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89. 温度差
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魔導師団長と別れて騎士団用鍛練場の方に足を踏み入れると、こちらの様子を窺っていた騎士達が慌てて鍛練を再開した。
しかしさりげなく俺を見る騎士多数。その視線には畏怖がこもっている。
魔導師団で我を忘れて指導してたのをこっそり見ていた人達だろう。鍛練場に転がる魔導師達の屍をばっちり目撃してしまったからか、こちらの様子は窺っていても俺と目を合わせようとしない。
「うっわウケるー。騎士にまで怖がられてんじゃん」
「失礼な。人畜無害なヒヨコなのに」
「トラブルメーカーの間違いだろ」
「それを言うなら禍の発生源っしょ」
「二人とも、なんで俺が問題を引き起こす元凶みたいに言うのかな?」
「ウルティア領の魔物、メルティアス家のヒヨコ軍団、原因は誰だったかな?」
すみませんでした。
「本日は賢者フィード殿とルファウス殿下が見学にいらした。いつも以上に気を引き締めろ!」
騎士団長の鶴の一声で皆やる気になった。さっきまでと気迫が違う。
真剣な様子で組み手をしている騎士達を眺めていたら、唐突にレストが提案してきた。
「団長ー。組み手だけだとルファウス様もフィードも退屈だろうし、模擬戦したら?」
「それもそうだな……」
組み手をやめて模擬戦をすることになった。
グラジオスさんが再度騎士達に声を張り上げ、組み手を中断した騎士全員が集合する。
「これから模擬戦を行う。我こそはというやつはいるか?」
一斉に手を上げる騎士達。熱心だな。
「ではルイとロラン、前へ」
「「はい!」」
狼の獣人と熊の獣人が前に出てきた。
模擬戦なので当然致命傷になるような攻撃はアウト。武器は木剣。先に一本取った方の勝ち。グラジオスさんにより以上のルール説明をされ、配置につく。
「では……はじめ!」
グラジオスさんの合図と共に動き出したのは狼獣人の方だった。
「ウオオォーーンッ!!」
開始直後、狼獣人が雄叫びを上げた。
戦闘前に雄叫びを上げる行為は狼獣人の癖だ。己を鼓舞するためでもあり、相手を威嚇するためでもある。
直ぐ様木剣を構えて地を蹴る。身体強化してもいないのに意外と素早い動きで真っ直ぐ熊獣人に突っ込んでいく。
熊獣人は避ける素振りを欠片も見せずに斬りかかってきた木剣を自身の木剣で受け止めた。
そのまま鍔迫り合いに持っていくのかと思いきや、狼獣人は瞬時に飛び退き、予測しにくい不規則な動きで熊獣人に斬り込む。
右前、左斜め後ろ、背後、またもや正面と、ありとあらゆる角度から剣撃を叩き込んでいく。
熊獣人は冷静に見極めて……というより、ほぼ勘で狼獣人が襲ってくる方向に身体の向きを変えて攻撃を防いでいる。
狼獣人は素早い動きで翻弄するスピード型で、熊獣人は力で押し切るパワー型か。どちらも獣人特有の能力を生かした戦い方だな。
しかし、技術はそこそこ。互いにあんな力任せに剣を振るえばすぐ剣が壊れてしまう。
獣人の強みを生かしながら剣術を磨けばもっといい試合ができるのに。
「狼獣人。後ろに飛び退け」
「えっ?は、はい!」
いきなりの指示にびっくりしたが、ちゃんと従ってくれた。
今まさに剣撃を浴びせようとした手をギリギリで止めて指示通り後ろに飛び退く狼獣人。
「熊獣人と一定の距離を保ちつつ時計回りに走れ」
困惑しながらも指示通り動く狼獣人。ちゃんと見ていれば目で追えるスピードでぐるぐる時計回りに走りだした。
「突き。寸止め。一定の距離で時計回り」
熊獣人の右側から木剣を突き出す。熊獣人はそれを受け止めようとするが、寸止めして再び距離を取った狼獣人に少しだけ反応が遅れた。攻撃を防ぐ体勢のまま僅かに固まる。
「スピードを落とせ。次に全力疾走」
剣術に明るくない人でも確実に目で追える速さまでスピードを落とし、熊獣人の目が彼を捉える寸前に姿を掻き消した。
それまで余裕を保っていた熊獣人の表情が崩れる。必死に目で追おうとするも、見失ってしまった。
「袈裟斬り」
がら空きの背後から木剣を振り下ろす狼獣人。
気配を察した熊獣人が振り返り、受け止めようとする。
「熊獣人。受け止めるのではなく受け流せ」
指示を飛ばす相手が自分に変わって一瞬眉がぴくっと動いたが、狼獣人同様指示通りに動く熊獣人。
だが受け流し方が下手だった。あれでは受け止めるも同然だ。
「揺蕩う水の如く、流れる風の如く受け流すんだ。剣の格に近いところで衝撃を和らげ、そのまま剣の向きをずらす。そうすれば武器にも腕にも負担が少ない。最初の指示からもう一度やり直し!」
熊獣人が受け流そうとして失敗してからじりじり間合いを取っていた二人は指示通りに動いた。
狼獣人が後ろに飛び退くところから始まり、時計回りに走って熊獣人を翻弄する。2度目なので、今度は熊獣人も油断せずに相手の位置を把握しようと必死に目と頭を働かせている。
そして先程と同じように背後から袈裟斬りする狼獣人。熊獣人はそれを今度こそ受け流した。
まだ動きがぎこちないが、まぁ及第点だろう。
思ったより手に衝撃が伝わらなくて目を見張る熊獣人。
2度目に全力疾走したときにギリギリ目で追われたのが悔しかったらしく、次はどのように錯乱するか思考を巡らせている様子の狼獣人。
「今のを踏まえて、各自自由に戦ってみろ」
言葉もなく木剣を構えた二人。しばし睨み合いの末、両者共に動いた。狼獣人はさっきよりも不規則な移動で錯乱させてフェイントを仕掛けたりし、熊獣人も鮮やかな手付きで剣撃を受け流したりしつつ隙を伺っている。
最初よりも動きが滑らかで、力任せの攻撃ばかりではなくなっているな。
熊獣人が隙をついて横凪ぎに一閃し、狼獣人の脇腹に直撃。
パワータイプの獣人の一撃は相当重く、軽く吹っ飛ばされた。
「そこまで!勝者、ロラン!」
熊獣人が勝利し、周りの騎士達が沸き立つ。
「ロランが勝ったぞ!」
「いつもはルイが勝つのに……」
「つーか、賢者様の指示が的確すぎじゃね!?」
まだ若干痛みで表情が歪む狼獣人と熊獣人がこちらに掻けよってきた。
「賢者様、先程は見事な指示をありがとうございました。おかげさまで自分の能力を生かした戦い方を知ることができました。研鑽を詰んで参ります」
「これまで、いかに力でゴリ押ししていたかを痛感しました。これからは腕力と獣人の強みだけに頼らず、剣術を磨くことも視野に入れたいと思います」
「うむ。精進しろよ」
二人が俺の元を離れたあと、今度はレストとルファウスが話しかけてきた。
「さっきと温度差すげぇのなー」
「魔法関連で未熟な腕前に甘んじる姿勢の者相手では我を忘れて鬼神と化すが、武術ではそこまでの熱意はなく、冷静に指導できるってところだろう」
全くもってルファウスの言うとおりである。
うちの弟妹達みたいに向上心がある者に教えるならば今回のように冷静さを保てるのだが、先程のような怠惰を極めたふざけた魔法を使ってる輩を見るとどうにも我を失ってしまうのだ。酷いときなんか指導してる間の記憶がすっぽり抜けたりするし。
しかし武術ではそうでもない。たとえわざと手を抜いたりして武術の礼儀に反することをしたとしてもぶちギレたりはしない。なのでいつ如何なるときでも冷静に対処できる。
前世の武術の師匠には申し訳ないけど、魔法ほど熱意を持てないのだ。
「素晴らしい。魔法特化の化け物種族と聞いていたのに、これほど武術に明るいとは……予想外だな」
なんだ化け物種族って。俺はともかく、うちの可愛い弟妹達まで化け物の括りに入れないでほしい。
「騎士達が賢者フィード殿との打ち合いを所望しているが、どうする?」
グラジオスさんの問いかけに答えるように俺に尊敬の眼差しを向けてくる騎士達。俺が賢者だからか、隣に王子がいるからか、一定の距離を保ってはいるが今にも取り囲みそうな雰囲気。
なんとはなしにアドバイスしただけなのにすごい期待されてる。
だが残念ながらその要求には応えられない。
「お断りします……というか無理ですよ。俺、ヒヨコですから」
いくら的確なアドバイスをしても、ご覧の通りヒヨコなので武器を扱えない。よって打ち合い不可。
「えぇー、そんなぁ」
「あれほど立派なアドバイスができるなら相当な腕前なんだろうなって思ったのに……」
「でも確かに、賢者様のあのお体で模擬戦って無理があるよな」
心底残念そうに肩を落とす騎士達。期待に添えなくて悪いな。
「人型になれる魔法とかあればいいのに……そうすれば賢者様とも遠慮なく打ち合いできるのに……」
誰かがひっそり口にしたその願いに内心賛成した。
打ち合いはともかく、人型になれれば色々と便利になるのは確かだ。
だが、そんな都合のいい魔法はない。現実は無情である。
けど研究してみる価値はあるかな?人型になる、あるいはそれに近い魔法を開発するのも面白そうだ。
必要な術式や問題点などを頭の中に並べていると、ルファウスに抱かれていたブルーが何かを訴えかけてきた。
「ん?どうしたブルー」
ルファウスの腕からすぽんっと飛び出し、騎士達の前まで移動する。
今までなんの反応も示さなかった謎の青い塊がブルースライムだと判明して訝しげな面々をよそに、ブルーはぽよよんっ!ぽよよんっ!と勢いよく跳ねた。まるで戦闘準備をしてるが如く。
「…………まさか、自分も模擬戦をしたいとか言わないよな?」
そのまさかだった。
ブルースライムは穏やかな気性の魔物じゃなかったっけ?
しかしさりげなく俺を見る騎士多数。その視線には畏怖がこもっている。
魔導師団で我を忘れて指導してたのをこっそり見ていた人達だろう。鍛練場に転がる魔導師達の屍をばっちり目撃してしまったからか、こちらの様子は窺っていても俺と目を合わせようとしない。
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「それを言うなら禍の発生源っしょ」
「二人とも、なんで俺が問題を引き起こす元凶みたいに言うのかな?」
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騎士団長の鶴の一声で皆やる気になった。さっきまでと気迫が違う。
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「団長ー。組み手だけだとルファウス様もフィードも退屈だろうし、模擬戦したら?」
「それもそうだな……」
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「これから模擬戦を行う。我こそはというやつはいるか?」
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「「はい!」」
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「では……はじめ!」
グラジオスさんの合図と共に動き出したのは狼獣人の方だった。
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直ぐ様木剣を構えて地を蹴る。身体強化してもいないのに意外と素早い動きで真っ直ぐ熊獣人に突っ込んでいく。
熊獣人は避ける素振りを欠片も見せずに斬りかかってきた木剣を自身の木剣で受け止めた。
そのまま鍔迫り合いに持っていくのかと思いきや、狼獣人は瞬時に飛び退き、予測しにくい不規則な動きで熊獣人に斬り込む。
右前、左斜め後ろ、背後、またもや正面と、ありとあらゆる角度から剣撃を叩き込んでいく。
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狼獣人は素早い動きで翻弄するスピード型で、熊獣人は力で押し切るパワー型か。どちらも獣人特有の能力を生かした戦い方だな。
しかし、技術はそこそこ。互いにあんな力任せに剣を振るえばすぐ剣が壊れてしまう。
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「狼獣人。後ろに飛び退け」
「えっ?は、はい!」
いきなりの指示にびっくりしたが、ちゃんと従ってくれた。
今まさに剣撃を浴びせようとした手をギリギリで止めて指示通り後ろに飛び退く狼獣人。
「熊獣人と一定の距離を保ちつつ時計回りに走れ」
困惑しながらも指示通り動く狼獣人。ちゃんと見ていれば目で追えるスピードでぐるぐる時計回りに走りだした。
「突き。寸止め。一定の距離で時計回り」
熊獣人の右側から木剣を突き出す。熊獣人はそれを受け止めようとするが、寸止めして再び距離を取った狼獣人に少しだけ反応が遅れた。攻撃を防ぐ体勢のまま僅かに固まる。
「スピードを落とせ。次に全力疾走」
剣術に明るくない人でも確実に目で追える速さまでスピードを落とし、熊獣人の目が彼を捉える寸前に姿を掻き消した。
それまで余裕を保っていた熊獣人の表情が崩れる。必死に目で追おうとするも、見失ってしまった。
「袈裟斬り」
がら空きの背後から木剣を振り下ろす狼獣人。
気配を察した熊獣人が振り返り、受け止めようとする。
「熊獣人。受け止めるのではなく受け流せ」
指示を飛ばす相手が自分に変わって一瞬眉がぴくっと動いたが、狼獣人同様指示通りに動く熊獣人。
だが受け流し方が下手だった。あれでは受け止めるも同然だ。
「揺蕩う水の如く、流れる風の如く受け流すんだ。剣の格に近いところで衝撃を和らげ、そのまま剣の向きをずらす。そうすれば武器にも腕にも負担が少ない。最初の指示からもう一度やり直し!」
熊獣人が受け流そうとして失敗してからじりじり間合いを取っていた二人は指示通りに動いた。
狼獣人が後ろに飛び退くところから始まり、時計回りに走って熊獣人を翻弄する。2度目なので、今度は熊獣人も油断せずに相手の位置を把握しようと必死に目と頭を働かせている。
