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困惑
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二人は、ピッタリとくっついたまま、しばらく動けずにいた。
明弘はなかなか呼吸が整わなかったし、そんな明弘に対してどうすればいいのかわからない紫音は黙って大人しくしていた。
「……ごめんね、しーちゃん」
ようやく話しかけられ、紫音はホッとしながら『ううん』と言った。
「びっくり、したけど……大丈夫」
「手ぇ、掴んだままでごめん。タオルも、汚しちゃって……このタオル、もらっちゃっていい?」
「うん、いいよいいよ」
手を離された紫音は、気まずさを隠し、いつもと変わりないような口調で話して立ち上がった。
「そうだ、ビニール袋あげるね」
「ありがとう……あの……トイレ、借りるね」
「う、うん、どうぞどうぞ」
明弘がトイレに入ったのを確認し、紫音は大きく息を吐いた。
『どうしよう……こんな事になっちゃうなんて……』
明弘は、紫音の事を昔から好きだと言っていた。
『アッキーは性格いいし、カッコいいし、好きだと言われるのは嬉しいよ? でも、わたしの方が5歳も年上だし、美人でもないし、スタイルもいいわけじゃないし……アッキーの横に並んで、釣り合わないでしょう』
「……しーちゃん」
「うわっ! アッキー!」
考えこんでいて、明弘がトイレから戻った事に気づいていなかった紫音は、突然近くで声をかけられビクッとして振り返った。
「俺、帰るね」
「え? あ、うん……あの! お茶でも飲んでく?」
「いや、そろそろ帰らないと……それに、このままここにいたら、なんかしでかしそうで……」
赤面しながらそう言う明弘に、紫音も赤くなってしまう。
「えっと……じゃあこれ、ビニール袋」
「うん、ありがと。……あの……明日、また来ていい? ちゃんと、話したいし……その……」
「う、うん、わかった。じゃあ、明日また」
「うん、またね、おやすみ!」
バッグを掴み、明弘はバタバタと帰って行った。
「……どうしよう……」
一人になった部屋の中、思わず声に出して呟いてしまう。
かつて、弟のように思っていた可愛いい少年が、素敵な大人になって現れた。しかも、
「わたしの事好きだって言うなんて……」
嬉しいが『なぜ?』と思う。
『これは、あれか。ヒヨコが最初に見たものを親と思うように、最初に見た優しくしてくれる女性を好きになってしまったってヤツ……』
いつも空腹で孤独だった時に、お腹いっぱい食べさせてもらって、いろいろ心配してもらったのは本当に嬉しかっただろう。好きになってもおかしくない。
『でも、もう何年も前だよ? あんなにカッコ良くなったのに、わざわざわたしなんかにこだわらなくったって……』
自分の気持ちも、よくわからない。
『だって、今まで弟のようにしか思ってなかったから……。今は……うん、良いよね。性格いいし、優しいし、しかもかっこいいし。この間一緒にでかけた時は楽しかったし、ちょっと優越感もあったんだよね。いや、でもなぁ……そんなんで簡単に付き合うってわけにはいかないよね、やっぱり……ああ、どうしよう、明日来たら、返事しないといけないんだよね? 返事次第では? そのまま? 今日の続き? いやいやいやいや!』
ブンブンと頭を振り、紫音はハーッと息を吐いた。
「とりあえず、寝るか」
考えてもどうしたらいいかわからない問題に、頭が痛くなってきたような気がした紫音は、考えるのを一旦止める事にした。
明弘はなかなか呼吸が整わなかったし、そんな明弘に対してどうすればいいのかわからない紫音は黙って大人しくしていた。
「……ごめんね、しーちゃん」
ようやく話しかけられ、紫音はホッとしながら『ううん』と言った。
「びっくり、したけど……大丈夫」
「手ぇ、掴んだままでごめん。タオルも、汚しちゃって……このタオル、もらっちゃっていい?」
「うん、いいよいいよ」
手を離された紫音は、気まずさを隠し、いつもと変わりないような口調で話して立ち上がった。
「そうだ、ビニール袋あげるね」
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『アッキーは性格いいし、カッコいいし、好きだと言われるのは嬉しいよ? でも、わたしの方が5歳も年上だし、美人でもないし、スタイルもいいわけじゃないし……アッキーの横に並んで、釣り合わないでしょう』
「……しーちゃん」
「うわっ! アッキー!」
考えこんでいて、明弘がトイレから戻った事に気づいていなかった紫音は、突然近くで声をかけられビクッとして振り返った。
「俺、帰るね」
「え? あ、うん……あの! お茶でも飲んでく?」
「いや、そろそろ帰らないと……それに、このままここにいたら、なんかしでかしそうで……」
赤面しながらそう言う明弘に、紫音も赤くなってしまう。
「えっと……じゃあこれ、ビニール袋」
「うん、ありがと。……あの……明日、また来ていい? ちゃんと、話したいし……その……」
「う、うん、わかった。じゃあ、明日また」
「うん、またね、おやすみ!」
バッグを掴み、明弘はバタバタと帰って行った。
「……どうしよう……」
一人になった部屋の中、思わず声に出して呟いてしまう。
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嬉しいが『なぜ?』と思う。
『これは、あれか。ヒヨコが最初に見たものを親と思うように、最初に見た優しくしてくれる女性を好きになってしまったってヤツ……』
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『でも、もう何年も前だよ? あんなにカッコ良くなったのに、わざわざわたしなんかにこだわらなくったって……』
自分の気持ちも、よくわからない。
『だって、今まで弟のようにしか思ってなかったから……。今は……うん、良いよね。性格いいし、優しいし、しかもかっこいいし。この間一緒にでかけた時は楽しかったし、ちょっと優越感もあったんだよね。いや、でもなぁ……そんなんで簡単に付き合うってわけにはいかないよね、やっぱり……ああ、どうしよう、明日来たら、返事しないといけないんだよね? 返事次第では? そのまま? 今日の続き? いやいやいやいや!』
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