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3章
ヴァーリア人と反乱者 02
しおりを挟む「これから、私は軍に連れて行かれるのか?」
人通りのない裏路地を歩いていると、反乱者の青年がコハクへそう問いかける。
青年の両手は手錠型の魔法具で拘束されている。
「捕えられた反乱者は、一度軍で取り調べを行う事になっています」
ヴァーリアには警察という組織はない。
変わりに、軍がその役割を担っている。
「軍は、反乱者を捕えたら必ず何かしらの罪を見つけ出し、罰を与えると聞いたことがある。
例え重大な犯罪を犯していなくても、我々反乱者は、叩けば埃が出るから」
「・・・そうでしょうね」
コハクは、少し進んだところで立ち止まった。
そして、手のひらから数体の使い魔を生成し、それを周囲に飛ばす。
飛び立った使い魔は、周囲を素早く探索し始めた。
「近くには誰もいないみたいですね」
そう言うと、コハクは反乱者の青年へ向き合う。
「・・・どうしました?」
反乱者の青年は、警戒しながらコハクに問う。
もしかしたら、この場で処刑されるかもしれないと思ったのだろう。
「貴方に危害を加える事はしません。ただ、ひとつ話がありまして」
一息の間を空け、コハクは口を開く。
「雪妃彩香という少女を知りませんか?」
「雪妃、彩香・・・?」
雪妃の名前をオウム返しする青年。
彼の表情からは、雪妃の知り合いなのか他人なのかの判断は出来ない。
「雪妃という少女がこの街に出入りしていた事は判っています。もし何か知っていたら、教えてもらえませんか?」
青年は少しの間、目の間の兵士とどう対応するべきかと悩んだ後、口を開く。
「兵士さん、先程の言動を見るに、貴方は今まで見てきた兵士の中では、反乱者に対して優しい人だと言えるでしょう。ですがそれでも、反乱者と兵士とは常にいがみ合っている中だ。仮にその少女を知っていたとして、それを話すと思いますか?」
「確かに、その通りです。なので二つ程、話があります」
コハクは上着のポケットから、一枚の紙を取り出す。
「まず一つ目。雪妃彩香さんについて知っている事を話してくれれば、貴方をここで解放して、軍へ連行する事は辞めます」
「・・・え?」
それを聞いて、反乱者の青年は驚いた声を漏らした。
捕えた反乱者を、自らの手で解放する兵士など、今まで見た事も聞いたことも無かったからだ。
「そしてもう一つは、僕が"兵士"としてではなく"個人"として雪妃さんを探しているという事です」
そう言うと、コハクは手に持っている紙を、反乱者の青年に見せる。
「・・・その写真は」
「あまり他人には見せたくない物ですがね」
苦笑いするコハク。
コハクが青年に見せた写真、それはコハクと雪妃の二人が並んで映っている写真であった。
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