そして先程と同じように背後から袈裟斬りする狼獣人。熊獣人はそれを今度こそ受け流した。
まだ動きがぎこちないが、まぁ及第点だろう。
思ったより手に衝撃が伝わらなくて目を見張る熊獣人。
2度目に全力疾走したときにギリギリ目で追われたのが悔しかったらしく、次はどのように錯乱するか思考を巡らせている様子の狼獣人。
「今のを踏まえて、各自自由に戦ってみろ」
言葉もなく木剣を構えた二人。しばし睨み合いの末、両者共に動いた。狼獣人はさっきよりも不規則な移動で錯乱させてフェイントを仕掛けたりし、熊獣人も鮮やかな手付きで剣撃を受け流したりしつつ隙を伺っている。
最初よりも動きが滑らかで、力任せの攻撃ばかりではなくなっているな。
熊獣人が隙をついて横凪ぎに一閃し、狼獣人の脇腹に直撃。
パワータイプの獣人の一撃は相当重く、軽く吹っ飛ばされた。
「そこまで!勝者、ロラン!」
熊獣人が勝利し、周りの騎士達が沸き立つ。
「ロランが勝ったぞ!」
「いつもはルイが勝つのに……」
「つーか、賢者様の指示が的確すぎじゃね!?」
まだ若干痛みで表情が歪む狼獣人と熊獣人がこちらに掻けよってきた。
「賢者様、先程は見事な指示をありがとうございました。おかげさまで自分の能力を生かした戦い方を知ることができました。研鑽を詰んで参ります」
「これまで、いかに力でゴリ押ししていたかを痛感しました。これからは腕力と獣人の強みだけに頼らず、剣術を磨くことも視野に入れたいと思います」
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「魔法関連で未熟な腕前に甘んじる姿勢の者相手では我を忘れて鬼神と化すが、武術ではそこまでの熱意はなく、冷静に指導できるってところだろう」
全くもってルファウスの言うとおりである。
うちの弟妹達みたいに向上心がある者に教えるならば今回のように冷静さを保てるのだが、先程のような怠惰を極めたふざけた魔法を使ってる輩を見るとどうにも我を失ってしまうのだ。酷いときなんか指導してる間の記憶がすっぽり抜けたりするし。
しかし武術ではそうでもない。たとえわざと手を抜いたりして武術の礼儀に反することをしたとしてもぶちギレたりはしない。なのでいつ如何なるときでも冷静に対処できる。
前世の武術の師匠には申し訳ないけど、魔法ほど熱意を持てないのだ。
「素晴らしい。魔法特化の化け物種族と聞いていたのに、これほど武術に明るいとは……予想外だな」
なんだ化け物種族って。俺はともかく、うちの可愛い弟妹達まで化け物の括りに入れないでほしい。
「騎士達が賢者フィード殿との打ち合いを所望しているが、どうする?」
グラジオスさんの問いかけに答えるように俺に尊敬の眼差しを向けてくる騎士達。俺が賢者だからか、隣に王子がいるからか、一定の距離を保ってはいるが今にも取り囲みそうな雰囲気。
なんとはなしにアドバイスしただけなのにすごい期待されてる。
だが残念ながらその要求には応えられない。
「お断りします……というか無理ですよ。俺、ヒヨコですから」
いくら的確なアドバイスをしても、ご覧の通りヒヨコなので武器を扱えない。よって打ち合い不可。
「えぇー、そんなぁ」
「あれほど立派なアドバイスができるなら相当な腕前なんだろうなって思ったのに……」
「でも確かに、賢者様のあのお体で模擬戦って無理があるよな」
心底残念そうに肩を落とす騎士達。期待に添えなくて悪いな。
「人型になれる魔法とかあればいいのに……そうすれば賢者様とも遠慮なく打ち合いできるのに……」
誰かがひっそり口にしたその願いに内心賛成した。
打ち合いはともかく、人型になれれば色々と便利になるのは確かだ。
だが、そんな都合のいい魔法はない。現実は無情である。
けど研究してみる価値はあるかな?人型になる、あるいはそれに近い魔法を開発するのも面白そうだ。
必要な術式や問題点などを頭の中に並べていると、ルファウスに抱かれていたブルーが何かを訴えかけてきた。
「ん?どうしたブルー」
ルファウスの腕からすぽんっと飛び出し、騎士達の前まで移動する。
今までなんの反応も示さなかった謎の青い塊がブルースライムだと判明して訝しげな面々をよそに、ブルーはぽよよんっ!ぽよよんっ!と勢いよく跳ねた。まるで戦闘準備をしてるが如く。
「…………まさか、自分も模擬戦をしたいとか言わないよな?」
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