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第一章 姉の描いたBL漫画の中に来てしまったらしい
11 ワーム 1
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ドゴ――ン!!
ドゴ――ン!!
ドゴ――ン!!
巨大なワームの頭が三つ、隊を取り囲むように飛び出す。
「くそっ! 三匹か!」
「いえっ! まだいるかも」
何匹か覚えてはいないが、結構な数出た気がする、と思いノアが声を上げるのとほぼ同時に、最初の三匹よりも倍近く大きな頭が真ん中から現れ、近くにいた騎士数人が足元を掬われ転倒する。
「なんだこいつ、でかすぎるだろう!」
「普通のワームじゃないな、首のあたりの形状が違う、上位種か?」
「こんなのが這いまわっているからサーペントがいなかったのか!」
巨大ワームが四匹、しかもその中の一匹は超特大で、魔獣討伐専門の騎士達でも見た事がない個体だ。しかし、
「ハロルド! パッド! エディ! 周りのワームを片付けろ! アレンは援護! レイは俺と一緒にこのデカブツをやるぞ!」
素早く状況判断をし決断したイーサンが、リーダーの名前を呼び指示すると、すぐさま騎士達は自分のリーダーの元に集まり、態勢を整える。援護と指示されたアレンの班は新人が中心の班で、ノアとジョシュアもこの班だ。
最近ずっとユージーンと訓練していたので一瞬迷ったが、目が合ったユージーンがあごをクイッと上げ『向こうだ』と合図を寄越した。
(……だよな、だんだん形にはなってきたけど、未知の化け物とやり合うには経験不足だ。かえって邪魔になる。よしっ、俺はジョシュアを守るぞ)
ユージーンの怪我は、ワームに襲われてピンチに陥ったジョシュアを助けようとした時、一瞬『こいつさえいなければ』と思い躊躇してしまう事が原因だ。自分の心の闇に呆然としたところで、ワームの尾が顔を掠めてしまうのだ。
(つまりジョシュアが危なくならなければ大丈夫! この時レイモンドがジョシュアを救って二人はくっつくわけだけど……その辺は別の機会にどうにかしてくれ! お互い恋心は芽生えているんだから大丈夫! 今はユージーンを闇落ちさせない事を第一優先とする!)
「エイダン! 補助!」
「あまり期待するなよ、それほど魔力が残っていない」
「こんな時だけジジイぶるな」
「ふんっ、お前こそ、いつもジジイ扱いしてるくせに、こんな時だけ都合のいい」
そんな事を言い合いながらも、団長(32歳)と魔術師長(45歳)は息のあった動きで一番大きい個体と戦い始める。
そしてそれに、レイモンド達も加わる。
「よしっ! 俺らもやるぞ!」
「「「「お―――っ!!」」」」
各班それぞれ、心を奮い立たせてワームと対峙する。
直径が1メートル以上あり、斬りつけたくらいじゃ裂く事ができない表皮を持つワームは、ハッキリ言って恐怖だ。
(何メートルあるんだ? 10メートルくらいか? 魔獣は総じてデカいヤツが多いけど、こんなに大きいなんて……でも、団長達が戦っているヤツ見るとこっちは子供って感じだ)
「刺せ刺せ刺せ! 斬るより刺せ!」
「頭狙え! 歯は気を付けろ!」
蛇のようでもあるが、頭部分は全然違う。先端が丸く、目はどこにあるかわからない。イソギンチャクのようなビロビロした口の中にはびっしりと鋭い歯が付いている。
(気持ち悪っ、コワッ)
取り囲んで次々と剣を刺すが、ビタンビタンと暴れまわってなかなか動きが止まらない。口の中を狙った剣は折れ曲がる。しかし、一匹につき10人以上で斬りかかっているので、段々と弱ってきた。
「よしよしよし! いけるぞ!」
「尻尾の方に気を付けろ! 吹き飛ばされんなよ!」
自分達が担当していたワームが倒れると、動ける者はすぐに巨大な特殊個体の元へ向かう。
ノアとジョシュアは行動を共にし戦っていたが、イーサン達の所に合流したのは一番最後となり、そこで見たものは、
「や、べぇ……なに、これ……」
それは、酷い状態だった。
そこかしこに人が倒れていて、戦っている者の方が少ない。対して巨大ワームは、最初と変わらないように見える。
(小さい方とは全然強さが違うんだ! でも確か、漫画では死者は出ていなかった。右目を失明したユージーンが、一番重症だったはずで……いや、でも、他は描いてなかっただけかも? そもそも俺は、それを阻止しようとしていて……全部漫画通りにいくわけじゃないんだから……怖い……)
強大すぎる力の前に、足が竦む。
この世界に来て三ヶ月以上が過ぎ、その間、騎士としての訓練を受け、しかも元々のノアの力のおかげで新人の中では断トツ一番、そして先輩騎士達に混じっても、真ん中より少し上くらいの強さはあると感じていた。
(けどそんなの、バケモノの前では関係ない。ヤバイ、どうすりゃいいんだ……)
少しでもダメージを与える為にとびかかろうとするが、強力に振られる尻尾のせいで近づけない。同じような考えで向かっていったであろう先輩騎士達が、尾に弾かれ木に叩きつけられる。
魔術師達が離れた場所から魔法攻撃を加えているが、全く効いていないように見える。
戦えているのは、魔術師との連携攻撃で、背中を魔法で押してもらい猛スピードで突っ込んでいったり、魔法で高く飛ばしてもらい、首をもたげた状態のワームに上から攻撃ができているイーサン団長とレイモンド副団長くらいだ。
(なんか……なんか弱点ないのか? 漫画では、ジョシュアを救うためにレイモンドが倒してたけど……今の状態見る限りじゃ、本当に倒せるのか怪しいぞ。早くどうにかしないと、魔術師は魔力切れになるし、そもそも連携攻撃なんて、調整はしてるけど、自分に魔法攻撃当ててもらって、その力を推進力にして突っ込んでくような荒い戦い方だ。自分で練習してわかったけど、タイミング合わなきゃ怪我するし、無理な力加えて戦ってるから、スッゲー疲れるんだ。あんなの、本当にいざという時のもので、長くは使えない戦い方だぞ)
必死に考え、思い出そうとする。
(そうだ、あの時はジョシュアにワームが突っ込んでいって、それを救うために必死に間に入ったレイモンドがズバッて首を刺して倒したんだ、って! 首は確かにどの生き物でも急所だろうけど、あのワームの首のところは、固い鱗っていうか、トゲトゲがあって、剣が入りそうにないぞ? レイモンドはたまたまいい感じに刺せたんだろうけど……ん?)
「ああっ! そうだ!」
思わず声を上げ、巨大ワームの首を凝視する。
「よしっ! イケる! 行け! 根性出せっ!」
バンバンと自分の太腿を叩いて奮い立たせ、ノアはワームに向かって走り出した。
ドゴ――ン!!
ドゴ――ン!!
巨大なワームの頭が三つ、隊を取り囲むように飛び出す。
「くそっ! 三匹か!」
「いえっ! まだいるかも」
何匹か覚えてはいないが、結構な数出た気がする、と思いノアが声を上げるのとほぼ同時に、最初の三匹よりも倍近く大きな頭が真ん中から現れ、近くにいた騎士数人が足元を掬われ転倒する。
「なんだこいつ、でかすぎるだろう!」
「普通のワームじゃないな、首のあたりの形状が違う、上位種か?」
「こんなのが這いまわっているからサーペントがいなかったのか!」
巨大ワームが四匹、しかもその中の一匹は超特大で、魔獣討伐専門の騎士達でも見た事がない個体だ。しかし、
「ハロルド! パッド! エディ! 周りのワームを片付けろ! アレンは援護! レイは俺と一緒にこのデカブツをやるぞ!」
素早く状況判断をし決断したイーサンが、リーダーの名前を呼び指示すると、すぐさま騎士達は自分のリーダーの元に集まり、態勢を整える。援護と指示されたアレンの班は新人が中心の班で、ノアとジョシュアもこの班だ。
最近ずっとユージーンと訓練していたので一瞬迷ったが、目が合ったユージーンがあごをクイッと上げ『向こうだ』と合図を寄越した。
(……だよな、だんだん形にはなってきたけど、未知の化け物とやり合うには経験不足だ。かえって邪魔になる。よしっ、俺はジョシュアを守るぞ)
ユージーンの怪我は、ワームに襲われてピンチに陥ったジョシュアを助けようとした時、一瞬『こいつさえいなければ』と思い躊躇してしまう事が原因だ。自分の心の闇に呆然としたところで、ワームの尾が顔を掠めてしまうのだ。
(つまりジョシュアが危なくならなければ大丈夫! この時レイモンドがジョシュアを救って二人はくっつくわけだけど……その辺は別の機会にどうにかしてくれ! お互い恋心は芽生えているんだから大丈夫! 今はユージーンを闇落ちさせない事を第一優先とする!)
「エイダン! 補助!」
「あまり期待するなよ、それほど魔力が残っていない」
「こんな時だけジジイぶるな」
「ふんっ、お前こそ、いつもジジイ扱いしてるくせに、こんな時だけ都合のいい」
そんな事を言い合いながらも、団長(32歳)と魔術師長(45歳)は息のあった動きで一番大きい個体と戦い始める。
そしてそれに、レイモンド達も加わる。
「よしっ! 俺らもやるぞ!」
「「「「お―――っ!!」」」」
各班それぞれ、心を奮い立たせてワームと対峙する。
直径が1メートル以上あり、斬りつけたくらいじゃ裂く事ができない表皮を持つワームは、ハッキリ言って恐怖だ。
(何メートルあるんだ? 10メートルくらいか? 魔獣は総じてデカいヤツが多いけど、こんなに大きいなんて……でも、団長達が戦っているヤツ見るとこっちは子供って感じだ)
「刺せ刺せ刺せ! 斬るより刺せ!」
「頭狙え! 歯は気を付けろ!」
蛇のようでもあるが、頭部分は全然違う。先端が丸く、目はどこにあるかわからない。イソギンチャクのようなビロビロした口の中にはびっしりと鋭い歯が付いている。
(気持ち悪っ、コワッ)
取り囲んで次々と剣を刺すが、ビタンビタンと暴れまわってなかなか動きが止まらない。口の中を狙った剣は折れ曲がる。しかし、一匹につき10人以上で斬りかかっているので、段々と弱ってきた。
「よしよしよし! いけるぞ!」
「尻尾の方に気を付けろ! 吹き飛ばされんなよ!」
自分達が担当していたワームが倒れると、動ける者はすぐに巨大な特殊個体の元へ向かう。
ノアとジョシュアは行動を共にし戦っていたが、イーサン達の所に合流したのは一番最後となり、そこで見たものは、
「や、べぇ……なに、これ……」
それは、酷い状態だった。
そこかしこに人が倒れていて、戦っている者の方が少ない。対して巨大ワームは、最初と変わらないように見える。
(小さい方とは全然強さが違うんだ! でも確か、漫画では死者は出ていなかった。右目を失明したユージーンが、一番重症だったはずで……いや、でも、他は描いてなかっただけかも? そもそも俺は、それを阻止しようとしていて……全部漫画通りにいくわけじゃないんだから……怖い……)
強大すぎる力の前に、足が竦む。
この世界に来て三ヶ月以上が過ぎ、その間、騎士としての訓練を受け、しかも元々のノアの力のおかげで新人の中では断トツ一番、そして先輩騎士達に混じっても、真ん中より少し上くらいの強さはあると感じていた。
(けどそんなの、バケモノの前では関係ない。ヤバイ、どうすりゃいいんだ……)
少しでもダメージを与える為にとびかかろうとするが、強力に振られる尻尾のせいで近づけない。同じような考えで向かっていったであろう先輩騎士達が、尾に弾かれ木に叩きつけられる。
魔術師達が離れた場所から魔法攻撃を加えているが、全く効いていないように見える。
戦えているのは、魔術師との連携攻撃で、背中を魔法で押してもらい猛スピードで突っ込んでいったり、魔法で高く飛ばしてもらい、首をもたげた状態のワームに上から攻撃ができているイーサン団長とレイモンド副団長くらいだ。
(なんか……なんか弱点ないのか? 漫画では、ジョシュアを救うためにレイモンドが倒してたけど……今の状態見る限りじゃ、本当に倒せるのか怪しいぞ。早くどうにかしないと、魔術師は魔力切れになるし、そもそも連携攻撃なんて、調整はしてるけど、自分に魔法攻撃当ててもらって、その力を推進力にして突っ込んでくような荒い戦い方だ。自分で練習してわかったけど、タイミング合わなきゃ怪我するし、無理な力加えて戦ってるから、スッゲー疲れるんだ。あんなの、本当にいざという時のもので、長くは使えない戦い方だぞ)
必死に考え、思い出そうとする。
(そうだ、あの時はジョシュアにワームが突っ込んでいって、それを救うために必死に間に入ったレイモンドがズバッて首を刺して倒したんだ、って! 首は確かにどの生き物でも急所だろうけど、あのワームの首のところは、固い鱗っていうか、トゲトゲがあって、剣が入りそうにないぞ? レイモンドはたまたまいい感じに刺せたんだろうけど……ん?)
「ああっ! そうだ!」
思わず声を上げ、巨大ワームの首を凝視する。
「よしっ! イケる! 行け! 根性出せっ!」
バンバンと自分の太腿を叩いて奮い立たせ、ノアはワームに向かって走り出した。
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