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第一章
乙女ゲームに転生?
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『王立クリスタル学園~宝石の煌めきのような恋をして~』
それは、漫画化、アニメ化もされた人気乙女ゲームである。
主人公は、ルチア・ローズ。平民として暮らしていたが、実は男爵令嬢。
男爵家のお坊ちゃまと恋仲になったメイドが身ごもり、お坊ちゃまに迷惑をかけたくないと失踪。一人で産んで育てていたが、その母が亡くなり男爵家に引き取られた。
そしてルチアは王立クリスタル学園に通い、そこで立派な淑女となる為勉学に励むのだ。
「……ていうか、そこで出会う男性と素敵な恋をするために頑張るのよね。で、それを邪魔するのがわたし、エリザベート・スピネル公爵令嬢……」
赤い巻き髪をモフモフと握りながら、エリザベートはため息をついた
「信じられない事だけど、現実逃避している時間は無いわ」
体調が悪かったときはウエーブがかっているだけだった赤く輝く髪は、体調が良くなるのと共に、悪役令嬢の象徴とも言える縦ロールになった。バネのようにクルックルである。
「このままじゃわたし、断罪されたり追放されたり処刑されたり……ううっ、嫌すぎる……」
長い眠りから目覚めた翌日。
安静の為にベッドにいるよう医師に指示されているエリザベートは、上半身を起こし、サイドテーブルの上にある
呼び鈴を鳴らした。
少しすると、いつもの侍女がやって来る。
「お呼びでございますか、エリザベートお嬢様」
「ええ。ちょっと書き物をしたいから用意して欲しいんだけど」
「ですが、お医者様が安静にと……」
「ベッドからは降りないわ。だからあなた……えーと、名前は何といったかしら?」
「わ、わたしですか? あのっ、アメリアでございます。エリザベートお嬢様の専属侍女でございます」
「そうそう、アメリア、覚えたわ……悪いわね、名前を忘れるなんて」
「とんでもないことでございます! お嬢様に名前を呼んでいただけるなんて……」
おそらく少し年上であろう、アメリアは感動で涙ぐんでいる。
(そういえば、悪役令嬢だったわね。キツイ性格で人を見下していて使用人をいじめて……そのイメージも、徐々に修正していかないと)
フーッとため息を付き、エリザベートはもう一度指示を出す。
「食事の時に使っているテーブルを用意して。あと、紙とペンを……何かこう、表紙のついた日記帳のような物とか無いかしら」
「それでしたら、執事さんに頼んでもらって参りますね」
名前を呼んでもらって感激したアメリアは、言われた通りにテキパキとベッドの上に簡易テーブルとペンとインク壺を用意し、一度部屋を出てすぐさま布張り表紙のノートを持って戻って来た。
「ありがと、う……」
礼を述べただけで涙ぐむアメリアに『どれだけエリザベートってキツかったのよ』と頭を抱える。
(少し一人になりたいな。でも、聞きたい事も出てきそうだし……そうだ)
「アメリア、お茶を持ってきて」
「はい、かしこまりました」
アメリアが部屋を出てから、気持ちを新たにペンを持ち、ノートを開いた。
「よしっ! わたしの人生がかかってるんだから、頑張って思い出すわよ! えーと、まずは攻略対象よね。宝石をモチーフにしたキャラクターデザインだったのよね。それぞれのカラーがあって、髪と目がその色で……」
ゲームの画面の中では区別しやすくて良かったが、実際にその色だと結構違和感がありそうだ。
ちなみにエリザベートの担当カラーは赤だ。
周りの人物は黒や茶色の髪色、瞳の色がほとんどだが、エリザベートの髪も瞳も、ギョッとするほど鮮やかな赤なので、たぶん他の主要人物達もそうなのだろう。
「う~ん……ゲームしたのって、だいぶ前だからなぁ……」
思い出せる事から書いていく。
【ヒロイン】
ルチア・ローズ(ピンク) → 男爵令嬢(平民として暮らしてきた)
【攻略対象】
レオンハルト・アレキサンド(青緑・赤紫)→ 王子兄 エリザベートと婚約中
エドワード・アレキサンド(青緑・赤紫) → 王子弟
オリバー・? (オレンジ) → 騎士課
ディラン・? (虹色) → 大神官息子
?・アクア (水色) → 宰相息子
ダニエル・? (青) → 大商人息子
?・オニキス(黒) → 教師
「ルチア・ローズが入学してから1年後がゴールなんだよね。エリザベートは1学年上で……え、ちょっと待って、今っていつなんだろう? わたし今何歳?」
そこにちょうど良くアメリアがやって来て、お茶を用意する。
「わたし、今何歳なのか、しら?」
良い香りのお茶を一口飲んでから、一応、お嬢様っぽい言葉遣いを心がけながら尋ねてみる。
「16歳でいらっしゃいます」
「じゃあ、クリスタル学園の2年生?」
「はい、さようでございます」
「2年生になってどれくらいたったのかしら?」
「3か月ほどでございます」
(なるほど、じゃあまだ大丈夫……なの? いや待って? そんな早々で、どうしてエリザベートが死にそうになってるの? 毒は誰に盛られたわけ? ……なにか、おかしい……)
嫌な予感をもちながら、アメリアを見る。
「ねえアメリア、わたし、誰に殺されそうになったの?」
「そ、れは……」
アメリアの表情が曇る。
「犯人はまだ見つかっていないの?」
「それが……今回の事は、お嬢様がご自身で服毒自殺を図ったという事に、なっております……」
言いづらそうに話すアメリアの言葉に『ん? どういう事?』としばし考え……
