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第三章 どうせなら楽しもうと思う
47 挨拶まわり
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「こちらは聖女ドロリスだ。嘆きの森遠征の際に見かけた者もいるだろう。コカトリスの毒に侵されたユージーンの命を救って下さった方だ。そしてこれからは、我々第三騎士団の一員として遠征に同行して下さる事になった。男ばかりのこの第三騎士団で困る事や不便な事もあるだろうから、皆、礼儀正しく、敬意をもって接するように!」
「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」
地鳴りのような、団員達の返事が響く。
「聖女ドロリスです。本日から仲間に加えていただきます。お役に立てるよう努力致しますので、どうぞよろしくお願い致します」
割れんばかりの拍手が止んだ後、
「あーあと聖女ドロリスは、ノア・ヴァーツの実の姉だ。その事もあって第三騎士団に配属されたという経緯もある」
イーサンのその言葉に、ノアにも注目が集まる。
「あ……姉の事、よろしくお願いします」
一応そう頭を下げ、訓練場での紹介は終わった。
「よし、それじゃあ次は治療所に挨拶に行ってこい。そこがドロリスの所属になる。食堂は昼食のついででいいだろう」
「はい。では行って参ります」
イーサンに言われ、ノアとドロリスは治療所に向かった。そこで今度は治療師達に挨拶をする。
「聖女様が来てくれるなんて、凄いですね!」
「ああ、本当に! 夢のようだよ!」
「いえ、そんな……教会や出張所での治療活動はしてきましたが、魔獣がいる遠征先で、というのはこの間の嘆きの森が初めてでした。わからない事や至らない点も多いと思いますが、早く実践で役に立てるよう頑張りますので、ご指導お願い致します」
ドロリスがそう言って頭を下げると、パチパチと拍手が起きる。
「聖女ドロリス様の治癒能力は凄いよ。本当に心強い。でも彼女に頼りきりにならないよう、むしろ彼女に頼ってもらえるように、我々は頑張らないといけないよ」
「「「「「はい!」」」」」
ウィリアム治療師長の言葉に治療師達は真剣な表情で返事をし、順番にドロリスと握手をしてから仕事に戻って行った。
「嘆きの森遠征の時は本当に助かりました、聖女ドロリス様。ノアのお姉様だったとは、驚きです」
「幼い頃の記憶は無くしていたので、私も本当に驚きました。こうして一緒の所で働けるなんて嬉しいです。ウィリアム様は私の直接の上司でいらっしゃるのですからもっと気楽に、ドロリスやドリーとお呼び下さい。それから、治療に関しては私だけの 能力ではなく……」
他の治療師達が近くにいない事を確認してから、ドロリスは声のボリュームを落として言った。
「ノアの協力もあり、出来た事だと思います。その事を第二王子殿下や他の方に報告せず秘密にしていただき、感謝しております」
「ああそれは……ノアに尋ねましたが身に覚えがないと言うし、はっきりするまでは言わない方がいいかと思いましてね」
「そうして下さって本当に助かりました。報告が上がっていたら、ノア共々、今頃検証やなんやで大変な思いをしていたと思います」
「治癒能力は貴重ですからね」
「ええ、本当に助かりました。これからはこちらでお役に立てるよう頑張ります。それで、早速なのですが……イーサン騎士団長のお身体の事について、教えていただけませんか?」
「!?」
ドロリスの言葉に、ウィリアムがハッとしたように表情を変え、何もわからないノアは二人の顔を交互に見て困惑するだけだった。
「……つまりドロリスは、団長と握手した際に違和感を感じたという事ですか」
「はい、なんかこう……体内に悪いものがあるような感じがしまして……ウィリアム様なら事情をわかっておいでかと思い、お尋ねしました」
治療師長室へと場所を移し、ウィリアムとドロリス、ノアの三人だけで話す。
「そういう事は、本人に尋ねた方が良いのでは?」
