17 / 33
第一章
17 イーサンの謝罪
しおりを挟む
互いが互いを愛していると知り、寂しさや哀しさの無い、愛だけの情交の後。
「ウィル、あのな、実は言わなきゃいけない事があって……」
「え……なんですか?」
渋い表情で話すイーサンに、ウィリアムの顔からも笑顔が消えた。
「あー、えーと……本当は、もっと早くに言わなきゃいけない事だったんだが、その……ウィルと付き合いたすぎて、その……言わずにシてしまって……すまない」
その謝罪の言葉にウィリアムは一瞬顔を歪めたが……すぐに綺麗な笑顔をつくる。
「なんですか、まったく……少しくらい、幸せをかみしめる時間を下さいよ」
「……すまない……」
「いいえ、構いませんよ。どういう話ですか?」
諦めたように苦笑しながらウィリアムは体を起こし、二人はベッドの上で向かい合って座った。
「あー、さっき俺は、お前の事を一生守ると言ったが……すまない、あまり長くは守ってやれないんだ」
「と、言いますと?」
「うん……実は、これまでこの体質だったヴァレンタイン家の人間は、40歳前後で亡くなっているんだ」
「え……」
驚き、目を見開くウィリアム。
「てっきり、婚約者がいるだとか言い出すのかと……」
「そんなのいるわけないだろう! あー、だが、良くない話だというのは一緒だな、すまん」
イーサンはガバッと頭を下げた。
「俺の父親も40歳ちょいで亡くなったそうだ。だから、きっと俺も同じだと思う」
「そう、なんですね……」
「本当にすまない。こんな重要な事を言わずに、良い事ばかりを並べ立てて、騙したようなもんだよな。自分が卑怯なのはわかっている。だがどうしても、ウィルが欲しかったんだ。好きと言われて、舞い上がった。互いに愛しているのだからいいじゃないかという甘えもあった。俺はどうしてもお前と一緒になりたい。短い時間になってしまうが、どうか俺の隣りにいてくれ」
そう言って下げた頭を、ウィリアムが抱きしめた。
「……いいですよ。私はイーサン様を愛していますから、隣りにおいてくれるというのに何の不満もありません」
「ウィリアム……」
頭を上げると、ウィリアムは腕を緩め、両手でイーサンの頬を挟んで口づけをした。
「……愛しています、イーサン様」
「俺もだ、ウィリアム、愛している」
しばしの間、角度や深さを変えて口づけをした後、二人はベッドに横になった。
ウィリアムはイーサンの胸に抱かれ、そしてイーサンはウィリアムの頭を撫でながら話す。
「……すぐには無理だが、俺の意思を継いでくれる者が育ったら、団長の座を譲って引退しようと思っているんだ」
「そうですか……その方が、私としては嬉しいです。引退後は何をする予定なのですか?」
「どっか静かな田舎に引っ込んで、冒険者みたいな事でもやりたいって思っていた。あんまり危険な事はせずにな」
「じゃあ私は、治療院でもしましょうかね」
「田舎で暮らすのはいいのか?」
「ええ、私も元は小さな村の出ですし、王都の華やかさにはあまり馴染めないのでその方がいいですね」
「そうか、良かった。ああ、あと、結婚するとおそらくお前は第三から移動になると思うんだ。できるだけそのままにしてもらえるように頼んではみるが……」
「……私があちこちで問題を起こしたせいで、付き合っていたり結婚した二人は同じ 所属におかないという決まりができてしまいましたからね」
「お前のせいじゃないだろう」
苦笑するウィリアムをギューッと抱きしめながらイーサンは言った。
「お前は被害者だ。というか、俺が誤解して出した条件なんだから、撤回してどうにか……」
「ですが、関係を公にしたらやはり離れ離れにさせられる可能性がありますから……貴方が団長を退くまで、私達の事は秘密にしましょう」
「えっ? あ、いや、それは……」
困惑した表情のイーサンの頬を撫でながら、ウィリアムは言った。
「私は貴方の身体が心配です。だから常に、貴方の側にいたいのです。これは付き合う条件と捉えて下さって結構です」
「条件、か……」
本当は『移動させられる事になったら仕事を辞めて、この屋敷で待っていてくれないか』と言おうとしていたのだが、
「……わかった。じゃあ、秘密にするから……休みが合う日はこうやって一緒に過ごして欲しい」
「ええ。私もそうしたいです、イーサン様」
こうして二人は、少しの間、秘密のまま付き合う事にしたのだった。
☆第一章終了です。
「ウィル、あのな、実は言わなきゃいけない事があって……」
「え……なんですか?」
渋い表情で話すイーサンに、ウィリアムの顔からも笑顔が消えた。
「あー、えーと……本当は、もっと早くに言わなきゃいけない事だったんだが、その……ウィルと付き合いたすぎて、その……言わずにシてしまって……すまない」
その謝罪の言葉にウィリアムは一瞬顔を歪めたが……すぐに綺麗な笑顔をつくる。
「なんですか、まったく……少しくらい、幸せをかみしめる時間を下さいよ」
「……すまない……」
「いいえ、構いませんよ。どういう話ですか?」
諦めたように苦笑しながらウィリアムは体を起こし、二人はベッドの上で向かい合って座った。
「あー、さっき俺は、お前の事を一生守ると言ったが……すまない、あまり長くは守ってやれないんだ」
「と、言いますと?」
「うん……実は、これまでこの体質だったヴァレンタイン家の人間は、40歳前後で亡くなっているんだ」
「え……」
驚き、目を見開くウィリアム。
「てっきり、婚約者がいるだとか言い出すのかと……」
「そんなのいるわけないだろう! あー、だが、良くない話だというのは一緒だな、すまん」
イーサンはガバッと頭を下げた。
「俺の父親も40歳ちょいで亡くなったそうだ。だから、きっと俺も同じだと思う」
「そう、なんですね……」
「本当にすまない。こんな重要な事を言わずに、良い事ばかりを並べ立てて、騙したようなもんだよな。自分が卑怯なのはわかっている。だがどうしても、ウィルが欲しかったんだ。好きと言われて、舞い上がった。互いに愛しているのだからいいじゃないかという甘えもあった。俺はどうしてもお前と一緒になりたい。短い時間になってしまうが、どうか俺の隣りにいてくれ」
そう言って下げた頭を、ウィリアムが抱きしめた。
「……いいですよ。私はイーサン様を愛していますから、隣りにおいてくれるというのに何の不満もありません」
「ウィリアム……」
頭を上げると、ウィリアムは腕を緩め、両手でイーサンの頬を挟んで口づけをした。
「……愛しています、イーサン様」
「俺もだ、ウィリアム、愛している」
しばしの間、角度や深さを変えて口づけをした後、二人はベッドに横になった。
ウィリアムはイーサンの胸に抱かれ、そしてイーサンはウィリアムの頭を撫でながら話す。
「……すぐには無理だが、俺の意思を継いでくれる者が育ったら、団長の座を譲って引退しようと思っているんだ」
「そうですか……その方が、私としては嬉しいです。引退後は何をする予定なのですか?」
「どっか静かな田舎に引っ込んで、冒険者みたいな事でもやりたいって思っていた。あんまり危険な事はせずにな」
「じゃあ私は、治療院でもしましょうかね」
「田舎で暮らすのはいいのか?」
「ええ、私も元は小さな村の出ですし、王都の華やかさにはあまり馴染めないのでその方がいいですね」
「そうか、良かった。ああ、あと、結婚するとおそらくお前は第三から移動になると思うんだ。できるだけそのままにしてもらえるように頼んではみるが……」
「……私があちこちで問題を起こしたせいで、付き合っていたり結婚した二人は同じ 所属におかないという決まりができてしまいましたからね」
「お前のせいじゃないだろう」
苦笑するウィリアムをギューッと抱きしめながらイーサンは言った。
「お前は被害者だ。というか、俺が誤解して出した条件なんだから、撤回してどうにか……」
「ですが、関係を公にしたらやはり離れ離れにさせられる可能性がありますから……貴方が団長を退くまで、私達の事は秘密にしましょう」
「えっ? あ、いや、それは……」
困惑した表情のイーサンの頬を撫でながら、ウィリアムは言った。
「私は貴方の身体が心配です。だから常に、貴方の側にいたいのです。これは付き合う条件と捉えて下さって結構です」
「条件、か……」
本当は『移動させられる事になったら仕事を辞めて、この屋敷で待っていてくれないか』と言おうとしていたのだが、
「……わかった。じゃあ、秘密にするから……休みが合う日はこうやって一緒に過ごして欲しい」
「ええ。私もそうしたいです、イーサン様」
こうして二人は、少しの間、秘密のまま付き合う事にしたのだった。
☆第一章終了です。
40
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる