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第一章 姉の描いたBL漫画の中に来てしまったらしい
20 告白
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ユージーンはレイモンドが好きだ。けれどもレイモンドはジョシュアが好きで、ユージーンはジョシュアに嫉妬していた。
(で、ジョシュアが危険な状態になった時に一瞬迷いが生じて、その事に自分自身がショックを受けて呆然としているところにワームの尻尾がバーンってきて……いや、今回はワームじゃなくてコカトリスが出てきて、漫画とは違っていた。……けど、その前から違ってた? え? なんで俺がジョシュアが好きって事になってんだ? え? 待って待って!)
何か、まだ気になる事があったような気がする。
(えーと……そう! 友人も好きな人も、ジョシュアの事が好きって言ってた。それは、友人であり好きな人でもあるレイモンドが、って意味かと思ったけど……ええっ?)
その事について、本人から説明を求めようと口を開くが、なんと聞けばいいのか迷い、言葉にできず口をパクパクさせてしまう。
そんなノアに、ユージーンは目を伏せ、小さな声で言った。
「……ノア……君の事が、好きなんだ……」
「!!」
あまりにも驚きの告白に、言葉が出ない。
「君が、ジョシュアを好きだという事は知っている。だから、誤魔化さなくていい」
「え、いや、本当に……ジョシュアは同期で友人だけど、恋愛感情は無くて……てか、ユージーン様はレイモンド様の事が好きでしょう!?」
「……? いや、レイモンドは同期で友人だが……恋愛感情は持っていない」
「…………」
「…………」
「……いやいやいやいや、ちょっと待って下さいよ! えっ? 嘘でしょう? ユージーン様が俺をっ? この、なんの特徴もない、モブの俺を? 好き? はっ? 意味わかんない!」
あまりの衝撃に言葉が乱れてしまう。
「いやいや、おかしいって! なんで? 俺なんて好きになる要素、どこにあるわけ? えっ? じゃあなに? 俺がジョシュアの事好きだと思ってジョシュアに嫉妬したわけ? 第三騎士団イチ、っていうか、この国一番の美形のユージーンが? いや、ナイナイ、そんなの絶対」
「どうして、無いのだ?」
そう言ってノアの手の指先だけそっと掴んできたユージーンの顔は、涙で濡れていたが、
(……綺麗だ……顔が、良すぎる……)
見つめられ、思わず赤面しながらも、目を逸らす事ができない。
「レイモンドではない。私は、ノア・ヴァーツが好きなのだ。愛している。君が私の事を好きになってくれたらどんなにいいかと、そう思い続けていた」
「うそ……」
「こんな時に、嘘などつかない」
「あ……いつ、から……」
「一緒に訓練をするようになる、少し前」
「そっ、んな、前から?」
コクリと頷くユージーンの濡れた瞳に、胸が詰まる。
「本当、ですか?」
その問いにユージーンはしっかりと頷いたが、
(うわーっ! 信じられない! ちょっとこれ、本当かよ!? こんな事って、ある? 訓練のちょい前って言ったら、俺がノアになってから? えっ? なんかあった? きっかけ。わからんっ! わからんけど……)
ユージーンを見て、遠慮がちに少しだけ重ねられている指を見て、ブワッと体が熱くなるのを感じる。
(こんな綺麗な人に好きだって言われたら、嬉しいに決まってる。こんな特別な人が、モブの俺なんかを好きだなんて……いつも厳しくて愛想のない人だけど、実は優しくて繊細な人だってわかってる。ポーション買ってくれたのを秘密にしてたところとか、すごくいい人だって思ってたけど、あれって、誰にでもするわけじゃなくて俺の事好きだからしてくれたって事なのか? いや、ちょっとこれ、浮かれるだろ。いやいや、待て待て、これってもしや、姉ちゃんの呪い? ノアとユージーンをくっつけようとしてた、姉ちゃんの意思が働いて?)
そう考え……『いや、違う』と考え直す。
(これは、間違いなく俺の気持ちだ。俺、ユージーンの事、好きだわ。俺は、ユージーンに傷ついて欲しくないし、幸せになってもらいたいって思ってる。そして今、俺自身が幸せにしてやれるって事を、心底喜んでいる……)
指先から、顔へと再び視線を戻すと、ユージーンとすぐに目が合った。ずっと自分を見つめていたのだと思うと、カッと顔が熱くなった。
「……俺、本当にジョシュアの事は、大切な友人、としか思ってません。で、ユージーン様はレイモンド様の事が好きだとずっと思っていたんで、今こうして好きと言われて、戸惑ってますけど……嫌じゃありません。正直、嬉しいです。ユージーン様……俺が、貴方にキスしたら、嬉しいですか?」
ユージーンの目が、見開かれる。
「……嬉しいと、そう言ったら、してもらえるのか?」
「……いえ、言わなくても、します。俺がしたいから」
自分からユージーンの手をギュッと握りしめて身をのりだし、ノアはユージーンの唇に自分の唇を重ねた。
(で、ジョシュアが危険な状態になった時に一瞬迷いが生じて、その事に自分自身がショックを受けて呆然としているところにワームの尻尾がバーンってきて……いや、今回はワームじゃなくてコカトリスが出てきて、漫画とは違っていた。……けど、その前から違ってた? え? なんで俺がジョシュアが好きって事になってんだ? え? 待って待って!)
