【R18】これは『同期だから』で済まされる事ですか?

カナリア55

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ネネは特別

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 リビングへ行くと、部屋にはバターと甘い香りが漂っていた。

「何この匂い?」
「おっ、ちょうど良かった、もうすぐできるから」
「えー、なになに?」

 フライパンで何かを焼いている本郷。覗いて見ると、黄色い丸い物がジュージュー音を立てている。

「もしかして、フレンチトースト?」
「そう、当たり!」
「えーすごい! あ、何か飲み物……コーヒーでいい? 紅茶もあるけど」
「コーヒーで」
「了解」

 棚からコーヒーを出し、コーヒーメーカーに水を入れたりフィルターをセットしたりして、ボタンを押す。あとは待つだけなので、本郷の隣りに立って作業を見つめた。

「すごいねー、そんなの作れるんだ」
「簡単な作り方見つけてな。昨日の残りのフランスパン使っちゃったぞ」
「うん、いいよ。うわー、美味しそう」
「……よし、こんなもんかな? 皿2枚くれ」
「これでいい?」
「うん。じゃあ、フレンチトーストのっけて―、で、アイスものっけようぜ」
「うわ、最高! そういえば昨日食べなかったもんね。バニラとストロベリーって言ってたよね? どっちがいい?」
「実は、バニラアイスの方はもうフレンチトーストに使ったんだよね」
「えっ? アイスで作ったの?」
「そうそう、アイスと卵で漬け液作ったんだ」

 皿にフレンチトーストを盛り、その上にアイスを乗せてテーブルに運ぶ。
 コーヒーもタイミング良く出来た。

「いただきます」
「召し上がれ」

 フォークでフレンチトーストを刺し、口に運ぶ。

「んーっ! 美味しい! カリッとしてトロッとしてる!」
「だろう? 昨日の夜から漬けてたんだ」
「えっ? そうなの? 全然気づかなかった」
「ネネ寝てたからな。シャワー浴び終わって部屋戻ったら、すっかり熟睡してた」
「あー、ちょっと目瞑って、気が付いたら朝だったんだけど……本郷君、寝た?」
「おお、隣りで寝たぞ」
「そっか……それも全然気づかなかった……」
「ピクリとも動かず寝てたもんな」
「そう……」

 なんだか恥ずかしくなりながら、寧々はコーヒーを一口飲んだ。
 そして、茶化すように言う。

「それにしても本郷君たら、いつも彼女にこういう事してあげてるわけ?」
「ん?」
「朝食作ってくれたりとか、優しいじゃなーい」
「ああ、作んねーよ、全く。ネネは特別」
「特別?」

 ドキッとして聞き返すと、本郷は笑いながら言った。

「だってネネは料理しないって、常々言ってただろう?」
「あー……そういう……」

 本郷の言葉に、ドキッとした自分が恥ずかしくなる。

「……どうせ、わたしは料理できませんよ。今までの彼女達はみんなお料理上手で、作ってくれたんでしょうね」
「いや、そういうわけでもないよ。料理するとか言ってて、実際は全然出来なかったりな。そんなウソつくより、ネネみたいに『作らない』って言った方が、潔いよな」
「でもそう言うと、男性陣は引くじゃない。『女なんだから料理くらいできないと』って、しょっちゅう言われたわ。それで、意固地になって『料理できない。米研ぐのも面倒』とか言ってたけど……実際最近は忙しくて、外食とかお弁当ばっかりだったし……」
「いいんだよ、別にさ。忙しいのは本当なんだし、今は便利な物いっぱいあるんだから、それ利用すればいいんだよ」
「……まあそうね。正直に言ってたおかげで、こうして本郷君のフレンチトースト食べられたわけだしね」

 そう言って寧々は笑った。

「ところでさ、今度の金曜日、飲み会だろ?」
「ああ、ひと段落ついたから、お疲れ様会ね」
「そうそう。その飲み会の後に、ホテル行くか」
「ブッ」

 本郷の言葉に、寧々は思わず吹き出してしまった。

「なっ……何言って……」
「いや、次はどうしようかなって考えてたんだけどさ。やっぱり、ちょっと間を置いた方がいいだろ? それとももう、今日とか明日とかする?」
「いやいやいや、ちょっと待って。えっ? だって、もうその……目的は達成したわけだし? ええっ?」
「おいおい、馬鹿な事言うんじゃないよ。昨日は痛くて、あんまり気持ち良くなれなかっただろう?」
「いえ? ちゃんと気持ち良く」
「ちーがうんだって!」

 寧々の言葉を遮り、本郷は首を横に振った。

「あんなもんじゃない、もっとちゃんと気持ち良くなれるから。まあ、任せとけよ。同期なんだし」
「う、うん……?」

 戸惑いながらも、一応了承して、寧々は頷いた。

『なんだかよくわからないけど……でも、まあいいや。だってわたし、嬉しいって思っちゃったもの……』

 甘いフレンチトーストを食べながら、『あまり考えないようにしよう』と寧々は思うのだった。


 
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