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3章
英雄と救世主の再戦 02
しおりを挟むユークリウッドがゆっくり歩きながら二人へ近づく。
その片方の肩には、新たに形成された、禍々しい腕が生えている。
「喰わxxxせxxxぞxx・・・!」
壊れたスピーカーの様に、所々ノイズ混じりの声を発しながら、ユークリウッドはその禍々しい腕を振り下ろした。
「っ・・・!!!」
それは重そうな見た目からは想像出来ない程の速さで振るわれたが、コハクと式利の二人は二手に分かれてそれを避けた。
振り下ろされた腕は、屋上の床を容易く貫き、大きな穴を空ける。
「はぁぁぁxxxぁぁxxx!」
そしてユークリウッドは左腕を黒い刃へ変形させると、コハクへと斬りかかった。
コハクは盾で刃を受け止め、そして無防備になったユークリウッドへ式莉が剣を振るう。
が、ユークリウッドは肩から形成される腕を振るい、式利に叩きつける。
「ぐっ!!!」
式莉はそれを結界で受け止めるが、想像以上の力に結界は砕け、式莉の身体は宙に浮き、大きく突き飛ばされる。
想像以上の力に式利は驚いたが、空中で態勢を立て直し、腕を付いて着地した。
「はぁ、はぁ、なんて馬鹿力ですか・・・!」
式利はふと腕を見ると、服は裂かれ、少しだが血が滲んでいる事に気が付いた。
「死xxねxx、xxーーー!」
ユークリウッドの肩から生えた腕が、コハクの真上から振り下ろされる。
「ぐぅ・・・あぁ・・・!!!」
盾で防ぎ、直撃はなんとか防いだコハクだが、身体は地面に倒され、プレスの様に押し付けられる。
コハクは盾を握る両腕に力を込めて押し返そうとするが、まるで押し返す事は出来ない。
「あぁぁxxx食わせxxx、アリアのxxに!!!」
「ぐうああああああ!!!」
ユークリウッドの肩から生えている腕に力が込められ、黒い霧が漏れ出す。
が、その腕目掛けて魔法の鎖が伸び、禍々しい腕を絡め取る。
「まだです。私はまだまだ戦えますよ」
式莉の放つ魔法の鎖がユークリウッドの身体を絡め取るが、巨大な腕が鎖を簡単に引きちぎる。
そして、腕を振り上げ、再びコハクを押しつぶそうと振り下ろされる。
コハクは床を転がり寸前でそれを避け、素早く立ち上がって、一度式莉の元まで後退する。
「予感通り、私達だけでは手に負えませんね。応援を呼んだので、出来るだけそちらまで誘き寄せましょう」
「はぁ、はぁ、了解です・・・!」
「付いてきてください」
式莉に続いて、屋上を走るコハク。
その後ろから、ユークリウッドが迫る。
「逃がxxかxxぁぁxx!!!」
禍々しい腕を肩に付けたバランスの悪い姿とは裏腹に、ユークリウッドのスピードは速い。
あっという間に二人に追いつくと、ユークリウッドは巨大な腕を振う。
寸前のところで、コハクと式莉は魔法で脚の筋力、重力、風力を操り、隣の建物へと飛び移った。
2人が元いた屋上の縁は、ユークリウッドの腕の一撃で砕かれる。
もし直撃していれば、粉々になっていたのは二人の方だったのだろう。
だが一息ついている時間はない。
その後を追い、ユークリウッドも屋上から跳ね、隣の建物へと飛び移る。
コハクと式利も、すぐに隣の建物へと跳躍するが。
ユークリウッドは肩の腕で屋根のレンガを無造作に掴むと。
それを、宙に飛び上がるコハク、式莉の二人へ目掛け、勢いよく投擲した。
「コハクさん! 攻撃が来ます!!!」
大小大きさのバラバラなレンガの破片が、乱射された銃弾の様に2人を襲う。
空中にいる状態では避けることが出来ない。
高速で飛来するレンガを、二人はそれぞれ盾と魔法壁で防ぐが。
二人はバランスを崩し、近くの屋根の上に落下した。。
「ぐっ・・・無事ですか? コハクさん」
「・・・はい、無事ですよ。流石にあんな石ころ程度でやられたりはしません」
そんな二人の間に、巨大な瓦礫が飛来し、屋根をぶち抜いていく。
あと数十センチずれていれば、コハクか式莉のどちらかが押しつぶされていた事だろう。
二人は冷や汗をかいて、思わず顔を見合わせた。
「・・・石ころ程度っていうのは訂正します」
「・・・そうですね。さて、止まっている時間はありませんよ」
2人は立ち上がると、追ってくるユークリウッドから逃れる為に走り始めた。
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