悪役令嬢の無念はわたしが晴らします

カナリア55

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第二章

生徒会に?

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 ある日、2時限目が終わっての休憩時間。
 エリザベートとヴィクトリアは、窓辺で風を受けながら小さな声で話をしていた。

「……ということで、わたくしは婚約破棄をして新たにリアムと婚約したけれど……リザ、貴女の方はまだなのよね」
「そう、まだ……」

 がっくりと項垂れながら、エリザベートは絞り出すような声で言った。

「もう……どういう事なの? どうして婚約破棄できないの?」
「困ったものねぇ……王太子殿下は相変わらずあの女とベッタリなのに。まあ、彼女は他の男子達とも、だけれど」
「そうよねぇ……」

 ルチアの周りには、相変わらず男子生徒が群がっている。

(メインは攻略対象の人達だけど、その他の男子にも人気があるのよね。なにか、フェロモン的なものが出てるんじゃないかしら。そう考えると……)

「リアムくんは凄いわよね。ヴィクトリアが好き、という気持ちにまったくブレが無くて」
「確かにそうね。出会った瞬間からずーっと、わたくしだけを愛し続けてきたと言われたわ。婚約破棄なんてしてしまって、新たな良縁は望めないかもしれないと不安だったから、有難い事だわ。わたくし、これまでリアムにはけっこう好き勝手な振る舞いをして、我が儘だったと反省しているの。これからは良い婚約者になるわ」
「ええ? 出会った頃からずっとヴィヴィの事が好きだと言うのだから、今までのままでいいんじゃないかしら。そういう我が儘な所が好きなのでは?」
「そうかしら……ふむ……」

 そんな事を話していると、

「あの……エリザベート、ちょっといい?」

 声をかけられ視線を移すと、そこには端正な顔立ちの男子が気まずそうに立っていた。

「……エド様……」
「そんな顔されると、いたたまれないんだけど……」
「あら、すみません、つい」

 思いっきり顔をしかめていた事に気づき、エリザベートはサラッと謝罪をした。

「あー、いや、君の気持ちはわかるつもりだよ……」

 赤紫にも青緑にも見える輝く髪と瞳を持つ、エドワード・アレキサンド。レオンハルト・アレキサンドの一歳下の弟で、この国の第二王子だ。

(レオンハルトの母親は今は亡き王妃様で、エドワードは第二王妃様の子。二人はあまり似ていないのよね。どちらもかっこいいけど、エドワードは可愛い感じ』

 控え目で優しい性格のこの同級生は、エリザベートとは幼馴染、という関係だ。

(まあ、彼もルチアに夢中で、ここ最近はめっきり会話もしていないけれどね。それがなんだって)

「……わたくしに用でも?」
「あーえーと……兄上から伝言を頼まれて……」
「そうですか。まあ、そうでもなければ、わたくしなどに声をかけないでしょうね」
「いやっ、その……ごめん……」
「…………」

 本当にすまなそうに頭を下げるエドワードに、エリザベートはフーッと息を吐いた。

(優しい彼に八つ当たりするのは違うわね。ルチアに夢中になってるだけで、直接わたくしに害を与えてはいないのだから)

「それで、レオンハルト様はわたくしに何の用なのでしょうか?」
「うん、それが……実は、君に生徒会に戻って来るようにと……」
「生徒会に戻れと?」
「そうなんだ……」
「生徒会長であるレオンハルト様が、クビにしておいて?」
「うん……」

 婚約者であるレオンハルトと一緒にいたくて、それに、将来王太子妃、そして王妃となった時の為にと、エリザベートは1年生の時から生徒会に所属していた。

(クリスタル学園の生徒会は、アレキサンドライト王国の中枢となり国を治め、繁栄させていく者の予行演習の場、というようなものなのよね。当然わたしもその中にいたけれど、ひと悶着あった翌日に、生徒会長のレオンハルトから除籍の命令を受けたわ。まあ、命令がなかったらわたくしの方から辞めていたでしょうが……)

 ミスを犯したわけでもないのに、理由も告げずに除籍されたのは気持ちの良いものではなかった。

(それなのに、今度は戻れと? しかも自分は来ずに弟に言わせるあたり、気に食わないんですけど)

 キッとエドワードを見て、はっきりと言う

「嫌ですわ」
「……だよね……」
「お断り致します」
「そう言われると予想はしていたけど……一応これ、確認してくれる?」

 差し出されたのは、生徒会の刻印の封蝋がされた手紙。

「……わかりました。では、後で確認しておきますので」
 
 仕方なく受け取ると、エドワードはホッとしたように『ありがとう』と微笑んだ。

(……エドワードは優しくて、控え目な方だから……)

 第二王妃の子で、第二王子で、王位継承権は第二位。

(弟という事は勿論関係しているけれど、全てレオンハルトの方が勝っていて、レオンハルトを補佐するようにと教育を受けて来た方ですもの。控え目になるのは当然よね)

「じゃあ、これで。ヴィクトリア嬢も、話の途中に悪かったね」
「いえ、大丈夫ですわ、お気になさらず」

 笑顔で挨拶を交わし、エドワードは去って行った。


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