19 / 55
猫と幼なじみ
第十九話 二人で猫まみれ
しおりを挟む
暑くて目が覚めた。
「暑い……」
クーラーがきいているはずなのにと、顔をしかめる。その原因の一つはわかっていた。私の背中にはりついている修ちゃんだ。筋肉質の人の熱量が高いというのは本当らしく、非常に熱い。熱いどころか「非常に暑苦しい」というのが正しいかも。そんな熱い筋肉が背中に密着していて、腕がお腹のへんに回されている。
―― 冬場なら、ありがたい熱さなんだけどなー…… ――
そしてもう一つの原因。それは目をあけて判明した。なぜか私のお腹の前で、ヒノキとヤナギが丸くなって寝ている。猫は人間よりもずっと体温が高い。そして毛のかたまりだ。これだけくっつかれていたら、暑くないわけがない。
「修ちゃん、暑いよー」
「んー?」
修ちゃんが眠たそうな声で返事をした。そして私を自分のほうへと引き寄せる。ますます暑い!
「だから暑いんだって。しかも、ヒノキとヤナギまでいるじゃん」
「さっき、部屋に入ってきてさー。めちゃくちゃにおいかがれてあせったよ。なにを探ろうとしていたんだか」
二匹がなんのにおいを気にしていたのか、そこはあえて考えないようにする。
「それにベッド、定員オーバーだよ。修ちゃんとヒノキ達にはさまれて、私、めちゃくちゃせまいんだけど!」
私の部屋のベッドは当然のことながらシングル。二人で寝るにはせまいし、そこに猫二匹が加われば、寝返りをうつことも難しい。もう超定員オーバーだ。私が文句を言うと、ヒノキ達は大きく伸びをして、そのままの態勢で動かなくなった。
「えー、起きてくれたんじゃないのー?」
愕然としている私の耳元で、クスクスと笑う声がした。
「だから笑いごとじゃないんだって、修ちゃーん」
「まったく、まこっちゃんときたら」
私の耳にキスをしながら修ちゃんは笑う。
「文句を言ってるけどさ、俺達がこうやっておさえてなかったら、まこっちゃん、ベッドから落ちてたんだぞ?」
「え、そんなことない!」
「いいや。絶対にベッドから落ちてた。自分が寝相悪いこと、自覚してる?」
「……」
実のところ、自分があまり寝相が良いほうでないことはわかっていた。頭と足の位置が逆になっていたり、お布団が信じられない状態で体の上に乗っていたり。年頃の女子としては、色々と難ありな状態で目が覚めることが少なくなかったのだ。
「この寝相の悪さだと、ベッドのサイズ、シングルをやめてダブルにしたほうが良いと思うけどな」
「そこまで悪くないもん」
あまり自信はないけれど。
「そうかなあ……ま、俺達のことを蹴ることはしないから、まだマシだけどさ」
「ここまで暑いと、修ちゃんのこと、蹴り出したくなる」
「ひどいな、それ」
そう言って、修ちゃんは私のことをさらに抱きしめた。
「だから、暑いって言ってるのにー!!」
私が文句を言い、修ちゃんが笑っていると、ドアが動いた。なんと、マツ達が顔を出したのだ。そして迷わずベッドのほうへとやってくる。まさか母親に言われて、私達の様子をうかがいにきたのだろうか。
「え、ちょっと、もうスペースないんだけど……」
「うわ、どこに入ってくるんだよー、マツー」
マツ、タケ、ウメはベッドの前にやってくると、迷うことなく飛び乗ってきた。そして私と修ちゃんの間に無理やり入りこんでくる。猫、人、猫、人……まるでミルフィーユ状態だ。
「もー、なんでそこ?」
背中でモソモソしているマツ達に文句を言う。三匹はそれぞれの場所を見つけたのか、私と修ちゃんの間でそれぞれに落ち着いてしまった。
「ちょっとー?」
「こりゃ駄目だな、もう一眠りする必要がありそう」
「もー、修ちゃんの部屋のほうが良いんじゃないの? お布団なら落ちる心配もないし」
「それって、まこっちゃんも俺の部屋で寝るってこと?」
気のせいか、修ちゃんの声がうれしそうだ。男子っていうのは本当にしようがない生き物なんだから。
「そうじゃなくて! 五匹と一緒に寝るならってこと!」
「それは残念だなあ……やりかけのゾンビハザード、やろうと思ってたのに」
「え、本当にするの? 今日まで手つかずだったのにいきなり?」
前に終わったところで止まったままのアクションゲーム。続きが気になるのはたしかだ。
「明日には帰るから、ちょっとだけでも進めておこうかなって。このペースだと、卒業するまでにクリアーできるか怪しいけどさ」
「見たい! あ、まさか私が知らないうちら進めてないよね?」
キャンプから帰ってきて二日。ゲームをしている気配はなかったけれど。
「進めてない進めてない。そんなことしたら、まこっちゃん、怒るだろ? ただし、するならいつもみたいに寝る前かな。明日のこともあるし、あまり進められないと思うけど」
「修ちゃん、新幹線、終点までなんだから寝ていけるじゃん。少しぐらい睡眠時間が削れても問題ないんじゃ?」
「もー、まこっちゃん、鬼教官なみだなあ」
修ちゃんは笑いながら起きあがった。すると、マツ達が不満げな声をあげる。
「なに怒ってるんだよ、お前達。どうせ俺達のことを邪魔しにきたんだろ? 残念、ちょっと遅かったな」
起きあがった修ちゃんは、私を乗り越えてベッドからおりた。そしてマツ達を一匹ずつ抱いてベットから降ろしていく。今日はちゃんと服を着ているから、手で目隠しする必要はない。
「ほら、まこっちゃんが暑いってさ。行くぞ、そろそろカリカリの時間だろ? ヒノキとヤナギも行くぞ」
そう言いながら、私のお腹にくっついている二匹もベッドから降ろした。五匹の猫達がニャーニャーと抗議の声をあげ、それに対して修ちゃんが文句を言うなと話しかける。
「修ちゃん、本当にお母さんなみの猫使いになってきたね」
「このスキル、防大でなにかの役に立てば良いんだけどな」
猫達にまとわりつかれながら修ちゃんが笑った。
「基地の警備犬の訓練士とか?」
「ハンドラー? 俺、なりたいのは護衛艦乗りなんだけど」
「あ、そっか。護衛艦には警備犬、いないのか」
「それに、猫に通用しても犬に通用するかどうか」
「なるほど」
ただ、猫のほうが気難しそうだし、その猫をうまくあつかえるなら、犬も問題ないような気がしないでもない。もちろん、修ちゃんが警備犬の訓練士になりたいと思うのならだけど。
「俺はマツ達のことするからさ、まこっちゃん、おばさんの手伝いに下にいったほうが良くない?」
そう言いながら、修ちゃんが壁にかかっている時計を指さした。そろそろ母親が晩御飯の用意を開始する時間だ。
「そうだね。そろそろお母さんから声がかかるかも」
そう言いながら起きあがる。そして体のだるさに思わず顔をしかめた。
「どうした?」
「これ、絶対に修ちゃんのせいだと思うな」
「なにが?」
「腰とか足の付け根とか、めっちゃだるい」
私の言葉に、修ちゃんはニヤッとする。
「だから先に謝ったじゃないか。ごめんって」
「にしたって、ちょっとひどくない?」
たしかに修ちゃんはエッチをする前に「ごめん」とは言っていた。だけど、まさかそこまでは思わなかったのだ。二日間でこれなら、これから帰省するたびにどうなるんだろうと、少しだけ心配になる。
「なに赤くなってるのさ」
「あ、赤くなんかなってないよ」
「そうかなあ、なんか急に赤くなった気がするけどー?」
考えてことなんてお見通しですよ、と言いたげなニヤニヤ笑いがなんともムカつく。
「暑いんです!」
「そういうことにしておくよ」
「そういうことなの!」
「はいはい」
そう言って笑いながら、猫達を引き連れて部屋を出ていった。
「まったくもう、本当に笑いごとじゃないんだって……」
立ち上がってから腰をトントンとたたく。これじゃあまるで、昔話に出てくるお爺さんお婆さんだ。
「筋トレ、私もしたほうが良いかなあ……」
自衛官になる人の体力についていくには、こっちもそれなりに体力作りが必要なようだ。
+++++
そしてその日の夜中、修ちゃんは言っていた通りにゲームを進めていた。相変わらず出てくるモンスターは気持ち悪いものばかりだ。
「ひぃぃぃ、やっぱり怖いよ、このモンスター。心臓に悪すぎっ」
新しいステージに入ってから出てくるモンスターが超苦手なタイプで、それが出てくるたびに私は本気でゾワゾワしていた。だけど今夜は修ちゃんの腕をつかむことはせずに、膝の上に乗っているヒノキを抱きしめている。ヒノキは迷惑そうにしているけれど、この際だから我慢してもらおう。
