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第一部・第二章:出会いと再会は突然に

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 結界が俺を拒絶しない理由が見当たらない。

 だからといってここで右往左往していても術者が顔を出すかわからないから取り敢えず結界内にいる術者が学園長の言ってた人かどうか確かめなくては。

「うし、行くか!」

 どんなに強い結界だろうと範囲は限られてる。だだっ広い学園をひたすら走り回るよりはマシだ。歩いてりゃあいつかは会えるだろう。

 そう思い足を動かそうとした。

 だが。

「あれ………なんで人がいるんだ?」

 よく透き通った声。

 それに俺の中の何かが反応する。


 ――――懐かしい、声。


 聞いたことない声のはずなのに、懐かしさがこみ上げてくるこの感覚に不信感を抱く俺だが、すぐにそれを取っ払う。

 前方から来る人影。その人影の顔は太陽の光に照らされてよく見えない。

 次第に人影の容姿が見えてきた。

 黒くてやや長い髪を後ろに束ねた整った容姿の男。

 吸い寄せられそうな漆黒の瞳に俺が映っている。

「おいお前、どうしてこの結界の中に入れた?」

「……え、あ……ああ………」

 漆黒の瞳に俺を捉えたまま話しかけてきたのに気付き、返事をしたはいいが硬直してしまう。

 うわぁ、なんか威圧感っていうのかな?ぶっきらぼうな口調だけど優しい声とか聞いただけでビリってしちゃう。声だけは懐かしい感じがしたけど……どこかで似たような声聞いたんかな。

 というか、さっきの質問の答え見つかんないんだけど!

 『分かりません』じゃ駄目かな。

 だぁってぇ!!そんなん俺が聞きたいくらいだってぇのっっ!!!知らないんだもん俺が結界に引っ掛からなかったの!それだけじゃなく奥ヶ咲の対妖怪用の術に引っ掛かったことも謎が解けてないし!!

 なんなの!!?俺ぁどこぞの実は俺不思議なチカラ持ってた系主人公でしたーとかなの!?

 いやだもうわかんないっ!!
 誰か教えてぇぇぇ!!
 俺の謎解いてぇぇぇぇ!!!

「おい、聞いてるか?」

「あ、はい。すいません」

 思考の中にダイブしてましたスミマセン。

 結論から言うとやっぱり『分かりません』だ。

 よし、言うぞー、言うぞー……

「分かりません!」

「ふざけてるのか」

 いえいえマジっす。

 わぁ睨まれてる睨まれてる!極めて冷ややかな目で静かに睨まれてるよ!!

 そりゃ怪しまれるよね!普通結界の内側に入ることなんてないもんね!てか入れないのが当たり前なんだったどうしよう!!

 うまい言い訳が思い付かないうちにいつの間にやら俺の目前まで歩いてきて何やら訝しげにじろじろと見てくる黒い長髪に印象的な漆黒の目の彼。

 イオリちゃんのときは匂いを嗅がれて今このときは怪しく珍しいものでも見るような目で見られ……って、俺は珍獣扱いかよ。

「……興味深い」

「は?」

「僕が構築した結界は魂宿る個体を全て遮断し、近づかせないというもの。普通の人間も、だ。君の気配は間違いなく人間だ。力のない普通の人間そのもの。それなのに結界の内側に入ってきた。いや、本来は力のある人間でも内側に入るなんて無謀なことはしない。気の波長が合わなければ力の弱い者が怪我を負うし、そうでなくとも結界という名の見えない壁に阻まれて身体を入れることは不可能。なのに君は無傷で結界内に入った。通常、結界の内側に入る=結界そのものを破壊する、なのだがそれをした痕跡はなく結界は僅かな傷もなく健在。実に謎だ。君が特別な人間でもない限りそんなイレギュラーな事態にはならない。真相を追求するために是非君の出生や家族構成やその他諸々を教えてほし………」

「ちょ、待って待って!!」

 変なやつに捕まったあぁぁぁ!!!

 なんか目ぇギラギラしてるよ!!研究対象を見つけて興奮してる変態化学者並みにギラギラしてるよぉ!!

 やだなにこわい!!!!

「ああ、僕の名前は南雲 清流。霊能科1年5組だ。これで知らない人の枠には入らないだろう」

「そういうことを言いたいんじゃない」

 他にも言うことあるでしょーが!

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