「そうですよね、すみません。ただ……イーサン団長に伺ってもはぐらかされそうな、真実は教えていただけないような気がして……私の勝手な先入観で申し訳ございませんが、この事に関してはウィリアム様にお尋ねするのが一番かと思いました」
「……なるほど……しかし、本人の意思を確認せずに私が話す事は出来かねます。ノア、悪いけど、ちょっと団長を呼んで来てくれるかな?」
「あ、はい!」
ノアは急いで部屋を出て、イーサンがいるであろう訓練場へと向かった。
(……団長の体調が悪い? そういや、遠征の時に団長とウィリアムさんが話しているのを聞いた気がする。身体に溜まった毒の解毒は出来ないとかなんとか。でも団長に大丈夫か聞いたら大丈夫だって言ってたから、その後忘れてたけど……)
訓練場でイーサンを見つけ、ウィリアムに呼んで来るようにと言われたと話す。
「ん? なんだ?」
「えーと、姉が、団長に伺いたい事があると」
「ドロリスが? なんだろう」
首を傾げながらも一緒に治療師長室へと向かう。
「待たせたな。俺に聞きたい事があるって?」
「はい。お忙しい中、申し訳ございません」
ソファーに向かい合って座っているウィリアムの隣りにイーサンが、そしてドロリスの隣りにノアが腰掛ける。
「で、なんだ?」
「はい。イーサン団長のお身体について伺いたいのです。イーサン団長は現在、お身体に深刻な問題を抱えていらっしゃるのではないでしょうか?」
「ん? ん~……」
単刀直入な質問に、イーサンは戸惑ったように頭を掻き、そして隣のウィリアムをチラリと見た。ウィリアムは無言で斜め下、テーブルの上を見つめている。
「深刻、というほどではないが、まあ……俺も32だし、身体にガタは来ているのは事実だな」
「怪我の後遺症等ではなく、中の問題ですね?」
「まあ……体質的なものだな」
「先ほど握手をした際、病気の方から感じられる気配に似たものを感じました。 私は聖女で、病気を癒す能力を持っています。何でも治せるわけではありませんが、お役に立てるかもしれません。詳しい事を教えていただけませんか?」
「ん~いや、俺のこの体質は父親に似たんだが、聖女の能力をもってしても治す事はできないものなんだ。俺自身数年前に聖女の治療を受けてみたが、残念ながら改善は見られなかった」
「ですが、その聖女は私ではないですよね」
「ああ、それはそうだが……」
「では、是非私の治療も試してみてはもらえないでしょうか」
ドロリスはイーサンを見つめ、強い口調で言った。
「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」
地鳴りのような、団員達の返事が響く。
「聖女ドロリスです。本日から仲間に加えていただきます。お役に立てるよう努力致しますので、どうぞよろしくお願い致します」
割れんばかりの拍手が止んだ後、
「あーあと聖女ドロリスは、ノア・ヴァーツの実の姉だ。その事もあって第三騎士団に配属されたという経緯もある」
イーサンのその言葉に、ノアにも注目が集まる。
「あ……姉の事、よろしくお願いします」
一応そう頭を下げ、訓練場での紹介は終わった。
「よし、それじゃあ次は治療所に挨拶に行ってこい。そこがドロリスの所属になる。食堂は昼食のついででいいだろう」
「はい。では行って参ります」
イーサンに言われ、ノアとドロリスは治療所に向かった。そこで今度は治療師達に挨拶をする。
「聖女様が来てくれるなんて、凄いですね!」
「ああ、本当に! 夢のようだよ!」
「いえ、そんな……教会や出張所での治療活動はしてきましたが、魔獣がいる遠征先で、というのはこの間の嘆きの森が初めてでした。わからない事や至らない点も多いと思いますが、早く実践で役に立てるよう頑張りますので、ご指導お願い致します」
ドロリスがそう言って頭を下げると、パチパチと拍手が起きる。
「聖女ドロリス様の治癒能力は凄いよ。本当に心強い。でも彼女に頼りきりにならないよう、むしろ彼女に頼ってもらえるように、我々は頑張らないといけないよ」
「「「「「はい!」」」」」
ウィリアム治療師長の言葉に治療師達は真剣な表情で返事をし、順番にドロリスと握手をしてから仕事に戻って行った。
「嘆きの森遠征の時は本当に助かりました、聖女ドロリス様。ノアのお姉様だったとは、驚きです」
