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第五章 勇敢なる者
106.先天性失翼症
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赤い空広がる魔劫界。アポリオン家で、当主の男が妻に告げる。
「出来損ないの愚息が生きていた」
「なんですって?」
彼女はアルカの母。息子は追放されて野垂れ死に、下級悪魔の餌になっていたと思っていた。生きていたことを聞いて、沸々といらだちが起こる。
「翼も生えないだめ息子が生きていたなんて。直接手を下すべきだったわ」
「私の顔を焼いた愚息を、このまま野放しにはできない。近々、仕掛けるとしよう」
当主の男は目元を隠す金の仮面を光らせて。彼女と共に屋敷の奥へ消えた。
*******
アルカがやって来てから一週間が経つ。笑顔を取り戻した少年は、ラインに少しずつ心を開いていった。少年はまだ怖くて外に出られないが、
「ラインお兄ちゃん、絵本読んでほしいの」
室内でできることをよく頼んでいた。
アポリオン家にいた頃から本を読むのが好きで、様々な知識を得ていくのが楽しかった。
魔劫界には学校がない。人型悪魔は、親兄弟や本から知識を身につけていくのがならわしだ。
アポリオン家はたくさんの本があり、アルカも他の子ども達も進んで本を読み漁っていた。子ども向けの本から難しい術式の本など備わっていて、各自好きなものを読んでいる。
アルカは中でも絵本や空想物語が好きで、よく子ども向けの物語を読んでいた。そんなアルカのために、ラインは図書館からたくさんの本を借りてきていた。
「あぁ。読もうか」
リビングのソファーに座って、ラインは本を開く。アルカは隣から覗き込んで物語に入り込む。ラインの朗読が始まると、耳に意識を集中した。
物語も終わりに差し掛かり。ラインは最後の文章を読み上げる。
「……こうして、勇者バリエンテは人々を救ったのでした。終わり」
最後の奥付けをめくって本を閉じる。アルカは袖と袖を叩いて拍手した。
「勇者バリエンテ、すごい」
「あぁ、すごいな。困難が降りかかっても、仲間と共に、前に突き進んでいく勇気は感心する」
「ねぇねぇ、バリエンテってどういう意味なの?」
「バリエンテは確か、……「勇敢なるもの」という意味だ」
「勇敢なるもの……」
アルカは少し考えて、ぱっと笑顔になる。
「ボクも、勇者バリエンテみたいに、勇敢になりたい!」
「そうだな。なれるさ、お前も」
ラインが頭を撫でる。アルカは嬉しくてにこにこ笑う。
「ボク、バリエンテって名前にする」
「どうした、急に」
「ボクも勇敢なるものになるんだ。いつも怖くて、泣いちゃうけど。でも、勇者バリエンテみたいに、なる!」
「じゃあ、お前の名前は今日からアルカ・A・バリエンテだな」
「アルカ・A・バリエンテ」
「あぁ。Aはアポリオンだ。バリエンテと名乗るならこうじゃないかと、な」
アルカは何度も名前を繰り返す。またまた嬉しくなって満面の笑みを浮かべた。
「ありがとお兄ちゃん!」
「どういたしまして、だ」
アルカの反応が可愛くて、つられてラインも微笑む。少年の頭を撫でると嬉しそうな声を出して笑った。
「アルカ・A・バリエンテ、今日から、ボクも勇敢になる!」
「はは、頑張れよ」
本から名前をもらったアルカは、勇敢になれるだろうか。それでも少年は変わりたいと決意する。大好きな兄のために。
*******
その日の昼。リビングで、ラインはアルカに術式を教えていた。
「いいか、人間の姿に化ける術式だ。これが使えれば、外に出ても見た目が人間と同じだから、攻撃されることはまずない。感じ取れる魔力もダミーにするから、天使に気づかれにくくなる」
「人間の姿に、なる」
「魔劫界の常識は、地上界エルデラートで通用しないと思った方がいい。お前に悪魔の尻尾とツノが生えて、耳が尖っていると、どうしても警戒する人間がいる」
アルカはパン屋での出来事を思い出す。おばさんがツノと尻尾を見てダーカーと呼んだことを。
「……ダーカーって、呼ばれた」
「そうだな。リリスとの戦いが起きて以来、ダーカーの存在がたくさんの人に知れ渡るようになった。だから、お前の姿を見て警戒してしまうのさ」
「人間のすがたになったら、ボクも、攻撃されない?」
