42 / 79
第三章 どうせなら楽しもうと思う
42 お姉ちゃん
しおりを挟む
皆様こんにちは、西園寺櫻子です。
いやー、すっごくご無沙汰してしまってすみません。連載中の『金の毛並みの子犬は青狼騎士様のお気に入り』ですが、5巻出したところでストップしてしまって、何年経ったんでしょう……十数年? それとも実はさほど経っていない? よくわからないですが、それがまた、恐いというかなんというか……。
実は私、なんかの弾みで『金犬青狼』の世界に来ちゃったみたいなんですよ。しかも、聖女ですって。似合わないですよねー(笑)。どうせなら、主人公達見放題の第三騎士団の団員とかが良かったんですけど。
で、異世界転生しちゃったわけなんですけど、最近まではその事にまったく気づかず生活していました。記憶のスタートは5、6歳くらいで、癒しの力を持っているから聖女になるべく教会に引き取られて修行してまして。その前の事は覚えてないけど、まあ、そんなもんなのかなぁ、なんて思って。
この世界、魔獣とかいるし治安もそんなに良くないから、家族を殺されたとかでショックを受けて記憶が無いのかも、だったら思い出さなくていいかー、なんて思っていたんですよ。それでまあ、支障もなかったですからね。
でも!
ちょっと前、魔獣討伐の遠征に行きまして、そこで、びっくりする事があったんです。
コカトリスの毒にやられた魔術師を助けて欲しいってやって来た騎士がいて。それが、ノア・ヴァーツだったんです! そう! あのノアですよ! で、助けて欲しいって魔術師が、ユージーン・フィンレイで。
最初のうちは何も気が付かなかったんですけど、治療中にノアが言った言葉に『んっ?』と思って。治療を終えて王都に戻ってからも、なーんか引っかかるなぁって考えていたら、急に思い出したんです。自分は西園寺櫻子で、ここは私が描いてる漫画の世界だって。
そこからはもう、次々と記憶が蘇ってきまして、ノアが私の実の弟で、この世界に一緒に来たっていう事も思い出しました。もともとノアって、弟をモデルに出来たキャラですし( ´艸`)
で、今日、いよいよそのノアと再会できる事になりました。もう、ドキドキです! 向こうの記憶はどの程度あるのかなぁ。お姉ちゃんの事、思い出してくれるといいのですが。
あ、でもこっち来るちょっと前に、ユージーン×ノアのスピンオフ的な話を描こうとして『余計な事するなー』とか言われたんだった! やばっ! 今どうなってるんだろう(≧∇≦) いろんな意味でドキドキです!
あ、なんか呼ばれたんで、行ってきます!
頑張るぞー!
(……と、妄想遊びはこれくらいにして)
呼びに来た近衛騎士の後をついて行く。
大きな両開きの扉の前で一度立ち止まり、その後、中に招かれた。
「聖女ドロリス、第二王子殿下にご挨拶申し上げます」
片方の足を後ろに引き膝を曲げ腰を落とす、という遠征前に教会で指導された挨拶をライアン王子に対してする。
(相変わらずキラキラしてるわね、さすが王子様)
姿勢を戻して軽く微笑み、少し視線をずらすと、片膝をついた一人の騎士が目に留まった。
(ノアっ!! てか彰! いややっぱりノア!)
感情が昂り思わずサササッと近寄ると、自分も跪いてノアの右手を両手でギュッと握った。
「へっ? あのっ?」
驚いたようでノアは手を引っ込めようとするが、離すわけがない。
「あの、ええと、聖女、様?」
「聖女様だなんてそんな、他人行儀な呼び方しないで下さい!」
「はっ?」
ノアの声に、涙が出そうになる。
(あの時は、何も思い出さないし何も感じなかったけど……ああ、ノア……立派に成長して……)
「え? あのっ? ええっ?」
戸惑っているようだが、そんなの構っていられない。
「ノア、お姉ちゃんだよ」
「……へっ?」
「ノア~~~」
「うわうわうわ、ちょっと待って下さい!」
抱きつかれて後ろに倒れそうになり慌てるノア。そして不機嫌な表情の第二王子。困り顔の第三騎士団団長、侍従、近衛騎士。
しかし、
「うっ、ううっ、ノア……彰……ウウッ」
「え、アキ、ラ、って……ええっ? 姉ちゃんっ?」
「だから、そう言ってるでしょうっ!」
「え、ちょっと待ってちょっと待って……ええっ?」
両肩を掴んで引き離し、まじまじと顔を見て、
「……さくら……」
確認の為、小声で囁かれたその名に、コクコクと頷く。
「そんな事って……姉ちゃんっ!」
「うわーん! 会えて嬉しい!」
「俺もだよ! 姉ちゃーん」
二人はしっかり抱き合い、声を上げて泣いた。
いやー、すっごくご無沙汰してしまってすみません。連載中の『金の毛並みの子犬は青狼騎士様のお気に入り』ですが、5巻出したところでストップしてしまって、何年経ったんでしょう……十数年? それとも実はさほど経っていない? よくわからないですが、それがまた、恐いというかなんというか……。
実は私、なんかの弾みで『金犬青狼』の世界に来ちゃったみたいなんですよ。しかも、聖女ですって。似合わないですよねー(笑)。どうせなら、主人公達見放題の第三騎士団の団員とかが良かったんですけど。
で、異世界転生しちゃったわけなんですけど、最近まではその事にまったく気づかず生活していました。記憶のスタートは5、6歳くらいで、癒しの力を持っているから聖女になるべく教会に引き取られて修行してまして。その前の事は覚えてないけど、まあ、そんなもんなのかなぁ、なんて思って。
この世界、魔獣とかいるし治安もそんなに良くないから、家族を殺されたとかでショックを受けて記憶が無いのかも、だったら思い出さなくていいかー、なんて思っていたんですよ。それでまあ、支障もなかったですからね。
でも!
ちょっと前、魔獣討伐の遠征に行きまして、そこで、びっくりする事があったんです。
コカトリスの毒にやられた魔術師を助けて欲しいってやって来た騎士がいて。それが、ノア・ヴァーツだったんです! そう! あのノアですよ! で、助けて欲しいって魔術師が、ユージーン・フィンレイで。
最初のうちは何も気が付かなかったんですけど、治療中にノアが言った言葉に『んっ?』と思って。治療を終えて王都に戻ってからも、なーんか引っかかるなぁって考えていたら、急に思い出したんです。自分は西園寺櫻子で、ここは私が描いてる漫画の世界だって。
そこからはもう、次々と記憶が蘇ってきまして、ノアが私の実の弟で、この世界に一緒に来たっていう事も思い出しました。もともとノアって、弟をモデルに出来たキャラですし( ´艸`)
で、今日、いよいよそのノアと再会できる事になりました。もう、ドキドキです! 向こうの記憶はどの程度あるのかなぁ。お姉ちゃんの事、思い出してくれるといいのですが。
あ、でもこっち来るちょっと前に、ユージーン×ノアのスピンオフ的な話を描こうとして『余計な事するなー』とか言われたんだった! やばっ! 今どうなってるんだろう(≧∇≦) いろんな意味でドキドキです!
あ、なんか呼ばれたんで、行ってきます!
頑張るぞー!
(……と、妄想遊びはこれくらいにして)
呼びに来た近衛騎士の後をついて行く。
大きな両開きの扉の前で一度立ち止まり、その後、中に招かれた。
「聖女ドロリス、第二王子殿下にご挨拶申し上げます」
片方の足を後ろに引き膝を曲げ腰を落とす、という遠征前に教会で指導された挨拶をライアン王子に対してする。
(相変わらずキラキラしてるわね、さすが王子様)
姿勢を戻して軽く微笑み、少し視線をずらすと、片膝をついた一人の騎士が目に留まった。
(ノアっ!! てか彰! いややっぱりノア!)
感情が昂り思わずサササッと近寄ると、自分も跪いてノアの右手を両手でギュッと握った。
「へっ? あのっ?」
驚いたようでノアは手を引っ込めようとするが、離すわけがない。
「あの、ええと、聖女、様?」
「聖女様だなんてそんな、他人行儀な呼び方しないで下さい!」
「はっ?」
ノアの声に、涙が出そうになる。
(あの時は、何も思い出さないし何も感じなかったけど……ああ、ノア……立派に成長して……)
「え? あのっ? ええっ?」
戸惑っているようだが、そんなの構っていられない。
「ノア、お姉ちゃんだよ」
「……へっ?」
「ノア~~~」
「うわうわうわ、ちょっと待って下さい!」
抱きつかれて後ろに倒れそうになり慌てるノア。そして不機嫌な表情の第二王子。困り顔の第三騎士団団長、侍従、近衛騎士。
しかし、
「うっ、ううっ、ノア……彰……ウウッ」
「え、アキ、ラ、って……ええっ? 姉ちゃんっ?」
「だから、そう言ってるでしょうっ!」
「え、ちょっと待ってちょっと待って……ええっ?」
両肩を掴んで引き離し、まじまじと顔を見て、
「……さくら……」
確認の為、小声で囁かれたその名に、コクコクと頷く。
「そんな事って……姉ちゃんっ!」
「うわーん! 会えて嬉しい!」
「俺もだよ! 姉ちゃーん」
二人はしっかり抱き合い、声を上げて泣いた。
1,077
お気に入りに追加
1,605
あなたにおすすめの小説
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角@中華BL発売中
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる