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おまけ2(第17回恋愛小説大賞参加記念)
ハイスペックな友人の彼女 5
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隣りで仰向けになり、激しい呼吸を繰り返している明弘を横目で見、自分も息絶え絶えの紫音はしみじみと思った。
(……若さって、恐ろしい……)
リビングから寝室に移動し『すぐにでも大丈夫』と言う紫音の言葉は却下され、丁寧に執拗に前戯を施された後、長い時間行為に没頭し、今、とうとう身体を離したのだが、
(……している途中に『もう一回してもいい?』って聞いてくるなんて……明日仕事だから無理って言ったら、そこからイクの我慢して、ずっとずっとずっと……いつ終わるのか、危うく聞くところだったわ。本当に恐ろしい……)
明弘の無尽蔵にも思える欲には、普段運動していない紫音はとてもじゃないがついていけない。
(マンションのフィットネスルームに行くか……せめて週に1度でも)
そんな事を考えていると、ようやく息が整った明弘が抱きついてきた。
「しーちゃん……やっぱりもうちょっと……まだ今日だし」
「今日はもう無理よ、本当に」
「ん~、わかった……」
しょんぼりしながらも一応聞きわけ、それでもそっと胸に手を乗せる明弘に苦笑し、紫音はその頭を撫でながら言った。
「わたしね、アッキーと付き合って最初の頃はすごく不安で心配だったの」
「えっ?」
驚く明弘に『そりゃあそうでしょう』と言う。
「大学に行けば、若くて可愛い女の子がたくさんいるでしょう? わたしは美人でもないし、昔の恩があってわたしの事好きなアッキーも、そのうちそういう子の方が良くなるだろうなって思って」
「そんな事あるわけない! 俺は、しーちゃん以外絶対好きにならない!」
身体を起こし、怒ったように言う明弘の手を撫でながら、紫音は『ありがとう』と笑った。
「いつもアッキーがそう言ってくれて、わたしの事好きだって、言葉でも態度でも示してくれるから、そうなんだって思って、不安じゃなくなったよの」
「なんだ……それなら、良かった……」
「うん……だからね、アッキーにもわたしと同じように、安心してもらえたらなって……」
「えっ?」
もう一度紫音にくっつこうと横になりかけた明弘の動きが止まる。
「友達に会わせたくないのって、そういう事なのかな? って思って。わたしはアッキーの事が好きだよ。誰に好かれようと、関係ない。アッキーだけを愛しているの。でもそれがアッキーに伝わっていないから、心配するのかなって」
「え、あ……」
伝わっていないわけではない。
紫音に愛されているという事は、ちゃんとわかっている。けれど……、
「大好きよ、アッキー。だから、アッキーの友達にも良い彼女だって思われたくて、ご飯に誘っちゃった。わたし見て、がっかりしたと思うのよね、アッキーの彼女にしては綺麗でもないし色っぽくもないし」
「そんなっ! しーちゃんは綺麗だよ!」
「アッキーはそう思ってもね、一般的には……まあ、アッキーにさえそう思ってもらえてるなら、それでいいのよ。そして友達には、やっぱりアッキーが選んだ人だな、って思ってもらいたくて」
「うー……みんな、また来たいって言ってた。駄目って断ったけど……」
紫音に愛されているという事は、ちゃんとわかっている。
紫音は誰かに好きと言われたからといって『どっちがいいか』なんて比較したりしない。
それはわかっているけれども。
(それでも不安だし、独り占めしたいんだ……)
不安と欲。
(今までちゃんと考えた事が無かったけれど……というか、考えたくなかったんだな。自分が情けなくなるから)
年下だし、親に依存していて自分の力ではまだ何もできないのに、自分のものにしたくて、独り占めしたくて、紫音と強引に一緒に暮らし始めた。
「……しーちゃん、俺、これから頑張る。自信をつけて、余裕を持てるようになる。しーちゃんが俺の事好きで、大切にしてくれてるって事は、ちゃんとわかっているから」
「うん」
「ただすぐには、みんなをしーちゃんに会わせても平気にはなれないよ。でも、いつかきっと……」
「いいよ、急がなくったって」
明弘がとても愛おしくて。ギュッと抱きしめて、紫音はその唇に自分の唇を重ねた。
「そうよ、これからずっと一緒なんだもの。焦る事はないわよ、わたしも、アッキーも」
「うん。大好き、しーちゃん」