「あぁ。術式が解けない限りは大丈夫だ。さ、やろう」
「はい!」
魔力を高めて、ラインから教えてもらった術式を使う。アルカを桃色の光が取り巻いて、小さなツノ、長い尻尾が薄く消えてなくなる。尖った耳は丸い耳となり、人間と同じ姿に変貌した。
「……ほわ、ツノと尻尾がない!」
「成功したようだな。元に戻るときも、同じように意識して戻ればいい。じゃあ、フェイラストの診療所に行こうか」
「う、うん!」
外に出るのが緊張する。セレスに一言声をかけて、ラインとアルカは家を出た。階段を下りて、人気のない噴水公園へ。転移を起動して、ルレインシティへと向かった。
機械都市ルレインシティ。
固定転移紋から出てきた二人は、フェイラストの診療所を目指す。アルカは落ち着きなく辺りを見回している。初めての景色に驚きと好奇心がわいてきた。
「きかいのまち……!」
絵本で見た景色に興奮が隠せない。空に車の走るチューブが浮き、四角い箱の形をしたビル群が立ち並ぶ。大きな中央公園を中心に円形に広がる街を進み、フェイラストの診療所に辿り着いた。
「予約していたライン・カスティーブさんですね。こちらの用紙を記入して、待合室でお待ちください」
看護スタッフに渡された紙は、現在の症状や慢性的な病気の有無を記入するシートだ。アルカに症状を聞いて記入し、全て不調はなしという結果になった。シートをスタッフに渡して椅子に座る。
「……どきどき」
「大丈夫だ。今のお前は人間にしか見えていない」
「うん。でも、やっぱりどきどきする」
「そんなにどきどきしてると、血圧測定で高い数値出そうだな」
「けつあつそくてー?」
「というのはだな……」
アルカと会話をしながら時間を潰す。何人か奥の待合室に呼ばれて移動する。数十分待って、ようやく順番が回ってきた。奥の待合室で少し待って、ついにフェイラストのいる診察室へ。
「よく来たな。アルカくんもお疲れさん」
彼は白衣を来て首に聴診器をかけている。
いつもの銃は太ももになかった。
(そういえば、診療所で医者の仕事をしているフェイラストを見るのは初めてだ)
ラインはそう考えながら、アルカを椅子に座らせる。
「じゃあ、診ていくぞ。人間になる術式解いてくれるか?」
「えっ! だって、解いたらボク、みんなに攻撃されちゃう……!」
アルカの恐怖を吹き飛ばすように、フェイラストが笑う。
「心配するなって。スタッフにも伝えてあるから驚かねぇよ。それに、診察したときの魔力数値とか変わっちまうから、素のままで頼むぜ」
「……攻撃、しない?」
「しないぜ」
「わ、わかった」
アルカは怖々としながらも、術式を解除して悪魔体に戻る。長い黒の尻尾がにゅるりと腰から生えて、頭に小さなツノが生える。最後に耳が尖って、元の悪魔の姿に戻った。
「ありがとな、アルカくん。さて、と。診察していくぞ」
アルカの検査が始まった。目にライトを当てたり、口腔を観察したり。聴診器で心臓の音を聞こうとすると、アルカは傷跡を見られると思ってふるふると首を横に振った。
「……ん」
「嫌かぁ。大丈夫だ。心臓の音を聞くだけだ。病気があるかないかの確認だ」
「病気が、あるか?」
「そうだぜ。病気が「あるか」だと困るだろ?」
「病気があるかだと、困る」
「よし、じゃあ聞かせてもらうぜ」
アルカは大きなファスナーを開けて、黒インナーを捲り上げた。子どもの体にあるべきではない傷跡がたくさん残っていた。フェイラストはあえて話題に触れないで、真剣に心音を聞く。
「ふーん、ふむふむ」
「病気「あるか」だった?」
聴診器を外してフェイラストがにかっと笑う。
「大丈夫だ。心配しなくていい。もう隠していいぞ」
「病気「ないか」でよかった!」
むふふ、とアルカが笑う。服を整える。隣に立つラインに顔を向けると、片眉を上げて「なんだ?」という仕草をしてきた。
「病気ないか、だって」
「それはよかったな。あとは、お前の翼が生えない理由を調べてもらえ」
「うん!」
「それは血液検査しねぇと分からねぇな。アルカくん、無理を承知で頼む。腕を出してくれ」
「ほえ?」
訳も分からずアルカは袖を捲り腕を出す。細い色白の腕は、ラインが力強く握り締めたら簡単に折れてしまいそうなほど細かった。
アルカの腕に消毒液を塗る。スタッフが用意したものを見て、アルカは尻尾をピーンと立たせた。
