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第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編
14⑨.いやいやいやいや。いくらなんでも私に“聖女王”なんて称号は分相応すぎるでしょう!!(SIDE:アーデル)
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あの日、曾祖母に代価として差し出したデールがなぜウェディングドレスの付属品になってるのか?
混乱する頭の中で、ふとヨハン大司教補佐のある言葉を思い出した。
“ゴッドライフ領国の聖域に住まう聖女が聖樹桜の花を素材にして作られたという……”
(ま、まさ……か?!あの人……が!!!?)
確証はない。
そもそも、アムル辺境領からゴッドライフ領国へと移動するには、8年ほど前に開通したトンネルを使っても片道一週間はかかる。
トンネルを使わない地上ルートはアルプス山脈や樹海、さらに魔王城の領域というS級冒険者すらも躊躇する化け物が跳梁跋扈してる難所をいくつも超えないといけないのだ。
少なくとも当時⑨歳だった子供の足で踏破できるはずがない。
だったら成長した今なら踏破できるかといわれたら、魔王城近辺は身体能力に任せたごり押しが通用しないので難しいっと判断せざるを得ない。
まぁつまり、当時のアーデルはまず間違いなく道中。方向感覚を狂わす樹海辺りで力尽きてたはずだ。
だが、思い出してきた当時の記憶を辿ると……
「聖女様……いえ、聖女王様!!」
「えっ?」
ヨハン大司教補佐からの声に思考が中断された。
慌てて顔を向ければ、そこにはヨハン大司教補佐がうやうやしく跪いていた。
さらに見渡せば、約一名……あえて語る必要のない一名以外の全員が跪いていた。
ヨハン大司教補佐が皆を代表して語りかける。
「アーデル様……どうやら貴女様は『“神の手”ウェディングドレス』に所有者として認められたようです。その証拠にドレスは自ら形状を変えました。これは伝説に語られる勇者の鎧や聖女の聖衣と同様の現象。『神具』には神の意志が宿っており、使用者を選定します。
しかし、神具が使用者ではなく所有者として認められた場合は、新たな所有者に相応しい姿へと自ら変化させます。
すなわちアーデル様は“神の手”たるサクヤ様と同じ高みへと昇りつめたといっても過言ではないでしょう!!!!よって、アーデル様には“聖女王”の称号を授けたいと思います!!」
……
…………
………………
「えっ、えっ、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!!!!!!!?」
急展開だった。
こんな展開は全く筋書にない。
一応クズが何やらかすか予想できないからっと、予想外の出来事にはその場の流れに合わせて臨機応変に対応する事になっていた。
それでも……
(いやいやいやいや。いくらなんでも私に“聖女王”なんて称号は分相応すぎるでしょう!!下手すれば独断専行で他の国の教会のお偉いさん達から処罰されるじゃない!!)
だからこそ辞退したいっと思うも、周囲はそう思わなかったようだ
「“聖女王”アーデル様バンザーイ!!!」
「“聖女王”アーデル様バンザーイ!!!」
「“聖女王”アーデル様バンザーイ!!!」
「ちょ、ちょっとま……きゃっ?」
ヨハン大司教補佐の宣言と共に、周囲から湧き上がるコール。
アーデルが戸惑う中、ハイドは無遠慮っとばかりに肩車して一際高い位置に押し上げてくる。
こういう配慮のなさはハイドの悪い所であるも、アーデルはそういう悪い部分を含めてのハイドを好いているのだ。
素直に肩車されながらアーデルは改めて状況を認識した。
まさに伝説として語られるような歴史的瞬間を目撃したことで興奮した者達から称賛と期待に満ちた目で見つめられてる事を……
ここまでの事態になったのだ。ならば自分がすべき事は……皆の期待にノリよく応える。それしかなかった。
「皆様ありがとうございます!!!私アーデルは「“聖女王”としてフランクフルト王国にさらなる繁栄を約束いたしましょう!!!」
半ばやけくそ的な心境でもっての宣言であっても、周囲はアーデルの心情なんて知った事ではない。
「「「「「「「うぉぉっぉぉっぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」」」
大広場はさらなる熱狂に包まれるのであった……
そんな中、一人だけその熱狂から置いてけぼりにされる者がいた。
クズである。
アーデルはこの熱狂の中で何か叫んでるクズの事は気になるも、今は周囲のアピールでいっぱいいっぱいだ。
それに……視界の隅にはクズへ引導を渡すために動いたもの。
あえて順番を最後にしたクラーラとその護衛。具体的にいうとロンジュとユキとマイ。さらにペーターともう一人、クズの側近的な立場にいたせいで堂々と姿を現せられないから近衛兵として紛れ込んでいたマイヤーの計6人が後は任せろっとばかりにクズの元へ向かっていたので、アーデルもそこは当初の予定通り……
予想外の事が起き過ぎて先行き不安ながらも、そこだけは予定通りクラーラに対処を任せる事とした。
だが……アーデルは気付かなかった。
アーデルには“光”に属する者からの加護が得られたのと同様に……
クズには“闇”に属する者に目を付けられていた事に……
あの日、戦争を宣言した時から約一ヵ月の間、“闇”に属する者から派遣されてた悪魔に絶えず誑かされてた事に……
それによって、元々おかしかった自我をさらに狂わされていた事に……
アーデル含む周囲の者は誰も気づかなかった。
唯一の例外。情報と引き換えに“闇”に属する者の暗躍を手助けしていたアル爺と……
アーデルに握られていた人形以外は………
混乱する頭の中で、ふとヨハン大司教補佐のある言葉を思い出した。
“ゴッドライフ領国の聖域に住まう聖女が聖樹桜の花を素材にして作られたという……”
(ま、まさ……か?!あの人……が!!!?)
