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115. 楽しいワイバーン狩り
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遅くなって本当に、ほんっとうに申し訳ございません……!
近況ボードにも書いてある通り、ストック解放します。連投1日目!
――――――
「さて問題です。目の前にいる魔物の弱点は何でしょう?」
「首!」
「そうですね、どの魔物もイチコロですね。他には?」
「頭!」
「聞き方が悪かった。弱点となる属性魔法は?」
「なんだそっちかぁ。えーっと……雷!」
「正解だ」
正解と言いながら雷を空から大量に落として屍を積み上げる俺に「にぃにすごーい!」と小さな翼をちたぱたさせるレルム。
はい、現在可愛い弟とワイバーン狩りに来ております。
一緒にワイバーン狩りに行こうと約束していたからな。決して忘れてた訳ではないぞ。
今俺達がいるのは王都の南に位置する渓谷。別名・ワイバーンの巣穴。一般人はもちろんのこと、高ランクの護衛を雇えない商人もお断りな物騒な場所である。
別名通り、ワイバーンがところ狭しと占領しているのが特徴。本物の巣穴ではないが、巣穴と言われても納得するえぐい数のワイバーンが視界の暴力となって襲いかかる。
「うむ。素材の宝庫だな」
「ひゃっほーい!狩り放題だー!」
渓谷に降り立ったときの俺とレルムの反応がこちら。色々ヒドイ。
「今日はにぃにを独り占めしたいの!」という可愛い我が儘にノックアウトされ、見える範囲にルファウスもレストもいない。見えないだけで近くにはいるが。
尚、ついてこようとしたセレーナは撒いた。
「にぃに!見て見て!8体串刺しにしたよ!」
「おお、また腕を上げたな。偉いぞ」
「えへへ、にぃにに褒められたー」
氷の槍で串刺しにしたワイバーンの屍の山を積み上げて自慢げなレルム。どや顔可愛い。
自分より頭ひとつ分高い位置にあるレルムの頭を撫で撫で。
背伸びして頭を撫でるのはちとキツいが、弟のためならお兄ちゃん頑張る。
「ところで、なんでワイバーンがいっぱいいるのかな?」
「緑の魔花の群生が谷底に点在してるからだな。ワイバーンの好物だから」
遠見の魔法で確認してみたら緑色の魔力の結晶・魔花が群生をつくっていた。
魔花という名の魔力の結晶は色によって魔力の質が違うのが特徴。火属性の魔力色なら赤、水属性の魔力色なら青といった感じで。
風を司るワイバーンにとって緑の魔花はごちそうに等しい。魔物は己の属性と同じ魔花を好む傾向があるからな。
魔花は魔力の多い土地ではポピュラーな花で、魔力の属性が偏ってくると色が変化する。この渓谷で言うなら風を司るワイバーンが密集することで風属性の魔力が高まり緑の魔花になるといったふうに。
ワイバーンが密集したのが先か、魔花の群生ができたのが先かは分からんが、ルファウス流に言うとWin-Winってやつだな。
「ねーねーにぃに、競争しよ!どっちが多くワイバーンを討伐できるか!」
「討伐数じゃなく手数の多さで勝負するのも楽しそうだが……」
「そんなのにぃにの方が圧倒的に有利じゃん!」
「言われてみればそうだな。じゃあどっちが多く討伐できるか勝負だ」
「そうこなくっちゃ!」
かくして俺達の勝負が始まった。
そこそこ巨体なワイバーンにとっては俺達のサイズが小さすぎて視認するのに時間がかかる+見つかりにくい死角に立っているのをいいことに、ガンガン狩りまくる。
幸せそうな顔で魔花を貪り食っている個体の急所を水の弾丸で撃ち抜いたり。
強そうな雄とその雄を囲むハーレム集団を落雷でまとめて塵にしたり。
翼を広げてリラックスしてる個体の首をチョンパしたり。
字面が完全に悪役だな。