「お注射、やー!」
首を大きく横に振って注射を嫌がる。フェイラストは両手を合わせて懇願した。
「たーのーむ! アルカくん、頼む! ちょっとちくっとするだけだから!」
「ちくちく、やー!」
「最新の医療器具だから、ちくっとしないかもだぞ。アルカ、お前の翼が生えない理由が分かるかもしれないんだ。おとなしく注射されろ」
「ラインお兄ちゃんまでー!」
注射する・しないの攻防をたっぷり三分はおこなって、ついにアルカは涙目になりながら注射を受けることになった。
「すまねぇなぁ。医者としてやらなきゃいけないことでよぉ」
「フェイ先生、やー!」
「オレのことまで嫌いにならないでくれぇ! おっさんいい歳して泣いちゃうぞぉ!」
スタッフにも笑われながら、賑やかに血液採取がおこなわれた。
かくして、アルカの診察は終了し、良好のため薬も無く、診察料を払って終了となった。診察室でアルカが人間の姿に変身して、フェイラストの診療所を出る。
アルカが膨れている。よほど注射が嫌いなようだ。ラインと手を繋いでルレインの街を歩く。
「約束は約束だ。ルレイン名物のスパナ焼きを買って帰ろう」
「病気は「ないか」って言ってたのにぃ」
「もしも「あるか」だとお前も困るだろ?」
「ぶーぶー!」
袖の中の腕には絆創膏が貼られていた。血液採取されたため、アルカにふらつきやめまいが生じていないか心配だったが、どうやら杞憂に終わりそうだ。ルレインシティの土産屋に寄って、注射成功のご褒美にスパナ焼きを購入する。
「ほんとにスパナの形をしてるんだな」
「すぱな、って、なぁに?」
「先の方にある空間にネジを挟んで、締めたり開けたりする道具のことだ。ルレインシティは彩星機関と機械に溢れてるからな。それらに関係するスパナが名物になったんだろう」
「はむっ」
「既に食ってたか。やれやれ」
スパナ焼きは柔らかくふっくらした生地の中に、カスタードクリームやチョコクリームが詰め込まれている。地元の人で知らない人はいない名物お菓子だ。二人が食べているのはカスタードクリームのスパナ焼き。アルカの細い双葉がぴこぴこ動いた。
「あったかふかふか、クリームとろとろ」
「気に入ってくれてなによりだ。さて、帰ろう」
「はぁい!」
元気よく返事をする。アルカが楽しめるように、帰りは汽車でゆっくり移動した。
*******
アルカが来て月が変わり、秋の始まりへと季節は移ろう。北に位置するフォートレスシティは、残暑も残るが期間は短い。今年も例年通りの気候だ。
「フェイラストから連絡があった。検査結果が出たから来てほしいそうだ」
「注射、やだー」
「今回はしないさ。結果を聞きにいこう」
アルカを連れて、フェイラストの待つルレインシティへ。アルカの希望で、汽車で移動することにした。チケットを買って車内に乗り込む。まもなく汽笛を鳴らして出発した。
「窓の外を見るの、楽しい」
「魔劫界に動く乗り物はないのか?」
「うん。「あるか」じゃなくて「ないか」だよ。みんな、翼で空を飛ぶから、動く乗り物はないんだ」
「そうなのか。ひとつくらいあると便利なんだが」
「作っても壊しちゃう子がいるから、長続きしないーって、おじいちゃんが言ってた」
「おじいちゃんとは?」
アルカはもじもじして上目遣いでラインを見る。
「追放されたボクを拾ってくれたひと。堕天使のおじいちゃんが守ってくれたんだ。お医者さんしててね、ボクに薬もくれたの」
「いい人だったんだな」
「ボクがいなくなって、探してるかな」
「そうかもしれないな。魔劫界に戻ったら、顔を出しに行こうか」
「うん!」
汽車は汽笛を鳴らして進む。やがてルレインシティに到着した。
円形の都市を進んでフェイラストの診療所に辿り着く。今回は母屋から入ってくれとのことで、母屋の玄関へ回る。ノックをするとフェイラスト本人が応対した。中へ入れてリビングへ。ケティスがお茶とお茶菓子を用意して待っていた。
「まぁ、適当にかけてくれ。資料持ってくる」
ラインとアルカは二人でソファーに座る。ふかふかの椅子にケティスが座り、少し遅れてフェイラストも同じ椅子に座った。
「アルカくんの血液検査の結果だ。血液型は特定不能、つまり不明だった。赤血球や白血球の数は正常。脂質も少なく心筋梗塞等の異常、糖尿の気配も無し。それはおいといて、だ」
「翼が生えない理由だな」
