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第四章
王妃殿下の昔語り 1
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(……生クリームとカスタードを混ぜたクリームが、フワカサッとしたシュー生地と一体になって最高。シューが膨らむまで、数えきれないほど試作を重ねたかいがあるというものだわ。生クリームはあっても料理にしか使っていなかったなんて、勿体なさすぎよね。……ああ、完璧)
「……エリザベート嬢?」
「! 失礼致しました。この通り、問題ございませんが、念のために王妃殿下の方でも毒味を……」
「ええ」
スッと控えている侍女達の方へ目線をやると、その中の一人がやって来て、シュークリームの他、パウンドケーキとクッキーも皿に取って少し離れたテーブルで色々調べ、自分でも食べてみて『問題ありません』と報告する。
そして別の皿にシュークリーム、そしてパウンドケーキとクッキーも一つずつ乗せ、王妃の前に差し出した。
「では、いただくわね」
そう言ってシュークリームを取り、一口でポンと口の中に入れた王妃は驚いた表情をし、その後目を閉じて咀嚼し、呑み込み……パッと目を見開いた。
「素晴らしい! 素晴らしいの一言に尽きるわ! ああ……なんて、素晴らしい……」
すぐさま箱の中からもう一つ取って直接口に運び、目を閉じて集中しながら味わってから、参った、というように頭を左右に振った。
「……本当に素晴らしいわ。つまんでも指先が汚れないし、一口で食べられるから口紅が落ちる事もない。不思議な食感の皮につつまれた中のトロリとしたもののなんとも言えない美味しさ。もう……意味が解らない美味しさだわ」
「お、恐れ入ります……」
あまりにも絶賛され、エリザベートは少し戸惑いながら頭を下げた。
王妃は続けて、パウンドケーキを一口、そしてクッキーも一枚食べて、コクコクと頷く。
「パウンドケーキも素晴らしいわ。パンとは違う、ホロリと崩れる感じ、しっかりとした重さ、濃厚さ。中に混ぜ込まれているフルーツとお酒の風味。見た目の華やかさはないけれど、滋味に溢れた美味しさだわ。それからこのクッキー。固くて歯ざわりが良く、止まらなくなる美味しさがあるわ。どれも紅茶によく合っていて、もう……一体どういう経緯でこのような物が作られたのか……エリザベート嬢、一体どうやってこんな物を?」
「ええと……なんと、なく……?」
異世界で暮らしていた時の記憶があり作りました、と言えるわけもなく、エリザベートは苦し紛れに言ったが、
「そうよね、簡単に教えられる事ではないわね」
「あ、あの、王妃殿下」
「いいのよ、ごめんなさいね、つい好奇心で。貴女はとても努力をするし勉強家だもの。その中で得た知識なのでしょうね」
「……仰る、とおりでございます……」
「たまに作ってきてくれると嬉しいわ」
「かしこまりました」
「今後はレオンハルトに気を遣う事もないのだし、ね?」
「えっ?」
その言葉に驚いて見ると、王妃は楽しそうに笑っていた。
「貴女、レオンハルトに合わせて、わたくしとはあまり交流しないようにしていたでしょう?」
「いえ、そのような事は……」
「大丈夫よ、わかっていた事だし、それでいいと思っていたから」
クスクスと笑いながら、シュークリームを口に運ぶ。
「レオンハルトは、わたくしの事を嫌っているわ。自分の母親が、わたくしのせいで苦しんだと聞かされて育ったから。まったく……わたくしとあの子の母親の関係は悪くなかったというのに、乳母やら侍女やら、レオンを王にしたい貴族達が好き勝手な事を言うものだから……。エリザベート嬢も、レオンハルトから聞いていたのではない? わたくしが彼の母親と張り合っていたとか、エドワードを王にしたがっているとか」
「いえ……その……」
確かに、レオンハルトからそういう話は聞いていた。
『あの女は、俺の母に嫌がらせをしていたそうだ。それに自分の息子のエドワードを王にしたいから、俺に色々文句を言ってくる。エリザベートもあの女とは親しくせず、距離を置くように』
(そう言われたし、わたし自身継母とあまりうまくいっていなかったから、同じ悩み、辛さを持つ者同士、お互いをわかりあえると思って王妃殿下と距離を置いていたのよね。そうです、とは言えないけれどバレていたのね……)
「レオンハルトの母親については、どれくらい知っているかしら」
「同盟国であるファルミナレ王国の王女様で、出産後体調を崩して亡くなったと」
「ええそうね、貴女方の世代の皆が知っているのはそのくらいよね。……せっかくの機会だし、少し話しましょうか」
王妃はシュークリームを口に運んでから、話し始めた。
「……エリザベート嬢?」
「! 失礼致しました。この通り、問題ございませんが、念のために王妃殿下の方でも毒味を……」
「ええ」
スッと控えている侍女達の方へ目線をやると、その中の一人がやって来て、シュークリームの他、パウンドケーキとクッキーも皿に取って少し離れたテーブルで色々調べ、自分でも食べてみて『問題ありません』と報告する。
そして別の皿にシュークリーム、そしてパウンドケーキとクッキーも一つずつ乗せ、王妃の前に差し出した。
「では、いただくわね」
そう言ってシュークリームを取り、一口でポンと口の中に入れた王妃は驚いた表情をし、その後目を閉じて咀嚼し、呑み込み……パッと目を見開いた。
「素晴らしい! 素晴らしいの一言に尽きるわ! ああ……なんて、素晴らしい……」
すぐさま箱の中からもう一つ取って直接口に運び、目を閉じて集中しながら味わってから、参った、というように頭を左右に振った。
「……本当に素晴らしいわ。つまんでも指先が汚れないし、一口で食べられるから口紅が落ちる事もない。不思議な食感の皮につつまれた中のトロリとしたもののなんとも言えない美味しさ。もう……意味が解らない美味しさだわ」
「お、恐れ入ります……」
あまりにも絶賛され、エリザベートは少し戸惑いながら頭を下げた。
王妃は続けて、パウンドケーキを一口、そしてクッキーも一枚食べて、コクコクと頷く。
「パウンドケーキも素晴らしいわ。パンとは違う、ホロリと崩れる感じ、しっかりとした重さ、濃厚さ。中に混ぜ込まれているフルーツとお酒の風味。見た目の華やかさはないけれど、滋味に溢れた美味しさだわ。それからこのクッキー。固くて歯ざわりが良く、止まらなくなる美味しさがあるわ。どれも紅茶によく合っていて、もう……一体どういう経緯でこのような物が作られたのか……エリザベート嬢、一体どうやってこんな物を?」
「ええと……なんと、なく……?」
異世界で暮らしていた時の記憶があり作りました、と言えるわけもなく、エリザベートは苦し紛れに言ったが、
「そうよね、簡単に教えられる事ではないわね」
「あ、あの、王妃殿下」
「いいのよ、ごめんなさいね、つい好奇心で。貴女はとても努力をするし勉強家だもの。その中で得た知識なのでしょうね」
「……仰る、とおりでございます……」
「たまに作ってきてくれると嬉しいわ」
「かしこまりました」
「今後はレオンハルトに気を遣う事もないのだし、ね?」
「えっ?」
その言葉に驚いて見ると、王妃は楽しそうに笑っていた。
「貴女、レオンハルトに合わせて、わたくしとはあまり交流しないようにしていたでしょう?」
「いえ、そのような事は……」
「大丈夫よ、わかっていた事だし、それでいいと思っていたから」
クスクスと笑いながら、シュークリームを口に運ぶ。
「レオンハルトは、わたくしの事を嫌っているわ。自分の母親が、わたくしのせいで苦しんだと聞かされて育ったから。まったく……わたくしとあの子の母親の関係は悪くなかったというのに、乳母やら侍女やら、レオンを王にしたい貴族達が好き勝手な事を言うものだから……。エリザベート嬢も、レオンハルトから聞いていたのではない? わたくしが彼の母親と張り合っていたとか、エドワードを王にしたがっているとか」
「いえ……その……」
確かに、レオンハルトからそういう話は聞いていた。
『あの女は、俺の母に嫌がらせをしていたそうだ。それに自分の息子のエドワードを王にしたいから、俺に色々文句を言ってくる。エリザベートもあの女とは親しくせず、距離を置くように』
(そう言われたし、わたし自身継母とあまりうまくいっていなかったから、同じ悩み、辛さを持つ者同士、お互いをわかりあえると思って王妃殿下と距離を置いていたのよね。そうです、とは言えないけれどバレていたのね……)
「レオンハルトの母親については、どれくらい知っているかしら」
「同盟国であるファルミナレ王国の王女様で、出産後体調を崩して亡くなったと」
「ええそうね、貴女方の世代の皆が知っているのはそのくらいよね。……せっかくの機会だし、少し話しましょうか」
王妃はシュークリームを口に運んでから、話し始めた。
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