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第二章
幸せとは 2
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昼食を終えたリアムが『授業の時にやっていた宙返りを教えてよ!』とルークを誘い、少し離れた所で練習を始めた。
(チャンスだわ。二人きりのうちに、いろいろ話してみましょう)
エリザベートはヴィクトリアの隣りにピタリとくっつき、内緒話のように小さな声で尋ねた。
「ねえヴィヴィ、貴女はこれからどうするの?」
「どうする、とは?」
「オリバー様との婚約、このまま継続するつもりなの?」
「あたり前でしょう!」
『何を言っているの?』というようにエリザベートを見るヴィクトリア。
「婚約は、ちょっと嫌な事があったからと言って簡単に破棄できる事ではなくってよ?」
「まあ、そうかもしれないけれど……」
(オリバーは、ヴィヴィを幸せにしてくれないと思うのよね……)
「ねえ、ヴィヴィがオリバー様と婚約したのは、どういう経緯でなの?」
「わたくしは一人っ子で婿を迎えなければならなから、父はわたくしがまだ小さな頃からお相手を探していたの。それで、まあ、家格も合っているし、オリバー様は幼い頃から剣術に優れた才能をお持ちだったから父が気に入って、 わたくしもオリバー様が素敵だと思ったから了承して、何度か会って交流を深めて……10歳の時に婚約しましたの」
「そんな子供の頃に一生の事を?」
「幼くして婚約したのは、リザだって同じでしょう?」
「ああ……そういえば、そうね……」
この世界で女性の幸せは、より良い結婚にかかっていると言っても過言ではない。
(女性が個人で地位を高める方法なんて、無いに等しいのよね。結婚前は父親の、そして結婚後は夫の地位が女性の地位となるのよ)
美しい容姿に恵まれた娘には、教養と礼儀作法を身に付けさせ、良家に嫁がせれば家門の為になる。その後、夫に愛されるかどうかなんて二の次、という親もいる。
そういう世界で、いきなり男女平等や子供の権利を主張しても無駄だ。しかし、だからと言って諦めて身を任せているだけでは、幸せにはなれない。
「ヴィヴィは一人娘なのね? 侯爵様は、第二夫人や愛妾はおもちにならなかったのかしら」
「ええ。お父様はお母様に一目惚れをして、お願いしてお願いして、どうにか結婚を承諾してもらったそうなの。だから、そういう事は一切考えなかったそうよ。たとえ跡継ぎとなる男子がいなくても、わたくしに婿を迎えればいいからと言って」
「そうなのね……それならなおさらの事。ヴィヴィは愛し合っているご両親を見て育ってきたからピンとこないかもしれないけれど、結婚したら後は上手くいく、なんて妄想していたら酷い目に遭うわよ」
「妄想なんて別に……」
「では、結婚して子供が生まれたら、夫が自分と子供を大切にしてくれるって思っていない?」
そう尋ねると、ヴィクトリアは『えっ?』と首を傾げた。
「それは……当然そうでしょう?」
「当然ではないわよ。全ての男性があなたのお父様のようだと思ったら、大間違いだから!」
きっぱりと断言するエリザベート。
「オリバー様のこの間の様子を見ると、結婚後もあんな感じなのでは、と思って心配しているの」
「心配……?」
「ええ。あの方、ルチア嬢に『騎士の誓い』をたてそうじゃない?」
その言葉を聞き、ヴィクトリアは驚いたようにカッと目を見開いた。
(チャンスだわ。二人きりのうちに、いろいろ話してみましょう)
エリザベートはヴィクトリアの隣りにピタリとくっつき、内緒話のように小さな声で尋ねた。
「ねえヴィヴィ、貴女はこれからどうするの?」
「どうする、とは?」
「オリバー様との婚約、このまま継続するつもりなの?」
「あたり前でしょう!」
『何を言っているの?』というようにエリザベートを見るヴィクトリア。
「婚約は、ちょっと嫌な事があったからと言って簡単に破棄できる事ではなくってよ?」
「まあ、そうかもしれないけれど……」
(オリバーは、ヴィヴィを幸せにしてくれないと思うのよね……)
「ねえ、ヴィヴィがオリバー様と婚約したのは、どういう経緯でなの?」
「わたくしは一人っ子で婿を迎えなければならなから、父はわたくしがまだ小さな頃からお相手を探していたの。それで、まあ、家格も合っているし、オリバー様は幼い頃から剣術に優れた才能をお持ちだったから父が気に入って、 わたくしもオリバー様が素敵だと思ったから了承して、何度か会って交流を深めて……10歳の時に婚約しましたの」
「そんな子供の頃に一生の事を?」
「幼くして婚約したのは、リザだって同じでしょう?」
「ああ……そういえば、そうね……」
この世界で女性の幸せは、より良い結婚にかかっていると言っても過言ではない。
(女性が個人で地位を高める方法なんて、無いに等しいのよね。結婚前は父親の、そして結婚後は夫の地位が女性の地位となるのよ)
美しい容姿に恵まれた娘には、教養と礼儀作法を身に付けさせ、良家に嫁がせれば家門の為になる。その後、夫に愛されるかどうかなんて二の次、という親もいる。
そういう世界で、いきなり男女平等や子供の権利を主張しても無駄だ。しかし、だからと言って諦めて身を任せているだけでは、幸せにはなれない。
「ヴィヴィは一人娘なのね? 侯爵様は、第二夫人や愛妾はおもちにならなかったのかしら」
「ええ。お父様はお母様に一目惚れをして、お願いしてお願いして、どうにか結婚を承諾してもらったそうなの。だから、そういう事は一切考えなかったそうよ。たとえ跡継ぎとなる男子がいなくても、わたくしに婿を迎えればいいからと言って」
「そうなのね……それならなおさらの事。ヴィヴィは愛し合っているご両親を見て育ってきたからピンとこないかもしれないけれど、結婚したら後は上手くいく、なんて妄想していたら酷い目に遭うわよ」
「妄想なんて別に……」
「では、結婚して子供が生まれたら、夫が自分と子供を大切にしてくれるって思っていない?」
そう尋ねると、ヴィクトリアは『えっ?』と首を傾げた。
「それは……当然そうでしょう?」
「当然ではないわよ。全ての男性があなたのお父様のようだと思ったら、大間違いだから!」
きっぱりと断言するエリザベート。
「オリバー様のこの間の様子を見ると、結婚後もあんな感じなのでは、と思って心配しているの」
「心配……?」
「ええ。あの方、ルチア嬢に『騎士の誓い』をたてそうじゃない?」
その言葉を聞き、ヴィクトリアは驚いたようにカッと目を見開いた。
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