66 / 79
おまけ 金の毛並みの子犬は 青狼騎士様に愛されたい
愛しているのであれば
しおりを挟む
「……ユージーン、お前の事だから、俺達の事については全く何も気にしていないだろう」
一通りの説明が終わり、しばしの沈黙の後レイモンドが口を開いた。
「だがノア経由で状況を知り、放っておけないノアから頼まれてこういう事をしたのだと思うが」
「……全く気にしていない、というほどではないが……まあ、そうだな」
バレているのなら丁度いいと、ユージーンはあっさりと認める。
「私は私の事で手一杯で、君たちが何をしていようがしていまいが別にいいのだが……まあ、未だに口づけしかしていないというのには少々驚いた」
「こっちはお前がこんな物持ってきて、事細かに説明する方が驚きだよ」
ビンの中のオイルを揺らしてみながら、レイモンドはため息をついた。
「……したくないわけではないのだろう?」
「あたり前だろ。したいに決まっている」
「では、なぜしない」
「したいからするとか、そういう簡単な問題じゃないだろう」
「…………」
イラついたように言うレイモンドに、ユージーンは首を傾げる。
「したいのにしないという事が理解できない」
「したいからといって!」
バンッと大きな音を立てテーブルが叩かれる。
「欲望のままに抱けないだろう! ジョシュアは女じゃないんだ!」
「そんな事、言われなくてもわかっている」
ハーッと大きく息を吐き、ユージーンはレイモンドを見た。
「ジョシュアは女じゃない。同じ男の君が相手じゃあ、負担も大きいだろう。だが、それが何だと言うのだ? そんな事を言い訳にして、自分は我慢しているのだと正当化して、それでジョアシュアを愛していると?」
「何が言いたい! 俺がジョシュアを愛していないって言いたいのか!」
「そうは言わないが、理解できない」
酒を一口飲み、興奮で顔を赤くしているレイモンドを見る。
「体を重ねるだけが愛ではないだろう。特に同性同士だし、それぞれの形があっていいと思う。だが君は、ジョシュアを抱きたいのだろう? それなのに傷つけるのが恐くて、じゃあ自分が我慢して口づけだけで満足すればいいと思っているのなら、なんと情けない」
「…………」
無言で睨まれるが、気まずさは微塵も感じない。
(まるで、途方に暮れて泣きべそをかいているようじゃないか)
そんな友のグラスに、酒を注ぐ。
「ジョシュアが戸惑い恐がっているのであればそれでいいだろう。しかし私が聞いた話では、ジョシュアは口づけしかしてもらえない事を気にし、悲しんでいるようだが」
「はっ?」
「討伐の時は対峙している魔獣をしっかり観察するわりに、恋人の事はろくに見ていないのだな」
「なっ……」
「だってそうだろう? よく見ていたらわかったのではないか? 抱きしめた時、嬉しそうにしていなかったか? 口づけをし唇が離れた後、名残惜しそうな顔をしていなかったか?」
「そ、れは……」
言葉に詰まり、目が泳ぐレイモンドに、ユージーンはため息をついた。
「よくわからないのだな? まあ、好きな相手を傷つけたくなくて必死に自制していたのだろうから、あまり責めたくはないが……自分が我慢すればそれでいいと思い続けるのは、ジョシュアが可哀想だと思う」
「可哀想、か?」
「ああ。君は恋人が、君に抱いて欲しいと願っているとは全く感じないのか?」
「え、あ……」
ユージーンの問いに戸惑い、困惑の表情を浮かべるレイモンド。
「……ノアから少し聞いただけだが、ジョシュアは抱いてもらえないのは自分のせいだと思っているらしいぞ?」
「はっ? なんだってそんな!」
「そういうものなのではないか? 恋をすれば、相手に愛してもらいたいと願うだろう。自分の気持ちはわかるが相手の気持ちはわからないから、不安にもなるだろう。私だって不安になり動揺する事があるし、ノアだってそうだ」
「あんなにべったりしているくせに」
「そう、それなのに、だ。……レイモンド、君はちゃんと愛を語り、触れているか?」
「…………」
「傷つけたくないのなら、その方法を探し準備すればいい。ノアは自分から希望を言ってくれるから助かっているが、ジョシュアはあまり言えない性格のようだ。大変かもしれないが愛しているのならば、年長者として君が導いてやるのだな」
「……ああ、そうだな……わかった」
ようやく納得したらしい友に、ユージーンは微笑んだ。
「まあ結果として、何も知識がないうちに先走らなくて良かったかもしれない。とっておきの物をやろう」
「ん? なんだ? ……アメ?」
「そう。少しだけ媚薬が入っていて、初めての痛みを軽減させてくれる。二つあるから、くれぐれも無理はするなよ。」
「ああわかった、感謝する」
そう言って媚薬入りのアメを受け取り、しげしげと見つめる。
「……こんな物があるなんて知らなかった。ユージーン、よく知っていたな」
「それは、レイモンドに教えてもらった薬屋で買ったものだ」
「はっ? あの薬屋? 何度も行ってるがそんなのを売ってるなんて気づかなかった」
「普段は扱っていない物だからな。店主が色々と相談にのって教えてくれて、取り寄せてくれた」
「相談したのか? あの店主に? ……お前、すごいな。尊敬するよ」
「わからないのだから聞くしかあるまい? 知識不足で事に及び、愛する人を傷つけるなんて絶対嫌だからな」
「そう、だよな、その通りだ……」
ユージーンの話を真摯に受け止め、レイモンドは一つ大きく頷いた。
「俺もそうする。ユージーン、準備の方法を具体的に教えてくれ」
「え? あー……まあ、仕方がないな。レイモンドは、私の親友だから」
少し戸惑ったが承諾し、その後レイモンドは遅くまで、真剣に知識の習得に努めたのだった。
一通りの説明が終わり、しばしの沈黙の後レイモンドが口を開いた。
「だがノア経由で状況を知り、放っておけないノアから頼まれてこういう事をしたのだと思うが」
「……全く気にしていない、というほどではないが……まあ、そうだな」
バレているのなら丁度いいと、ユージーンはあっさりと認める。
「私は私の事で手一杯で、君たちが何をしていようがしていまいが別にいいのだが……まあ、未だに口づけしかしていないというのには少々驚いた」
「こっちはお前がこんな物持ってきて、事細かに説明する方が驚きだよ」
ビンの中のオイルを揺らしてみながら、レイモンドはため息をついた。
「……したくないわけではないのだろう?」
「あたり前だろ。したいに決まっている」
「では、なぜしない」
「したいからするとか、そういう簡単な問題じゃないだろう」
「…………」
イラついたように言うレイモンドに、ユージーンは首を傾げる。
「したいのにしないという事が理解できない」
「したいからといって!」
バンッと大きな音を立てテーブルが叩かれる。
「欲望のままに抱けないだろう! ジョシュアは女じゃないんだ!」
「そんな事、言われなくてもわかっている」
ハーッと大きく息を吐き、ユージーンはレイモンドを見た。
「ジョシュアは女じゃない。同じ男の君が相手じゃあ、負担も大きいだろう。だが、それが何だと言うのだ? そんな事を言い訳にして、自分は我慢しているのだと正当化して、それでジョアシュアを愛していると?」
「何が言いたい! 俺がジョシュアを愛していないって言いたいのか!」
「そうは言わないが、理解できない」
酒を一口飲み、興奮で顔を赤くしているレイモンドを見る。
「体を重ねるだけが愛ではないだろう。特に同性同士だし、それぞれの形があっていいと思う。だが君は、ジョシュアを抱きたいのだろう? それなのに傷つけるのが恐くて、じゃあ自分が我慢して口づけだけで満足すればいいと思っているのなら、なんと情けない」
「…………」
無言で睨まれるが、気まずさは微塵も感じない。
(まるで、途方に暮れて泣きべそをかいているようじゃないか)
そんな友のグラスに、酒を注ぐ。
「ジョシュアが戸惑い恐がっているのであればそれでいいだろう。しかし私が聞いた話では、ジョシュアは口づけしかしてもらえない事を気にし、悲しんでいるようだが」
「はっ?」
「討伐の時は対峙している魔獣をしっかり観察するわりに、恋人の事はろくに見ていないのだな」
「なっ……」
「だってそうだろう? よく見ていたらわかったのではないか? 抱きしめた時、嬉しそうにしていなかったか? 口づけをし唇が離れた後、名残惜しそうな顔をしていなかったか?」
「そ、れは……」
言葉に詰まり、目が泳ぐレイモンドに、ユージーンはため息をついた。
「よくわからないのだな? まあ、好きな相手を傷つけたくなくて必死に自制していたのだろうから、あまり責めたくはないが……自分が我慢すればそれでいいと思い続けるのは、ジョシュアが可哀想だと思う」
「可哀想、か?」
「ああ。君は恋人が、君に抱いて欲しいと願っているとは全く感じないのか?」
「え、あ……」
ユージーンの問いに戸惑い、困惑の表情を浮かべるレイモンド。
「……ノアから少し聞いただけだが、ジョシュアは抱いてもらえないのは自分のせいだと思っているらしいぞ?」
「はっ? なんだってそんな!」
「そういうものなのではないか? 恋をすれば、相手に愛してもらいたいと願うだろう。自分の気持ちはわかるが相手の気持ちはわからないから、不安にもなるだろう。私だって不安になり動揺する事があるし、ノアだってそうだ」
「あんなにべったりしているくせに」
「そう、それなのに、だ。……レイモンド、君はちゃんと愛を語り、触れているか?」
「…………」
「傷つけたくないのなら、その方法を探し準備すればいい。ノアは自分から希望を言ってくれるから助かっているが、ジョシュアはあまり言えない性格のようだ。大変かもしれないが愛しているのならば、年長者として君が導いてやるのだな」
「……ああ、そうだな……わかった」
ようやく納得したらしい友に、ユージーンは微笑んだ。
「まあ結果として、何も知識がないうちに先走らなくて良かったかもしれない。とっておきの物をやろう」
「ん? なんだ? ……アメ?」
「そう。少しだけ媚薬が入っていて、初めての痛みを軽減させてくれる。二つあるから、くれぐれも無理はするなよ。」
「ああわかった、感謝する」
そう言って媚薬入りのアメを受け取り、しげしげと見つめる。
「……こんな物があるなんて知らなかった。ユージーン、よく知っていたな」
「それは、レイモンドに教えてもらった薬屋で買ったものだ」
「はっ? あの薬屋? 何度も行ってるがそんなのを売ってるなんて気づかなかった」
「普段は扱っていない物だからな。店主が色々と相談にのって教えてくれて、取り寄せてくれた」
「相談したのか? あの店主に? ……お前、すごいな。尊敬するよ」
「わからないのだから聞くしかあるまい? 知識不足で事に及び、愛する人を傷つけるなんて絶対嫌だからな」
「そう、だよな、その通りだ……」
ユージーンの話を真摯に受け止め、レイモンドは一つ大きく頷いた。
「俺もそうする。ユージーン、準備の方法を具体的に教えてくれ」
「え? あー……まあ、仕方がないな。レイモンドは、私の親友だから」
少し戸惑ったが承諾し、その後レイモンドは遅くまで、真剣に知識の習得に努めたのだった。
381
お気に入りに追加
1,605
あなたにおすすめの小説
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角@中華BL発売中
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる