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おまけ2(第17回恋愛小説大賞参加記念)
ハイスペックな友人の彼女 3
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「ご飯食べる分、自分でよそってね」
そう言われ、いそいそと深皿にご飯を盛った男四人が、ちゃんと列をつくってカレーをかけてもらう。
「ゆでたまごのっけたい人~」
「「「「はいっ!」」」」
全員揃って手を上げる。
カレーをかけてもらった後にゆでたまごもひとつずつのせててもらい、テーブルに置くと『もう一回来てー』と言われ、キャベツと大根の千切りを混ぜたものにブロッコリーとプチトマトを添えたサラダと、飲むヨーグルトの入ったグラスを渡された。
食べていていい、と言う紫音に『待ってる』と明弘が答え、全員揃ってから『いただきます』と食べ始める。
「うまっ! カレーうまっ!」
「でしょう? しーちゃんのカレー、最高に美味しいんだって!」
「いやいや、誰が作っても美味しくできるって。ルー使ってるんだから」
そう言う紫音に、明弘はブンブンと首を振る。
「そんな事ないよ! しーちゃんのカレーは特別!」
力説する明弘の横で、サラダを食べた圭太が言う。
「カレーも旨いけど、ブロッコリー旨い。久々に食った」
「俺も! 弁当に入ってるのとか冷凍のとか、柔かったりするじゃん」
「ホントだ、旨い!」
「みんな一人暮らし? ブロッコリーなんて、洗って切って茹でるだけよ。やってみたら?」
紫音の言葉に、圭太は『う~』と唸ってしまう。
「それがなかなか……水からかお湯からか、とかわかんないですし……茹でたら、水かけるんでした?」
「半分くらい浸かるくらいのお湯で茹でて、途中で上下ひっくり返すといいわよ。少し固めで取り出して、水には晒さないで冷やすの」
「……できるかな」
「簡単よ。一回見ればすぐわかるわ」
「え、じゃあ今度」
「俺が教えてやる!」
圭太の言葉に被せ、明弘が力強く言う。
「うわっ!」
今度は、黙々とカレーと食べていた花田が声を上げた。
「どうかした?」
「ゆでたまご、割ったら黄身がトロッと! うわヤバイ、最高……」
「わっ、本当だ、たまらん……旨い……」
「こんなゆでたまご、どうやったらできるんだ……」
「色々やり方はあるけどね、お湯が湧いたら冷蔵庫から出したばかりの卵を入れて7分くらいね。お尻の方に穴をあけとくと殻が剥きやすいわよ」
「穴、ですか?」
「卵に穴開けるヤツ、100円ショップにもあるから。俺が今度教える」
またしても明弘が力強く言い、そんな明弘に苦笑しつつ、シオンが声をかける。
「福神漬け、足りなかったらまだ予備があるから遠慮なく使ってね~」
「しーちゃん! 俺おかわりしたいっ!」
「えっ? アッキーもう食べたの? まだまだいっぱいあるからおかわりしてきて」
「自分でできるけど……しーちゃんも来て!」
「あー……はいはい。そうだ、カレー鍋持ってきちゃおうか。今日は大人数だから、一番大きい耐熱性の高い鍋で作ったから冷めにくいし」
二人がテーブルを立ってから、三人は顔を見合わ、コソコソ言葉を交わす。
「アキってあんな『甘えた』だったか?」
「いや、ガードが凄いって事だと思う」
「一瞬も俺達と彼女さんだけにしたくないという強い意思を感じる」
「彼女さんの方も、わかってる感じだったよな」
「なるほど……」
三人が頷きあっていると、険しい顔をした明弘が重そうな厚手の鍋を、そしてにこやかな笑顔の紫音が鍋敷きを持って戻ってきた。
「さあ! カレー持って来たわよ。ご飯もまだあるし、良かったらおかわりしてね」
「「「はいっ!」」」
ワイワイ言いながら心ゆくまで『お家カレー』を堪能し、三人は帰路についた。
「……シオンさんって……いい人だったな」
「うん。なんか最初は、アキの彼女にしては普通かなって思ったけど、納得だった」
「優しいし、気さくだし。全然気を張らなくて良くって、めちゃめちゃ居心地良かった」
「アキが好きになるのわかるわー。大学の女子に興味もたないの納得」
「だな。それにしても、独占欲強すぎない? 俺らの事、追い出しやがって」
『ご馳走になったのだから、後片付けは自分達が』と申し出たのだが『俺がするからいい!』と明弘に半ば追い出されるように見送られた。
「またシオンさんのカレー食べに来たいって言ったら、駄目って即答されたぞ?」
「そんな心配しなくていいのに。シオンさんは素敵だけど『オカン』って感じだし」
「そうそう、母親。もしくは姉ちゃんだな」
「絶対狙わないよな。アキに敵うとも思わないし。……俺、シオンさんの唐揚げ食いたい。絶対美味しいと思う」
「俺はハンバーグ作ってもらいたい」
「シチューご飯にかけて食べたい……」
「えっ? シチューってご飯にかけないだろう!」
「あーでも俺わかる。小学生まではかけてた」
「あの人なら、変だとか言わないで『好きに食べなさい』って言ってくれそう」
「だな。……なあ、俺、正月はこっちいるって言ってたけど、やっぱり実家帰ろうかな」
「あ、俺もそれ思った。帰って、ちょっと料理の仕方、聞いてくるわ」
「アキは『来るな』って言うだろうし、作ってくれる彼女がすぐできるわけもないし……自分で作れるようになるのが一番手っ取り早いな」
「料理作れた方が、彼女もできやすくねぇ?」
「それ言えてるな! 来年こそ彼女つくるぞ!」
