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帝国海軍の猫大佐 裏話
一般公開に行くよ! in 帝国海軍の猫大佐 10
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帝国海軍の猫大佐の裏話的エピソードです
+++++
「いい汗かいてるなー」
「そういう問題?」
私達がトレーニングルームに入ってきても、お兄さんの腕立て伏せの勢いは止まらない。横で見物している隊員さん達は、姿勢を正して修ちゃんに敬礼をした。
「すごいな、伊勢。立検隊、ずいぶん体力がついてきたんじゃないか?」
「まだまだですよ。最終目的は、俺を乗せての腕立て伏せ十回ですからね」
その言葉に、修ちゃんはあきれた顔をする。
「無理するなよ? 体を壊したら元も子もないからな」
「わかっています。あ、奥さん、乗ってみますか?」
「いえいえ! 遠慮します!」
私が首を横にふると、伊勢さんは残念そうな顔をした。
「おいおい、なんでうちの嫁」
「今のみむろは男ばかりですからね。なかなか軽い人間が見つからなくて。副長の息子さんの次にとなると、奥さんぐらいしかいないでしょ」
真面目な顔をして言っているところを見ると、伊勢さんは本気で言っているらしい。
「だからってうちの嫁を重石にするな。それにめったにこっちに来ないから、アテにはできないぞ」
「たとえこっちに住んでいても、トレーニングの付き合うのはかんべんかなー」
私がボソッと横でつぶやくと、修ちゃんと伊勢さんは笑った。二人とも笑ってるけど、私は本気で言ってるんだからね? イヤだよ、休みのたびに呼び出されてお兄さん達の上に座るなんて。他になにか、かわりになるモノはないの? 漬物石とか。
「そうですか、それは残念。がんばって他を当たってみます」
「どうしても人型の重石がいるってんなら、溺者人形を改造しろよ。あれなら重さを自由に調節できるし、怪我人が出る心配もないだろ」
溺者人形とは、海に隊員さんが落ちたことを想定して訓練する時の、隊員役をする人形のことだ。この隊員役をすることが、護衛艦では一番の激務と言われている。それもあってか乗員さん達は、その人形に名前をつけてとても可愛がっていた。
「うちのみむろ君を改造したら、激怒しませんかね、清原先任。あれをえらく可愛がっているんですが」
「お前の交渉力しだいじゃないか?」
「なるほど。では一度、清原先任と交渉してみます」
伊勢さんは真面目な顔でうなづいた。その様子に、修ちゃんはやれやれと首を横にふる。
「さて、そろそろ、うちの息子を重石役から解放してもらっても良いかな? 艦内を見学させたいから」
「了解しました。腕立て伏せやめ!」
その掛け声に、腕立て伏せをしていたお兄さんがマットの上でのびた。
「はー……小さい子でも、さすがにきつすっいスねー! 副長、お疲れさまです!」
かず君を背中からおろし、腕立て伏せをしていた隊員さんが立ち上がる。
「お疲れさん。それと息子の相手をありがとう。助かったよ」
「いえいえ。こちらも助かりました。それに息子さん、将来の立検隊候補かもしれませんからね」
伊勢さん達がおちびさんを見下ろしてニカッと笑った。おちびさんも同じようにニカッと笑って敬礼をする。
「うちの息子をリクルートするな。油断もスキもないな」
「息子さんの負けん気とチャレンジ精神は、立検隊に向いていると思いますが。ま、もっと上を目指しても驚きませんがね。特警とか」
「うちのはまだ幼稚園児だぞ。まだお前達と戦隊モノのヒーローの違いは、わかってないと思うぞ?」
「戦隊モノのヒーローですか」
おちびさんからしたら、伊勢さん達はかっこいいヒーローだ。任務の大変さを理解するのは、まだまだ先のことだと思う。
「では息子さんのヒーローであり続けるために、日々精進いたします!」
本気なのか冗談なのか、その場にいた立検隊の皆さんが、修ちゃんとおちびさんに向けて敬礼をした。
「二人とも行こうか。ここでグズクズしていたら、そのうち俺まで重石あつかいだ」
修ちゃんは笑いながら、私とかず君を部屋から押し出した。
「ああ、伊勢、今日の礼はあらためてするから」
「お心遣いありがとうございます。楽しみにしています」
部屋からそんな返事が返ってくる。
「お礼って?」
廊下を歩きながら質問をする。
「貴重な訓練の時間に、和人の相手をしてもらってたんだ。それなりの礼は必要だろ?」
「飲み会でおごるみたいな?」
「そんな感じ。もちろん今日じゃないよ。二人が帰ってからの話さ」
律儀だよね。そういうところが修ちゃんの良いとこなんだけど。
「パパ、リンゴジュースのんだー!」
「それは良かった。おいしかった?」
「うん!」
「もしかして伊勢さんに渡したやつ?」
伊勢さんにおちびさんを頼んだ時、修ちゃんがジュースを渡したことを思い出す。
「うん。自販機、子供が飲めるようなの売ってないからさ」
「いろいろありがとう」
「どういたしまして。さて、和人、どこをみたい? まだ時間はあるから中の見学できるぞ?」
「パパの部屋!」
その返事に困惑をする修ちゃん。
「もっと面白いところあるだろ。なんでそこ」
「パパの部屋!!」
「私も見たいなー、修ちゃんの部屋」
「まこっちゃんもか」
「別に散らかってるわけじゃないでしょ? それに個室なんだよね?」
二人部屋なら、同室の相手の許可がないとダメって断れるだろうけど、いまは個室だって聞いている。断る口実ないよね?
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「いい汗かいてるなー」
「そういう問題?」
私達がトレーニングルームに入ってきても、お兄さんの腕立て伏せの勢いは止まらない。横で見物している隊員さん達は、姿勢を正して修ちゃんに敬礼をした。
「すごいな、伊勢。立検隊、ずいぶん体力がついてきたんじゃないか?」
「まだまだですよ。最終目的は、俺を乗せての腕立て伏せ十回ですからね」
その言葉に、修ちゃんはあきれた顔をする。
「無理するなよ? 体を壊したら元も子もないからな」
「わかっています。あ、奥さん、乗ってみますか?」
「いえいえ! 遠慮します!」
私が首を横にふると、伊勢さんは残念そうな顔をした。
「おいおい、なんでうちの嫁」
「今のみむろは男ばかりですからね。なかなか軽い人間が見つからなくて。副長の息子さんの次にとなると、奥さんぐらいしかいないでしょ」
真面目な顔をして言っているところを見ると、伊勢さんは本気で言っているらしい。
「だからってうちの嫁を重石にするな。それにめったにこっちに来ないから、アテにはできないぞ」
「たとえこっちに住んでいても、トレーニングの付き合うのはかんべんかなー」
私がボソッと横でつぶやくと、修ちゃんと伊勢さんは笑った。二人とも笑ってるけど、私は本気で言ってるんだからね? イヤだよ、休みのたびに呼び出されてお兄さん達の上に座るなんて。他になにか、かわりになるモノはないの? 漬物石とか。
「そうですか、それは残念。がんばって他を当たってみます」
「どうしても人型の重石がいるってんなら、溺者人形を改造しろよ。あれなら重さを自由に調節できるし、怪我人が出る心配もないだろ」
溺者人形とは、海に隊員さんが落ちたことを想定して訓練する時の、隊員役をする人形のことだ。この隊員役をすることが、護衛艦では一番の激務と言われている。それもあってか乗員さん達は、その人形に名前をつけてとても可愛がっていた。
「うちのみむろ君を改造したら、激怒しませんかね、清原先任。あれをえらく可愛がっているんですが」
「お前の交渉力しだいじゃないか?」
「なるほど。では一度、清原先任と交渉してみます」
伊勢さんは真面目な顔でうなづいた。その様子に、修ちゃんはやれやれと首を横にふる。
「さて、そろそろ、うちの息子を重石役から解放してもらっても良いかな? 艦内を見学させたいから」
「了解しました。腕立て伏せやめ!」
その掛け声に、腕立て伏せをしていたお兄さんがマットの上でのびた。
「はー……小さい子でも、さすがにきつすっいスねー! 副長、お疲れさまです!」
かず君を背中からおろし、腕立て伏せをしていた隊員さんが立ち上がる。
「お疲れさん。それと息子の相手をありがとう。助かったよ」
「いえいえ。こちらも助かりました。それに息子さん、将来の立検隊候補かもしれませんからね」
伊勢さん達がおちびさんを見下ろしてニカッと笑った。おちびさんも同じようにニカッと笑って敬礼をする。
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「うちのはまだ幼稚園児だぞ。まだお前達と戦隊モノのヒーローの違いは、わかってないと思うぞ?」
「戦隊モノのヒーローですか」
おちびさんからしたら、伊勢さん達はかっこいいヒーローだ。任務の大変さを理解するのは、まだまだ先のことだと思う。
「では息子さんのヒーローであり続けるために、日々精進いたします!」
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