「幼い頃の記憶は無くしていたので、私も本当に驚きました。こうして一緒の所で働けるなんて嬉しいです。ウィリアム様は私の直接の上司でいらっしゃるのですからもっと気楽に、ドロリスやドリーとお呼び下さい。それから、治療に関しては私だけの 能力ではなく……」
他の治療師達が近くにいない事を確認してから、ドロリスは声のボリュームを落として言った。
「ノアの協力もあり、出来た事だと思います。その事を第二王子殿下や他の方に報告せず秘密にしていただき、感謝しております」
「ああそれは……ノアに尋ねましたが身に覚えがないと言うし、はっきりするまでは言わない方がいいかと思いましてね」
「そうして下さって本当に助かりました。報告が上がっていたら、ノア共々、今頃検証やなんやで大変な思いをしていたと思います」
「治癒能力は貴重ですからね」
「ええ、本当に助かりました。これからはこちらでお役に立てるよう頑張ります。それで、早速なのですが……イーサン騎士団長のお身体の事について、教えていただけませんか?」
「!?」
ドロリスの言葉に、ウィリアムがハッとしたように表情を変え、何もわからないノアは二人の顔を交互に見て困惑するだけだった。
「……つまりドロリスは、団長と握手した際に違和感を感じたという事ですか」
「はい、なんかこう……体内に悪いものがあるような感じがしまして……ウィリアム様なら事情をわかっておいでかと思い、お尋ねしました」
治療師長室へと場所を移し、ウィリアムとドロリス、ノアの三人だけで話す。
「そういう事は、本人に尋ねた方が良いのでは?」
「そうですよね、すみません。ただ……イーサン団長に伺ってもはぐらかされそうな、真実は教えていただけないような気がして……私の勝手な先入観で申し訳ございませんが、この事に関してはウィリアム様にお尋ねするのが一番かと思いました」
「……なるほど……しかし、本人の意思を確認せずに私が話す事は出来かねます。ノア、悪いけど、ちょっと団長を呼んで来てくれるかな?」
「あ、はい!」
ノアは急いで部屋を出て、イーサンがいるであろう訓練場へと向かった。
(……団長の体調が悪い? そういや、遠征の時に団長とウィリアムさんが話しているのを聞いた気がする。身体に溜まった毒の解毒は出来ないとかなんとか。でも団長に大丈夫か聞いたら大丈夫だって言ってたから、その後忘れてたけど……)
訓練場でイーサンを見つけ、ウィリアムに呼んで来るようにと言われたと話す。
「ん? なんだ?」
「えーと、姉が、団長に伺いたい事があると」
「ドロリスが? なんだろう」
首を傾げながらも一緒に治療師長室へと向かう。
「待たせたな。俺に聞きたい事があるって?」
「はい。お忙しい中、申し訳ございません」
ソファーに向かい合って座っているウィリアムの隣りにイーサンが、そしてドロリスの隣りにノアが腰掛ける。
「で、なんだ?」
「はい。イーサン団長のお身体について伺いたいのです。イーサン団長は現在、お身体に深刻な問題を抱えていらっしゃるのではないでしょうか?」
「ん? ん~……」
単刀直入な質問に、イーサンは戸惑ったように頭を掻き、そして隣のウィリアムをチラリと見た。ウィリアムは無言で斜め下、テーブルの上を見つめている。
「深刻、というほどではないが、まあ……俺も32だし、身体にガタは来ているのは事実だな」
「怪我の後遺症等ではなく、中の問題ですね?」
「まあ……体質的なものだな」
「先ほど握手をした際、病気の方から感じられる気配に似たものを感じました。 私は聖女で、病気を癒す能力を持っています。何でも治せるわけではありませんが、お役に立てるかもしれません。詳しい事を教えていただけませんか?」
「ん~いや、俺のこの体質は父親に似たんだが、聖女の能力をもってしても治す事はできないものなんだ。俺自身数年前に聖女の治療を受けてみたが、残念ながら改善は見られなかった」
「ですが、その聖女は私ではないですよね」
「ああ、それはそうだが……」
「では、是非私の治療も試してみてはもらえないでしょうか」
ドロリスはイーサンを見つめ、強い口調で言った。
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