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3章

ようこそ、反乱

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「報告通り、街中に魔物がいます! クソ、なんでこんな所に魔物が・・・!?」

「推理なんて後でいい! まずは魔物を倒さないと何も解決しないぞ!」


 兵士達が商店街に辿り着くと、すでにそこは瓦礫と血肉で溢れていた。

 そしてその中心に、黒い体毛の大柄な魔物、ビーストが堂々と存在している。

 どうやら、死体を漁っているらしい。


 この知性のない黒い魔物に、慈悲などという概念はない。

 勇敢に立ち向かう者や、逃げる者、その場で立ち尽くす者、男も女も大人も子供も関係なく、強靭な爪で人々を裂き、ナイフの様な鋭い歯で肉を食いちぎる。


「気を付けろ、Sランク帯の魔物だ。真向から戦って勝てる相手じゃない。
前衛は出来るだけ攻撃を防ぐ事に徹しろ。前衛が攻撃を凌いでいる限り、奴はただのでかい的に過ぎない」

 班長の命令を受け、剣や盾を装備した前衛の兵士達は黒い巨体へと向かっていく。

 後衛の魔術師達は、建物の屋上からビーストの様子を伺う。


 ビーストがくんくんと鼻を動かす。

 兵士達が近付いてくる事に気付いたのだろう。
 
 黒い毛で覆われた頭部を動かし、鋭い牙の並ぶ口から、ふしゅうと息を吐く。
 
 そして合図もなく唐突に、ビーストは強靭な脚で地面を蹴り、前衛兵士達へ向かい駆ける。
 

「くるぞ」

 剣と盾を構え、ビーストを迎え撃つ兵士達。

 ビーストは兵士の一人に狙いを付け、鋭い爪の生えた腕を振り下ろす。

 大振りな一撃を避ける兵士。だが、ビーストは間髪入れずに腕を振り回し、執着に兵士へ襲い掛かる。


「魔法を放て! 誤って味方を撃たない様に気を付けろよ!」

 後衛の魔術師達が、合図と共にビーストへ向け魔法弾を放つ。

 魔法の光弾が魔物の背中を焼くが、魔物は気にかけずに目の前の兵士へと襲い掛かる。
  

「もっと撃ち込め!!!」
   
 ビーストの攻撃を避けた兵士達が剣でビーストを斬り裂き、魔術師達が放つ魔法の光弾が、次々とビーストに着弾する。

 強靭な身体を持つビーストだが、兵士達の猛攻を受けて、黒い体毛が、どす黒い血が飛び散る。
 
 この調子ならビーストを倒せると、兵士達がそう思った瞬間。


「っ!? なんだ!? 待て!!! あああああ!!!!」

 突然、後衛魔術師の一人が屋上から落下する。

「ぐあっ!? クソ!!! 足が!!!」

 地面に叩き付けられた魔術師が悲鳴を上げる。  

 命は無事であるが、しかし軽症では済まないだろう。


「な、なんだ、何事だ!? 何かがおかしいぞ・・・?」
 
 別の場所からその光景を見てた魔術師が、班員達に連絡を取ろうとデバイスを取り出す。


 その背後に、人影が近付く。

「・・・っ!?」

 人の気配を察し、振り向く魔術師。

 その瞬間、カメラのフラッシュが瞬く様に、幾つもの光が点滅する。

 それが魔術器から魔法の光弾が発射された光だと気付いた時には、もう遅い。 
 
「がっ!!!」

 光弾が魔術師の身体を撃ち抜く。

 魔術師達が扱う魔法と比べれば威力は低いが、それでも拳で殴られる以上の衝撃があるだろう。

 続けて2発、3発と、次々に光弾が魔術師の身体に被弾し、爆発を起こす。
 
「ぐっ、ああ!!!」

 そして光弾の爆発に押し出され、魔術師は屋上から落下した。 

 
「くっくっく。今の感じを覚えたか?」

 カミノは屋上の縁に近づき、落下した魔術師を見下ろす。

 彼女の後ろには、数人の反乱者が並んでいる。  


「この調子で、キミ達はあの魔物の援護をすればいい。戦場を乱し混乱させる程、奴らを倒しやすくなる」

 カミノは片腕に魔力を込めると、前線で魔物と戦闘を行う兵士へ向け、虹色の火球を放つ。
 
 放たれた虹色の火球は着弾すると破裂し、火炎と衝撃で兵士達を蹴散らす。


「ぐあぁぁ!? くそっ!? さっきから何が起きている!? ぐああああ!!!」

 カミノの放った火球により負傷した兵士を、ビーストが容赦なく追い討ちをかける。

 先ほどまで優勢だった兵士達が、一人ずつ魔物の牙に噛み砕かれ、引き裂かれていく。

 
 その様子を見下ろしながら、良い反乱の幕開けだなとカミノは笑った。
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