上 下
4 / 45

着々と準備は進み

しおりを挟む
『……で、今こうしていると……』

 頭を抱える寧々。

『ああ……早まった? どうしようっ! いいの? 一緒に働いている本郷君と本当にやっちゃっていいの?』

 近くのホテルに入り、先にシャワーを浴びている本郷を待つ間に、段々と酔いが醒めてきてしまった。

『本郷君プレゼン上手いから、ついその気になってしまったけど……どうするの? この状況』

 この場から逃げたい衝動を、必死に堪える。さすがに、シャワーから出てきたらいなくなっていた、というのは失礼すぎだろう。

『……実は、本郷君の事を好きだったときもあるのよね……同期内でもけっこう人気あったから、付き合いたいとかそういう事までは思わなかったけど……いやぁ……本当なんだよね……でも、どうして? なんでわざわざ、面倒くさい事を引き受けるなんて? なんか裏がある?』

 そんな事を考えていると、

「お待たせ」

 その声に、寧々はガバッと顔を上げ、。

「なっ……なんで服着てないのよ!」

 上半身裸の本郷に、またすぐ顔を下げた。

「だってすぐ脱ぐし、腰にバスタオル巻いてるだろうが」
「あ、ああ、そう……ごめん、ちょっと、ちゃんと見てなかった……」
「いや、いいけど……笹原も、入ってきたら?」
「え? あ、うん……」
「ん?」

 モジモジしている寧々に近づくと、本郷は隣に腰かけた。

「そのままする? いいよ、別にシャワー浴びなくても」
「うわーっ! そんなわけないでしょ! シャワー浴びるに決まってるでしょ! 行ってくる!」

 慌ててベッドから立ち上がり、寧々はシャワールームに飛び込んだ。

『ふーっ、危ない危ない。とりあえずシャワー浴びよう』

 ジャケットは部屋に入ってすぐ、脱いでハンガーに掛けておいた。
 ブラウスを脱ぎ、タイトスカートを脱ぎ、キャミソールを脱ぐ。

『わたしも、バスタオル巻いて出ればいいよね。一日着ていた下着だし、とてもお見せできるようなものでは……』

 その時、ガチャリと扉が開き、いきなり本郷が入ってきた。

「な、なに……」
「バスタオル忘れてったから、置いといてやろうと思って」
「あ、りがとう……でも、入る前にノックとか声かけるとか……」
「もう入ってると思ったんだよ。しっかし……」

 ブラとパンツだけの寧々をジッと見て、パッと顔を背ける本郷の肩は、揺れている。

「……なに笑ってんのよ」
「い、いや、なんか、スゲー下着だと思って……」
「なによ、色気が無くて悪かったわね。こういうレースもフリルも何もついてなくて、色もこういうくすんだ色が肌馴染みが良くて表に影響しないから……もう! とにかく出てってよ! あ、バスタオルは、ありがとう……」
「おお、じゃあ待ってるから」

 本郷が出て行ってから、寧々は『ハーッ』と溜息をついた。

「……見られたくなかった……ベージュの下着……でもこれが本当に一番キレイに服が着られるんだもん……もう、キャーとか言う元気も無かったよ……まあ、仕方ない……」

 投げやりな気分になりながら、寧々はシャワーを浴び、バスタオル巻いて部屋に戻った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

絶体絶命!!天敵天才外科医と一夜限りの過ち犯したら猛烈求愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
絶体絶命!!天敵天才外科医と一夜限りの過ち犯したら猛烈求愛されちゃいました

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

野獣御曹司から執着溺愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
野獣御曹司から執着溺愛されちゃいました

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

溺愛社長の欲求からは逃れられない

鳴宮鶉子
恋愛
溺愛社長の欲求からは逃れられない

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...