今年の正月は実家に帰る事を心に決め、三人は賑う年末の街を、少々食べ過ぎた腹をさすりながら駅に向かった。
そう言われ、いそいそと深皿にご飯を盛った男四人が、ちゃんと列をつくってカレーをかけてもらう。
「ゆでたまごのっけたい人~」
「「「「はいっ!」」」」
全員揃って手を上げる。
カレーをかけてもらった後にゆでたまごもひとつずつのせててもらい、テーブルに置くと『もう一回来てー』と言われ、キャベツと大根の千切りを混ぜたものにブロッコリーとプチトマトを添えたサラダと、飲むヨーグルトの入ったグラスを渡された。
食べていていい、と言う紫音に『待ってる』と明弘が答え、全員揃ってから『いただきます』と食べ始める。
「うまっ! カレーうまっ!」
「でしょう? しーちゃんのカレー、最高に美味しいんだって!」
「いやいや、誰が作っても美味しくできるって。ルー使ってるんだから」
そう言う紫音に、明弘はブンブンと首を振る。
「そんな事ないよ! しーちゃんのカレーは特別!」
力説する明弘の横で、サラダを食べた圭太が言う。
「カレーも旨いけど、ブロッコリー旨い。久々に食った」
「俺も! 弁当に入ってるのとか冷凍のとか、柔かったりするじゃん」
「ホントだ、旨い!」
「みんな一人暮らし? ブロッコリーなんて、洗って切って茹でるだけよ。やってみたら?」
紫音の言葉に、圭太は『う~』と唸ってしまう。
「それがなかなか……水からかお湯からか、とかわかんないですし……茹でたら、水かけるんでした?」
「半分くらい浸かるくらいのお湯で茹でて、途中で上下ひっくり返すといいわよ。少し固めで取り出して、水には晒さないで冷やすの」
「……できるかな」
「簡単よ。一回見ればすぐわかるわ」
「え、じゃあ今度」
「俺が教えてやる!」
圭太の言葉に被せ、明弘が力強く言う。
「うわっ!」
今度は、黙々とカレーと食べていた花田が声を上げた。
「どうかした?」
「ゆでたまご、割ったら黄身がトロッと! うわヤバイ、最高……」
「わっ、本当だ、たまらん……旨い……」
「こんなゆでたまご、どうやったらできるんだ……」
「色々やり方はあるけどね、お湯が湧いたら冷蔵庫から出したばかりの卵を入れて7分くらいね。お尻の方に穴をあけとくと殻が剥きやすいわよ」
「穴、ですか?」
「卵に穴開けるヤツ、100円ショップにもあるから。俺が今度教える」
またしても明弘が力強く言い、そんな明弘に苦笑しつつ、シオンが声をかける。
「福神漬け、足りなかったらまだ予備があるから遠慮なく使ってね~」
「しーちゃん! 俺おかわりしたいっ!」
「えっ? アッキーもう食べたの? まだまだいっぱいあるからおかわりしてきて」
「自分でできるけど……しーちゃんも来て!」
「あー……はいはい。そうだ、カレー鍋持ってきちゃおうか。今日は大人数だから、一番大きい耐熱性の高い鍋で作ったから冷めにくいし」
二人がテーブルを立ってから、三人は顔を見合わ、コソコソ言葉を交わす。
「アキってあんな『甘えた』だったか?」
「いや、ガードが凄いって事だと思う」
「一瞬も俺達と彼女さんだけにしたくないという強い意思を感じる」
「彼女さんの方も、わかってる感じだったよな」
「なるほど……」
三人が頷きあっていると、険しい顔をした明弘が重そうな厚手の鍋を、そしてにこやかな笑顔の紫音が鍋敷きを持って戻ってきた。
「さあ! カレー持って来たわよ。ご飯もまだあるし、良かったらおかわりしてね」
「「「はいっ!」」」
ワイワイ言いながら心ゆくまで『お家カレー』を堪能し、三人は帰路についた。
「……シオンさんって……いい人だったな」
「うん。なんか最初は、アキの彼女にしては普通かなって思ったけど、納得だった」
「優しいし、気さくだし。全然気を張らなくて良くって、めちゃめちゃ居心地良かった」
「アキが好きになるのわかるわー。大学の女子に興味もたないの納得」
「だな。それにしても、独占欲強すぎない? 俺らの事、追い出しやがって」
『ご馳走になったのだから、後片付けは自分達が』と申し出たのだが『俺がするからいい!』と明弘に半ば追い出されるように見送られた。
「またシオンさんのカレー食べに来たいって言ったら、駄目って即答されたぞ?」
「そんな心配しなくていいのに。シオンさんは素敵だけど『オカン』って感じだし」
「そうそう、母親。もしくは姉ちゃんだな」
「絶対狙わないよな。アキに敵うとも思わないし。……俺、シオンさんの唐揚げ食いたい。絶対美味しいと思う」
「俺はハンバーグ作ってもらいたい」
「シチューご飯にかけて食べたい……」
「えっ? シチューってご飯にかけないだろう!」
「あーでも俺わかる。小学生まではかけてた」
「あの人なら、変だとか言わないで『好きに食べなさい』って言ってくれそう」
「だな。……なあ、俺、正月はこっちいるって言ってたけど、やっぱり実家帰ろうかな」
「あ、俺もそれ思った。帰って、ちょっと料理の仕方、聞いてくるわ」
「アキは『来るな』って言うだろうし、作ってくれる彼女がすぐできるわけもないし……自分で作れるようになるのが一番手っ取り早いな」
「料理作れた方が、彼女もできやすくねぇ?」
「それ言えてるな! 来年こそ彼女つくるぞ!」
今年の正月は実家に帰る事を心に決め、三人は賑う年末の街を、少々食べ過ぎた腹をさすりながら駅に向かった。
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