確証はない。
そもそも、アムル辺境領からゴッドライフ領国へと移動するには、8年ほど前に開通したトンネルを使っても片道一週間はかかる。
トンネルを使わない地上ルートはアルプス山脈や樹海、さらに魔王城の領域というS級冒険者すらも躊躇する化け物が跳梁跋扈してる難所をいくつも超えないといけないのだ。
少なくとも当時⑨歳だった子供の足で踏破できるはずがない。
だったら成長した今なら踏破できるかといわれたら、魔王城近辺は身体能力に任せたごり押しが通用しないので難しいっと判断せざるを得ない。
まぁつまり、当時のアーデルはまず間違いなく道中。方向感覚を狂わす樹海辺りで力尽きてたはずだ。
だが、思い出してきた当時の記憶を辿ると……
「聖女様……いえ、聖女王様!!」
「えっ?」
ヨハン大司教補佐からの声に思考が中断された。
慌てて顔を向ければ、そこにはヨハン大司教補佐がうやうやしく跪いていた。
さらに見渡せば、約一名……あえて語る必要のない一名以外の全員が跪いていた。
ヨハン大司教補佐が皆を代表して語りかける。
「アーデル様……どうやら貴女様は『“神の手”ウェディングドレス』に所有者として認められたようです。その証拠にドレスは自ら形状を変えました。これは伝説に語られる勇者の鎧や聖女の聖衣と同様の現象。『神具』には神の意志が宿っており、使用者を選定します。
しかし、神具が使用者ではなく所有者として認められた場合は、新たな所有者に相応しい姿へと自ら変化させます。
すなわちアーデル様は“神の手”たるサクヤ様と同じ高みへと昇りつめたといっても過言ではないでしょう!!!!よって、アーデル様には“聖女王”の称号を授けたいと思います!!」
……
…………
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「えっ、えっ、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!!!!!!!?」
急展開だった。
こんな展開は全く筋書にない。
一応クズが何やらかすか予想できないからっと、予想外の出来事にはその場の流れに合わせて臨機応変に対応する事になっていた。
それでも……
(いやいやいやいや。いくらなんでも私に“聖女王”なんて称号は分相応すぎるでしょう!!下手すれば独断専行で他の国の教会のお偉いさん達から処罰されるじゃない!!)
だからこそ辞退したいっと思うも、周囲はそう思わなかったようだ
「“聖女王”アーデル様バンザーイ!!!」
「“聖女王”アーデル様バンザーイ!!!」
「“聖女王”アーデル様バンザーイ!!!」
「ちょ、ちょっとま……きゃっ?」
ヨハン大司教補佐の宣言と共に、周囲から湧き上がるコール。
アーデルが戸惑う中、ハイドは無遠慮っとばかりに肩車して一際高い位置に押し上げてくる。
こういう配慮のなさはハイドの悪い所であるも、アーデルはそういう悪い部分を含めてのハイドを好いているのだ。
素直に肩車されながらアーデルは改めて状況を認識した。
まさに伝説として語られるような歴史的瞬間を目撃したことで興奮した者達から称賛と期待に満ちた目で見つめられてる事を……
ここまでの事態になったのだ。ならば自分がすべき事は……皆の期待にノリよく応える。それしかなかった。
「皆様ありがとうございます!!!私アーデルは「“聖女王”としてフランクフルト王国にさらなる繁栄を約束いたしましょう!!!」
半ばやけくそ的な心境でもっての宣言であっても、周囲はアーデルの心情なんて知った事ではない。
「「「「「「「うぉぉっぉぉっぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」」」
大広場はさらなる熱狂に包まれるのであった……
そんな中、一人だけその熱狂から置いてけぼりにされる者がいた。
クズである。
アーデルはこの熱狂の中で何か叫んでるクズの事は気になるも、今は周囲のアピールでいっぱいいっぱいだ。
それに……視界の隅にはクズへ引導を渡すために動いたもの。
あえて順番を最後にしたクラーラとその護衛。具体的にいうとロンジュとユキとマイ。さらにペーターともう一人、クズの側近的な立場にいたせいで堂々と姿を現せられないから近衛兵として紛れ込んでいたマイヤーの計6人が後は任せろっとばかりにクズの元へ向かっていたので、アーデルもそこは当初の予定通り……
予想外の事が起き過ぎて先行き不安ながらも、そこだけは予定通りクラーラに対処を任せる事とした。
だが……アーデルは気付かなかった。
アーデルには“光”に属する者からの加護が得られたのと同様に……
クズには“闇”に属する者に目を付けられていた事に……
あの日、戦争を宣言した時から約一ヵ月の間、“闇”に属する者から派遣されてた悪魔に絶えず誑かされてた事に……
それによって、元々おかしかった自我をさらに狂わされていた事に……
アーデル含む周囲の者は誰も気づかなかった。
唯一の例外。情報と引き換えに“闇”に属する者の暗躍を手助けしていたアル爺と……
アーデルに握られていた人形以外は………
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