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勝負下着 リサーチ編
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金曜日、飲み会の後でまたホテルに行く事になった。
『と、いうことは、また下着を見られるわけだけど……』
寧々は、困っていた。
前回は、部屋の掃除をしなければいけなくて時間が無かったのだが、今回は充分に時間がある。
『……勝負下着というものを、準備するべき?』
土曜日、フレンチトーストを食べたあと本郷は、『いろいろ辛いだろう? 安静にしとけ』と寧々をベッドに寝かしつけ、食器を洗って帰って行った。
そしてその言葉通り、体中だるくて痛くて、日曜日もずっと家でゴロゴロしてしまった。
そして週明け。
仕事が始まり月、火とバタバタ過ごしてきたが。
『もう今日は水曜日じゃない。一回洗濯しなきゃいけないから、今日買わないと間に合わないんじゃない?』
しかしこれまで、服を着た時に影響がない形、色だけを考えて購入してきたので『どんな物がいいんだろう』という疑問にぶちあたる。
『色とか、何色がいいの? どこで買えばいいの? ええっ? どうしよう!』
「ネネさん、そろそろお昼ですけど」
「シオン!」
「は、はい?」
「今日はお弁当?」
「いえ、食堂行こうかと思って」
「わたしすっごくカレーが食べたいんだよね。一緒にどう?」
「あ! すぐそこのナンおかわりオッケーのとこですか? 行きます行きます! ひっさしぶり~」
最近彼氏ができた紫音を誘う事に成功し、寧々は情報収集する事にした。
会社の近くのカレー屋に入り、二人とも『本日のカレー』を頼む。
セットで付いているサラダを食べながら、寧々はさりげなく紫音に話題を振った。
「この間もらったシャンパン、本当に美味しかった。ありがとうね。彼氏君にもお礼言っておいてもらえるかな」
「はい~」
「あれ、すっごく高いんだよね? もらっちゃって良かったの?」
「彼のお父さんからもらった物で、まだ結構あるんです。わたし達も値段はよくわからないけど、いい物みたいだから、ネネさんみたいにお酒わかる人に飲んでもらえたらなーって思ったんです」
「ありがとう! お礼といってはなんだけど、ここはわたしが払うから」
「えっ? いや、いいですよ! もらい物ですし」
「いいのいいの、本当に美味しかったし……ところで……」
「はい」
「その……シオンは、どこで下着買ってるの?」
「……はい?」
突然の質問に、紫音が聞き返す。
「下着、ですか? ブラとかパンツとか?」
「う、うん。あー、えーと、わたし、いつも決まったところの同じものしか買ってなくてね。紫音はどうなのかなーって……」
「あー、わたしもだいたい同じメーカーですね。デザインはいろいろですけど」
「へー……レースとかついた、可愛いのとか買うの?」
「まあ、そうですね」
「わたし、服にひびかないように、ツルンとしたのばっかり買っちゃうのよね」
「わかります! そういうのが一番いいですよね。わたしも何個かそういうの持ってますよ」
「でもほら……彼氏いるから、そういうのじゃない方が良かったりするんでしょう?」
「それがー、わたしも最初そう思って見た目重視のを買ったんですよ、黒のレースとか、ピンクに黒のフリルとリボンが付いてるのとか」
「うんうん」
「でも彼、下着見ないんですよ、ほとんど」
「え? そうなの?」
「せっかく新しいのを気合い入れて着けてても、意味ないんですよね……」
「あー……それはがっかりだねぇ……」
「そうなんですよー。本郷さんは、どうですか?」
「いや、それが結構……」
言いかけて、ハッとして紫音を見る。
ニコニコニコニコ
「あ、えーと……どう、して?」
笑顔の紫音に恐る恐る尋ねたところで、
「お待たせしましたー。本日のカレーのチキンカレーです。ナンはおかわりできます」
「あ、はい、ありがとうございます」
大きな銀の器に入ったナンとカレーが置かれ、二人は一旦話をやめた。
「まずは食べよう! 熱いうちに」
「はい、いただきます!」
大きなアツアツのナンをちぎって食べる。
「アチッ! 美味しい!」
「ナンが好きなのよ、わたし」
「わたしもです~。いつもおかわりしようと思うんですけど、ここのは大きいから、結局無理なんですよね~」
「だよね~」
それから二人は『美味しい』『美味しい』とカレーを食べ続け、すっかり食べ終えてから『さて』と話を始めた。
「あのぉ……本郷君の事なんだけど……」
「やっぱり、本郷さんと何かあったんですね?」
身を乗り出すように尋ねる紫音。
「ど……どうして、そう思うの?」
「だって今週、二人ともなんかいつもと違ってて……本郷さんのネネさんに対する距離、めっちゃ近いですよね? それに、これまで『笹原』って呼んでいたのに、『ネネ』って呼んでる時ありましたよ! で、ネネさんもなんだか意識してる感じだし、ボーっとしている時があるし……。金曜日わたしが先に帰った後で何かあったのかな? って思っていたら、今日、下着の話じゃないですか! 今までそんなのした事ないのに。もー、明らかになんかあったでしょう!」
「ウッ……いや、あの、その……まあ、なんと言いますか……今後? そう! 今後もしかしたら何かありそうな? ないかもしれないけどあるかもしれなくて、そしたらその、それなりのブラとかね? 持ってた方がいいかな? という程度の話でね?」
「うんうん、そうですよね。持ってた方がいいですよね。あの、良かったら今日見に行きませんか? わたしも、見られないとはいえ、あんまりヘタレたブラだと恥ずかしいんで、良いのがあったら欲しいですし」
