40 / 55
帝国海軍の猫大佐 裏話
一般公開に行くよ! in 帝国海軍の猫大佐 3
しおりを挟む
帝国海軍の猫大佐の裏話的エピソードです
+++++
「お母さん、この日、修ちゃんちにお泊り行ってくる」
親世帯側にいくと、お母さんに声をかけた。
「どの日?」
「この日ー。仕事あると思うけど、シイタケとマイタケのこと、たのめる?」
お婆ちゃんが亡くなってから、お母さんは専業主婦を卒業した。とは言っても、結婚してお姉ちゃんが生まれるまでは、お父さんと同じ会社で働いていて、まったくの未経験者ではなかったんだけど。
「いいわよ。二匹も四匹も一緒だから」
私達からしたら、お婆ちゃんの介護生活が終わったんだし、気楽に猫ライフを楽しめば良いのにって話なんだけど、猫の食費ぐらいは自分でかせぐ!と一念発起。意外と今の職場が合っているようで、猫の食費をかせぐパートライフを楽しんでいる。もちろん、自分の食費ではなく、猫のなの?!と皆のツッコミが入ったのは言うまでもない。
「うちの子達も、シイタケちゃんとマイタケちゃんのこと好きだし、こっちにつれてきて面倒みようか? そのほうが、運動会の心配しなくていいでしょ?」
「それ助かるけど、こっちでの運動会が、とんでもないことにならない?」
「その保証はチクワとカマボコのおみやげね」
修ちゃんが今いるところは、おいしいカマボコがいっぱいある地域なのだ。
「それさあ、お母さんが食べるんじゃなくて、猫達のお腹に入っちゃうんじゃ?」
「そんなことないわよ。私も食べる」
私「も」ってことが実にあやしい。
「商談は成立。チクワとカマボコかってくる。なんかね、個人商店で、すごくおいしいカマボコのお店があるんだって。そこにつれてってもらう予定」
「修ちゃんだって仕事があるんだから、無理いったらダメよ?」
「わかってる。ああ、ピエールさん、お元気ー?」
足元にピエールがしずしずとやってきた。私の顔を見あげてニャーンと鳴くと、コロンと寝っ転がってお腹を見せる。君、わがはいを撫でたまえという合図だ。
「本当に穏やかな性格だよねー、ピエールさんて。ちょっと偉そうだけど」
「鷹揚な性格ってやつかしらね」
「うちの二匹も、年をとったらこんなふうに落ち着くかなー」
「無理ね」
「断言されてるし」
そこにマリアンヌもやってきた。ニャーンとなくと頭突きをしてくる。こちらも非常に上品な頭突きだ。
「マリアンヌさんも上品だよね。キーッてならないし」
「いたわねー、そんな子」
ちょっとの間うちにいた、野良のお婆ちゃん猫がそんな感じだった。ちょっとでも他の子が近づくとシャーッてなって、大変だったことを思い出す。
「あ、そうだ、真琴。おいしいお肉もらったのよ。今晩は一緒にすき焼きでもしちゃう?」
「え、すき焼き?! いいね、すき焼き!」
それを聞いて頭の中は、すき焼きの甘い味でいっぱいになった。
「あ、他はどうする? うち、すき焼きに入れられそうなの、ネギとタマネギとシラタキぐらいしかないかも」
冷蔵庫の中のものを思い浮かべながら首をかしげる。
「別にいいわよ、わざわざ持ち寄らなくても。たまには親世代にたかりなさいよ、せっかくの二世帯なんだから」
「十分にたからせてもらってると思うけどなー、私。あ、お米を提供しようか?」
「それであんたの気がすむなら、持ってきなさい」
お母さんは笑いながら手を振った。
「わかった。じゃあ、和人つれてくるね。あ、猫達も一緒にいい?」
「いいわよ。どうせついてくるだろうし」
自分世帯に戻ると、おちびさんに声をかける。
「バアバが一緒にご飯たべようって」
「わーい、バアバんとこ行くー!」
「あ、ちょっと待って。パジャマとパンツ、それからカリカリを持っていっくてれる?」
「わかったー!」
どうしてパジャマとパンツとカリカリかというと、うちの二匹は決まったカリカリしか食べないからだ。晩御飯を一緒に食べたら、おチビさんはあっちで寝ちゃうパターンで、そうなると必然的に二匹も一緒にいることになる。だから朝のカリカリを持っていくのだ。
「自分でパジャマとパンツ、用意できるー?」
「できるー!」
その間にカリカリとお米を用意した。その間、なぜかシイタケとマイタケが私の後ろについてきて、フンフンとにおいをかぎまくっている。自分達とは違う猫のにおいに気づいたらしい。
「ピエールさんとマリアンヌさんのにおいでしょー? あっちに行くんだよ、君達も」
「ママー、これに入れたらいいー?」
おチビさんが、パジャマとパンツ、そしてお気に入りの布製のエコバックを持ってきた。陸自さんの駐屯地でもらったもので、お買い物には使わず、おチビさんの「バアバんちお泊りセット」用に使わせてもらっている。いやほら、貴重な非売品なのかわかってるけど、外で使うのはちょっと恥ずかしいじゃん?
「じゃあ行くよー」
「いこー!」
おちびさんは猫達を引きつれて、親世帯へとつながる廊下を走っていった。
「すっかり三人兄弟だよね……」
尻尾をピンと立てて、おちびさんの後ろを走っていく猫達を見送りながら、ため息をつく。猫使いの血は、しっかりと受け継がれているみたい。
+++++
「お母さん、この日、修ちゃんちにお泊り行ってくる」
親世帯側にいくと、お母さんに声をかけた。
「どの日?」
「この日ー。仕事あると思うけど、シイタケとマイタケのこと、たのめる?」
お婆ちゃんが亡くなってから、お母さんは専業主婦を卒業した。とは言っても、結婚してお姉ちゃんが生まれるまでは、お父さんと同じ会社で働いていて、まったくの未経験者ではなかったんだけど。
「いいわよ。二匹も四匹も一緒だから」
私達からしたら、お婆ちゃんの介護生活が終わったんだし、気楽に猫ライフを楽しめば良いのにって話なんだけど、猫の食費ぐらいは自分でかせぐ!と一念発起。意外と今の職場が合っているようで、猫の食費をかせぐパートライフを楽しんでいる。もちろん、自分の食費ではなく、猫のなの?!と皆のツッコミが入ったのは言うまでもない。
「うちの子達も、シイタケちゃんとマイタケちゃんのこと好きだし、こっちにつれてきて面倒みようか? そのほうが、運動会の心配しなくていいでしょ?」
「それ助かるけど、こっちでの運動会が、とんでもないことにならない?」
「その保証はチクワとカマボコのおみやげね」
修ちゃんが今いるところは、おいしいカマボコがいっぱいある地域なのだ。
「それさあ、お母さんが食べるんじゃなくて、猫達のお腹に入っちゃうんじゃ?」
「そんなことないわよ。私も食べる」
私「も」ってことが実にあやしい。
「商談は成立。チクワとカマボコかってくる。なんかね、個人商店で、すごくおいしいカマボコのお店があるんだって。そこにつれてってもらう予定」
「修ちゃんだって仕事があるんだから、無理いったらダメよ?」
「わかってる。ああ、ピエールさん、お元気ー?」
足元にピエールがしずしずとやってきた。私の顔を見あげてニャーンと鳴くと、コロンと寝っ転がってお腹を見せる。君、わがはいを撫でたまえという合図だ。
「本当に穏やかな性格だよねー、ピエールさんて。ちょっと偉そうだけど」
「鷹揚な性格ってやつかしらね」
「うちの二匹も、年をとったらこんなふうに落ち着くかなー」
「無理ね」
「断言されてるし」
そこにマリアンヌもやってきた。ニャーンとなくと頭突きをしてくる。こちらも非常に上品な頭突きだ。
「マリアンヌさんも上品だよね。キーッてならないし」
「いたわねー、そんな子」
ちょっとの間うちにいた、野良のお婆ちゃん猫がそんな感じだった。ちょっとでも他の子が近づくとシャーッてなって、大変だったことを思い出す。
「あ、そうだ、真琴。おいしいお肉もらったのよ。今晩は一緒にすき焼きでもしちゃう?」
「え、すき焼き?! いいね、すき焼き!」
それを聞いて頭の中は、すき焼きの甘い味でいっぱいになった。
「あ、他はどうする? うち、すき焼きに入れられそうなの、ネギとタマネギとシラタキぐらいしかないかも」
冷蔵庫の中のものを思い浮かべながら首をかしげる。
「別にいいわよ、わざわざ持ち寄らなくても。たまには親世代にたかりなさいよ、せっかくの二世帯なんだから」
「十分にたからせてもらってると思うけどなー、私。あ、お米を提供しようか?」
「それであんたの気がすむなら、持ってきなさい」
お母さんは笑いながら手を振った。
「わかった。じゃあ、和人つれてくるね。あ、猫達も一緒にいい?」