何か、まだ気になる事があったような気がする。
(えーと……そう! 友人も好きな人も、ジョシュアの事が好きって言ってた。それは、友人であり好きな人でもあるレイモンドが、って意味かと思ったけど……ええっ?)
その事について、本人から説明を求めようと口を開くが、なんと聞けばいいのか迷い、言葉にできず口をパクパクさせてしまう。
そんなノアに、ユージーンは目を伏せ、小さな声で言った。
「……ノア……君の事が、好きなんだ……」
「!!」
あまりにも驚きの告白に、言葉が出ない。
「君が、ジョシュアを好きだという事は知っている。だから、誤魔化さなくていい」
「え、いや、本当に……ジョシュアは同期で友人だけど、恋愛感情は無くて……てか、ユージーン様はレイモンド様の事が好きでしょう!?」
「……? いや、レイモンドは同期で友人だが……恋愛感情は持っていない」
「…………」
「…………」
「……いやいやいやいや、ちょっと待って下さいよ! えっ? 嘘でしょう? ユージーン様が俺をっ? この、なんの特徴もない、モブの俺を? 好き? はっ? 意味わかんない!」
あまりの衝撃に言葉が乱れてしまう。
「いやいや、おかしいって! なんで? 俺なんて好きになる要素、どこにあるわけ? えっ? じゃあなに? 俺がジョシュアの事好きだと思ってジョシュアに嫉妬したわけ? 第三騎士団イチ、っていうか、この国一番の美形のユージーンが? いや、ナイナイ、そんなの絶対」
「どうして、無いのだ?」
そう言ってノアの手の指先だけそっと掴んできたユージーンの顔は、涙で濡れていたが、
(……綺麗だ……顔が、良すぎる……)
見つめられ、思わず赤面しながらも、目を逸らす事ができない。
「レイモンドではない。私は、ノア・ヴァーツが好きなのだ。愛している。君が私の事を好きになってくれたらどんなにいいかと、そう思い続けていた」
「うそ……」
「こんな時に、嘘などつかない」
「あ……いつ、から……」
「一緒に訓練をするようになる、少し前」
「そっ、んな、前から?」
コクリと頷くユージーンの濡れた瞳に、胸が詰まる。
「本当、ですか?」
その問いにユージーンはしっかりと頷いたが、
(うわーっ! 信じられない! ちょっとこれ、本当かよ!? こんな事って、ある? 訓練のちょい前って言ったら、俺がノアになってから? えっ? なんかあった? きっかけ。わからんっ! わからんけど……)
ユージーンを見て、遠慮がちに少しだけ重ねられている指を見て、ブワッと体が熱くなるのを感じる。
(こんな綺麗な人に好きだって言われたら、嬉しいに決まってる。こんな特別な人が、モブの俺なんかを好きだなんて……いつも厳しくて愛想のない人だけど、実は優しくて繊細な人だってわかってる。ポーション買ってくれたのを秘密にしてたところとか、すごくいい人だって思ってたけど、あれって、誰にでもするわけじゃなくて俺の事好きだからしてくれたって事なのか? いや、ちょっとこれ、浮かれるだろ。いやいや、待て待て、これってもしや、姉ちゃんの呪い? ノアとユージーンをくっつけようとしてた、姉ちゃんの意思が働いて?)
そう考え……『いや、違う』と考え直す。
(これは、間違いなく俺の気持ちだ。俺、ユージーンの事、好きだわ。俺は、ユージーンに傷ついて欲しくないし、幸せになってもらいたいって思ってる。そして今、俺自身が幸せにしてやれるって事を、心底喜んでいる……)
指先から、顔へと再び視線を戻すと、ユージーンとすぐに目が合った。ずっと自分を見つめていたのだと思うと、カッと顔が熱くなった。
「……俺、本当にジョシュアの事は、大切な友人、としか思ってません。で、ユージーン様はレイモンド様の事が好きだとずっと思っていたんで、今こうして好きと言われて、戸惑ってますけど……嫌じゃありません。正直、嬉しいです。ユージーン様……俺が、貴方にキスしたら、嬉しいですか?」
ユージーンの目が、見開かれる。
「……嬉しいと、そう言ったら、してもらえるのか?」
「……いえ、言わなくても、します。俺がしたいから」
自分からユージーンの手をギュッと握りしめて身をのりだし、ノアはユージーンの唇に自分の唇を重ねた。
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