同胞が次々と謎の襲撃に見舞われて右往左往するワイバーンの群れだが、俺達を視認し始めると、魔花の群青地に近づけまいと徒党を組むようになり、連携が上手くなってきた。
そんなの関係ねぇ。
まとめてちゅどん。
俺とレルムが同時に放った爆炎魔法がワイバーンの群れを薙ぎ払った。
「んー、百は下らないかな?にぃには?」
「同じくらいかな。途中で数えるの忘れてた」
「僕もー。じゃあ引き分けでいっか!」
爆煙で視界がえらいことになったので風で取っ払いつつの会話。
気まぐれに始めた討伐勝負の結果はなんともあっけなく引き分け判定。レルム、さては討伐に夢中で勝負が頭から吹っ飛んでたな。
しかしまぁ、なんというか……
「やりすぎたな」
その一言に尽きる。
あまりの超高温に溶解しマグマ化したり硝子化した地面を見ながら呟いた。
前にルファウスに燃焼の原理とかを聞いたことがあり、それを意識しながら魔法を行使してみたのだ。そしたら結果は歴然。魔力消費がいつもより少なく済み、尚且つ予想以上の威力となった。
素晴らしきかな異世界知識。科学とやらの勉強もしておいた方が今後の研究に役立つだろう。
直接的な魔法の勉強ではないのであまり勉強に身が入らないのが難点だが、少しずつ取り入れていこう。
逃避もほどほどに、現実を直視する。
爆煙が薄れ、蟻の大群よろしくひしめきあっていたワイバーンの群れが見る影もなく、黒い炭と化した屍の山から遠い場所で身を寄せ合うワイバーン一家。
本来蹂躙する側の彼らが逆に蹂躙される側となり、塵芥にしか思わないであろう雛鳥を見て恐慌状態。
うん。色んな意味でやりすぎたな。
おそらく向こう数年は元の状態に戻らない。最悪残ったワイバーンもここを飛び立ち別に巣をつくる可能性すらある。そうなったら当然ここら一帯の魔物の分布図は変わるだろう。
これは絶対、バレたら母に怒られる……なんとか地形だけでも元に戻して知らんぷりしておくか。
「母には内緒だぞ」
「王様にも内緒にしとかなきゃね!」
見えないところに監視役のルファウスとレストがいる事実を忘れ、そんな秘密にならない秘密を抱える俺達だった。
近況ボードにも書いてある通り、ストック解放します。連投1日目!
――――――
「さて問題です。目の前にいる魔物の弱点は何でしょう?」
「首!」
「そうですね、どの魔物もイチコロですね。他には?」
「頭!」
「聞き方が悪かった。弱点となる属性魔法は?」
「なんだそっちかぁ。えーっと……雷!」
「正解だ」
正解と言いながら雷を空から大量に落として屍を積み上げる俺に「にぃにすごーい!」と小さな翼をちたぱたさせるレルム。
はい、現在可愛い弟とワイバーン狩りに来ております。
一緒にワイバーン狩りに行こうと約束していたからな。決して忘れてた訳ではないぞ。
今俺達がいるのは王都の南に位置する渓谷。別名・ワイバーンの巣穴。一般人はもちろんのこと、高ランクの護衛を雇えない商人もお断りな物騒な場所である。
別名通り、ワイバーンがところ狭しと占領しているのが特徴。本物の巣穴ではないが、巣穴と言われても納得するえぐい数のワイバーンが視界の暴力となって襲いかかる。
「うむ。素材の宝庫だな」
「ひゃっほーい!狩り放題だー!」
渓谷に降り立ったときの俺とレルムの反応がこちら。色々ヒドイ。
「今日はにぃにを独り占めしたいの!」という可愛い我が儘にノックアウトされ、見える範囲にルファウスもレストもいない。見えないだけで近くにはいるが。
尚、ついてこようとしたセレーナは撒いた。
「にぃに!見て見て!8体串刺しにしたよ!」
「おお、また腕を上げたな。偉いぞ」
「えへへ、にぃにに褒められたー」
氷の槍で串刺しにしたワイバーンの屍の山を積み上げて自慢げなレルム。どや顔可愛い。
自分より頭ひとつ分高い位置にあるレルムの頭を撫で撫で。
背伸びして頭を撫でるのはちとキツいが、弟のためならお兄ちゃん頑張る。
「ところで、なんでワイバーンがいっぱいいるのかな?」
「緑の魔花の群生が谷底に点在してるからだな。ワイバーンの好物だから」
遠見の魔法で確認してみたら緑色の魔力の結晶・魔花が群生をつくっていた。
魔花という名の魔力の結晶は色によって魔力の質が違うのが特徴。火属性の魔力色なら赤、水属性の魔力色なら青といった感じで。
風を司るワイバーンにとって緑の魔花はごちそうに等しい。魔物は己の属性と同じ魔花を好む傾向があるからな。
魔花は魔力の多い土地ではポピュラーな花で、魔力の属性が偏ってくると色が変化する。この渓谷で言うなら風を司るワイバーンが密集することで風属性の魔力が高まり緑の魔花になるといったふうに。
ワイバーンが密集したのが先か、魔花の群生ができたのが先かは分からんが、ルファウス流に言うとWin-Winってやつだな。
「ねーねーにぃに、競争しよ!どっちが多くワイバーンを討伐できるか!」
「討伐数じゃなく手数の多さで勝負するのも楽しそうだが……」
「そんなのにぃにの方が圧倒的に有利じゃん!」
「言われてみればそうだな。じゃあどっちが多く討伐できるか勝負だ」
「そうこなくっちゃ!」
かくして俺達の勝負が始まった。
そこそこ巨体なワイバーンにとっては俺達のサイズが小さすぎて視認するのに時間がかかる+見つかりにくい死角に立っているのをいいことに、ガンガン狩りまくる。
幸せそうな顔で魔花を貪り食っている個体の急所を水の弾丸で撃ち抜いたり。
強そうな雄とその雄を囲むハーレム集団を落雷でまとめて塵にしたり。
翼を広げてリラックスしてる個体の首をチョンパしたり。
字面が完全に悪役だな。
同胞が次々と謎の襲撃に見舞われて右往左往するワイバーンの群れだが、俺達を視認し始めると、魔花の群青地に近づけまいと徒党を組むようになり、連携が上手くなってきた。
そんなの関係ねぇ。
まとめてちゅどん。
俺とレルムが同時に放った爆炎魔法がワイバーンの群れを薙ぎ払った。
「んー、百は下らないかな?にぃには?」
「同じくらいかな。途中で数えるの忘れてた」
「僕もー。じゃあ引き分けでいっか!」
爆煙で視界がえらいことになったので風で取っ払いつつの会話。
気まぐれに始めた討伐勝負の結果はなんともあっけなく引き分け判定。レルム、さては討伐に夢中で勝負が頭から吹っ飛んでたな。
しかしまぁ、なんというか……
「やりすぎたな」
その一言に尽きる。
あまりの超高温に溶解しマグマ化したり硝子化した地面を見ながら呟いた。
前にルファウスに燃焼の原理とかを聞いたことがあり、それを意識しながら魔法を行使してみたのだ。そしたら結果は歴然。魔力消費がいつもより少なく済み、尚且つ予想以上の威力となった。
素晴らしきかな異世界知識。科学とやらの勉強もしておいた方が今後の研究に役立つだろう。
直接的な魔法の勉強ではないのであまり勉強に身が入らないのが難点だが、少しずつ取り入れていこう。
逃避もほどほどに、現実を直視する。
爆煙が薄れ、蟻の大群よろしくひしめきあっていたワイバーンの群れが見る影もなく、黒い炭と化した屍の山から遠い場所で身を寄せ合うワイバーン一家。
本来蹂躙する側の彼らが逆に蹂躙される側となり、塵芥にしか思わないであろう雛鳥を見て恐慌状態。
うん。色んな意味でやりすぎたな。
おそらく向こう数年は元の状態に戻らない。最悪残ったワイバーンもここを飛び立ち別に巣をつくる可能性すらある。そうなったら当然ここら一帯の魔物の分布図は変わるだろう。
これは絶対、バレたら母に怒られる……なんとか地形だけでも元に戻して知らんぷりしておくか。
「母には内緒だぞ」
「王様にも内緒にしとかなきゃね!」
見えないところに監視役のルファウスとレストがいる事実を忘れ、そんな秘密にならない秘密を抱える俺達だった。
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