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58. 薄幸だけど不屈の精神
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監視。それは分かる。
けど護衛と人質ってどういうことだ?
「俺、護衛が必要なほど弱くはないぞ」
「単純な戦力としてならばそうだろうな。しかし一人では対処できない事態も起こり得るだろう。死角からの急襲とか」
確かにそうだ。もし魔力と気配を遮断したルファウスが部屋に入った瞬間に俺を襲ったならば対処は困難だったはず。ルファウスみたいなやつがいないとも限らない。そのための護衛か。
「あと、差別の荒波に揉まれないようにという意味合いもある」
「いや、それは俺が自分で対処したい。他人に守られていたらいつまで経っても差別意識がなくならないだろ。そういう意味では俺じゃなく弟妹達を気に掛けてやってほしい」
「了解した。そのように手配しておこう」
王族ならば必ず護衛がいるはず。姿が見えないということは隠密かな?それらを動かしてくれるのだろう。
本来の護衛対象であるルファウスはいいのかとも思ったが、賢者に割り当てられる護衛も連れてきていたのかもしれない。
「人質ってのが意味不明なんだが」
「この国が君に対して良からぬことを企んだ場合、私を盾にすれば抑止力になる。万が一良からぬことを仕出かしたなら私を殺して国を脅迫すればいい。賢者の立場を有効活用すればできなくはない」
「やっぱりその手の輩はいるのか?」
「皆無ではない。幸いにも国の中枢にはそういった者はいないから安心しろ。しかし無知な輩や愚かな権力者はどこの世界にも一定数いるからな。それらを抑えるために私という人質がいるし、人質がどうこうされないために国が動く。おそらく賢者の存在が国全体に周知されるはずだ。無知ゆえに馬鹿な行動を取る者を出来る限り減らすためにな。……とはいえ、あちらも今はゴタついてるし、それはまだ先だろうが」
えらく用意周到だな。
まぁ、大昔とはいえ、世界を破滅に導いた異端の賢者がいたんだからそれも当然か。不穏分子は極力排除しておきたいのだろう。
別に俺は多少迷惑かけられても気にしないんだがな。研究の邪魔さえしなければ。あとは家族を害さなければ。
「愚かな権力者の方は?対処できるのか?」
「王族がすぐ近くにいるのに君をどうこうしようとは思わないだろう。君に手を出すなら必然的に監視役の私も巻き込まれる。王族を巻き添えにすれば国が黙っていない。よほどの馬鹿でなければ大人しくしているはずだ」
そのよほどの馬鹿が何人かいるが、それはこちらでどうにかしておく、と言った黒ウサギ少年は外見に似合わず真っ黒い笑みを浮かべていた。
冷たい美貌と相まって王子というより悪の親玉と言われた方がしっくりくる顔である。
「ルファウス……お前今何歳だ?とても子供には見えない顔だぞ」
「今世では13歳だ。だが前世全てをひっくるめたら一万歳はゆうに越えてるな」
「………は?」
驚愕に目を見開いた俺を見て悪戯が成功した子供のような顔でにやりと笑うルファウス。
そしておもむろに懐から取り出したステータスカードを俺に見せた。
――――――――――――――――――――
ルファウス・フォン・エルヴィン
年齢/13歳 性別/男
種族/マナラビット族
体力/165/170
魔力/12/12
冒険者ランク/-
称号/ループ転生の呪い、31回目の転生者、エルヴィン王国第5王子、不屈の精神を持つ者、冷酷美人、歩く辞書、知識の宝物庫、薄幸人生、苦労人
――――――――――――――――――――
突っ込みどころが多すぎるんだが。
「魔力少な!」
「だから言ったろう、魔力は極端に少ないって」
「ループ転生の呪いってなんだ!?」
「知らん。神に聞いてくれ」
「30回も記憶引き継ぐなんて聞いたことないぞ!」
「私も聞いたことないな」
淡々とした態度を崩さずに突っ込みを受け流すルファウス。
呪いというからには何かしら制約とか制限とかあるのかと思いきやそんなものはなく、延々と記憶と魔力を引き継いでいるだけとのこと。
人間以外にも転生したことがあるそうで、魔物や魔族、ドラゴンに転生したこともあったなとあっけらかんと言われたときには開いた口が塞がらなかった。
魔物に転生したときは生まれて間もなく人間に討伐され、魔族に転生したときは魔力が少なすぎるせいで人間どころか同族にも迫害されており、ドラゴンに転生したときは生き物が寄り付かない辺境で暮らしてたので孤独にも慣れっこだと暴露された。
なんというか……ステータスカードの称号にもあるが、幸の薄い人生を歩んでるんだな、この王子。
そのくせ全く堪えた様子がない。精神力が強靭すぎる。
自分を盾にだの、自分を殺して脅迫すればだの、まるで自らの命を軽んじている言動がちらついて少し気になったが、そういう訳か。
死んでもまた人生をやり直せると分かっていたらそんなふうに考えてしまうもの……なのか?