「う、うん、じゃあ、そうしようかな」
アイスチャイをグイーッと飲み、寧々は頷いた。
『と、いうことは、また下着を見られるわけだけど……』
寧々は、困っていた。
前回は、部屋の掃除をしなければいけなくて時間が無かったのだが、今回は充分に時間がある。
『……勝負下着というものを、準備するべき?』
土曜日、フレンチトーストを食べたあと本郷は、『いろいろ辛いだろう? 安静にしとけ』と寧々をベッドに寝かしつけ、食器を洗って帰って行った。
そしてその言葉通り、体中だるくて痛くて、日曜日もずっと家でゴロゴロしてしまった。
そして週明け。
仕事が始まり月、火とバタバタ過ごしてきたが。
『もう今日は水曜日じゃない。一回洗濯しなきゃいけないから、今日買わないと間に合わないんじゃない?』
しかしこれまで、服を着た時に影響がない形、色だけを考えて購入してきたので『どんな物がいいんだろう』という疑問にぶちあたる。
『色とか、何色がいいの? どこで買えばいいの? ええっ? どうしよう!』
「ネネさん、そろそろお昼ですけど」
「シオン!」
「は、はい?」
「今日はお弁当?」
「いえ、食堂行こうかと思って」
「わたしすっごくカレーが食べたいんだよね。一緒にどう?」
「あ! すぐそこのナンおかわりオッケーのとこですか? 行きます行きます! ひっさしぶり~」
最近彼氏ができた紫音を誘う事に成功し、寧々は情報収集する事にした。
会社の近くのカレー屋に入り、二人とも『本日のカレー』を頼む。
セットで付いているサラダを食べながら、寧々はさりげなく紫音に話題を振った。
「この間もらったシャンパン、本当に美味しかった。ありがとうね。彼氏君にもお礼言っておいてもらえるかな」
「はい~」
「あれ、すっごく高いんだよね? もらっちゃって良かったの?」
「彼のお父さんからもらった物で、まだ結構あるんです。わたし達も値段はよくわからないけど、いい物みたいだから、ネネさんみたいにお酒わかる人に飲んでもらえたらなーって思ったんです」
「ありがとう! お礼といってはなんだけど、ここはわたしが払うから」
「えっ? いや、いいですよ! もらい物ですし」
「いいのいいの、本当に美味しかったし……ところで……」
「はい」
「その……シオンは、どこで下着買ってるの?」
「……はい?」
突然の質問に、紫音が聞き返す。
「下着、ですか? ブラとかパンツとか?」
「う、うん。あー、えーと、わたし、いつも決まったところの同じものしか買ってなくてね。紫音はどうなのかなーって……」
「あー、わたしもだいたい同じメーカーですね。デザインはいろいろですけど」
「へー……レースとかついた、可愛いのとか買うの?」
「まあ、そうですね」
「わたし、服にひびかないように、ツルンとしたのばっかり買っちゃうのよね」
「わかります! そういうのが一番いいですよね。わたしも何個かそういうの持ってますよ」
「でもほら……彼氏いるから、そういうのじゃない方が良かったりするんでしょう?」
「それがー、わたしも最初そう思って見た目重視のを買ったんですよ、黒のレースとか、ピンクに黒のフリルとリボンが付いてるのとか」
「うんうん」
「でも彼、下着見ないんですよ、ほとんど」
「え? そうなの?」
「せっかく新しいのを気合い入れて着けてても、意味ないんですよね……」
「あー……それはがっかりだねぇ……」
「そうなんですよー。本郷さんは、どうですか?」
「いや、それが結構……」
言いかけて、ハッとして紫音を見る。
ニコニコニコニコ
「あ、えーと……どう、して?」
笑顔の紫音に恐る恐る尋ねたところで、
「お待たせしましたー。本日のカレーのチキンカレーです。ナンはおかわりできます」
「あ、はい、ありがとうございます」
大きな銀の器に入ったナンとカレーが置かれ、二人は一旦話をやめた。
「まずは食べよう! 熱いうちに」
「はい、いただきます!」
大きなアツアツのナンをちぎって食べる。
「アチッ! 美味しい!」
「ナンが好きなのよ、わたし」
「わたしもです~。いつもおかわりしようと思うんですけど、ここのは大きいから、結局無理なんですよね~」
「だよね~」
それから二人は『美味しい』『美味しい』とカレーを食べ続け、すっかり食べ終えてから『さて』と話を始めた。
「あのぉ……本郷君の事なんだけど……」
「やっぱり、本郷さんと何かあったんですね?」
身を乗り出すように尋ねる紫音。
「ど……どうして、そう思うの?」
「だって今週、二人ともなんかいつもと違ってて……本郷さんのネネさんに対する距離、めっちゃ近いですよね? それに、これまで『笹原』って呼んでいたのに、『ネネ』って呼んでる時ありましたよ! で、ネネさんもなんだか意識してる感じだし、ボーっとしている時があるし……。金曜日わたしが先に帰った後で何かあったのかな? って思っていたら、今日、下着の話じゃないですか! 今までそんなのした事ないのに。もー、明らかになんかあったでしょう!」
「ウッ……いや、あの、その……まあ、なんと言いますか……今後? そう! 今後もしかしたら何かありそうな? ないかもしれないけどあるかもしれなくて、そしたらその、それなりのブラとかね? 持ってた方がいいかな? という程度の話でね?」
「うんうん、そうですよね。持ってた方がいいですよね。あの、良かったら今日見に行きませんか? わたしも、見られないとはいえ、あんまりヘタレたブラだと恥ずかしいんで、良いのがあったら欲しいですし」
「う、うん、じゃあ、そうしようかな」
アイスチャイをグイーッと飲み、寧々は頷いた。
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