「はあっ? そんなわけないでしょーがーっ!!」
エリザベートの絶叫が、部屋に響き渡った。
それは、漫画化、アニメ化もされた人気乙女ゲームである。
主人公は、ルチア・ローズ。平民として暮らしていたが、実は男爵令嬢。
男爵家のお坊ちゃまと恋仲になったメイドが身ごもり、お坊ちゃまに迷惑をかけたくないと失踪。一人で産んで育てていたが、その母が亡くなり男爵家に引き取られた。
そしてルチアは王立クリスタル学園に通い、そこで立派な淑女となる為勉学に励むのだ。
「……ていうか、そこで出会う男性と素敵な恋をするために頑張るのよね。で、それを邪魔するのがわたし、エリザベート・スピネル公爵令嬢……」
赤い巻き髪をモフモフと握りながら、エリザベートはため息をついた
「信じられない事だけど、現実逃避している時間は無いわ」
体調が悪かったときはウエーブがかっているだけだった赤く輝く髪は、体調が良くなるのと共に、悪役令嬢の象徴とも言える縦ロールになった。バネのようにクルックルである。
「このままじゃわたし、断罪されたり追放されたり処刑されたり……ううっ、嫌すぎる……」
長い眠りから目覚めた翌日。
安静の為にベッドにいるよう医師に指示されているエリザベートは、上半身を起こし、サイドテーブルの上にある
呼び鈴を鳴らした。
少しすると、いつもの侍女がやって来る。
「お呼びでございますか、エリザベートお嬢様」
「ええ。ちょっと書き物をしたいから用意して欲しいんだけど」
「ですが、お医者様が安静にと……」
「ベッドからは降りないわ。だからあなた……えーと、名前は何といったかしら?」
「わ、わたしですか? あのっ、アメリアでございます。エリザベートお嬢様の専属侍女でございます」
「そうそう、アメリア、覚えたわ……悪いわね、名前を忘れるなんて」
「とんでもないことでございます! お嬢様に名前を呼んでいただけるなんて……」
おそらく少し年上であろう、アメリアは感動で涙ぐんでいる。
(そういえば、悪役令嬢だったわね。キツイ性格で人を見下していて使用人をいじめて……そのイメージも、徐々に修正していかないと)
フーッとため息を付き、エリザベートはもう一度指示を出す。
「食事の時に使っているテーブルを用意して。あと、紙とペンを……何かこう、表紙のついた日記帳のような物とか無いかしら」
「それでしたら、執事さんに頼んでもらって参りますね」
名前を呼んでもらって感激したアメリアは、言われた通りにテキパキとベッドの上に簡易テーブルとペンとインク壺を用意し、一度部屋を出てすぐさま布張り表紙のノートを持って戻って来た。
「ありがと、う……」
礼を述べただけで涙ぐむアメリアに『どれだけエリザベートってキツかったのよ』と頭を抱える。
(少し一人になりたいな。でも、聞きたい事も出てきそうだし……そうだ)
「アメリア、お茶を持ってきて」
「はい、かしこまりました」
アメリアが部屋を出てから、気持ちを新たにペンを持ち、ノートを開いた。
「よしっ! わたしの人生がかかってるんだから、頑張って思い出すわよ! えーと、まずは攻略対象よね。宝石をモチーフにしたキャラクターデザインだったのよね。それぞれのカラーがあって、髪と目がその色で……」
ゲームの画面の中では区別しやすくて良かったが、実際にその色だと結構違和感がありそうだ。
ちなみにエリザベートの担当カラーは赤だ。
周りの人物は黒や茶色の髪色、瞳の色がほとんどだが、エリザベートの髪も瞳も、ギョッとするほど鮮やかな赤なので、たぶん他の主要人物達もそうなのだろう。
「う~ん……ゲームしたのって、だいぶ前だからなぁ……」
思い出せる事から書いていく。
【ヒロイン】
ルチア・ローズ(ピンク) → 男爵令嬢(平民として暮らしてきた)
【攻略対象】
レオンハルト・アレキサンド(青緑・赤紫)→ 王子兄 エリザベートと婚約中
エドワード・アレキサンド(青緑・赤紫) → 王子弟
オリバー・? (オレンジ) → 騎士課
ディラン・? (虹色) → 大神官息子
?・アクア (水色) → 宰相息子
ダニエル・? (青) → 大商人息子
?・オニキス(黒) → 教師
「ルチア・ローズが入学してから1年後がゴールなんだよね。エリザベートは1学年上で……え、ちょっと待って、今っていつなんだろう? わたし今何歳?」
そこにちょうど良くアメリアがやって来て、お茶を用意する。
「わたし、今何歳なのか、しら?」
良い香りのお茶を一口飲んでから、一応、お嬢様っぽい言葉遣いを心がけながら尋ねてみる。
「16歳でいらっしゃいます」
「じゃあ、クリスタル学園の2年生?」
「はい、さようでございます」
「2年生になってどれくらいたったのかしら?」
「3か月ほどでございます」
(なるほど、じゃあまだ大丈夫……なの? いや待って? そんな早々で、どうしてエリザベートが死にそうになってるの? 毒は誰に盛られたわけ? ……なにか、おかしい……)
嫌な予感をもちながら、アメリアを見る。
「ねえアメリア、わたし、誰に殺されそうになったの?」
「そ、れは……」
アメリアの表情が曇る。
「犯人はまだ見つかっていないの?」
「それが……今回の事は、お嬢様がご自身で服毒自殺を図ったという事に、なっております……」
言いづらそうに話すアメリアの言葉に『ん? どういう事?』としばし考え……
「はあっ? そんなわけないでしょーがーっ!!」
エリザベートの絶叫が、部屋に響き渡った。
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