「いいわよ。どうせついてくるだろうし」
自分世帯に戻ると、おちびさんに声をかける。
「バアバが一緒にご飯たべようって」
「わーい、バアバんとこ行くー!」
「あ、ちょっと待って。パジャマとパンツ、それからカリカリを持っていっくてれる?」
「わかったー!」
どうしてパジャマとパンツとカリカリかというと、うちの二匹は決まったカリカリしか食べないからだ。晩御飯を一緒に食べたら、おチビさんはあっちで寝ちゃうパターンで、そうなると必然的に二匹も一緒にいることになる。だから朝のカリカリを持っていくのだ。
「自分でパジャマとパンツ、用意できるー?」
「できるー!」
その間にカリカリとお米を用意した。その間、なぜかシイタケとマイタケが私の後ろについてきて、フンフンとにおいをかぎまくっている。自分達とは違う猫のにおいに気づいたらしい。
「ピエールさんとマリアンヌさんのにおいでしょー? あっちに行くんだよ、君達も」
「ママー、これに入れたらいいー?」
おチビさんが、パジャマとパンツ、そしてお気に入りの布製のエコバックを持ってきた。陸自さんの駐屯地でもらったもので、お買い物には使わず、おチビさんの「バアバんちお泊りセット」用に使わせてもらっている。いやほら、貴重な非売品なのかわかってるけど、外で使うのはちょっと恥ずかしいじゃん?
「じゃあ行くよー」
「いこー!」
おちびさんは猫達を引きつれて、親世帯へとつながる廊下を走っていった。
「すっかり三人兄弟だよね……」
尻尾をピンと立てて、おちびさんの後ろを走っていく猫達を見送りながら、ため息をつく。猫使いの血は、しっかりと受け継がれているみたい。
34
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
報酬はその笑顔で
鏡野ゆう
ライト文芸
彼女がその人と初めて会ったのは夏休みのバイト先でのことだった。
自分に正直で真っ直ぐな女子大生さんと、にこにこスマイルのパイロットさんとのお話。
『貴方は翼を失くさない』で榎本さんの部下として登場した飛行教導群のパイロット、但馬一尉のお話です。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
僕の主治医さん
鏡野ゆう
ライト文芸
研修医の北川雛子先生が担当することになったのは、救急車で運び込まれた南山裕章さんという若き外務官僚さんでした。研修医さんと救急車で運ばれてきた患者さんとの恋の小話とちょっと不思議なあひるちゃんのお話。
【本編】+【アヒル事件簿】【事件です!】
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
私の主治医さん - 二人と一匹物語 -
鏡野ゆう
ライト文芸
とある病院の救命救急で働いている東出先生の元に運び込まれた急患は何故か川で溺れていた一人と一匹でした。救命救急で働くお医者さんと患者さん、そして小さな子猫の二人と一匹の恋の小話。
【本編完結】【小話】
※小説家になろうでも公開中※

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
いちいちやらかす僕の妻
月山 歩
恋愛
いつも大切なところで失敗してしまうコーデリアは男性に好かれない。けれども、木から落ちそうなところを助けてくれた男性と知り合い結婚する。変な二人でもピッタリな相手と知り合えたらハッピーというほのぼのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる