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第一章
成長期
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時は流れ、ルークを買って約3か月。
エリザベートは騎士団の訓練を見学しながら、元騎士団長で、現在教育係のカルーセンにルークの様子を聞いていた。王国のために獣人と共に戦った経験のある老騎士は、獣人について偏見がなく、理解がある。
「獣人ですから元々の身体能力も高いし、呑み込みが早いので常人が一年かける基本技術を既に習得しています。獣人にしては小さいと思ってましたが、単なる栄養不足だったんでしょうね。身長もどんどん伸びているから、更に強くなれるでしょう。なんといっても、本人に必死さがあり、努力しています」
最初出会った頃はエリザベートより低かった背は、今ではルークの方がほんの少しだが高い。
(身長が近くなってきたら、毎日背中を合わせて背比べしてたのよね。アメリアに見てもらって、わたしより高くなったって言われた時には、ものすごく喜んでたわね)
その時のルークの喜び様を思い出すと、思わず笑みがこぼれた。
「それで、いつ頃から護衛として使えるかしら」
「そうですねぇ、安全な屋敷内であればそろそろ。外出時は、単身ではまだ無理ですが複数人の中の一人としては使ってもいいかもしれませんな。しかし、行儀作法の方は全くですからなぁ。屋敷内ではまだしも、外に出すとなれば、最低限の事は学ばせなければなりません。お茶会や夜会などに出席する事になれば、それに同行する護衛として知識がなければ、お嬢様に恥をかかせることになりますからな」
「なるほど……確かにそうね……」
まあ、そんなの行かないけど、と思いつつも、いざという時の為に学ばせようと決める。
「騎士団ではどうしているの?」
「新人研修で集中的にやって、あとは時々研修するくらいですな。今年の新人研修は終わってたので、ルークは学ぶ機会がなくて」
「うーん……どうにかしてもらえる?」
「わかりました。早速明日から……ああ、明日は出かけるんでしたな」
「ええ、奴隷商から手紙が来てね。3か月経ったら、奴隷契約がきちんと機能しているか見るんですって。そんなの必要ないと思うんだけど」
「ゴーディ商会でしたな。あそこは老舗ですから、そういうケアがしっかりしているんですよ」
「なるほどね。それじゃあ、文句言わずに行ってくるわ」
「では、明日は私とルークが護衛につきましょう。外での注意点をルークに教えます」
「ありがとう、お願いするわ」
そうして奴隷商には、アメリアを含めた4人で行く事になった。
(素晴らしい……)
3か月振りに見る獣人奴隷の姿に、アーネスト・ゴーディは心の中で呟いた。
(年齢のわりに小さく、出来損ないかと思っていたが……この様子なら、普通の獣人並みには成長しそうだ。身体つきもしっかりし、筋肉もついている)
奴隷商としては、買ってもらった奴隷がどのように扱われようと口出しする事はない。しかし、大切に扱われているのは嬉しいものだ。
そもそも、購入後3か月経ったら不都合が無いか店に来て欲しいと手紙を送っても、それに応じる客は少ない。そして応じる客のほとんどが、更に強い服従を求めたり、気に入らなかったと返却を希望したり、だ。
(これなら返却もなさそうだが……)
上品にお茶を口に運ぶエリザベートを見ながら、ゴーディはにっこりと微笑んだ。
「これは、見違えました。身長も伸びたし、身体つきもしっかりしている。お嬢様、何か不都合はございませんか?」
「ええ、問題ないです」
エリザベートも笑顔で答える。
「反抗的な態度や、行動に不安を覚えるような事も?」
「ええ、全くないです」
「それは良うございました。もし従順さがたりなければ、重ねて服従の術をかける事もできますが」
「必要ないです。ルークはとても、良い子だもの」
そう言われて嬉しそうにはにかんでいる奴隷の様子に、大切にされているという事がわかる。
(借金のかたに売られたと聞いて、少々憐れに思っていたが……いい主人に恵まれたな)
「ところでお嬢様、この者には新しい衣類が必要では?」
ゴーディの言葉に、エリザベートが頷く。
「背がかなり伸びたから、一回り大きい物を用意しなきゃと思っていたんです。そうだわ、またこちらで購入させてもらおうかしら」
「エ、エリザベート様、大丈夫です! 前にいただいた物がまだ沢山」
「ええ、そうね。でも、動き辛くて剣の訓練に支障が出ては困るもの。動きやすい物を選んできなさい」
「でも……」
「ルーク、あなたは強くなる事だけに集中しなさい」
「……はい! ありがとうございます、エリザベート様」
話が決まったところで、従業員がルークと、ルークが遠慮しないでちゃんと選べるようにと同行させたアメリアを別室に案内していった。
「……さてと……ゴーディさん、前回お願いした事を、迅速に実行していただいてとても助かりました。ありがとうございます」
カルーセンが残っているので、話をぼかして礼を言ったが、ゴーディは心得たもので『当然の事です』と微笑んだ。
「お嬢様とは、今後も良いお付き合いをさせていただきたいと思っておりますので」
「ええ、わたくしもそう思っております」
(奴隷はもう買わないだろうけど、こういうツテは大切に持っておいた方がいいわよね)
そうしてその後は、狼族のルークは運動能力の他に聴覚と臭覚が鋭く、180~200センチくらいまで成長するだろうという事や、他にも猫族や兎族等がいる事を教えてもらっているうちに、服を選び終えた二人が戻って来て、一行はゴーディ商会を後にした。
エリザベートは騎士団の訓練を見学しながら、元騎士団長で、現在教育係のカルーセンにルークの様子を聞いていた。王国のために獣人と共に戦った経験のある老騎士は、獣人について偏見がなく、理解がある。
「獣人ですから元々の身体能力も高いし、呑み込みが早いので常人が一年かける基本技術を既に習得しています。獣人にしては小さいと思ってましたが、単なる栄養不足だったんでしょうね。身長もどんどん伸びているから、更に強くなれるでしょう。なんといっても、本人に必死さがあり、努力しています」
最初出会った頃はエリザベートより低かった背は、今ではルークの方がほんの少しだが高い。
(身長が近くなってきたら、毎日背中を合わせて背比べしてたのよね。アメリアに見てもらって、わたしより高くなったって言われた時には、ものすごく喜んでたわね)
その時のルークの喜び様を思い出すと、思わず笑みがこぼれた。
「それで、いつ頃から護衛として使えるかしら」
「そうですねぇ、安全な屋敷内であればそろそろ。外出時は、単身ではまだ無理ですが複数人の中の一人としては使ってもいいかもしれませんな。しかし、行儀作法の方は全くですからなぁ。屋敷内ではまだしも、外に出すとなれば、最低限の事は学ばせなければなりません。お茶会や夜会などに出席する事になれば、それに同行する護衛として知識がなければ、お嬢様に恥をかかせることになりますからな」
「なるほど……確かにそうね……」
まあ、そんなの行かないけど、と思いつつも、いざという時の為に学ばせようと決める。
「騎士団ではどうしているの?」
「新人研修で集中的にやって、あとは時々研修するくらいですな。今年の新人研修は終わってたので、ルークは学ぶ機会がなくて」
「うーん……どうにかしてもらえる?」
「わかりました。早速明日から……ああ、明日は出かけるんでしたな」
「ええ、奴隷商から手紙が来てね。3か月経ったら、奴隷契約がきちんと機能しているか見るんですって。そんなの必要ないと思うんだけど」
「ゴーディ商会でしたな。あそこは老舗ですから、そういうケアがしっかりしているんですよ」
「なるほどね。それじゃあ、文句言わずに行ってくるわ」
「では、明日は私とルークが護衛につきましょう。外での注意点をルークに教えます」
「ありがとう、お願いするわ」
そうして奴隷商には、アメリアを含めた4人で行く事になった。
(素晴らしい……)
3か月振りに見る獣人奴隷の姿に、アーネスト・ゴーディは心の中で呟いた。
(年齢のわりに小さく、出来損ないかと思っていたが……この様子なら、普通の獣人並みには成長しそうだ。身体つきもしっかりし、筋肉もついている)
奴隷商としては、買ってもらった奴隷がどのように扱われようと口出しする事はない。しかし、大切に扱われているのは嬉しいものだ。
そもそも、購入後3か月経ったら不都合が無いか店に来て欲しいと手紙を送っても、それに応じる客は少ない。そして応じる客のほとんどが、更に強い服従を求めたり、気に入らなかったと返却を希望したり、だ。
(これなら返却もなさそうだが……)
上品にお茶を口に運ぶエリザベートを見ながら、ゴーディはにっこりと微笑んだ。
「これは、見違えました。身長も伸びたし、身体つきもしっかりしている。お嬢様、何か不都合はございませんか?」
「ええ、問題ないです」
エリザベートも笑顔で答える。
「反抗的な態度や、行動に不安を覚えるような事も?」
「ええ、全くないです」
「それは良うございました。もし従順さがたりなければ、重ねて服従の術をかける事もできますが」
「必要ないです。ルークはとても、良い子だもの」
そう言われて嬉しそうにはにかんでいる奴隷の様子に、大切にされているという事がわかる。
(借金のかたに売られたと聞いて、少々憐れに思っていたが……いい主人に恵まれたな)
「ところでお嬢様、この者には新しい衣類が必要では?」
ゴーディの言葉に、エリザベートが頷く。
「背がかなり伸びたから、一回り大きい物を用意しなきゃと思っていたんです。そうだわ、またこちらで購入させてもらおうかしら」
「エ、エリザベート様、大丈夫です! 前にいただいた物がまだ沢山」
「ええ、そうね。でも、動き辛くて剣の訓練に支障が出ては困るもの。動きやすい物を選んできなさい」
「でも……」
「ルーク、あなたは強くなる事だけに集中しなさい」
「……はい! ありがとうございます、エリザベート様」
話が決まったところで、従業員がルークと、ルークが遠慮しないでちゃんと選べるようにと同行させたアメリアを別室に案内していった。
「……さてと……ゴーディさん、前回お願いした事を、迅速に実行していただいてとても助かりました。ありがとうございます」
カルーセンが残っているので、話をぼかして礼を言ったが、ゴーディは心得たもので『当然の事です』と微笑んだ。
「お嬢様とは、今後も良いお付き合いをさせていただきたいと思っておりますので」
「ええ、わたくしもそう思っております」
(奴隷はもう買わないだろうけど、こういうツテは大切に持っておいた方がいいわよね)
そうしてその後は、狼族のルークは運動能力の他に聴覚と臭覚が鋭く、180~200センチくらいまで成長するだろうという事や、他にも猫族や兎族等がいる事を教えてもらっているうちに、服を選び終えた二人が戻って来て、一行はゴーディ商会を後にした。
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