【R18】これは『同期だから』で済まされる事ですか?

カナリア55

文字の大きさ
上 下
45 / 45
おまけ2(第17回恋愛小説大賞参加記念)

ハイスペックな友人の彼女 5

しおりを挟む
 隣りで仰向けになり、激しい呼吸を繰り返している明弘を横目で見、自分も息絶え絶えの紫音はしみじみと思った。

(……若さって、恐ろしい……)

 リビングから寝室に移動し『すぐにでも大丈夫』と言う紫音の言葉は却下され、丁寧に執拗に前戯を施された後、長い時間行為に没頭し、今、とうとう身体を離したのだが、

(……している途中に『もう一回してもいい?』って聞いてくるなんて……明日仕事だから無理って言ったら、そこからイクの我慢して、ずっとずっとずっと……いつ終わるのか、危うく聞くところだったわ。本当に恐ろしい……)

 明弘の無尽蔵にも思える欲には、普段運動していない紫音はとてもじゃないがついていけない。

(マンションのフィットネスルームに行くか……せめて週に1度でも)

 そんな事を考えていると、ようやく息が整った明弘が抱きついてきた。

「しーちゃん……やっぱりもうちょっと……まだ今日だし」
「今日はもう無理よ、本当に」
「ん~、わかった……」

 しょんぼりしながらも一応聞きわけ、それでもそっと胸に手を乗せる明弘に苦笑し、紫音はその頭を撫でながら言った。

「わたしね、アッキーと付き合って最初の頃はすごく不安で心配だったの」
「えっ?」

 驚く明弘に『そりゃあそうでしょう』と言う。

「大学に行けば、若くて可愛い女の子がたくさんいるでしょう? わたしは美人でもないし、昔の恩があってわたしの事好きなアッキーも、そのうちそういう子の方が良くなるだろうなって思って」
「そんな事あるわけない! 俺は、しーちゃん以外絶対好きにならない!」

 身体を起こし、怒ったように言う明弘の手を撫でながら、紫音は『ありがとう』と笑った。

「いつもアッキーがそう言ってくれて、わたしの事好きだって、言葉でも態度でも示してくれるから、そうなんだって思って、不安じゃなくなったよの」
「なんだ……それなら、良かった……」
「うん……だからね、アッキーにもわたしと同じように、安心してもらえたらなって……」
「えっ?」

 もう一度紫音にくっつこうと横になりかけた明弘の動きが止まる。

「友達に会わせたくないのって、そういう事なのかな? って思って。わたしはアッキーの事が好きだよ。誰に好かれようと、関係ない。アッキーだけを愛しているの。でもそれがアッキーに伝わっていないから、心配するのかなって」
「え、あ……」

 伝わっていないわけではない。
 紫音に愛されているという事は、ちゃんとわかっている。けれど……、

「大好きよ、アッキー。だから、アッキーの友達にも良い彼女だって思われたくて、ご飯に誘っちゃった。わたし見て、がっかりしたと思うのよね、アッキーの彼女にしては綺麗でもないし色っぽくもないし」
「そんなっ! しーちゃんは綺麗だよ!」
「アッキーはそう思ってもね、一般的には……まあ、アッキーにさえそう思ってもらえてるなら、それでいいのよ。そして友達には、やっぱりアッキーが選んだ人だな、って思ってもらいたくて」
「うー……みんな、また来たいって言ってた。駄目って断ったけど……」

 紫音に愛されているという事は、ちゃんとわかっている。
 紫音は誰かに好きと言われたからといって『どっちがいいか』なんて比較したりしない。
 それはわかっているけれども。

(それでも不安だし、独り占めしたいんだ……)

 不安と欲。
 
(今までちゃんと考えた事が無かったけれど……というか、考えたくなかったんだな。自分が情けなくなるから)

 年下だし、親に依存していて自分の力ではまだ何もできないのに、自分のものにしたくて、独り占めしたくて、紫音と強引に一緒に暮らし始めた。

「……しーちゃん、俺、これから頑張る。自信をつけて、余裕を持てるようになる。しーちゃんが俺の事好きで、大切にしてくれてるって事は、ちゃんとわかっているから」
「うん」
「ただすぐには、みんなをしーちゃんに会わせても平気にはなれないよ。でも、いつかきっと……」
「いいよ、急がなくったって」

 明弘がとても愛おしくて。ギュッと抱きしめて、紫音はその唇に自分の唇を重ねた。

「そうよ、これからずっと一緒なんだもの。焦る事はないわよ、わたしも、アッキーも」
「うん。大好き、しーちゃん」
「わたしも大好きよ」

 今すぐでなくても、二人で一緒に成長していけばいい。
 お互いの体温に幸せを感じながら、二人は眠りにつくのだった。 




しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...