「怖がりすぎだよ、まこっちゃん。これが怖いなら、次に出てくるボスキャラなんて絶対に無理なんじゃない?」
修ちゃんはテレビの前であぐらをかき、そこにはヤナギが丸くなっている。ヤナギはまったくゲームには興味が無いらしく、完全に爆睡モードだ。
「なんでわかるの」
「そりゃあ、今までのパターンとストーリーからすると、出てくるボスキャラの想像はつくじゃないか」
「見たいけど見たくない」
「じゃあ、次のセーブポイントで中断する? 昼間にしたほうが怖くないだろうし、それだったら次は年末だけど」
「やだ、続きが気になる」
「なら、布団にもぐって観戦したら?」
そう言いながら修ちゃんは、敷かれた布団を顎でさした。そこにはすでに先客がいて、布団の上に陣取っている。とても私が潜り込むスペースはなさそうだ。
「マツ達に占領されてて、私が入るスペースがないもん。ここでヒノキと見てる」
「そこであまりギャーギャー言わないでくれよ? 気が散って、前みたいに変な場所で中断したら困るだろ?」
「わかった、静かにしてる……」
可能な限りはと、心の中で付け加えた。
そんなわけで、修ちゃんと一緒にすごす夏休みの最終日は、猫達に囲まれてのゲームだった。そして寝落ちしてしまった私が明け方に目を覚ますと、私と修ちゃんはしっかり五匹の猫達に囲まれていた。
「暑い……」
クーラーがきいているはずなのにと、顔をしかめる。その原因の一つはわかっていた。私の背中にはりついている修ちゃんだ。筋肉質の人の熱量が高いというのは本当らしく、非常に熱い。熱いどころか「非常に暑苦しい」というのが正しいかも。そんな熱い筋肉が背中に密着していて、腕がお腹のへんに回されている。
―― 冬場なら、ありがたい熱さなんだけどなー…… ――
そしてもう一つの原因。それは目をあけて判明した。なぜか私のお腹の前で、ヒノキとヤナギが丸くなって寝ている。猫は人間よりもずっと体温が高い。そして毛のかたまりだ。これだけくっつかれていたら、暑くないわけがない。
「修ちゃん、暑いよー」
「んー?」
修ちゃんが眠たそうな声で返事をした。そして私を自分のほうへと引き寄せる。ますます暑い!
「だから暑いんだって。しかも、ヒノキとヤナギまでいるじゃん」
「さっき、部屋に入ってきてさー。めちゃくちゃにおいかがれてあせったよ。なにを探ろうとしていたんだか」
二匹がなんのにおいを気にしていたのか、そこはあえて考えないようにする。
「それにベッド、定員オーバーだよ。修ちゃんとヒノキ達にはさまれて、私、めちゃくちゃせまいんだけど!」
私の部屋のベッドは当然のことながらシングル。二人で寝るにはせまいし、そこに猫二匹が加われば、寝返りをうつことも難しい。もう超定員オーバーだ。私が文句を言うと、ヒノキ達は大きく伸びをして、そのままの態勢で動かなくなった。
「えー、起きてくれたんじゃないのー?」
愕然としている私の耳元で、クスクスと笑う声がした。
「だから笑いごとじゃないんだって、修ちゃーん」
「まったく、まこっちゃんときたら」
私の耳にキスをしながら修ちゃんは笑う。
「文句を言ってるけどさ、俺達がこうやっておさえてなかったら、まこっちゃん、ベッドから落ちてたんだぞ?」
「え、そんなことない!」
「いいや。絶対にベッドから落ちてた。自分が寝相悪いこと、自覚してる?」
「……」
実のところ、自分があまり寝相が良いほうでないことはわかっていた。頭と足の位置が逆になっていたり、お布団が信じられない状態で体の上に乗っていたり。年頃の女子としては、色々と難ありな状態で目が覚めることが少なくなかったのだ。
「この寝相の悪さだと、ベッドのサイズ、シングルをやめてダブルにしたほうが良いと思うけどな」
「そこまで悪くないもん」
あまり自信はないけれど。
「そうかなあ……ま、俺達のことを蹴ることはしないから、まだマシだけどさ」
「ここまで暑いと、修ちゃんのこと、蹴り出したくなる」
「ひどいな、それ」
そう言って、修ちゃんは私のことをさらに抱きしめた。
「だから、暑いって言ってるのにー!!」