「どきどき……」
「ケティスと調べてみた結果」
フェイラストが眼鏡を直して眉をひそめる。
「アルカくんはコンジェニタル・ウイングロスト症……、つまり、先天性失翼症だ」
その場が静まり返る。アルカが首をかしげた。ラインが腕を組んで悩ましい顔をする。
「先天性の失翼症?」
「ラインも聞き覚えねぇよな。そりゃそうだ。これは、滅多に起きない病気だからだ」
アルカの血液検査の結果の載った資料をめくる。ラインに差し出す。受け取ってその紙面を食い入るように読む。
「……発症するのは、三世界に約一億潜在している有翼種にのみ存在する症状。特に血の濃さを優先するあまり、近親相姦を交わした者の子に多い」
「そういうことだ。アルカくん、お前さんの生まれたアポリオン家は、血の濃さが大事とか言ってたか?」
「うん。アポリオンの濃い血を残すために、パパがお兄ちゃんやお姉ちゃんと繋がるんだって、言ってた」
「そのパパさんは何者だ?」
「アポリオン家のとーしゅさまだよ」
「当主がそういう方針決めてんのか。あるいは、昔からおこなわれていたのかもしれねぇな」
「ねぇねぇ、それで、翼はどうなっちゃったの?」
難しい言葉で分からなかったアルカは、首を左右にかしげて言葉を待つ。フェイラストが姿勢を正した。
「率直に言うぜ。アルカくん、お前さんの翼は、生えてこない」
「生えて、こない」
「そうだ。生えてこない。うまれつき生えてこないんだ。先天性失翼症。それが、お前さんのかかってる症状だ」
「せんてんせー、しつよくしょー……」
口に出して言葉を噛み締める。小さな声で、何度も。
他の子には翼が生えて、自分には翼が生えない。羨ましくて、いつかかっこいい翼が生えてくると、希望を膨らませていたのに。アルカはショックを受けながらも、本当は生えてこないのではないかと予感していた。
今こうして翼が生えてこない事実を知って、心の中のわだかまりが晴れた。そして、翼に対してようやく諦めがついた。
「すまねぇ。この症状はオレも治すことはできねぇ。医者として無力で悪いと思ってる。ケティスの翼も治してやりてぇが、さっぱりなんだ」
「そうね。わたしの羽も、お父さんの力が強いからこそ残っている程度だもの。空は飛べないけどね」
「お姉さんも、翼がないの?」
「あるけど飛べないの。小さすぎて、はばたいても魔力の波を捉えきれない。だから、飛べない」
「翼があっても、飛べないひともいる……」
「アルカくん、あなたには翼がなくても素敵な力があるそうじゃない。それを生かしていくといいわ」
「うん、そうする!」
「……泣くかと思ったが、意外な方向にいったな」
「翼がなくても、ラインお兄ちゃんがいれば、どこにでも行ける気がするの。だいじょーぶ。それにね、ボクには自慢の尻尾があるもんっ!」
悪魔体に戻ったアルカが長い尻尾を撫でる。にこにこして明るく振る舞った。
気づかれないように、フェイラストが魔眼でアルカを視る。
闇色の力。
全てを滅ぼすための力。
内から桃色に光る明るい力。
ないまぜになりながら、絶妙なバランスで保たれていた。
「……アポリオン、ねぇ」
調べる必要がある。フェイラストは魔眼を切って、ラインから資料を返してもらった。ラインの膝上に乗って楽しそうなアルカを見て、少し悲しそうにフェイラストは見つめる。
(魔劫界の資料が豊富にあるところ……、砂漠の国オアーゼで調べてくるか)
静かにフェイラストはこれからの行動を決める。ケティスに声をかけた。
「じゃ、オレは砂漠の国オアーゼに行く。一緒に来てくれ、ケティ」
「いいわ。たまにはわたしも遠くに行きたいもの」
「よっし、決まりだな。支度してオアーゼに向かおう」
立ち上がって行動を始めた二人の様子を見て、ラインは怪訝な表情をする。
「フェイラスト、何故オアーゼに?」
「オアーゼの地下の蔵書だ。あそこなら魔劫界のことが細かく記されてるだろ。以前冥府へ向かうために地図とか気候とか調べたから、なーんかあるかもと思ってな」
「……なるほど。アポリオンについて調べるんだな」
「それ、ボクもいきたい!」
「お、アルカくんも来たいか! いいぜ、人数は多い方がいいもんな。ラインも来るだろ?」
「言わずもがな、だ」
「じゃ、アルカくんとケティとオレとラインで行くとしますか」
「やったー!」
「アルカの家、アポリオン。……見定める必要があるな」
かくして、砂漠の国オアーゼへ向かうことを決めた。
四人はそこで、何を見つけるのだろうか。
「出来損ないの愚息が生きていた」
「なんですって?」
彼女はアルカの母。息子は追放されて野垂れ死に、下級悪魔の餌になっていたと思っていた。生きていたことを聞いて、沸々といらだちが起こる。
「翼も生えないだめ息子が生きていたなんて。直接手を下すべきだったわ」
「私の顔を焼いた愚息を、このまま野放しにはできない。近々、仕掛けるとしよう」
当主の男は目元を隠す金の仮面を光らせて。彼女と共に屋敷の奥へ消えた。
*******
アルカがやって来てから一週間が経つ。笑顔を取り戻した少年は、ラインに少しずつ心を開いていった。少年はまだ怖くて外に出られないが、
「ラインお兄ちゃん、絵本読んでほしいの」
室内でできることをよく頼んでいた。
アポリオン家にいた頃から本を読むのが好きで、様々な知識を得ていくのが楽しかった。
魔劫界には学校がない。人型悪魔は、親兄弟や本から知識を身につけていくのがならわしだ。
アポリオン家はたくさんの本があり、アルカも他の子ども達も進んで本を読み漁っていた。子ども向けの本から難しい術式の本など備わっていて、各自好きなものを読んでいる。
アルカは中でも絵本や空想物語が好きで、よく子ども向けの物語を読んでいた。そんなアルカのために、ラインは図書館からたくさんの本を借りてきていた。
「あぁ。読もうか」
リビングのソファーに座って、ラインは本を開く。アルカは隣から覗き込んで物語に入り込む。ラインの朗読が始まると、耳に意識を集中した。
物語も終わりに差し掛かり。ラインは最後の文章を読み上げる。
「……こうして、勇者バリエンテは人々を救ったのでした。終わり」
最後の奥付けをめくって本を閉じる。アルカは袖と袖を叩いて拍手した。
「勇者バリエンテ、すごい」
「あぁ、すごいな。困難が降りかかっても、仲間と共に、前に突き進んでいく勇気は感心する」
「ねぇねぇ、バリエンテってどういう意味なの?」
「バリエンテは確か、……「勇敢なるもの」という意味だ」
「勇敢なるもの……」
アルカは少し考えて、ぱっと笑顔になる。
「ボクも、勇者バリエンテみたいに、勇敢になりたい!」
「そうだな。なれるさ、お前も」
ラインが頭を撫でる。アルカは嬉しくてにこにこ笑う。
「ボク、バリエンテって名前にする」
「どうした、急に」
「ボクも勇敢なるものになるんだ。いつも怖くて、泣いちゃうけど。でも、勇者バリエンテみたいに、なる!」
「じゃあ、お前の名前は今日からアルカ・A・バリエンテだな」
「アルカ・A・バリエンテ」
「あぁ。Aはアポリオンだ。バリエンテと名乗るならこうじゃないかと、な」
アルカは何度も名前を繰り返す。またまた嬉しくなって満面の笑みを浮かべた。
「ありがとお兄ちゃん!」
「どういたしまして、だ」
アルカの反応が可愛くて、つられてラインも微笑む。少年の頭を撫でると嬉しそうな声を出して笑った。
「アルカ・A・バリエンテ、今日から、ボクも勇敢になる!」
「はは、頑張れよ」
本から名前をもらったアルカは、勇敢になれるだろうか。それでも少年は変わりたいと決意する。大好きな兄のために。
*******
その日の昼。リビングで、ラインはアルカに術式を教えていた。
「いいか、人間の姿に化ける術式だ。これが使えれば、外に出ても見た目が人間と同じだから、攻撃されることはまずない。感じ取れる魔力もダミーにするから、天使に気づかれにくくなる」
「人間の姿に、なる」
「魔劫界の常識は、地上界エルデラートで通用しないと思った方がいい。お前に悪魔の尻尾とツノが生えて、耳が尖っていると、どうしても警戒する人間がいる」
アルカはパン屋での出来事を思い出す。おばさんがツノと尻尾を見てダーカーと呼んだことを。
「……ダーカーって、呼ばれた」
「そうだな。リリスとの戦いが起きて以来、ダーカーの存在がたくさんの人に知れ渡るようになった。だから、お前の姿を見て警戒してしまうのさ」
「人間のすがたになったら、ボクも、攻撃されない?」
「あぁ。術式が解けない限りは大丈夫だ。さ、やろう」
「はい!」
魔力を高めて、ラインから教えてもらった術式を使う。アルカを桃色の光が取り巻いて、小さなツノ、長い尻尾が薄く消えてなくなる。尖った耳は丸い耳となり、人間と同じ姿に変貌した。
「……ほわ、ツノと尻尾がない!」
「成功したようだな。元に戻るときも、同じように意識して戻ればいい。じゃあ、フェイラストの診療所に行こうか」
「う、うん!」
外に出るのが緊張する。セレスに一言声をかけて、ラインとアルカは家を出た。階段を下りて、人気のない噴水公園へ。転移を起動して、ルレインシティへと向かった。
機械都市ルレインシティ。
固定転移紋から出てきた二人は、フェイラストの診療所を目指す。アルカは落ち着きなく辺りを見回している。初めての景色に驚きと好奇心がわいてきた。
「きかいのまち……!」
絵本で見た景色に興奮が隠せない。空に車の走るチューブが浮き、四角い箱の形をしたビル群が立ち並ぶ。大きな中央公園を中心に円形に広がる街を進み、フェイラストの診療所に辿り着いた。
「予約していたライン・カスティーブさんですね。こちらの用紙を記入して、待合室でお待ちください」
看護スタッフに渡された紙は、現在の症状や慢性的な病気の有無を記入するシートだ。アルカに症状を聞いて記入し、全て不調はなしという結果になった。シートをスタッフに渡して椅子に座る。
「……どきどき」
「大丈夫だ。今のお前は人間にしか見えていない」
「うん。でも、やっぱりどきどきする」
「そんなにどきどきしてると、血圧測定で高い数値出そうだな」
「けつあつそくてー?」
「というのはだな……」
アルカと会話をしながら時間を潰す。何人か奥の待合室に呼ばれて移動する。数十分待って、ようやく順番が回ってきた。奥の待合室で少し待って、ついにフェイラストのいる診察室へ。
「よく来たな。アルカくんもお疲れさん」
彼は白衣を来て首に聴診器をかけている。
いつもの銃は太ももになかった。
(そういえば、診療所で医者の仕事をしているフェイラストを見るのは初めてだ)
ラインはそう考えながら、アルカを椅子に座らせる。
「じゃあ、診ていくぞ。人間になる術式解いてくれるか?」
「えっ! だって、解いたらボク、みんなに攻撃されちゃう……!」
アルカの恐怖を吹き飛ばすように、フェイラストが笑う。
「心配するなって。スタッフにも伝えてあるから驚かねぇよ。それに、診察したときの魔力数値とか変わっちまうから、素のままで頼むぜ」
「……攻撃、しない?」
「しないぜ」
「わ、わかった」
アルカは怖々としながらも、術式を解除して悪魔体に戻る。長い黒の尻尾がにゅるりと腰から生えて、頭に小さなツノが生える。最後に耳が尖って、元の悪魔の姿に戻った。
「ありがとな、アルカくん。さて、と。診察していくぞ」
アルカの検査が始まった。目にライトを当てたり、口腔を観察したり。聴診器で心臓の音を聞こうとすると、アルカは傷跡を見られると思ってふるふると首を横に振った。
「……ん」
「嫌かぁ。大丈夫だ。心臓の音を聞くだけだ。病気があるかないかの確認だ」
「病気が、あるか?」
「そうだぜ。病気が「あるか」だと困るだろ?」
「病気があるかだと、困る」
「よし、じゃあ聞かせてもらうぜ」
アルカは大きなファスナーを開けて、黒インナーを捲り上げた。子どもの体にあるべきではない傷跡がたくさん残っていた。フェイラストはあえて話題に触れないで、真剣に心音を聞く。
「ふーん、ふむふむ」
「病気「あるか」だった?」
聴診器を外してフェイラストがにかっと笑う。
「大丈夫だ。心配しなくていい。もう隠していいぞ」
「病気「ないか」でよかった!」
むふふ、とアルカが笑う。服を整える。隣に立つラインに顔を向けると、片眉を上げて「なんだ?」という仕草をしてきた。
「病気ないか、だって」
「それはよかったな。あとは、お前の翼が生えない理由を調べてもらえ」
「うん!」
「それは血液検査しねぇと分からねぇな。アルカくん、無理を承知で頼む。腕を出してくれ」
「ほえ?」
訳も分からずアルカは袖を捲り腕を出す。細い色白の腕は、ラインが力強く握り締めたら簡単に折れてしまいそうなほど細かった。
アルカの腕に消毒液を塗る。スタッフが用意したものを見て、アルカは尻尾をピーンと立たせた。
「お注射、やー!」
首を大きく横に振って注射を嫌がる。フェイラストは両手を合わせて懇願した。
「たーのーむ! アルカくん、頼む! ちょっとちくっとするだけだから!」
「ちくちく、やー!」
「最新の医療器具だから、ちくっとしないかもだぞ。アルカ、お前の翼が生えない理由が分かるかもしれないんだ。おとなしく注射されろ」
「ラインお兄ちゃんまでー!」
注射する・しないの攻防をたっぷり三分はおこなって、ついにアルカは涙目になりながら注射を受けることになった。
「すまねぇなぁ。医者としてやらなきゃいけないことでよぉ」
「フェイ先生、やー!」
「オレのことまで嫌いにならないでくれぇ! おっさんいい歳して泣いちゃうぞぉ!」
スタッフにも笑われながら、賑やかに血液採取がおこなわれた。
かくして、アルカの診察は終了し、良好のため薬も無く、診察料を払って終了となった。診察室でアルカが人間の姿に変身して、フェイラストの診療所を出る。
アルカが膨れている。よほど注射が嫌いなようだ。ラインと手を繋いでルレインの街を歩く。
「約束は約束だ。ルレイン名物のスパナ焼きを買って帰ろう」
「病気は「ないか」って言ってたのにぃ」
「もしも「あるか」だとお前も困るだろ?」
「ぶーぶー!」
袖の中の腕には絆創膏が貼られていた。血液採取されたため、アルカにふらつきやめまいが生じていないか心配だったが、どうやら杞憂に終わりそうだ。ルレインシティの土産屋に寄って、注射成功のご褒美にスパナ焼きを購入する。
「ほんとにスパナの形をしてるんだな」
「すぱな、って、なぁに?」
「先の方にある空間にネジを挟んで、締めたり開けたりする道具のことだ。ルレインシティは彩星機関と機械に溢れてるからな。それらに関係するスパナが名物になったんだろう」
「はむっ」
「既に食ってたか。やれやれ」
スパナ焼きは柔らかくふっくらした生地の中に、カスタードクリームやチョコクリームが詰め込まれている。地元の人で知らない人はいない名物お菓子だ。二人が食べているのはカスタードクリームのスパナ焼き。アルカの細い双葉がぴこぴこ動いた。
「あったかふかふか、クリームとろとろ」
「気に入ってくれてなによりだ。さて、帰ろう」
「はぁい!」
元気よく返事をする。アルカが楽しめるように、帰りは汽車でゆっくり移動した。
*******
アルカが来て月が変わり、秋の始まりへと季節は移ろう。北に位置するフォートレスシティは、残暑も残るが期間は短い。今年も例年通りの気候だ。
「フェイラストから連絡があった。検査結果が出たから来てほしいそうだ」
「注射、やだー」
「今回はしないさ。結果を聞きにいこう」
アルカを連れて、フェイラストの待つルレインシティへ。アルカの希望で、汽車で移動することにした。チケットを買って車内に乗り込む。まもなく汽笛を鳴らして出発した。
「窓の外を見るの、楽しい」
「魔劫界に動く乗り物はないのか?」
「うん。「あるか」じゃなくて「ないか」だよ。みんな、翼で空を飛ぶから、動く乗り物はないんだ」
「そうなのか。ひとつくらいあると便利なんだが」
「作っても壊しちゃう子がいるから、長続きしないーって、おじいちゃんが言ってた」
「おじいちゃんとは?」
アルカはもじもじして上目遣いでラインを見る。
「追放されたボクを拾ってくれたひと。堕天使のおじいちゃんが守ってくれたんだ。お医者さんしててね、ボクに薬もくれたの」
「いい人だったんだな」
「ボクがいなくなって、探してるかな」
「そうかもしれないな。魔劫界に戻ったら、顔を出しに行こうか」
「うん!」
汽車は汽笛を鳴らして進む。やがてルレインシティに到着した。
円形の都市を進んでフェイラストの診療所に辿り着く。今回は母屋から入ってくれとのことで、母屋の玄関へ回る。ノックをするとフェイラスト本人が応対した。中へ入れてリビングへ。ケティスがお茶とお茶菓子を用意して待っていた。
「まぁ、適当にかけてくれ。資料持ってくる」
ラインとアルカは二人でソファーに座る。ふかふかの椅子にケティスが座り、少し遅れてフェイラストも同じ椅子に座った。
「アルカくんの血液検査の結果だ。血液型は特定不能、つまり不明だった。赤血球や白血球の数は正常。脂質も少なく心筋梗塞等の異常、糖尿の気配も無し。それはおいといて、だ」
「翼が生えない理由だな」
「どきどき……」
「ケティスと調べてみた結果」
フェイラストが眼鏡を直して眉をひそめる。
「アルカくんはコンジェニタル・ウイングロスト症……、つまり、先天性失翼症だ」
その場が静まり返る。アルカが首をかしげた。ラインが腕を組んで悩ましい顔をする。
「先天性の失翼症?」
「ラインも聞き覚えねぇよな。そりゃそうだ。これは、滅多に起きない病気だからだ」
アルカの血液検査の結果の載った資料をめくる。ラインに差し出す。受け取ってその紙面を食い入るように読む。
「……発症するのは、三世界に約一億潜在している有翼種にのみ存在する症状。特に血の濃さを優先するあまり、近親相姦を交わした者の子に多い」
「そういうことだ。アルカくん、お前さんの生まれたアポリオン家は、血の濃さが大事とか言ってたか?」
「うん。アポリオンの濃い血を残すために、パパがお兄ちゃんやお姉ちゃんと繋がるんだって、言ってた」
「そのパパさんは何者だ?」
「アポリオン家のとーしゅさまだよ」
「当主がそういう方針決めてんのか。あるいは、昔からおこなわれていたのかもしれねぇな」
「ねぇねぇ、それで、翼はどうなっちゃったの?」
難しい言葉で分からなかったアルカは、首を左右にかしげて言葉を待つ。フェイラストが姿勢を正した。
「率直に言うぜ。アルカくん、お前さんの翼は、生えてこない」
「生えて、こない」
「そうだ。生えてこない。うまれつき生えてこないんだ。先天性失翼症。それが、お前さんのかかってる症状だ」
「せんてんせー、しつよくしょー……」
口に出して言葉を噛み締める。小さな声で、何度も。
他の子には翼が生えて、自分には翼が生えない。羨ましくて、いつかかっこいい翼が生えてくると、希望を膨らませていたのに。アルカはショックを受けながらも、本当は生えてこないのではないかと予感していた。
今こうして翼が生えてこない事実を知って、心の中のわだかまりが晴れた。そして、翼に対してようやく諦めがついた。
「すまねぇ。この症状はオレも治すことはできねぇ。医者として無力で悪いと思ってる。ケティスの翼も治してやりてぇが、さっぱりなんだ」
「そうね。わたしの羽も、お父さんの力が強いからこそ残っている程度だもの。空は飛べないけどね」
「お姉さんも、翼がないの?」
「あるけど飛べないの。小さすぎて、はばたいても魔力の波を捉えきれない。だから、飛べない」
「翼があっても、飛べないひともいる……」
「アルカくん、あなたには翼がなくても素敵な力があるそうじゃない。それを生かしていくといいわ」
「うん、そうする!」
「……泣くかと思ったが、意外な方向にいったな」
「翼がなくても、ラインお兄ちゃんがいれば、どこにでも行ける気がするの。だいじょーぶ。それにね、ボクには自慢の尻尾があるもんっ!」
悪魔体に戻ったアルカが長い尻尾を撫でる。にこにこして明るく振る舞った。
気づかれないように、フェイラストが魔眼でアルカを視る。
闇色の力。
全てを滅ぼすための力。
内から桃色に光る明るい力。
ないまぜになりながら、絶妙なバランスで保たれていた。
「……アポリオン、ねぇ」
調べる必要がある。フェイラストは魔眼を切って、ラインから資料を返してもらった。ラインの膝上に乗って楽しそうなアルカを見て、少し悲しそうにフェイラストは見つめる。
(魔劫界の資料が豊富にあるところ……、砂漠の国オアーゼで調べてくるか)
静かにフェイラストはこれからの行動を決める。ケティスに声をかけた。
「じゃ、オレは砂漠の国オアーゼに行く。一緒に来てくれ、ケティ」
「いいわ。たまにはわたしも遠くに行きたいもの」
「よっし、決まりだな。支度してオアーゼに向かおう」
立ち上がって行動を始めた二人の様子を見て、ラインは怪訝な表情をする。
「フェイラスト、何故オアーゼに?」
「オアーゼの地下の蔵書だ。あそこなら魔劫界のことが細かく記されてるだろ。以前冥府へ向かうために地図とか気候とか調べたから、なーんかあるかもと思ってな」
「……なるほど。アポリオンについて調べるんだな」
「それ、ボクもいきたい!」
「お、アルカくんも来たいか! いいぜ、人数は多い方がいいもんな。ラインも来るだろ?」
「言わずもがな、だ」
「じゃ、アルカくんとケティとオレとラインで行くとしますか」
「やったー!」
「アルカの家、アポリオン。……見定める必要があるな」
かくして、砂漠の国オアーゼへ向かうことを決めた。
四人はそこで、何を見つけるのだろうか。
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