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クレープ祭

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 バナナ、キウイ、プリン、チョコレートソース、イチゴジャム、レタス、キュウリ、ツナマヨ、ハム、ウインナー、チーズ、茹で卵のスライス、が並ぶテーブルの中央にホットプレートが置かれ、紫音がクレープ生地をどんどん焼き上げていく。
 そしてその横で、一生懸命生クリームを泡立てている明弘。

「すげー! クレープ祭じゃん」

 部屋にやってきた和也は、その光景を見て嬉しそうに声を上げた。

「そうよー。あんたも手伝いなさい。アッキーと代わってあげて」
「わかった。あ、これ、具にしたいから買って来た」
「えー? もう具はいっぱい……あ、湯煎するミートボール」
「絶対美味いと思わない?」
「思う、採用!」
「やった。じゃあアッキー、代わるよ」
「ありがと。なんか俺、下手くそみたいで……全然固くならないんだけど……」
「これはさー、上から叩くようにするといいんだよ」

 ガシャガシャ大きな音を立てながら、和也はあっという間に生クリームを丁度いい具合に泡立てた。
 クレープも全て焼き終わり、ホットプレートをどかしながら紫音が言った。

「さ、じゃあ食べましょうか。飲み物は何がいいかな?」
「もう夜になるし、アルコールにしようぜ! 何あるー?」
「アッキーが色々持って来てくれるから、なんでもあるよ。クラフトビールだのクラフトチューハイだの、ワインは赤白ロゼ、スパークリングもあるよ。最初、これとかいいんじゃない?」
「あ、いいね!」
 
 紫音からボトルを受け取り、開けようとしている明弘の横で、和也は『どれどれ~』とスマートフォンで検索をし、

「うわっ! アッキー、ストップ! 駄目だこれ、めっちゃ高いヤツ! こんな気軽に飲んじゃ駄目なヤツだ」
「えー? 大丈夫だよ、また持ってくるからさ」
「いやいやいや! お前、これの値段知ってるのかよ」
「知らないけど、まとめてもらったから、まだ家に何本もあるよ?」
「お前、本当に普通の会社でバイトしてんの? ほら、これ見ろよ」

 和也にスマートフォンの画面を見せられ、明弘も『うっ』と小さく呻いた。

「……だって、軽く『持ってけ』って言われて……もしかして、似てるけど違うシャンパンだとか……」
「でも見ろよホラ、同じだろ?」
「うーん……」
「まあ、今日は止めとこうぜ。なんか、めでたい時にでも飲もう」
「めでたいって?」
「誕生日とか、クリスマスとか、就職決まったらとか?」
「うー……まあ、後でまた詳しい事調べてみよう? とりあえず今は別の……」

 紫音は値段は見ていないが、二人に任せる事にする。

「じゃあ、またしまっておくね。それじゃあ……あ、これはどう? シードルだって」
「おっ、良さそうじゃん。それにしようぜ」

 ようやく飲み物も決まり、クレープ祭がスタートした。

「わたしは最初、甘いのから。チョコバナナクレープ作ろーっと」
「俺は買って来たミートボールにするぜー。レタス敷いて、マヨかけて、茹で玉子も入れよう。アッキー何にすんの?」
「俺もしーちゃんと同じチョコバナナにする。まずは王道から」

 三人はせっせと自分好みのクレープを作り、食べ、シードルを飲んだ。


 
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