私が文句を言い、修ちゃんが笑っていると、ドアが動いた。なんと、マツ達が顔を出したのだ。そして迷わずベッドのほうへとやってくる。まさか母親に言われて、私達の様子をうかがいにきたのだろうか。
「え、ちょっと、もうスペースないんだけど……」
「うわ、どこに入ってくるんだよー、マツー」
マツ、タケ、ウメはベッドの前にやってくると、迷うことなく飛び乗ってきた。そして私と修ちゃんの間に無理やり入りこんでくる。猫、人、猫、人……まるでミルフィーユ状態だ。
「もー、なんでそこ?」
背中でモソモソしているマツ達に文句を言う。三匹はそれぞれの場所を見つけたのか、私と修ちゃんの間でそれぞれに落ち着いてしまった。
「ちょっとー?」
「こりゃ駄目だな、もう一眠りする必要がありそう」
「もー、修ちゃんの部屋のほうが良いんじゃないの? お布団なら落ちる心配もないし」
「それって、まこっちゃんも俺の部屋で寝るってこと?」
気のせいか、修ちゃんの声がうれしそうだ。男子っていうのは本当にしようがない生き物なんだから。
「そうじゃなくて! 五匹と一緒に寝るならってこと!」
「それは残念だなあ……やりかけのゾンビハザード、やろうと思ってたのに」
「え、本当にするの? 今日まで手つかずだったのにいきなり?」
前に終わったところで止まったままのアクションゲーム。続きが気になるのはたしかだ。
「明日には帰るから、ちょっとだけでも進めておこうかなって。このペースだと、卒業するまでにクリアーできるか怪しいけどさ」
「見たい! あ、まさか私が知らないうちら進めてないよね?」
キャンプから帰ってきて二日。ゲームをしている気配はなかったけれど。
「進めてない進めてない。そんなことしたら、まこっちゃん、怒るだろ? ただし、するならいつもみたいに寝る前かな。明日のこともあるし、あまり進められないと思うけど」
「修ちゃん、新幹線、終点までなんだから寝ていけるじゃん。少しぐらい睡眠時間が削れても問題ないんじゃ?」
「もー、まこっちゃん、鬼教官なみだなあ」
修ちゃんは笑いながら起きあがった。すると、マツ達が不満げな声をあげる。
「なに怒ってるんだよ、お前達。どうせ俺達のことを邪魔しにきたんだろ? 残念、ちょっと遅かったな」
起きあがった修ちゃんは、私を乗り越えてベッドからおりた。そしてマツ達を一匹ずつ抱いてベットから降ろしていく。今日はちゃんと服を着ているから、手で目隠しする必要はない。
「ほら、まこっちゃんが暑いってさ。行くぞ、そろそろカリカリの時間だろ? ヒノキとヤナギも行くぞ」
そう言いながら、私のお腹にくっついている二匹もベッドから降ろした。五匹の猫達がニャーニャーと抗議の声をあげ、それに対して修ちゃんが文句を言うなと話しかける。
「修ちゃん、本当にお母さんなみの猫使いになってきたね」
「このスキル、防大でなにかの役に立てば良いんだけどな」
猫達にまとわりつかれながら修ちゃんが笑った。
「基地の警備犬の訓練士とか?」
「ハンドラー? 俺、なりたいのは護衛艦乗りなんだけど」
「あ、そっか。護衛艦には警備犬、いないのか」
「それに、猫に通用しても犬に通用するかどうか」
「なるほど」
ただ、猫のほうが気難しそうだし、その猫をうまくあつかえるなら、犬も問題ないような気がしないでもない。もちろん、修ちゃんが警備犬の訓練士になりたいと思うのならだけど。
「俺はマツ達のことするからさ、まこっちゃん、おばさんの手伝いに下にいったほうが良くない?」
そう言いながら、修ちゃんが壁にかかっている時計を指さした。そろそろ母親が晩御飯の用意を開始する時間だ。
「そうだね。そろそろお母さんから声がかかるかも」
そう言いながら起きあがる。そして体のだるさに思わず顔をしかめた。
「どうした?」
「これ、絶対に修ちゃんのせいだと思うな」
「なにが?」
「腰とか足の付け根とか、めっちゃだるい」
私の言葉に、修ちゃんはニヤッとする。
「だから先に謝ったじゃないか。ごめんって」
「にしたって、ちょっとひどくない?」
たしかに修ちゃんはエッチをする前に「ごめん」とは言っていた。だけど、まさかそこまでは思わなかったのだ。二日間でこれなら、これから帰省するたびにどうなるんだろうと、少しだけ心配になる。
