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第四章
断罪 1
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「エリザベート・スピネル! そなたがルチア・ローズ男爵令嬢に対して行った数々の嫌がらせ、全て把握しているぞ! そなたのような悪女は、国母となるに相応しくない。よって私はそなたとの婚約を破棄し、ルチア・ローズを婚約者とする!」
王太子のその宣言に、会場がざわつく。
「ちょっと……本当なの?」
「確かに最近仲は良くなかったようだけど……」
「てことは、ルチア嬢が王太子妃、そしていずれは王妃になるのか?」
「まあそうだよな、エリザベート嬢よりルチア嬢の方が優しくて可愛いから」
「何言ってるのよ! エリザベート嬢は素晴らしい方だわ! ローズ男爵令嬢に王太子妃が務まるわけが無いわ!」
「そうよ! あの女、男性の前と女性の前では態度が全然違うんだから!」
「それは、彼女の人気に嫉妬したお前達が虐めるからだろ? 女は嫉妬深くて妬みが酷いからな」
「そうだな。エリザベート嬢だって、嫉妬で彼女を虐めてたんだろう?」
「それは……」
あちこちで、そんな会話が交わされる中、
「リザ!」
「リザ様!」
親友の二人が駆けつけ、エリザベートの両脇に立った。
「ヴィヴィ! クリス! 貴女達、よくこんな場面でわたくしの所に来たわね」
エリザベートは驚いてそう言ったが、
「あたり前でしょう! こんな中、貴女を一人にしておけませんわ!」
「ヴィヴィ様の仰る通りです! なんのお役にも立てないかもしれませんが、一緒にいる事はできます!」
「……そうだな、このような場で、一人好奇の目に晒されるのは良くない」
「オニキス先生!」
「エリザベート先輩、僕もこっちに付きます。お菓子の販売は是非我が商会に」
「……ダニエル……悪いけど、商会に依頼しないで自分で店を出そうかと……」
「ええええっ? そんなぁ……」
「まあまあ、その話はまた後で」
「ちょっとリアム、遅いですわよ!」
「ごめんヴィヴィちゃん、だって向こうの端っこにいたから…… 」
「エリザベート様、エドワード様とテオール様は、中立の立場をとるそうです」
「その方がやりやすいわ。伝言ありがとう、ルーク」
そう言って壇上を見ると、いつの間にか、揃いのドレス姿のルチアが、レオンハルトの横にピッタリと寄り添っていた。
「身分の高さを鼻にかけ弱い者苛めをするなど、そなたは心の醜い女だ。優しいルチアはずっと我慢をし、そなたを許してやって欲しいと懇願までしたのだぞ? 恥ずかしく思い反省するなら、素直に罪を認めて謝罪するのだ!」
「やってもいない事に対し、謝罪などできませんわ」
高い所に立つ二人をしっかりと見つめ、エリザベートはハッキリと言った。
「このような場で、いきなりこんな話をする事にも、驚き、困惑しております」
「そなたの最近の行動を見て、悪行を詳らかにする必要があると判断した。生徒会役員になり、生徒達の支持があるからといい気になり、珍しいドレスや菓子で注目を集め、貴族達を取り込みだしているではないか。その中には、王族も含まれているようだし」
そう言うと、レオンハルトは冷ややかな目で王妃とエドワードを見た。
「全く、嘆かわしい」
「……そうですか……それは……面白いお話ですわね」
「なっ!」
クスクスと笑うエリザベートに、レオンハルトは怒りで顔を赤くした。
「面白い話だと? お前! ふざけるな!」
「ふざけてなどおりませんわ。むしろ、ふざけているのはレオンハルト様の方でしょう。卒業パーティーという大切な場で、こんなくだらない話をするなんて」
「くだらないだと!?」
「ええ、心底くだらないですわ。そもそも、レオンハルト様とわたくしの婚約破棄は、すでにきちんと処理されておりますでしょう?」
エリザベートの言葉に『え? そうなの?』『知らなかった』というような声が囁かれる。
「まるで今、わたくしの行いの悪さのせいでレオンハルト様が婚約破棄を言い渡したような感じにしていらっしゃいますが、そうではございません。レオンハルト様の! 不誠実な行動に失望したわたくしが婚約破棄を申し出て、受理されたのが真実です。広く公表されていないのは、レオンハルト様が在学中に公表しては、良い印象を持たれないだろうから、という理由ですわ。学生のうちに、婚約者がいるのに別の女性に心を移して婚約破棄なんて……ねえ」
余裕の笑みを浮かべて話すエリザベートに対し、レオンハルトの顔がどんどん赤くなり、プルプルと震え出す。
「一緒に学園生活を送っていた皆様の中には、レオンハルト様とルチア嬢が、学園内でイチャイチャしている所を見かけた方もいらっしゃるでしょう。そんな中、婚約破棄と新たな婚約者を発表しては『ああ、やっぱり』『王太子殿下は不誠実だ』『新しい婚約者は、王太子殿下を略奪した』と話題になりますでしょう? そうはしたくないという事で、わたくしは婚約破棄の事を黙っているようにと頼まれていたのですが……レオンハルト様ご自身が公表するとは、驚きましたわ。国王陛下、王妃殿下、そして重臣の皆様の、貴方様を思う気持ちがわからないにもほどがありますわね」
「エリザベートっ!」
「はい、レオンハルト様」
たまらず大声で怒鳴ったレオンハルトに、エリザベートはにっこり微笑みながら返事をした。
王太子のその宣言に、会場がざわつく。
「ちょっと……本当なの?」
「確かに最近仲は良くなかったようだけど……」
「てことは、ルチア嬢が王太子妃、そしていずれは王妃になるのか?」
「まあそうだよな、エリザベート嬢よりルチア嬢の方が優しくて可愛いから」
「何言ってるのよ! エリザベート嬢は素晴らしい方だわ! ローズ男爵令嬢に王太子妃が務まるわけが無いわ!」
「そうよ! あの女、男性の前と女性の前では態度が全然違うんだから!」
「それは、彼女の人気に嫉妬したお前達が虐めるからだろ? 女は嫉妬深くて妬みが酷いからな」
「そうだな。エリザベート嬢だって、嫉妬で彼女を虐めてたんだろう?」
「それは……」
あちこちで、そんな会話が交わされる中、
「リザ!」
「リザ様!」
親友の二人が駆けつけ、エリザベートの両脇に立った。
「ヴィヴィ! クリス! 貴女達、よくこんな場面でわたくしの所に来たわね」
エリザベートは驚いてそう言ったが、
「あたり前でしょう! こんな中、貴女を一人にしておけませんわ!」
「ヴィヴィ様の仰る通りです! なんのお役にも立てないかもしれませんが、一緒にいる事はできます!」
「……そうだな、このような場で、一人好奇の目に晒されるのは良くない」
「オニキス先生!」
「エリザベート先輩、僕もこっちに付きます。お菓子の販売は是非我が商会に」
「……ダニエル……悪いけど、商会に依頼しないで自分で店を出そうかと……」
「ええええっ? そんなぁ……」
「まあまあ、その話はまた後で」
「ちょっとリアム、遅いですわよ!」
「ごめんヴィヴィちゃん、だって向こうの端っこにいたから…… 」
「エリザベート様、エドワード様とテオール様は、中立の立場をとるそうです」
「その方がやりやすいわ。伝言ありがとう、ルーク」
そう言って壇上を見ると、いつの間にか、揃いのドレス姿のルチアが、レオンハルトの横にピッタリと寄り添っていた。
「身分の高さを鼻にかけ弱い者苛めをするなど、そなたは心の醜い女だ。優しいルチアはずっと我慢をし、そなたを許してやって欲しいと懇願までしたのだぞ? 恥ずかしく思い反省するなら、素直に罪を認めて謝罪するのだ!」
「やってもいない事に対し、謝罪などできませんわ」
高い所に立つ二人をしっかりと見つめ、エリザベートはハッキリと言った。
「このような場で、いきなりこんな話をする事にも、驚き、困惑しております」
「そなたの最近の行動を見て、悪行を詳らかにする必要があると判断した。生徒会役員になり、生徒達の支持があるからといい気になり、珍しいドレスや菓子で注目を集め、貴族達を取り込みだしているではないか。その中には、王族も含まれているようだし」
そう言うと、レオンハルトは冷ややかな目で王妃とエドワードを見た。
「全く、嘆かわしい」
「……そうですか……それは……面白いお話ですわね」
「なっ!」
クスクスと笑うエリザベートに、レオンハルトは怒りで顔を赤くした。
「面白い話だと? お前! ふざけるな!」
「ふざけてなどおりませんわ。むしろ、ふざけているのはレオンハルト様の方でしょう。卒業パーティーという大切な場で、こんなくだらない話をするなんて」
「くだらないだと!?」
「ええ、心底くだらないですわ。そもそも、レオンハルト様とわたくしの婚約破棄は、すでにきちんと処理されておりますでしょう?」
エリザベートの言葉に『え? そうなの?』『知らなかった』というような声が囁かれる。
「まるで今、わたくしの行いの悪さのせいでレオンハルト様が婚約破棄を言い渡したような感じにしていらっしゃいますが、そうではございません。レオンハルト様の! 不誠実な行動に失望したわたくしが婚約破棄を申し出て、受理されたのが真実です。広く公表されていないのは、レオンハルト様が在学中に公表しては、良い印象を持たれないだろうから、という理由ですわ。学生のうちに、婚約者がいるのに別の女性に心を移して婚約破棄なんて……ねえ」
余裕の笑みを浮かべて話すエリザベートに対し、レオンハルトの顔がどんどん赤くなり、プルプルと震え出す。
「一緒に学園生活を送っていた皆様の中には、レオンハルト様とルチア嬢が、学園内でイチャイチャしている所を見かけた方もいらっしゃるでしょう。そんな中、婚約破棄と新たな婚約者を発表しては『ああ、やっぱり』『王太子殿下は不誠実だ』『新しい婚約者は、王太子殿下を略奪した』と話題になりますでしょう? そうはしたくないという事で、わたくしは婚約破棄の事を黙っているようにと頼まれていたのですが……レオンハルト様ご自身が公表するとは、驚きましたわ。国王陛下、王妃殿下、そして重臣の皆様の、貴方様を思う気持ちがわからないにもほどがありますわね」
「エリザベートっ!」
「はい、レオンハルト様」
たまらず大声で怒鳴ったレオンハルトに、エリザベートはにっこり微笑みながら返事をした。
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