「わたしも大好きよ」
今すぐでなくても、二人で一緒に成長していけばいい。
お互いの体温に幸せを感じながら、二人は眠りにつくのだった。
(……若さって、恐ろしい……)
リビングから寝室に移動し『すぐにでも大丈夫』と言う紫音の言葉は却下され、丁寧に執拗に前戯を施された後、長い時間行為に没頭し、今、とうとう身体を離したのだが、
(……している途中に『もう一回してもいい?』って聞いてくるなんて……明日仕事だから無理って言ったら、そこからイクの我慢して、ずっとずっとずっと……いつ終わるのか、危うく聞くところだったわ。本当に恐ろしい……)
明弘の無尽蔵にも思える欲には、普段運動していない紫音はとてもじゃないがついていけない。
(マンションのフィットネスルームに行くか……せめて週に1度でも)
そんな事を考えていると、ようやく息が整った明弘が抱きついてきた。
「しーちゃん……やっぱりもうちょっと……まだ今日だし」
「今日はもう無理よ、本当に」
「ん~、わかった……」
しょんぼりしながらも一応聞きわけ、それでもそっと胸に手を乗せる明弘に苦笑し、紫音はその頭を撫でながら言った。
「わたしね、アッキーと付き合って最初の頃はすごく不安で心配だったの」
「えっ?」
驚く明弘に『そりゃあそうでしょう』と言う。
「大学に行けば、若くて可愛い女の子がたくさんいるでしょう? わたしは美人でもないし、昔の恩があってわたしの事好きなアッキーも、そのうちそういう子の方が良くなるだろうなって思って」
「そんな事あるわけない! 俺は、しーちゃん以外絶対好きにならない!」
身体を起こし、怒ったように言う明弘の手を撫でながら、紫音は『ありがとう』と笑った。
「いつもアッキーがそう言ってくれて、わたしの事好きだって、言葉でも態度でも示してくれるから、そうなんだって思って、不安じゃなくなったよの」
「なんだ……それなら、良かった……」
「うん……だからね、アッキーにもわたしと同じように、安心してもらえたらなって……」
「えっ?」
もう一度紫音にくっつこうと横になりかけた明弘の動きが止まる。
「友達に会わせたくないのって、そういう事なのかな? って思って。わたしはアッキーの事が好きだよ。誰に好かれようと、関係ない。アッキーだけを愛しているの。でもそれがアッキーに伝わっていないから、心配するのかなって」
「え、あ……」
伝わっていないわけではない。
紫音に愛されているという事は、ちゃんとわかっている。けれど……、
「大好きよ、アッキー。だから、アッキーの友達にも良い彼女だって思われたくて、ご飯に誘っちゃった。わたし見て、がっかりしたと思うのよね、アッキーの彼女にしては綺麗でもないし色っぽくもないし」
「そんなっ! しーちゃんは綺麗だよ!」
「アッキーはそう思ってもね、一般的には……まあ、アッキーにさえそう思ってもらえてるなら、それでいいのよ。そして友達には、やっぱりアッキーが選んだ人だな、って思ってもらいたくて」
「うー……みんな、また来たいって言ってた。駄目って断ったけど……」
紫音に愛されているという事は、ちゃんとわかっている。
紫音は誰かに好きと言われたからといって『どっちがいいか』なんて比較したりしない。
それはわかっているけれども。
(それでも不安だし、独り占めしたいんだ……)
不安と欲。
(今までちゃんと考えた事が無かったけれど……というか、考えたくなかったんだな。自分が情けなくなるから)
年下だし、親に依存していて自分の力ではまだ何もできないのに、自分のものにしたくて、独り占めしたくて、紫音と強引に一緒に暮らし始めた。
「……しーちゃん、俺、これから頑張る。自信をつけて、余裕を持てるようになる。しーちゃんが俺の事好きで、大切にしてくれてるって事は、ちゃんとわかっているから」
「うん」
「ただすぐには、みんなをしーちゃんに会わせても平気にはなれないよ。でも、いつかきっと……」
「いいよ、急がなくったって」
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「そうよ、これからずっと一緒なんだもの。焦る事はないわよ、わたしも、アッキーも」
「うん。大好き、しーちゃん」
「わたしも大好きよ」
今すぐでなくても、二人で一緒に成長していけばいい。
お互いの体温に幸せを感じながら、二人は眠りにつくのだった。
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