ち良く飛んでほしいからと、青井の嫁さんが気を遣ってくれたんだとか。ほんま、ありがたいことやで。さすが総括班長の嫁さんや。
「でも形は保証しないぞ。今回はいつも以上に張り切って、試行錯誤していたのは知ってるけど」
そう言って青井が笑う。
「見てへんのかいな」
「いつも食べるまでは秘密なんだ。だから今回のおにぎりも、例外じゃないんだよ」
「ほー……それは楽しみや」
ランチボックスにおさまっているということは、前に見たピトー管型おにぎりはないということだ。あの愉快なおにぎりを知っているこっちとしては、ちょっと残念な気持ちがしないでもない。
「なんや今日の訓練が楽しみになってきたわ」
「ああ、それで思い出した。今日の訓練前のおにぎりはこれ。さっさと食べて予行開始だぞ」
そう言って渡されたのは、アルミホイルで包まれたおにぎりだ。受け取ってから〝ん?〟となる。
「なあ、これもしかして嫁ちゃんのおにぎりか?」
「よくわかったな、中身が見えてないのに。出発前に届けてくれたんだよ、そのおにぎり」
「嫁ちゃん、無茶しよってから……」
基地に来る途中で、こけでもしたらどないするんや……。
「ああ、基地にそれを届けてくれたのはお義母さんだったから、その点は心配しなくても大丈夫」
俺のぼやきに気がついたのか、青井がそう付け加えた。
「そっか。それならええんやけどな。それでもお義母さん、朝もはよから……ほんまにおおきにやで、嫁ちゃんとお義母さん。ほんま、わいは果報もんや」
松島基地の方向を向くと、両手を合わせてから頭を下げる。ほんま、ありがたいことやで。
「それと葛城。管制隊のほうから、追加のおみやげリストをあずかったんだけど」
「ありがとうございます、班長。リスト化が遅れているので、支援機に乗せるって聞いていたんです」
葛城が青井からリストを受け取る。
「なあ、これ、かなりの量だけどこれで全部なのか?」
青井が不安げに言った。
「いえ。他の部署の分は前日に受け取ったので、先にファクスで送っておきました」
「……ちょっと多すぎる気がするんだけどな。かなりの重量にもなりそうだし」
リストをのぞくと、有名なお菓子の他にタンカンやドラゴンフルーツ、さらには泡盛のシークワーサージュースと、管制隊だけでもかなりの重量になりそうだ。
「少なくともこの三倍はありますね、全体のおみやげリストの総数は」
「それと、わいらが家族向けに買うおみやげもあるしな」
それを聞いた青井が目をむく。
「そんなに?! いくらハークでもそこまで積めないだろ!」
「でももう基地の知り合いに頼んじゃいましたよ。明後日の昼すぎには、基地に届いてハークに搬入予定です」
「こんなに乗せたら、人が乗る余裕がなくなるじゃないか!」
「問題なく乗るゆーてたで」
俺が口をはさむと青井がにらんできた。
「誰が!」
「ハークのロードマスターが。なあ?」
「はい。泡盛のこともあるので、先持って言っておいたんです。そうしたら問題ないと言われました」
青井はイヤイヤと首を横にふる。
「それは、このリスト分がまだ含まれてないからだろ? しかもお前達は、まだおみやげは買ってないんだよな? ってことはまだ増えるってことじゃないか。しかも少なくともライダー全員分が!」
「せやな」
「まあそうですね」
俺と葛城の返事に、青井は頭をかかえこんだ。そしてなにやら難しい顔をして考え始める。
「……決めた。いいか、お前達ライダーのおみやげは一万円以内だから。それと荷物はT-4の荷物入れに乗る範囲で」
「は?! なんでやねん、タンカンたくさん買うて帰るって、約束したんやで」
あそこに入る量なんてたかが知れている。とんでもないぞと抗議するが、青井は首を縦にふろうとはしなかった。
「誰がなんと言おうとそれ以上はダメだ。人が乗れなくなる。別便で帰るとなったら、また俺の仕事が増えるだろ、沖田も司令に報告しなくちゃいけなくなるし。だから一万円以内、あのスペースに入るだけ、これが絶対条件だから」
「そんなんせっしょうや……小学生の遠足やないんやで」
「そんなこと言うなら、遠足並みの300円以内にするぞ」
「嫁ちゃんがタンカン食べるの楽しみにしてるのに」
青井は一瞬折れかけたが、なんとかもちこたえよった。チッ、情にうったえてみたがあかんかったか。
「だったら自腹で送れ。とにかく支援機とブルーに乗せるんだったら、それ以内で用意するように。これは班長命令だから」
「えー……」
「そんなんあかんわー、めっちゃがっかりやん、うわー、ショックやわー、もうショックすぎて飛びたないわー……」
「飛びたくないのはいつものことだろ!」
こういうことになると青井は容赦ない。
「いいか、一万円以内だから! それ以上のものは、ここに持ち込んでも積まずに置いていくからな。ああ、沖田にも言っておかないとな。あいつ、意外とお前達には甘いから……」
ブツブツとつぶやきながら、青井は隊長がいるであろう建物のほうへと立ち去った。
「なんや今日の班長、えらい強権発動してへんかったか?」
「いやまあ……たしかに、ちょっと多すぎかなとは思ってましたし……」
「せやなあ、今回のリストは液体モンが多かったからなあ……」
遠ざかっていく青井の背中を見送りながら、二人で話し合う。
「せやけど、せっしょうやで。俺らのおみやげが一番少のうなるんちゃう? 完全なとばっちりやんか」
「自腹で送るしかないですね」
「後ろに目一杯、タンカンを乗せて帰ろう思ってたのになあ……」
その点だけが無念だ。
「はー、無念やで、無念すぎて、ほんま、飛びたないわー」
「奥さんのおにぎりが届けられたんですから、それを食べて機嫌をなおしてくださいよ」
「そのセリフ、班長に言ったほうがええんちゃう? そしたらタンカン、たくさん積んでもええようになるかも」
「さあ、どうでしょうね、その点では班長はきっちりしてますから」
そしてその日の夕方、ライダーのおみやげは、総括班長のいう条件で用意しろとのお達しが隊長から伝えられた。
ほんま、せっしょうやで……。
12
お気に入りに追加
426
あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。


【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる