59 / 79
おまけ
素晴らしい夜と幸せな朝 3
しおりを挟む
何かが、動いている。
なんだろう……なんだかとても大切で、手放したくないもののような……。
目を薄く開くとそこに、茶色い頭が見えた。
(ああ……そうだ……今日はノアが一緒だった……嬉しい……)
一度目はノアの方が先に目を覚ましたが、二度寝の後は自分の方が先に目覚めたようだ。
さっき抱きしめた時には「離して安静にしておいて!」とジタバタしていたのに、今は腕の中で、自分の方から抱きつき、足も絡めてスウスウと寝息を立てている可愛らしい恋人。
頭を撫でると、嬉しそうに胸に顔を押し付けてきて、更に可愛い。
しばらく頭を撫で、その愛らしさを愛でていると、
「……ユージーン……う~ん、あっ、ててっ」
伸びをし、顔を顰める。
「……大丈夫か?」
「うん……おはよ」
恥ずかしそうに笑うノアに「おはよう」と返し、ユージーンも笑った。
「……そろそろ、起きるか?」
「うん。さすがに、なんか食べたい」
「こんな日に、団員の作ったイマイチのスープとパン、というのもな。朝も食べていないのだし、少し面倒だが街に……行けるか? ポーションは飲む気にはなったか?」
「の、飲むよっ! だから行けるよっ!」
「そうか。……さあ」
「ありがと」
差し出されたポーションを飲み干し、体を動かしてみているノア。
「大丈夫そうだな」
「うん、もう平気………………残念な気がしないでもないけど……」
「ん? 今なんと?」
「いや! なんも! じゃあ俺、部屋戻って着替えて来る」
「ああ。……そうだ、シャワーはいいのか? 清潔は掛けておいたが」
「あ~、サッと浴びようかな。いいよなー、部屋にシャワーが付いてるなんて」
「清潔が使えるから必要性を感じていなかったが……今にして思えば、浴槽もある部屋を希望すれば良かった」
「えー? もしかして、一緒に入りたかった?」
揶揄うようにノアは言ったが、
「もちろん」
「あ……と……」
平然と即答するユージーンに、ノアは一瞬言葉に詰まる。
「あ、え、と……シャワー借りるよっ! 入って来ないでよ!」
「………なるほど……シャワーでも一緒に入れるか」
小走りでシャワー室に消えたノアの為にタオルを用意し、届けるついでに躊躇無くユージーンもシャワー室に入って行き……、
「入って来ないでって言ったよねっ?!」
ギョッとしたように声を上げたノアに、至って冷静に対応するユージーン。
「跡が付いていないか、確認した方がいいかと思って。以前、風呂で慌てたのだろう?」
「あー、そっか……どう? 大丈夫そう?」
(……こんな口からでまかせを信じて……ノアは可愛いな)
そんな事を考えながら、優しい手つきで首すじや背中を撫でるユージーン。
なんやかんやで二人の昼食は、だいぶ遅くなってしまうのだった。
※『素晴らしい夜と幸せな朝』はこれで完結です。小間切れですみません。☆付き部分を分離させるため、このようにしました。
なんだろう……なんだかとても大切で、手放したくないもののような……。
目を薄く開くとそこに、茶色い頭が見えた。
(ああ……そうだ……今日はノアが一緒だった……嬉しい……)
一度目はノアの方が先に目を覚ましたが、二度寝の後は自分の方が先に目覚めたようだ。
さっき抱きしめた時には「離して安静にしておいて!」とジタバタしていたのに、今は腕の中で、自分の方から抱きつき、足も絡めてスウスウと寝息を立てている可愛らしい恋人。
頭を撫でると、嬉しそうに胸に顔を押し付けてきて、更に可愛い。
しばらく頭を撫で、その愛らしさを愛でていると、
「……ユージーン……う~ん、あっ、ててっ」
伸びをし、顔を顰める。
「……大丈夫か?」
「うん……おはよ」
恥ずかしそうに笑うノアに「おはよう」と返し、ユージーンも笑った。
「……そろそろ、起きるか?」
「うん。さすがに、なんか食べたい」
「こんな日に、団員の作ったイマイチのスープとパン、というのもな。朝も食べていないのだし、少し面倒だが街に……行けるか? ポーションは飲む気にはなったか?」
「の、飲むよっ! だから行けるよっ!」
「そうか。……さあ」
「ありがと」
差し出されたポーションを飲み干し、体を動かしてみているノア。
「大丈夫そうだな」
「うん、もう平気………………残念な気がしないでもないけど……」
「ん? 今なんと?」
「いや! なんも! じゃあ俺、部屋戻って着替えて来る」
「ああ。……そうだ、シャワーはいいのか? 清潔は掛けておいたが」
「あ~、サッと浴びようかな。いいよなー、部屋にシャワーが付いてるなんて」
「清潔が使えるから必要性を感じていなかったが……今にして思えば、浴槽もある部屋を希望すれば良かった」
「えー? もしかして、一緒に入りたかった?」
揶揄うようにノアは言ったが、
「もちろん」
「あ……と……」
平然と即答するユージーンに、ノアは一瞬言葉に詰まる。
「あ、え、と……シャワー借りるよっ! 入って来ないでよ!」
「………なるほど……シャワーでも一緒に入れるか」
小走りでシャワー室に消えたノアの為にタオルを用意し、届けるついでに躊躇無くユージーンもシャワー室に入って行き……、
「入って来ないでって言ったよねっ?!」
ギョッとしたように声を上げたノアに、至って冷静に対応するユージーン。
「跡が付いていないか、確認した方がいいかと思って。以前、風呂で慌てたのだろう?」
「あー、そっか……どう? 大丈夫そう?」
(……こんな口からでまかせを信じて……ノアは可愛いな)
そんな事を考えながら、優しい手つきで首すじや背中を撫でるユージーン。
なんやかんやで二人の昼食は、だいぶ遅くなってしまうのだった。
※『素晴らしい夜と幸せな朝』はこれで完結です。小間切れですみません。☆付き部分を分離させるため、このようにしました。
471
お気に入りに追加
1,605
あなたにおすすめの小説
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角@中華BL発売中
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる