悪役令嬢の無念はわたしが晴らします

カナリア55

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第一章

これからやるべきこと

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「うん、良い感じに埋まってきたわ」

 筆頭執事のフィールドに聞いて家門や名前がわかり、更に思い出した事を記入した攻略対象達の一覧を見て、エリザベートは満足げに頷いた。



【ヒロイン】

 ルチア・ローズ(ピンク) → 男爵令嬢(平民として暮らしてきた)

【攻略対象】

○レオンハルト・アレキサンド(青緑・赤紫)→ 王子兄 エリザベートと婚約中 3年生 俺様 水・炎魔法


 エドワード・アレキサンド(青緑・赤紫) → 王子弟 2年生 控え目 水・炎魔法


○オリバー・カーネリアン(オレンジ)→ 騎士課 伯爵家 3年生 力こそ全て! 炎魔法


△ディラン・フローライト(虹色)  → 大神官息子 3年生 博愛主義者 自由人 癒しの力有    


 テオール・アクア(水色)     → 宰相息子 侯爵家 2年生 頭いい 水魔法


○ダニエル・アウイナイト(青)   → 大商人息子 1年生 男爵家(一代) 明るく元気 大金持ち 


 ザカリー・オニキス(黒)     → 教師 侯爵家 厳しい 怠けると好感度ダダ下がり 



「わたしが攻略した事あるのが、レオン、オリバー、ダニエル、そしてディランは失敗、と。これ、友達がハマって、わたしにもやってほしい! って貸してくれたのよね。確かに面白かったけど、全部やり込んだわけじゃないからなぁ」

 友達にオススメされたキャラと、自分が好きな声優のキャラしかプレイしなかった事を悔やむ。

「ヒロインをやってる時はみんな優しくしてくれたけど、エリザベートにとっては敵なのよね。気を付けないと、本当に断罪されちゃう。……ルチアはレオンハルト狙いかしら。だとしたら早く婚約破棄しないと。いっその事、学園を辞める? その方が安全よね。学園に行ったって、婚約者をとられた可哀そうな令嬢と笑われたり、自殺を図ったと噂されるだけでしょう? しかも、わたしの敵となる攻略対象達がいるわけだし」

 レオンハルトルートで見たエンディング、彼の卒業式後のパーティーでのエリザベート断罪シーンを思い出す。
 パーティーで当然レオンハルトのパートナーだと思い着飾って参加したエリザベートが見たものは、レオンハルトの横に並び立つ美しいルチア。
『どういうことです?』と醜く顔を歪めるエリザベートに、レオンハルトが高らかに言う。
『この悪女め! ルチアに嫉妬して散々嫌がらせをし、挙句の果てには命を狙うとは!』
 そして、攻略対象達も一致団結してヒロインのルチアの為にエリザベートを断罪し、学園から追放するのだ。

「……うん、学園危険すぎ! ある事ない事言われて悪役令嬢に仕立て上げられちゃうわ。辞めよう辞めよう! 行ったっていい事ないもの。勉強もしたくないし……あ、でも……」

 ふと、ある事に気づく。

「そういえば、学園では魔法も学ぶのよね」

 このゲームの世界では、魔法が存在する。
 それほど頻繁に魔法シーンが出てきたわけではないが、ヒロインのピンチの時に攻略対象が魔法を使って悪党と戦ったり、デートの時に風で花びらを舞わせたり……。

「そう! わたし、水魔法が使えるのよね?」

 エリザベートが魔法を使っている場面を見た覚えはないが、毒を飲んだ身体で目を覚ました後、自分で水を出して飲んだので、水魔法が使えるのだろう。

「魔法がある世界って素敵! 後で試してみなきゃ。学園で魔法を学べないのは残念だけど、他にも学ぶ方法はあるでしょう。ふふっ、楽しみ~」

 気分が少し軽くなる。

「さて、次はわたしが自由に使えるお金だけど……凄いわね」

 執事のフィールドに教えてもらった金額は、とんでもないものだった。
 
「以前のわたしなら1年間余裕で暮らす金額を、毎月使えるっていうんだから……買えそうね、奴隷」

 この魔法が使える世界で、魔法契約によって絶対服従する奴隷を持つ事は可能だという。
 命を狙われたから、絶対に自分を裏切らず守ってくれる護衛が欲しいとアメリアに言ったら、『お勧めするわけではないのですが……』と教えてくれたのだ。

「奴隷は主人を裏切ったり、騙したりする事ができないそうです。魔法でそういう事ができないように縛る、と聞きました」
「奴隷は一般的によくいるものなの?」
「はい。わたしは下町育ちですが、身近にいました。開拓や土木工事などのきつい労働をさせられたり、兵士として使われたりしています。ですが……エリザベートお嬢様、やっぱり、お屋敷にいる騎士の方から選んだ方が良いのではないでしょうか」
「それだと、うっかりわたしを殺そうとしている暗殺者を選んでしまうかもしれないでしょう? 強さも大切だけど、絶対に裏切らないという事が一番重要なのよ。……とにかく、一度見に行ってみたいわね。奴隷はどこで買えるのかしら」
「奴隷商がいくつかあるはずですが……あの、エリザベート様が直接見に行くのですか? その……危険ではないでしょうか」
「そうねぇ……とりあえず、どこに店があるか調べてみてくれない?」
「かしこまりました」

 と、いう事で、現在アメリアの報告待ちだが、

「……やっぱり、自分で見て決めたいのよね。だって、護衛だからずっと一緒にるわけでしょう? そうなったら、いくら契約で絶対服従とはいえ、あまりにも恐い人だと嫌だし。……さーて、忙しくなってきたわ」

 やるべきことが具体的に見えてきて、エリザベートは満足気に微笑んだ。

 
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