記憶を引き継いだのが1回だけだからなんとも言えない。
「私の転生事情はさておき、極力君の近くにいるから、何かあったら呼んでくれ」
そう言い残して文字通り姿を消したルファウス。
それとほぼ同時にブルーが部屋に入ってきた。
「ありがとなブルー。えらいぞ」
褒めて褒めてーと言わんばかりにぐりぐり身体を擦り付けるブルーを撫でながらお礼を言う。
レルム達を寝かし付けてる間、ブルーにはグレイルさんの方に行ってもらった。
行商から帰って来たばかりだというのに、諌める部下の目を盗んで仕事に没頭しようとするグレイルさんを心配してブルーを派遣したのだ。
グレイルさんが書類を手にする度に器用に悲しげな表情をつくるブルーのおかげで彼が無理をすることはなく、グレイルさんの部下の面々には感謝された。
帰って来た今日くらいはゆっくりしてほしいものだ。
さっと周囲を見回してみるもルファウスの姿はない。
言葉通りすぐ近くにいるんだろう。魔力と気配を遮断してるせいで近くにいる気配がないけど。
ずっと見える場所にいたら色々と面倒だから姿を消したんだろうなこれ。
ブルーといい、セレーナといい、なんか特殊で個性的なやつが集まってる気がするんだが気のせいか?
けど護衛と人質ってどういうことだ?
「俺、護衛が必要なほど弱くはないぞ」
「単純な戦力としてならばそうだろうな。しかし一人では対処できない事態も起こり得るだろう。死角からの急襲とか」
確かにそうだ。もし魔力と気配を遮断したルファウスが部屋に入った瞬間に俺を襲ったならば対処は困難だったはず。ルファウスみたいなやつがいないとも限らない。そのための護衛か。
「あと、差別の荒波に揉まれないようにという意味合いもある」
「いや、それは俺が自分で対処したい。他人に守られていたらいつまで経っても差別意識がなくならないだろ。そういう意味では俺じゃなく弟妹達を気に掛けてやってほしい」
「了解した。そのように手配しておこう」
王族ならば必ず護衛がいるはず。姿が見えないということは隠密かな?それらを動かしてくれるのだろう。
本来の護衛対象であるルファウスはいいのかとも思ったが、賢者に割り当てられる護衛も連れてきていたのかもしれない。
「人質ってのが意味不明なんだが」
「この国が君に対して良からぬことを企んだ場合、私を盾にすれば抑止力になる。万が一良からぬことを仕出かしたなら私を殺して国を脅迫すればいい。賢者の立場を有効活用すればできなくはない」
「やっぱりその手の輩はいるのか?」
「皆無ではない。幸いにも国の中枢にはそういった者はいないから安心しろ。しかし無知な輩や愚かな権力者はどこの世界にも一定数いるからな。それらを抑えるために私という人質がいるし、人質がどうこうされないために国が動く。おそらく賢者の存在が国全体に周知されるはずだ。無知ゆえに馬鹿な行動を取る者を出来る限り減らすためにな。……とはいえ、あちらも今はゴタついてるし、それはまだ先だろうが」
えらく用意周到だな。
まぁ、大昔とはいえ、世界を破滅に導いた異端の賢者がいたんだからそれも当然か。不穏分子は極力排除しておきたいのだろう。
別に俺は多少迷惑かけられても気にしないんだがな。研究の邪魔さえしなければ。あとは家族を害さなければ。
「愚かな権力者の方は?対処できるのか?」
「王族がすぐ近くにいるのに君をどうこうしようとは思わないだろう。君に手を出すなら必然的に監視役の私も巻き込まれる。王族を巻き添えにすれば国が黙っていない。よほどの馬鹿でなければ大人しくしているはずだ」
そのよほどの馬鹿が何人かいるが、それはこちらでどうにかしておく、と言った黒ウサギ少年は外見に似合わず真っ黒い笑みを浮かべていた。
冷たい美貌と相まって王子というより悪の親玉と言われた方がしっくりくる顔である。
「ルファウス……お前今何歳だ?とても子供には見えない顔だぞ」
「今世では13歳だ。だが前世全てをひっくるめたら一万歳はゆうに越えてるな」
「………は?」
驚愕に目を見開いた俺を見て悪戯が成功した子供のような顔でにやりと笑うルファウス。
そしておもむろに懐から取り出したステータスカードを俺に見せた。
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ルファウス・フォン・エルヴィン
年齢/13歳 性別/男
種族/マナラビット族
体力/165/170
魔力/12/12
冒険者ランク/-
称号/ループ転生の呪い、31回目の転生者、エルヴィン王国第5王子、不屈の精神を持つ者、冷酷美人、歩く辞書、知識の宝物庫、薄幸人生、苦労人
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突っ込みどころが多すぎるんだが。
「魔力少な!」
「だから言ったろう、魔力は極端に少ないって」
「ループ転生の呪いってなんだ!?」
「知らん。神に聞いてくれ」
「30回も記憶引き継ぐなんて聞いたことないぞ!」
「私も聞いたことないな」
淡々とした態度を崩さずに突っ込みを受け流すルファウス。
呪いというからには何かしら制約とか制限とかあるのかと思いきやそんなものはなく、延々と記憶と魔力を引き継いでいるだけとのこと。
人間以外にも転生したことがあるそうで、魔物や魔族、ドラゴンに転生したこともあったなとあっけらかんと言われたときには開いた口が塞がらなかった。
魔物に転生したときは生まれて間もなく人間に討伐され、魔族に転生したときは魔力が少なすぎるせいで人間どころか同族にも迫害されており、ドラゴンに転生したときは生き物が寄り付かない辺境で暮らしてたので孤独にも慣れっこだと暴露された。
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記憶を引き継いだのが1回だけだからなんとも言えない。
「私の転生事情はさておき、極力君の近くにいるから、何かあったら呼んでくれ」
そう言い残して文字通り姿を消したルファウス。
それとほぼ同時にブルーが部屋に入ってきた。
「ありがとなブルー。えらいぞ」
褒めて褒めてーと言わんばかりにぐりぐり身体を擦り付けるブルーを撫でながらお礼を言う。
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さっと周囲を見回してみるもルファウスの姿はない。
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