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失敗の後は?
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『……くそっ、失敗した……』
頭からシャワーを浴びながら本郷は、行き場をなくした昂ぶりを吐き出す為、乱暴に自分のものを擦っていた。
気持ち良く、という気は無く、とにかく刺激を与えて抜いてしまいたかった。
『あーもー、本っ当に失敗した。寧々がイッた時、俺の指をキュウッて締め付けてきたから、もう早くそこに入れたくてしょうがなくなって焦っちまった。それにあの時、それまでサラサラだったネネの液が、トロッとしたのに変わったから、もう大丈夫だと……』
「ウッ……」
その時の手触りや、寧々の表情、呼吸を思い出し、身体の中心がドクンと大きく脈打つ。
「ハァ、ハァ、ハァ……んっっっ……」
夢中になって擦り、欲望を放つ。
「……はぁ……」
シャワーが跡形もなく吐き出した物を流し、後には、虚しさが残る。
「ネネ……」
シャワーを止め、バスタオルで濡れた髪と身体を拭いて部屋に戻ると、ベッドの上はシャワー前に見たままの、こんもりとした布団の山があった。
「……笹原、いい加減出てこい」
そう声を掛けてみたが、反応がない。
「おい、まさか寝てんじゃないだろうな。もう帰るぞ? もうなんもしないから、出てこい」
もぞもぞと、布団が動く。
「……ホントに、もう何もしない?」
「ああ、本当。ほれ」
ベッドの端に腰かけ、備え付けの冷蔵庫から出したペットボトルの水を振ると、寧々が顔を出し、布団を体に巻き付けるようにしながら上半身を起こした。
「水飲め」
「うん……」
素直に言う事を聞く寧々。
しかしさっきはもう、聞く耳持たず、だった。
『まあ、あの状態でもう一回やろうって言っても、恐くてできないか』
いつも、一筋の乱れもなく肩の上でサラリと揺れている真っすぐな黒髪が、布団に潜ったせいでグシャグシャになり、キリッとしている目元も、ポヤンと虚ろに見える。
「悪かったな、うまくできなくて」
「えっ? いや、全然っ!? 本郷君のせいじゃないし!」
ブンブン首を横に振りながら、寧々は慌てて言った。
「こっちこそ、ごめんね? なんか、せっかく本郷君が心配してシテくれたのに、ちゃんとできなくて。でもおかげ様で『イク』ってどういう事かわかったし、その……最後までしなかったかもしれないけど、大体わかったからもう大丈夫! ありがとう」
「大体わかったって……全然わかってないだろうが」
ため息交じりでそう言う本郷に、寧々は『わかったってば!』と語気を強めて言う。
「もう充分わかりました! もう大丈夫です!」
「何が大丈夫だよ。全く……仕事の時のお前なら、絶対諦めないだろ? どんなに辛くても、周りが諦めても、最後までやり遂げるのが笹原だろ?」
「仕事と一緒にしないでよ! 仕事は、仕事だから頑張ってるのよ! ていうか、これだって頑張ったわよ! すっごくすっごく頑張って、我慢して、それでも無理だったんだからしょうがないじゃない! なんなのよ、どうしてもう少し進化しなかったのよ! 受精するなら、もっと細い管みたいなのでシューッて体内に入ればいいじゃない! なんでこんなに痛いのよ! 男性はもっと、女性の事を考えて進化するべきだったのよ!」
「うっ……酷い事言うな……」
「酷くないわよ。大体、女性だけ大変なのよ。セックスの時も痛くて、出産の時も痛くて。妊娠中だって悪阻が酷いとか、腰が痛いとか、周りが嫌な顔するとか、電車や道路でわざと人がぶつかってくるとか、そういう嫌がらせ受けて。仕事だって休まなきゃいけなくて、産休明け、戻るのだって大変だし!」
「あー、わかったわかった、落ちつけ」
「ヒッ!」
顔の方へ手を伸ばすと、寧々は小さな悲鳴を上げ、布団を顔まで引っ張り上げた。
「あー、ホントにもう何もしないから。今日はな」
「へっ? 今日は?」
布団を下ろし、険しい顔で本郷を見る寧々。
「そうだな……明日、笹原んちはどうだ?」
「明日……わたしの、いえ?」
「そう。こういうことは、日を置かない方がいい」
「…………」
しばしの沈黙後、
「いや、だから、もう充分わかったって」
目を逸らしながらそう言う寧々を、本郷は『わかってない!』と否定した。
「お前は全然わかってない! 細い管でいいとか言われて、引き下がれるかってぇの!」
「あ、あれはつい弾みで……嘘だから、ウソウソ」
「誤魔化すな。あれめっちゃ、本心だろう」
「ウッ……いや、でも、本当にもう良くって……気持ちいいのも体験したし……それにうち、今散らかってるし」
「足の踏み場もないってわけじゃなきゃ、多少汚くても気にしないから安心しろ。別に、俺のとこでもいいけど、慣れた場所の方がリラックスできるんじゃないかと思ってさ」
「それはそうかもしれないけど……」
「今日もらったシャンパン飲ませてよ」
「あげるわよ、今日のお礼に」
「あれお礼にもらえるほどの事してないし。明日一緒に飲もうぜ」
「わたし、料理とかできないんですけど」
「知ってるよ。食い物は適当に買っていくから。最寄り駅と住所教えろ」
「……ちょっと……本気?」
「勿論、本気」
本郷は、真面目な顔で頷いた。
頭からシャワーを浴びながら本郷は、行き場をなくした昂ぶりを吐き出す為、乱暴に自分のものを擦っていた。
気持ち良く、という気は無く、とにかく刺激を与えて抜いてしまいたかった。
『あーもー、本っ当に失敗した。寧々がイッた時、俺の指をキュウッて締め付けてきたから、もう早くそこに入れたくてしょうがなくなって焦っちまった。それにあの時、それまでサラサラだったネネの液が、トロッとしたのに変わったから、もう大丈夫だと……』
「ウッ……」
その時の手触りや、寧々の表情、呼吸を思い出し、身体の中心がドクンと大きく脈打つ。
「ハァ、ハァ、ハァ……んっっっ……」
夢中になって擦り、欲望を放つ。
「……はぁ……」
シャワーが跡形もなく吐き出した物を流し、後には、虚しさが残る。
「ネネ……」
シャワーを止め、バスタオルで濡れた髪と身体を拭いて部屋に戻ると、ベッドの上はシャワー前に見たままの、こんもりとした布団の山があった。
「……笹原、いい加減出てこい」
そう声を掛けてみたが、反応がない。
「おい、まさか寝てんじゃないだろうな。もう帰るぞ? もうなんもしないから、出てこい」
もぞもぞと、布団が動く。
「……ホントに、もう何もしない?」
「ああ、本当。ほれ」
ベッドの端に腰かけ、備え付けの冷蔵庫から出したペットボトルの水を振ると、寧々が顔を出し、布団を体に巻き付けるようにしながら上半身を起こした。
「水飲め」
「うん……」
素直に言う事を聞く寧々。
しかしさっきはもう、聞く耳持たず、だった。
『まあ、あの状態でもう一回やろうって言っても、恐くてできないか』
いつも、一筋の乱れもなく肩の上でサラリと揺れている真っすぐな黒髪が、布団に潜ったせいでグシャグシャになり、キリッとしている目元も、ポヤンと虚ろに見える。
「悪かったな、うまくできなくて」
「えっ? いや、全然っ!? 本郷君のせいじゃないし!」
ブンブン首を横に振りながら、寧々は慌てて言った。
「こっちこそ、ごめんね? なんか、せっかく本郷君が心配してシテくれたのに、ちゃんとできなくて。でもおかげ様で『イク』ってどういう事かわかったし、その……最後までしなかったかもしれないけど、大体わかったからもう大丈夫! ありがとう」
「大体わかったって……全然わかってないだろうが」
ため息交じりでそう言う本郷に、寧々は『わかったってば!』と語気を強めて言う。
「もう充分わかりました! もう大丈夫です!」
「何が大丈夫だよ。全く……仕事の時のお前なら、絶対諦めないだろ? どんなに辛くても、周りが諦めても、最後までやり遂げるのが笹原だろ?」
「仕事と一緒にしないでよ! 仕事は、仕事だから頑張ってるのよ! ていうか、これだって頑張ったわよ! すっごくすっごく頑張って、我慢して、それでも無理だったんだからしょうがないじゃない! なんなのよ、どうしてもう少し進化しなかったのよ! 受精するなら、もっと細い管みたいなのでシューッて体内に入ればいいじゃない! なんでこんなに痛いのよ! 男性はもっと、女性の事を考えて進化するべきだったのよ!」
「うっ……酷い事言うな……」
「酷くないわよ。大体、女性だけ大変なのよ。セックスの時も痛くて、出産の時も痛くて。妊娠中だって悪阻が酷いとか、腰が痛いとか、周りが嫌な顔するとか、電車や道路でわざと人がぶつかってくるとか、そういう嫌がらせ受けて。仕事だって休まなきゃいけなくて、産休明け、戻るのだって大変だし!」
「あー、わかったわかった、落ちつけ」
「ヒッ!」
顔の方へ手を伸ばすと、寧々は小さな悲鳴を上げ、布団を顔まで引っ張り上げた。
「あー、ホントにもう何もしないから。今日はな」
「へっ? 今日は?」
布団を下ろし、険しい顔で本郷を見る寧々。
「そうだな……明日、笹原んちはどうだ?」
「明日……わたしの、いえ?」
「そう。こういうことは、日を置かない方がいい」
「…………」
しばしの沈黙後、
「いや、だから、もう充分わかったって」
目を逸らしながらそう言う寧々を、本郷は『わかってない!』と否定した。
「お前は全然わかってない! 細い管でいいとか言われて、引き下がれるかってぇの!」
「あ、あれはつい弾みで……嘘だから、ウソウソ」
「誤魔化すな。あれめっちゃ、本心だろう」
「ウッ……いや、でも、本当にもう良くって……気持ちいいのも体験したし……それにうち、今散らかってるし」
「足の踏み場もないってわけじゃなきゃ、多少汚くても気にしないから安心しろ。別に、俺のとこでもいいけど、慣れた場所の方がリラックスできるんじゃないかと思ってさ」
「それはそうかもしれないけど……」
「今日もらったシャンパン飲ませてよ」
「あげるわよ、今日のお礼に」
「あれお礼にもらえるほどの事してないし。明日一緒に飲もうぜ」
「わたし、料理とかできないんですけど」
「知ってるよ。食い物は適当に買っていくから。最寄り駅と住所教えろ」
「……ちょっと……本気?」
「勿論、本気」
本郷は、真面目な顔で頷いた。
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