「なに赤くなってるのさ」
「あ、赤くなんかなってないよ」
「そうかなあ、なんか急に赤くなった気がするけどー?」
考えてことなんてお見通しですよ、と言いたげなニヤニヤ笑いがなんともムカつく。
「暑いんです!」
「そういうことにしておくよ」
「そういうことなの!」
「はいはい」
そう言って笑いながら、猫達を引き連れて部屋を出ていった。
「まったくもう、本当に笑いごとじゃないんだって……」
立ち上がってから腰をトントンとたたく。これじゃあまるで、昔話に出てくるお爺さんお婆さんだ。
「筋トレ、私もしたほうが良いかなあ……」
自衛官になる人の体力についていくには、こっちもそれなりに体力作りが必要なようだ。
+++++
そしてその日の夜中、修ちゃんは言っていた通りにゲームを進めていた。相変わらず出てくるモンスターは気持ち悪いものばかりだ。
「ひぃぃぃ、やっぱり怖いよ、このモンスター。心臓に悪すぎっ」
新しいステージに入ってから出てくるモンスターが超苦手なタイプで、それが出てくるたびに私は本気でゾワゾワしていた。だけど今夜は修ちゃんの腕をつかむことはせずに、膝の上に乗っているヒノキを抱きしめている。ヒノキは迷惑そうにしているけれど、この際だから我慢してもらおう。
「怖がりすぎだよ、まこっちゃん。これが怖いなら、次に出てくるボスキャラなんて絶対に無理なんじゃない?」
修ちゃんはテレビの前であぐらをかき、そこにはヤナギが丸くなっている。ヤナギはまったくゲームには興味が無いらしく、完全に爆睡モードだ。
「なんでわかるの」
「そりゃあ、今までのパターンとストーリーからすると、出てくるボスキャラの想像はつくじゃないか」
「見たいけど見たくない」
「じゃあ、次のセーブポイントで中断する? 昼間にしたほうが怖くないだろうし、それだったら次は年末だけど」
「やだ、続きが気になる」
「なら、布団にもぐって観戦したら?」
そう言いながら修ちゃんは、敷かれた布団を顎でさした。そこにはすでに先客がいて、布団の上に陣取っている。とても私が潜り込むスペースはなさそうだ。
「マツ達に占領されてて、私が入るスペースがないもん。ここでヒノキと見てる」
「そこであまりギャーギャー言わないでくれよ? 気が散って、前みたいに変な場所で中断したら困るだろ?」
「わかった、静かにしてる……」
可能な限りはと、心の中で付け加えた。
そんなわけで、修ちゃんと一緒にすごす夏休みの最終日は、猫達に囲まれてのゲームだった。そして寝落ちしてしまった私が明け方に目を覚ますと、私と修ちゃんはしっかり五匹の猫達に囲まれていた。
35
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
私の主治医さん - 二人と一匹物語 -
鏡野ゆう
ライト文芸
とある病院の救命救急で働いている東出先生の元に運び込まれた急患は何故か川で溺れていた一人と一匹でした。救命救急で働くお医者さんと患者さん、そして小さな子猫の二人と一匹の恋の小話。
【本編完結】【小話】
※小説家になろうでも公開中※
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の主治医さん
鏡野ゆう
ライト文芸
研修医の北川雛子先生が担当することになったのは、救急車で運び込まれた南山裕章さんという若き外務官僚さんでした。研修医さんと救急車で運ばれてきた患者さんとの恋の小話とちょっと不思議なあひるちゃんのお話。
【本編】+【アヒル事件簿】【事件です!】
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
報酬はその笑顔で
鏡野ゆう
ライト文芸
彼女がその人と初めて会ったのは夏休みのバイト先でのことだった。
自分に正直で真っ直ぐな女子大生さんと、にこにこスマイルのパイロットさんとのお話。
『貴方は翼を失くさない』で榎本さんの部下として登場した飛行教導群のパイロット、但馬一尉のお話です。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる