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おまけ
二人の想い 2
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役職付きではないものの魔術師長に次ぐ力を持つユージーンは、宿舎の中で良い部屋を割り当てられている。一部屋ではあるがノアの部屋の4倍くらいの広さで、トイレ、シャワー付き、通常の部屋には無いローテーブルとソファーもある。
(いい部屋は二部屋続きで寝室が別になってて、シャワーだけじゃなく浴槽もあるから、ここは大したことないってユージーンは言うけど……充分だよな。革張りのソファーは座り心地がいいし、ベッドは二人で寝ても余裕の広さだし。はあ……ほんの数日前、そのベッドでイチャイチャして幸せしか感じてなかったのにな……はぁぁ……ホントなんなんだろう、話って……)
背もたれを使わずソファーに浅く座って緊張しているノアの前にお茶を出し、テーブルを挟んで向かいに座ったユージーンが「話したい事というのは、今後の事についてなのだが」と真剣な表情で切り出した。
「はい」
(なんだ? やっぱり重い話か?)
熱いお茶を一口飲んで、平静を保つ為に大きく息を吸い、ユージーンの言葉を待つ。
「今日ウィリアムさんから話を聞いたが、これまで知らなかった事もあり、正直ちゃんと考えていなかった、考えが甘かった、と思い知らされた」
「はい……」
(まあ、そうだよな……俺は知っていたけど、ユージーンはこれまでそういう事はなぁ……)
「知っているつもりでいた事がほんの一部で……同性では、あんなにも準備が必要だとは……」
「あー……でもまぁ、ウィリアムさんが言ってたのは理想というか、万全を期して、じゃないのかなぁ」
(そんな長期間かけて大きさの違う張型使って拡張しなくても、ちゃんと慣らせば大丈夫じゃないか? すっごく大きいっていうなら必要だろうけど、ユージーンのは俺と同じくらいだし……いや、ちょっと向こうのが大きいけど……いやいや、この前の夜の事思い出してる場合じゃない!)
向かい合い、互いのものを擦り合わせて昂ったところを、ユージーンの手で扱かれ一緒に達した事を思い出して蕩けそうになる自分を叱責し、ノアはユージーンを見た。
「まあ、あんまり深く考えなくても……」
「いや、そうはいかない」
キュッと眉を寄せてそう言うユージーンに、ノアは心の中でため息をついた。
(ああ……ダメかな、こりゃあ。やっぱり男は無理だとか言われちゃうかな。……仕方ないか、ユージーンは元々男性が恋愛対象ってわけじゃないから。まあ、俺もそうだけど……でもさ『じゃあ、付き合うのは無しってことで』って言える程度の好きじゃないんだよ、こっちは。そうだよ! 徹底的に抵抗してやる!)
諦めモードから戦闘モードに頭を切り替え、ノアはユージーンをしっかりと見つめて言った。
「じゃあ、どうするっていうわけ? 俺は絶対ヤだからね、別れるなんて。最後までヤる事に抵抗があるってんなら、別にこれまでのところまででいいし。手とか口でするのは別にいいんでしょう? ……? ……もしかして、それも抵抗あった?」
ユージーンが妙な……困惑しているような、辛そうな……そんな表情をしているのに気づきキュッと胸が痛む。
「……もう、どうしても駄目? これまでしてきた事も嫌になった? もう俺の事」
「何を言っているんだ? 別れる? それは、私達の事か?」
テーブルを挟んでグイと手首を掴まれ、ノアは驚いてユージーンを見た。
「え……いや……そう、というか……ユージーンがそう思っているのかと……違うの?」
「何の話をしている。なぜいきなりそういう事になるんだ」
「え、だって、言いたい事があるって……同性じゃ準備が大変だ、甘く考えてたって……それって『やる事考えたら、やっぱり付き合うのは無理だと感じたから別れよう』ってことじゃ……」
「そんなわけないだろう! ああノア……私の言い方が悪かったのは謝罪するが、私のノアに対する想いをそんなものだと思わないでくれ。私は死ぬまで、ノアを手放すつもりはないからな」
「え、あ、うん……ゴメン、なんか、勘違いした……」
痛いほどに手首を掴むユージーンの力強さに少し驚きながら、ノアはコクコクと頷いた。
(いい部屋は二部屋続きで寝室が別になってて、シャワーだけじゃなく浴槽もあるから、ここは大したことないってユージーンは言うけど……充分だよな。革張りのソファーは座り心地がいいし、ベッドは二人で寝ても余裕の広さだし。はあ……ほんの数日前、そのベッドでイチャイチャして幸せしか感じてなかったのにな……はぁぁ……ホントなんなんだろう、話って……)
背もたれを使わずソファーに浅く座って緊張しているノアの前にお茶を出し、テーブルを挟んで向かいに座ったユージーンが「話したい事というのは、今後の事についてなのだが」と真剣な表情で切り出した。
「はい」
(なんだ? やっぱり重い話か?)
熱いお茶を一口飲んで、平静を保つ為に大きく息を吸い、ユージーンの言葉を待つ。
「今日ウィリアムさんから話を聞いたが、これまで知らなかった事もあり、正直ちゃんと考えていなかった、考えが甘かった、と思い知らされた」
「はい……」
(まあ、そうだよな……俺は知っていたけど、ユージーンはこれまでそういう事はなぁ……)
「知っているつもりでいた事がほんの一部で……同性では、あんなにも準備が必要だとは……」
「あー……でもまぁ、ウィリアムさんが言ってたのは理想というか、万全を期して、じゃないのかなぁ」
(そんな長期間かけて大きさの違う張型使って拡張しなくても、ちゃんと慣らせば大丈夫じゃないか? すっごく大きいっていうなら必要だろうけど、ユージーンのは俺と同じくらいだし……いや、ちょっと向こうのが大きいけど……いやいや、この前の夜の事思い出してる場合じゃない!)
向かい合い、互いのものを擦り合わせて昂ったところを、ユージーンの手で扱かれ一緒に達した事を思い出して蕩けそうになる自分を叱責し、ノアはユージーンを見た。
「まあ、あんまり深く考えなくても……」
「いや、そうはいかない」
キュッと眉を寄せてそう言うユージーンに、ノアは心の中でため息をついた。
(ああ……ダメかな、こりゃあ。やっぱり男は無理だとか言われちゃうかな。……仕方ないか、ユージーンは元々男性が恋愛対象ってわけじゃないから。まあ、俺もそうだけど……でもさ『じゃあ、付き合うのは無しってことで』って言える程度の好きじゃないんだよ、こっちは。そうだよ! 徹底的に抵抗してやる!)
諦めモードから戦闘モードに頭を切り替え、ノアはユージーンをしっかりと見つめて言った。
「じゃあ、どうするっていうわけ? 俺は絶対ヤだからね、別れるなんて。最後までヤる事に抵抗があるってんなら、別にこれまでのところまででいいし。手とか口でするのは別にいいんでしょう? ……? ……もしかして、それも抵抗あった?」
ユージーンが妙な……困惑しているような、辛そうな……そんな表情をしているのに気づきキュッと胸が痛む。
「……もう、どうしても駄目? これまでしてきた事も嫌になった? もう俺の事」
「何を言っているんだ? 別れる? それは、私達の事か?」
テーブルを挟んでグイと手首を掴まれ、ノアは驚いてユージーンを見た。
「え……いや……そう、というか……ユージーンがそう思っているのかと……違うの?」
「何の話をしている。なぜいきなりそういう事になるんだ」
「え、だって、言いたい事があるって……同性じゃ準備が大変だ、甘く考えてたって……それって『やる事考えたら、やっぱり付き合うのは無理だと感じたから別れよう』ってことじゃ……」
「そんなわけないだろう! ああノア……私の言い方が悪かったのは謝罪するが、私のノアに対する想いをそんなものだと思わないでくれ。私は死ぬまで、ノアを手放すつもりはないからな」
「え、あ、うん……ゴメン、なんか、勘違いした……」
痛いほどに手首を掴むユージーンの力強さに少し驚きながら、ノアはコクコクと頷いた。
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